● 何かを得る為には、何かを捨てなくてはならない。 運命の『天秤』に載せられた二択。 その二択のなかで。 人は常に自分にとって、より重い運命を選んでゆく。 否、選ばざるを得ないのである。 「時村グループの有する病院の一つに、沙奈(さな)という少女が入院しています」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)が集まったリベリスタ達に資料を配る。 今年の春中学生になったばかりの少女は交通事故に遭い、一時は別の病院に居たのだがある事件を経て、今は時村グループの病院で治療を受けているのだという。 「現在『六道』に所属するフィクサード達が沙奈さんを狙って行動を起こそうとしています」 その中には、未だ得たいの知れぬ正体不明のエリューションも混じっているのだという。 「其のエリューションは、アザーバイドではありません。だからといってノーフェイスとも言い難く、他のエリューションタイプとも言えません。多数の特性を併せ持つ、そうこれは」 人為的な追加工程の上に成り立つ『研究による結果』。 言うなればキマイラとでも呼ぶべき存在ですと和泉が言う。 「次に沙奈さんが狙われる理由についてですが」 沙奈本人は只の一般人で、六道のフィクサード達やキマイラに襲われる理由はない。 「簡単にいえば、彼女はある二択を迫る為の材料にされているんです」 まるで、天秤の様だと和泉が言葉を続ける。 沙奈には沙耶(さや)という元フィクサードの姉がおり、彼女はそう遠くはない未来に自分の命と、沙奈の命。 天秤にかけられた二つの命を選ぶ二択を六道のフィクサードに迫られ、沙奈の命を選んだ彼女はキマイラの手にかかり殺されてしまうのだ。 「沙耶さんを襲う別のキマイラには、別のリベリスタ達が向かっています。 貴方達の任務は病院に現れるキマイラの撃破、これに失敗すれば沙奈さんの身柄は六道の手に堕ちてしまいます」 そうなってしまえば、最悪の結果が待ち受けている事は容易に想像出来る。 「キマイラは、サソリ人間とでも言うべき容貌で凶悪な猛毒を持つ毒針を右腕に有しています」 サソリ型E・ビーストと人間の医者を噛みあわせた様なそのキマイラの右腕は巨大な注射器を思わせる毒針と化しており一度刺されれば例えリベリスタと言えど只では済まない。 「護衛のフィクサード達はどうやら戦闘が始まれば遠くの方で高みの見物を決め込むつもりのようですね。最もその方が今は助かるのかも知れません」 彼等は恐らくは戦闘データの収集を行うつもりと和泉が付け加える。 「今から行けば、キマイラが病院に侵入する前に迎撃する事が可能です」 宜しくお願いします、と和泉はリベリスタ達を送り出したのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ゆうきひろ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月19日(土)00:09 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 陽が沈み始め、世界が赤く染まり始める黄昏の街を駆ける者達が居た。 「急がなくてはいけませんね」 翼を幻視で隠し、時村グループの病院に急ぐのは『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)だ。 現在、其の病院には『六道』の研究者によって産み出されたキマイラが刻一刻と近づいており、 急がなくては病院の中で今も入院中の沙奈という少女が危険に晒される事になる。 「ええ、キマイラを病院に侵入させるわけには行きませんから」 『下策士』門真 螢衣(BNE001036)がシエルの言葉に強く頷いた。 無慈悲な二択の運命は悲しすぎて、そんな非道を絶対に許す訳にはいかないと。 必ず阻止しなくてはならないと彼女は思うのだ。 「運命。命の大きさを考えたことはありませんが……」 きっと、とても辛いのだろうとミル・フランベルジュ(BNE003819)が言う。 