● おかしい。 僕の居た場所では許されていた事なのに此処では駄目ってそんな事って無い。それじゃあ僕のポリシーが、僕のアイデンティティーが、僕の証明が、夢が、希望が、無い。 ……まるで狂人を見る様な目も気に入らない。ならば正してやろう。 溜息が出る。むしろこの吐息は淡い期待と、楽しみの衝動。これから無知を弄って犬を作り上げる楽しみが。 五指は撫でる。震え、脅える男の上から下を舐めあげるように。 狂ってしまえば楽であろう。加速した少年のお遊びは、男を引き返せない道へと誘い、縛り付け、膨らんだ欲情に漆黒解放がリミットオフ。(全年齢) やっばーヤり過ぎちゃったかもしれない。 見かけ倒しの外見なんて役に立たないさ、僕の前では全ての♂が勇者に成るんだ。 あらゆる手段、あらゆる技法を使って、僕は僕の存在意義を示す。そのためなら悪に成る事だって構いやしない。素の自身で勝負ができる。 さあ、立ち上がれ、♂達。 え?僕は何かしないのかって?煩いよ、溜めこんだ欲望をいつ使うかだなんて僕が決める。 僕は誰の指図も受けない。僕は僕の命令だけに忠実。僕だけの絶対王政。 「この世界は泣いている。そして僕に言うんだ。もっとこの概念を築けと――!!!」 いや、言ってない。 最近、草食系男子が多い世の中なんだとか。 そんなボトムに一人の救世主が現れた。雄々しく、荒々しく、嵐のような革命を起こしに。 おそらくこの文をここまで見た皆は、一部の驚異的信者を除いて、リベリスタもフィクサードもノーフェイスだって同じ事を思ったと思う。それを以下に書いておいた。良かったら見ておいてくれ。 ――全力で、帰ってくれ。 な、そうだろう? ● 「一言で言えば、意識の高いホモで、ドSで、ショタです」 「何処から突っ込めば良いんだ」 BNEは全年齢です。 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は超元気だ。目のハイライト、いつも薄いはずが今日に限っては目の中に星が沢山見える。小宇宙の完成だ。はっきり言って依頼のおかげで。 「今回の相手はアザーバイドです。上位世界の王族の様でして、そのせいか自尊心がかなり高いです。勿論、こちらの世界のフェイトを得ていないので、存在しているだけで影響が出ているので……」 その影響とは? 集まったリベリスタが力いっぱい唾を飲み込んだ。 「周囲のE能力者で無い男性の恋愛対象を男性に変えてしまうのです……!!」 そりゃ大変だ。 「なので、送還か討伐をメインにお願いします。戦力はフェーズ2前後ですので、倒せない事はありませんが、出会っていきなり戦闘に入る程好戦的ではありません。 送還させる場合ですが、ボトムをそういう色に変えようとしているので、この世界に自分が必要で無いと思えば帰ってくれると思いますよ。 まあ、もうハッキリと言いますが、彼の目の前でそういう事するとか、語るとか、いっそ彼の犠牲になるとか、ね? そういう事すれば簡単ですよ。 もし戦闘して此方の世界のイメージが悪くなって、次は数で押し寄せてくるとか、帰ってこない王族を心配してまた新たなアザーバイドが来るとか、考えたくないでしょう……?」 方法はお任せします。この言葉を言いながら、杏里は男性陣をチラチラ見ていた。 「アークは正義の味方ですが、アザーバイドさんにとっては悪になるのですね……。 この世界をホモから救うために、みなさん、ファイトですよーっ!!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月11日(金)22:49 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●始まりは突然に 「はぁ」 何回ついた事か、『Average』阿倍・零児(BNE003332)はため息が止まらない。 葉を隠すなら、山だと言う。そうすればどの葉がそれか解らなくなるから。 「なんで皆平気そうなの!!?」 零児は苦し紛れに普通を主張するが、今こそ山の落ち葉に紛れ込んだ魚状態。右見て左見ても『そんな話』が行き交う。 そりゃ、前にも隣に居る『女好き』李 腕鍛(BNE002775)と魅惑の刹那をした事はあったものの。 「う、うわ、うわああ!!」 