沙奈をキマイラや六道のフィクサード達に渡す訳には行かない。 天秤は、絶対に傾けさせないと強い意思と共にミルは拳を握り締める。 「天秤にかけられた二つの命……」 妹の命を守る為に、自分の命を代償に捧げる姉。 そもそもそんな天秤がおかしいと思うのは小鳥遊・茉莉(BNE002647)だ。 破壊しなくてはなるまい。 そして、其の為に自分達に出来る事は敵を撃破し、沙奈の安全を確保する事。 六道は此方が阻止行動を行う事すら見抜いている事だろう。 だが、其れでも立ち止まる訳には行かない。 例え六道の手の平の上だとしても、最優先されるべき事は変わらないのだと茉莉は思う。 「二者択一。誰だってね、それが世の真実だ何て分かってるのよ」 何でもを得る事は出来ない、時に選ばなくてはならない時は必ずある。 二兎を追う者は一兎をもと『彼岸の華』阿羅守 蓮(BNE003207)が言う。 其れは、きっと世界の真実。 「でもね、だから二兎を追っちゃいけない理由にはならない」 俗人である自分には世界の真実等知ったものではない。 救える子を救う為に足掻いた其の先に『奇蹟』があると蓮は考えていたから。 「本当に、ナメた事を計画してくれるものです」 胸糞の悪い話、と『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)が吐き捨てる様に言った。 かつて出会った、あの少女は変わる事を選んだのだ。 だというのに、こういう形で邪魔をしようとするなど。 「アークの監視下にあるという事は、アークの保護下にあるという事です」 勝手な計画の実行などさせないというリーゼロットに仲間達が頷いた。 「ええ、悪趣味極まるキマイラを沙奈さんの元へ辿り着かせる訳にはいかないわ」 本当なら事前準備はきちんと整えておきたかったけどと『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が言う。 念には念を入れて、シエル同様に幻視を使い足を生身のものへと見せてはおいたものの、流石に此れ以上の準備をしている時間は無いだろう。 遅れれば、キマイラが院内に侵入しそうなった場合敵を抑えるのは相当のリスクを背負わされる事になる事は容易に想像出来る。 そんな事態だけは、絶対に避けなくてはならない。 「まるで怪人サソリ男ですね」 小柄な体躯には不釣り合いな四尺三寸から成る斬馬刀を背負い、そんな事を呟いたのは『空中楼閣』緋桐 芙蓉(BNE003782)だ。 フォーチュナの情報によれば、キマイラ――スコルピオは白衣を着た医者を思わせる人間の身体に蠍が乗っかった様な姿をしているのだという。 人工的に産み出されたというキマイラ。 其の様な歪な存在でありながら、人型という事はベースになった人が居るのだろうと芙蓉は思う。 志願者か、犠牲者か。 「どうやら間に合ったようです」 病院は最早目と鼻の先、幸い敵は未だ到着して居ないようだ。 事前の万全の準備と、病院が危険に晒されるリスク。 天秤にかけられた二択の中で、リベリスタ達が取った選択は正しかったのだ。 ● リベリスタ達が駆けつけた病院を遠く離れたビルの屋上から見つめる人影達があった。 彼等の名は『六道』。 数々の忌まわしき実験を繰り返す果てなき探求者達である。 「ふむ、此れが彼等の選択か」 其の中の一人、天秤のネックレスを首にかけた男が口を開いた。 アークの『万華鏡』に計画が察知される事等、最初から判っていた事だ。 彼等が、此方の計画を邪魔する事もまた然り、予定に組み込まれている。 「キマイラのデータも恐らくは断片的にしろ入手していた筈だ。 其の上で、事前の準備を最低限に抑え病院を守る事を優先するとは」 自分達が万全の準備を整えない事で陥るかも知れない危機と。 病院内の何の罪も無い人間達が陥るかも知れない危機。 「天秤は、常に運命の二択を迫っているのだ」 男の首元の天秤が、揺れる。 「では、私は天秤を完全に傾ける為にもう一人の少女へアプローチをかけるとしよう。 データ収集は君たちに任せる。六道の更なる研究、飛躍の為宜しく頼むよ」 天秤の男は其れだけ言い残すと、早々に其の場を後にする。 彼の向かう先は――黒翼の少女の元。 ● 夕陽に照らされる時村グループの有する病院。 其の駐車場前で強結界によって、最低限の人払いを茉莉が行う。 「此処は時村グループの病院ですから、揉み消すくらいはしてくれるでしょうがやはり人払いはしないに越した事はありませんからね」 此処に居るのは、其の殆どが病人。 そうそう、意思の強すぎる人も居ないだろうとリーゼロットが言う。 「六道のフィクサード達はあそこですね」 ミルが遠くのビルを指差してみせる。 視線の先。 ビルの屋上には、明らかに此方を監視するような数人の人影。 「高みの見物、結構な事です」 今は無視しましょうと言うミュゼーヌに仲間達が頷いた。 「どうやら、藪医者も現れたようですしね」 螢衣が見据えた先、其処に其れは居た。 ほんの僅かだけ自分達に遅れて駐車場へ現れた其れは異形のエリューション。 医療関係者を彷彿とさせる薄汚れた白衣。 右腕は毒々しい溶液が詰まった注射器と化しており、其の先端は蠍の尾針を思わせる。 そして何より歪なのが首から上だ。 其処にあるべき人の頭部は存在せず、代わりに蠍自体が乗っかった様に融合している。 彼こそ、六道の実験によって産み出されし狂気の産物。 人工エリューション・キマイラ――スコルピオ。 「本当にサソリ人間の様ですね」 其の容姿に、自分の想像は正しかったらしいと思いながら芙蓉が言った。 「やはり迅速に駆けつけたのは正解でした」 後少し、ほんの少しでも自分達の準備を優先し到着が遅れていれば、 先に此処に現れていたのは自分達ではなくスコルピオだったのだろうとシエルは思う。 「それじゃあ」 奇蹟を願う姉妹の為に、足掻きますかとリベリスタ達が次々に武器を手に取り、陣形を整える。 スコルピオを此処から先へ進ませる訳には行かない。 今も此処で眠り続ける妹が目覚める日を待ち続ける姉の為にも。 「唯でさえ準備が万全じゃないんだ。此れ以上問答をしている余裕はない」 スコルピオをブロックするように前に出た蓮がそのまま、流水を思わせる緩やかな動きと共に構えを取る。 問答をするつもりが無いのはスコルピオ側にとっても同じなのか。 蠍の瞳がぐるりぐるりとリベリスタ達を見回や否や。 「手術開始、手術開始!」 機械の様に同じ言葉を繰り返しながら、スコルピオが両手を空に掲げる。 掲げられた両手の先がまるで満天の星空の様に光り輝き、虚空から数千の刃――メスが産み出される。 スコルピオが号令をかける様に注射器と化した右腕をリベリスタ達に向け、振り下ろす。 其れが合図となり降り注ぐ豪雨の様に、数千の刃全てが射程内に居たシエルとミルを除く残り六人のリベリスタ達に、等しく降り注いでゆく。 神秘の力で再現されたそのメスは本来医療で使われるメス同様に触れたもの全てを切り裂き、致命的な傷をつけながら圧倒的な力を見せつける。 「たった一人で攻めてくるだけの力量はあるようですね……ですが」 だからと言って、退く訳には行かないとリーゼロットが集中力を高めていく。 極限の集中力によって高められた其の動体視力は眼前の光景をコマ送りにする程。 「ええ、圧倒的ですけど、負ける訳には行きませんから」 続く芙蓉が其の指揮能力を以って自身の持つ防御動作を瞬時に仲間達へ共有していく。 其の力は、一度は圧倒された仲間達の防御能力を静かに、しかし確実に高めて行くのだ。 「では、攻撃と参りましょう……! 我が符より、一つ出て抉れ鴉」 愛用のマジックガントレット『アメノコヤネ』に符を構え、螢衣が言霊を紡ぐ。 そうして放たれた符が鴉の姿へと変わり、スコルピオへと襲いかかって行く。 が、そうして飛来した鴉をスコルピオは白衣を翻しながら、素早い動きで躱していく。 どうやらフォーチュナの言っていた通りに回避性能は高いらしい。 「攻撃だけではなく、防御も優秀……これがキマイラ」 蠍風情と侮る事は出来ないと痛感したミュゼーヌが前に出ながら、シューターとしての力を高めていく。 