「大丈夫でござるか!? 零児殿ー!? まだ傷は浅いでござる!」 もう時既に遅しなの。 それからどうやって歩いてきたかは覚えてないが、突然の現場です。 見た目こそ王族の美少年、ただし全力の異種族。彼の目が、じろりと此方を向いた。 「ん? 君達何かな? そんな物欲しそうな目を向けられたら僕……あ、すごっ、身体が暑くなってきた」 ああ。 この時の男性陣。全員揃って『こいつは駄目だ』と悟った。 くるり。『黄泉比良坂』逢坂 黄泉路(BNE003449)が右回りに半回転。顔色を悪くしながら、帰ると足を出した瞬間に『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)がそれをブロック。 「どこ行くのかな?逢坂さん」 「だって」 「駄目だよ」 「いや、その……今日は筋肉が風邪気味なんだ」 「駄目。悲しいけどこれ、ちゃんとした世界を護るための依頼なのよね。解るよね?」 「わ……わかってい……る」 「よし、良い子だね」 黄泉路から見える壱也が、今日は越えられない壁の様な大きな存在に見えた。 再び半回転して、王子を見る黄泉路。抗いたい、この運命に抗いたい。 がしっと、黄泉路は『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)の肩を掴む。 「覚えてろよ」 「はは、なんの事だか解らないよ」 両手の手のひらを空に向けて一言返すロアンだが、その手のひらには手汗がべっとり。 ただ一人、余裕の表情で前に出た男は、『ナルシス天使』平等 愛(BNE003951)だ。翼を広げ、王子のすぐ傍までひとっ跳びすれば自己紹介。 「初めまして王子様。超絶的可愛さを、なんといるだけで視界に入れた人に提供する、若干どえむでショタの愛だよ」 「愛? それは名前なのか?」 「名前だよ」 「なるほど……確かに、貴様、可愛いな!」 「でっしょー?僕こそ、この銀河で一番可愛いんだからねっ!!」 「だが」 ぱちん。 愛の頬に、張り手がひとつ。 打った王子の目が細まり、雰囲気がきつくなっていく。 突然の出来事に、愛が勢いのままに体勢を崩して尻餅をついた。 どうして殴られた。まさかこのまま交戦――? 「僕よりも可愛い貴様が罪だ、今ので赦してやる」 「……ッ!」 胸の奥が苦しい。高まってきた何かが、溢れそうで、必死にそれを抑えながら。 「ボクを、もっと殴って!!」 何かのスイッチが入ったのか、それともアザーバイド――マリクのルールのせいか。それは誰にも解らないが、愛はもうアブノーマルだった。全くマナがコントロールされていない。 「駄目。貴様には鞭の味で十分だよ。無知だけに」 「それでもいいよ! 何回でも何十回でも、さあ!!」 撓った鞭が迸る。だがそれは調教(あい)と言う名の暴力。実に、大天使の吐息の無駄遣いである。 「愛はもうダメだ、食われちまった……」 『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)は顔を伏せた。 「言うな……」 『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933)でさえ、心が痛んだ。 だがこれも仕事。アークには借りがあるから、アークにその借りを返してきてほしいと言った若頭の声が過る。大丈夫か、その若頭は、用心棒がこんな事されてるって解ったらアークに殴り込みに来ないか。 その横で「くくく」と笑う小さな声。 (っしゃぁ! このまま男達でくっついてしまえ……そしたら残った女の子はこの私が頂く……くっふふふふ) 『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は黒い思案がちらついていた。そうか、そういう女の子のリサイクル作用もあったか、これは見逃していた。 「さぁ、男の子よ、今こそ目覚めるべきだ!! そっちの世界に!!」 (あたしはあたしの欲望のために、全力で男の子達をくっつけよう!!) きちんと大事な部分は胸の内に仕舞って、レイチェルは愛しの彼女を思い出す。その愛しの彼女の兄である彼、ロアンが遠慮気味に手を上げながら。 「僕……最近恋人が」 「NTRれなさいよ!!」 