準備に掛かる時間は惜しい、されど闇雲に撃って当てられるような相手ではないのだ。 「ミルさん、お願いします」 此処は、ひとまず待機して態勢を整えなくてはならないと判断した茉莉がミルに声をかける。 「解ってる、任せて」 茉莉の声に応えるように、ミルがウィザーズロッドを構える。 ブレイクフィアー。 ミルの身体から放たれた光は邪気を退け仲間を危機から救い出す神々しさを持つ光。 周囲を覆い尽くす其の光に、眩しさを感じたのかスコルピオが思わず目を右腕で覆い隠す。 ミルの力が、仲間達を圧倒していた先程のメスの後遺症を瞬く間に消し去っていく。 決して塞がらず流れ出ていた血が止まり、リベリスタ達の身体が思うままに動く様になる。 「病める人に寄り添い、共に歩むが医道なのに……どうして?」 スコルピオの技や見た目は、医療関係者を彷彿とさせるものだ。 とすれば、何故彼はこの様な道に至ってしまったのかとシエルは思う。 だが其れは考えたとて仕方のない事だ。 そう、今自分がすべき事は。 「魔力の円環と錬気……我が身全ての力もて幾度でも癒しましょう」 シエルが魔術書『山海経-写本-』を手に、聖神の息吹によって今度は仲間達の傷を癒していく。 高位存在の力を借りた其の息吹は仲間達の傷を等しく癒し、完全ではないものの態勢を整え直して行く。 「先程まで圧倒されていた気分だったのが嘘のようですね」 軽くなり、思うように動く身体を確認した茉莉が自らを中心に幾つもの魔方陣を展開する。 展開された魔方陣は其々が互いに作用しあい、茉莉の中に眠る魔力を爆発的に高めていく。 「さて、このいい流れを維持したいね」 蓮が南無妙法連華経と刻まれた愛用の棍『金剛杖』をスコルピオへと向ける。 そして其れをスコルピオが回避行動を取るよりも一歩速く凍て付く冷気と共に、正確に打ち込んでいく。 「効いただろう?」 蓮の言葉と共に、打ち込まれた箇所がパキパキと凍結していく。 其の衝撃に、スコルピオが僅かに怯む。 が、流石はキマイラと言った所か。 直ぐに身体を起こし蓮に対し、返す刃で躱す暇すら与えずに右腕の注射針を二度、続けて突き刺す。 先端の毒針を介し注射器の中に蓄えられた溶液が、見る見る内に蓮の身体の中へ浸透していく。 まるで全身を蠍が這い回る様な気持ち悪い感覚と共に、蓮を激しい痛みが襲う。 痛みに顔を歪め、思わず片膝をつき武器が震える手から零れ落ちる。 ミルやシエルの手で癒されていたのが幸いか、もしも其れが無ければそのまま倒れていた程の攻撃。 「絶対に退かない、退けないんだ」 死を齎す程の猛毒によって麻痺した身体のまま。 其れでも言葉だけは決して負けない様に蓮が言葉を振り絞る。 「その腕、へし折ってやりましょう」 消音を施した『Garmfang』のスコープを覗きながらリーゼロットが言う。 狙うは危険極まりない毒針を有する右腕の注射器。 「アークの敵を狩り、アークに利益を」 放たれた杭の弾丸が、まるで獲物を狩る猟犬の如く。 スコープによって拡大された毒針を正確に撃ち抜き、弾き飛ばした。 「!?」 弾け飛んだ自身の毒針を呆けた様にスコルピオが見つめる。 やがて状況を理解したのか、激昂しリーゼロットを激しく睨みつけた。 「余所見をしている暇なんて与えませんよ」 リーゼロットに気を取られたスコルピオの其の一瞬の隙をついて。 其の視野を極限まで高めた芙蓉が愛用の斬馬刀――臥龍桜花「宵霞」を振るう。 意外と軽いのか、其の体躯に見合わぬ勢いで半透明の刃から放たれた真空の刃がスコルピオの身体を引き裂いた。 致命傷には大凡至らないものの不意をついた一撃は確実にスコルピオにダメージを与えていく。 「先程は躱されましたが、今度はどうでしょう」 螢衣が先程同様に鴉を生み出し放つ。 二度同じ轍を踏む事は無い様に。 放たれた鴉が今度は躱される事なくスコルピオに襲いかかり、怒りを誘発する。 「怒りで我を忘れた蠍風情が……!」 好機と見たミュゼーヌが、『リボルバーマスケット』を真上に放り投げると、其のまま機械の足で跳躍する。 魔落の鉄槌。 