「鬼だ……!!」 お構いなしにレイチェルは仁王立ち、宣言する。 さぁ。 これより、アザーバイド送還作戦を開始する。 作戦コードは――『ロード 第801章』!! ちょっと違うジャンルの文字が見えたのは気にする所じゃない。はず。 (あっ、でもNTRってあたしにも言えるかもしれない……) 少しだけ、心の奥がずきっと痛む。けれど、NTRために邪魔な男子共を……。 「そうよ! 今こそ、この世界の愛に光あれ!!」 「レイチェルが壊れたか」 黄泉路が頭を抱えた。 ●罠にかかったナイトクリーク 「いやー、この世界はですね、見ての通りホモがいっぱいなんですよ~」 「なんだって……それは僕が必要無いという事なの!? 確かめたい、この目で!!」 意地でも帰る気が無いのか。 『┌(┌^o^)┐の同類』セレア・アレイン(BNE003170)はそれでも良いと微笑しながら、王子に話かける。 「おかげで女のあたしなんて相手が居なくて困っちゃってるんです。もう百合に走ろうかと」 「女?」 首をかしげたマリクに壱也が近づく。 「そう、女の子。わたしみたいに身体の作りが違う生命も居るんだよ」 そして。 「わたし達は、王子を応援する人種なんだよ!!」 「ほう!」 拳を握って壱也は力説する。今マリクにとって、全国の女子の第一印象が大きく傾いたかもしれないが気にしてはいけない。 ごめんね全国の女の子。でも好きだよね、そういうの、ね? 「女子はホモが大好きだからね、王子の味方だよ!! セレアちゃんも、わたしも!!」 「まあそういう事なんです。見ての通り、男性同士愛するのが普通なんです」 王子の背後に雷が落ちた……感じで衝撃は走った。 この世界を救う気でいたが、もう既に救われていただなんて、こんなこと。 「僕は自意識過剰だったのか……この世界の♂達はもう……こんな、オンナノコという生物まで備えていて」 「ええ、そうですね。ほら、アチラを見てください」 セレアが指を指した先――既にそういう『行為』は、最高潮を迎えようとしていた。 「こ……この世界は、一体」 「ん、あっ……ちょっと痛いけど……っ」 マリクに、ぐっと握られた愛のシークレット(全年齢)。 自らの力が無くとも、この世界は大丈夫だと言うのか。それは、それは――。 レイチェルは願った。 過酷な戦闘の中。傷ついた仲間を癒すのだと、絶対に助けるのだと、ひたむきに祈る勢いで。 (男子がルールの加護を受けますように男子がルールの加護を受けますように男子がルールの加護を受けますように!) 願う姿はホーリーメイガスの鏡とも言えよう。 だが何故だろう、黒い、凄く黒いよ。 神様っていうのは気まぐれだが、ここぞとばかりにレイチェルに手を差し伸べた。 「……ねえ」 「っ!?」 ロアンが黄泉路を壁へ追い詰め始める。これは事前にあった打ち合わせ通り。だが。 「おい、待て、ロアン!?」 だがしかしだ、ロアンの目が怖い。これはあれだ、本気の目だ。 黄泉路は悟る。これが僕様ルールってやつなのか。 「ロアン、何のつもりだ」 取りあえず落ち着こう。冷静になって打ち合わせ通りの演技をすればいいんだ。 平静の奥で、黄泉路の心はパニック寸前。だって、彼は僕様ルールを回避し過ぎで、全くロアンに胸ドキしないもんで。 「うひょーーーー」 いち早く察知した壱也がスライディングしながら良いポジションを陣取り、カメラを向ける。 「いいよー、逢坂さんのその焦った表情、演技だとしても最高だね!!」 「演技じゃ、ないんだが!!?」 「それはもっと最高だね!!!」 壱也は地面に寝そべって下からアングル確保。抑えきれない衝動から足をバタつかせ、片手でコンクリを叩き割りながらカメラを回し続ける。 「カメラを撮るんじゃ「それよりさ、君は技に興味があるんだって?」 黄泉路の、壱也へ向いていた目線が、強制的にロアンに向けられた。顎を持ち上げられ、吐息が混じり合う程までに近い二人の距離。 「ん」と声を出した黄泉路に、ロアンはイった眼つきで妖しく微笑んだ。 更に、ロアンは『君に興味があるのだ』と、耳元で囁く。その一言一言の吐息が、黄泉路の耳を撫でていく。僕様ルールが無いままに、耐え続ける彼にロアンは色気を感じ、その存在が、儚くて、だからこそ愛おしくて――。 「ヤボなEXなんかより、僕としてみない? 恋のラーニングを」 ロアンの唇が近づく。 黄泉路は全身に鳥肌を立たせながら、覚悟した。 逃げ場は無い。ロアンを抜けても、羽柴壱也という最強の壁が残っている。無理だ。腐り印の女子はこういう時、セルフでリミッターの外れた力を使ってくるのだから。 だから、この唇さえ受け入れれば終わるのだと。 「おい、待てよ」 しかし、隆明の鍛え上げられた腕がロアンの襟元を掴んで、黄泉路から離す。支えを失くしたかのようにその場に座り込んだ黄泉路は隆明を見上げた。 「すまないな、た、助かった……やはり男同士でキスなど」 「我慢できねぇんだ、受け止めてくれ俺のレッドベルセルクッ!」 「あんたも駄目になったか」 隆明がマスクに手をかけた。 「欲張りだね……でも、君の気持ちに気付いてあげられなくてごめんね」 ロアンは受け入れる。彼の大きく膨れ上がったレッドルセルクを。彼がマスクを外す時とは――愛を伝えるその行いをするときのみ。 「はい、楽しくなってきました!!」 壱也はその状況を克明にカメラに刻み込むと同時にガッツポーズ。 「あそこの2人は実は幼馴染みで、小さい頃から仲が良かったんですよ。 お互いを恋愛対象として認識したのはつい最近ですが、急速に体の関係を重ねて……」 レッドベルセルクが火をふいている最中、セレアは真摯に王子に解説をした。 ある事無い事言うが、夢の後先なのでどんな感じでも許してやってほしい。 セレアはやりきった顔で呟く。 「大丈夫よ、リベリスタ達。これは覚めない方の夢だけど」 ちゃんとフェイト使用って言ってから臨む事。 ハイライトの薄い目で黄泉路は光景を見守った。横でテンション高く足をばたつかせる壱也の頭を一回ほど叩きつつ。 だが、何故だ。 段々心の奥に、出してはいけないようなモノが蠢いていて――これはまさか、嫉妬というものか? 見れば。 「僕様ルールにかかりますよーーーに!!」 「レ……レイチェルウィンスノォォオオオフィィールドォォオオ!!?」 祈られていた。それはもう心のこもった祈りを。 瞬時、ロアンと隆明の下方から真っ黒の闇が溢れる。 黄泉路の闇が僕様ルールに誘われ、いや、レイチェルの気迫に神の手が頷き、ルールが黄泉路に適用された。 手を引かれ、押し倒されるロアン。突然の出来事に、下になっているロアンは目をぱちくり。温かい手のひらの感覚が伝う、頬。 「ロアンなら、俺の得意な技はわかるだろ?」 「ペイン……キラー」 受けた心の負荷を力に変えて、一気に放出するそれ。 まさかとは思うが、それを味方からこの身に受けるとはロアンも思いはしなかっただろう。 「僕は攻める方が得意なんだ……抵抗させてもらうよ」 手を出し、黄泉路の肩を押せども、すぐに彼の手がその手首を掴んで地面に戻される。 「あんたが悪いんだぜ? 俺の心の闇を解放したんだからな。暗黒騎士の逆鱗は、呪いの様に濃厚で、しつこいんだ」 「これが深淵騎士の力だっていうのか……受け入れるよ、君の奥の闇を僕にも感じさせてくれ」 その時、椿の花が落ちた。 そしてその頃、理性が戻った隆明は地面に伏せって自ら戦闘不能になっていた。 「激しい愛だ……我が力が無くとも、どうすればこんな世界に自力で成ったというんだ」 「あ、やだ、浮気は厳禁なんだから!」 茫然とするマリクを愛は優しく包む。今こそ彼の大錬気が極錬気に膨れ上がった。 ●覇界闘士の戯れ 「あの2人は職場の先輩後輩で、つい最近できたカップルですね。 ああ見えて、実は零児さん……あ、あの左側の方です……のほうが受けだったりするんですよ」 「ちょっと!! 僕は平均的な真ん中だよ!! ……ひっ!?」 反抗した零児にセレアの眼光が鋭いナイフの様に尖る。かのジャック・ザ・リッパーに睨まれたかのような恐怖が、有無を言わさない強制が零児には響く。 もはや女子は最強だ。勿論、セレアのその行為は王子には見えていない。 「ほら、これからあの二人……ぶっ」 「笑うなー!!?」 愉しい光景、これを逃がしてたまるかと。実に、瞬間記憶の無駄遣い……否、正しい使い方である。 (薄眼で見れば、やはり女の子でござる) 腕鍛が零児の頬に手を当てた。だがその手は震えている。何度目かの零児との戯れ。これが最後になる事を願って。 