大上段から放たれた神聖な力を込めた踵落としがスコルピオの頭部に炸裂し、スコルピオが衝撃に呻き苦しむ。 「そのまま地べたを這いつくばりなさい、お似合いよ」 落ちてきたマスケットをキャッチしたミュゼーヌがスコルピオに吐き捨てる。 更に、続く茉莉がそのまま畳み掛ける様に立て続けに異なる力を秘めた四色の魔光を放つもやられっ放しとは流石に行かないのかスコルピオが其の全てを躱しきる。 「流石にこのまま、終わらせてはくれませんか」 集中力を高める必要がありそうですね、と茉莉が悔しげに呟いた。 「でも、このまま行けばきっと勝てます」 ミルが麻痺や死毒に苦しむ蓮を支援するべく再び光を放つ。 「沙奈様をお渡しする訳には参りませんから」 更に、シエルもまた同様に詠唱によって傷を癒していく。 「流石にちょっとやばかったかも、でもこれでまた動ける」 治癒を受けた蓮が本当の戦いはこれからと立ち上がり、武器を構え直す。 ● 右腕の注射針をもがれ、怒りに震えるスコルピオが吠える。 先端が折れた注射器を無理矢理に自分に突き刺し、毒を身体に取り込んでいく。 取り込んだ先から血管が膨張し、身体が一回り大きくなると同時。 不釣り合いな程に太く、雄々しい蠍の尾が新たに背中から姿を現した。 其の先端にあるのは毒針ではなく生気を失った人間の男性の顔。 恐らくは、蠍と融合した人間の末路だろうか。 蠍の眼が赤く血走りながら明滅し始め、本物の蠍の様に四肢を地面につける。 ドーピングによって、最終形態とでも呼ぶべき姿となったスコルピオ。 怒り狂う此れが院内へ侵入してしまえば、大惨事は免れないだろう。 「リーゼさん、螢衣さん、畳み掛けるわ!」 確実に此処で倒さなければならないとミュゼーヌが号令を掛ける。 「出来るなら直視したくない姿ですが」 リーゼロットとミュゼーヌが魔力を付与した弾丸を息を合わせ、スコルピオに向けて放つ。 しかし、両手を含む四肢の全てを脚とし機動力を増したからか其の体躯からは想像もつかない程の速度を以ってスコルピオが攻撃を躱す。 攻撃を躱し切り、スコルピオが尾を振り上げようとした其の時。 待っていたと言わんばかりに、螢衣が不吉の影を以ってスコルピオの身体を捉え覆い尽くしていく。 「あなたの道は計都星と羅喉星の陰に閉ざされています。待つのは破滅だけです」 影が晴れると同時に、スコルピオの身体がまるで時が巻き戻るかの様に縮んで行く。 自分の身に起こった事が理解出来ないと言わんばかりに吠え、猛り狂う。 「戸惑ってる暇なんてあるかな?」 「貴方の切り札は、もう使わせません」 続く蓮の金剛杖による魔氷の一撃が、芙蓉の真空刃が、スコルピオの身体にダメージを与えていく。 次々と放たれるリベリスタ達の怒涛の攻撃に、スコルピオの身体が大きく揺らめいた。 そんなスコルピオにトドメを刺すべく。 ミルが魔方陣を展開し、魔力で産みだした矢を放つ。 更に集中力を高めた茉莉もまた、今度は外さないと魔曲四重奏を放っていく。 魔法の矢に加え、異なる力を持つ四条の光が次々と、満身創痍のスコルピオへと直撃し。 とうとう狂気のエリューション・スコルピオは其の場に崩れ落ち絶命したのだった。 「さて、指紋でも……何ッ!?」 キマイラを産みだした黒幕に近づく為、蓮が既に息絶えたスコルピオに近づこうとした其の瞬間。 まるで硫酸を浴びたかの様にドロリと白衣を含むスコルピオの身体が蕩け、蒸発していく。 「回収する事は無理、という事ですね……ともかく此方は上手く行きました。連絡を」 シエルが直様、別の場所で任務についている仲間にAFで自分達の戦いが終わった事を伝える。 「後は、向こうが無事終わるまで沙奈さんの護衛ですね」 「ええ、いつかお二人が揃ってまた笑える日の為にも」 芙蓉の言葉に仲間達が強く頷き、病院の中へと急ぎ入っていく。 運命の天秤は、リベリスタ達にとっていい方向へと傾き始めていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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