「腕鍛さん……僕を好きにして」 「気をしっかりするでござる!?」 零児はできあがっていた。 「なんだか凄くドキドキする。この溢れそうな感情……僕だけが持っていても不平等だよね。分け合って、バランス良くしないと」 彼の愛は止まらない。その小さな手が、腕鍛のよく鍛えられた胸をなぞった。 ぞわわ。背筋に電撃が走る腕鍛。ふと、目線に気が付きそちらへ顔を向けてみれば、壱也がサムズアップしながらカメラを回していた。 この時、あとであのカメラ、ぶっこわすでござると心に決めた。 唾を思い切り強く飲み込む。覚悟はしてきたつもりだ。 それに彼は同じマンションに住むお隣さん。こういう場面で親睦を深めておく事に異議は無いのは事実だ。 腕鍛の胸に顔を埋める彼。上から見れば、よく手入れのされた髪は女性の様であって。 (はっ、何故だかドキドキしてきたでござぁ) 腕鍛も駄目になってきた。 「零児殿……これまで一緒に修羅場を乗り越えて来た同志よ。ここまで来たら、全てを曝け出して見せてほしいでござる」 「腕鍛さん……迎え撃つよ、そのシークレットを」 体温を分け合う二人。 そして零児の髪を結んでいる紐を解く彼。 心臓の鼓動が早くなる。もしかすれば彼にその鼓動が伝わってしまうのでは無いかと思うかの如く。 だが。 「あ、ちょっと疲れた」 どうやらレイチェルが祈り疲れたか、その瞬間にぷっつんしたのは零児のルールの加護。 「ちょっと、待っ……え!?」 つまり零児の理性がカムバック。 「レイチェルさんもっと願っててよ!! 嫌だー!! 僕理性があるままでこんなぁぁー!!」 「いやもう、あたしの祈り、必要無いとこまでいったから平気よ」 「悪魔だ!!!」 熱い抱擁からは抜け出せない。段々と顔色が青くなっていく零児を置いて、腕鍛の心は業炎撃の様に燃え上がっていく。 「よそ見は、嫌でござる」 「ちょっ、違っ!?」 零児の目が「助けて!!」と愛の方へ向いたが。 「その面積の無い布の下が気になるな」 「此処から先は、高いよ? でも……王子様にならイイかも」 王子とラブラブしていて助けに来る所では無い状態だ。 撫でられるシークレット。迸る、熱いアガペー。 「ま、待って、まだ心の準備が……!!」 しかし彼は聞いてはくれない。迫る腕鍛、腕を掴まれて動けぬ零児。蘇るトラウマに脅え、戸惑い、恐れ――。 「う、うぎゃああアーッ!」 また椿の花が落ちた。 ●追撃のソードミラージュ 「……って感じで、この世界は大丈夫ってワケよ」 吹雪はマリクの顎を持ち上げた。 吹雪は特に僕様ルールに縛られている訳では無い。これぞセルフの彼の愛。流石探究者HUBUKI。 「触るな」 その手を叩き、拒絶したマリク。 よほどこの世界が愛に満ち溢れていて、自分の力が必要無かった事に驚いていたか。 それとも、このような世界があった事に自分の世界を重ねて嫉妬をしているのか。しかしこちらも――。 「おいおい。来て下さった王子を手ぶらで還す訳にもいかねーんだ……だから、見せてくれよ、な?」 「何故……っく、身体が反応してしまう、悔しい……っ」 吹雪のツインがストライクした瞬間だった。もはや王子の侵食はイクリプスされたと見ても良いのだろう。 実に、満足だ――愛しき世界よ、『また逢おう』。 Boys Netorare Eclipse. 愛と吹雪以外の男性が、店のシャッターに寄り掛って力無く座っている。その目はまるで、この世の終わりが見えたかのような。 燃え尽きたよ、そりゃもう真っ白だよね。 「いっやー!! 超愉しかったね! ね?セレアちゃん!」 「ぶっ……ぶふふふっ」 女子は元気である。さあ帰ろう!と帰りの足を待っている最中。 「……壱也殿」 「ん? どうしたのかな?」 「カメラを……壊させてもらうでござる!!!!」 豪速で飛ぶ、腕鍛の斬風脚。それを大剣を振り上げ、切り刻んで回避した壱也は即座にカメラをAFへと仕舞う。 「駄目っ!これは、これだけは!!」 「殺してでも奪い取るでござああああああ!!!!」 男女の戦争は暫く、続くらしい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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