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貴方のための専用家族


 此処は何処って思ったその時から。きっと孤独は始まっていた。
 泣いても、泣いても、母親は来てくれない。
 叫んでも、叫んでも、父親は見えない。
 喚いても、喚いても、兄弟姉妹は来てくれない。

 寂しいなって思ったその時から。きっと状況を悟っていた。
 嗚呼、このまま一生独りなんだって。
 もう、楽しい会話も、できないんだって。
 だからこの場で何もせず、何も見ず、何も聞かずに過ごそう。

 と思っていたら。
 なんだろう。これは。
 そう感じて長い間そこにいて、それを見ていた。
 けれど、おや?
 大きな荷物を抱えて、どこにいくんだい?

 それからまた、独りになった。

 いつかきっと。
 いつかきっと。
 あの温かさを、もう一度だけこの眼に。


「皆さんこんにちは。今回の案件は杏里も同行しようかと!」
 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)の眼には珍しく光が灯る。
 胸の前で両手をぎゅっと握りしめながら、リベリスタに視線を向けていた。
 けれど、すぐにハッと気づいて依頼の内容を思い出したかのように話し始める。
「今回は、アザーバイドなのですが……」
 お相手は上位世界から来たアザーバイド。
 けれど、形は無く、見ることもできない。ただ、そこに居ると感じることはできるらしい。
「それが、とある空き家で留まっているのです。この家の人達はお引越ししてしまったのですね。家の中は綺麗に何もありません。けれど隅っこに居るのです。
 もちろんフェイトは得ていないので、此方の世界に居てもらっては正直、困ります」
 つまりは、そのアザーバイドを帰還させるのが依頼だ。

「アザーバイドが留まっている理由は、『家族』なのです」
 此方の世界に来てしまったものの、留まっている家に元々住んでいた家族の団欒を見たことで、それが脳裏から離れなくなってしまったらしい。
 もう一度だけで良いから、それを見たい。
 その思いが、元の世界へと返らせない大きな壁になっているようだ。
「だから、家族、やりましょう!!
 皆さんで集まって、取り急ぎですが、家族ごっこするんです!
 一日でいいんです! お願いします……!! 大事なのは血では無く、家族の温かさ醸し出すことです!」
 と言う訳で、急遽一家団欒ごっこ。
「杏里は……猫役です!」
 うん、それはちょっと違うかな。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月17日(木)23:46
 夕影です
 家族ごっこです。夕影は犬役やりますね。わん!
 ……以下詳細です

●成功条件:アザーバイドの帰還

●アザーバイド:ホームシック
・不可視、無味無臭に形も無い、居るだけのアザーバイド
 写真とか撮ると写るかもしれない、夏とか似合いそうな上位世界の住人です
 家の隅っこに居ます
 その時の感情で、物を動かす能力があります
 帰る道は知っているようです

●やること
・参加された8人+杏里の9人で家族ごっこをしてもらいます
 拘束時間はアザーバイドが満足して帰るまで
 配役はお任せします。母子家庭、嫁姑問題、双子多数、男所帯からホモォ…までどんとこい!
 家は空き家ですが、一般的な家具家電食料等はアークが設置しておきます

●杏里
・娘設定で、ある程度考えて動きます

それではよろしくお願いします!
参加NPC
牧野 杏里 (nBNE000211)
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
坂本 ミカサ(BNE000314)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
デュランダル
卜部 冬路(BNE000992)
インヤンマスター
今川・宗助(BNE001708)
ソードミラージュ
斑鳩・洋子(BNE001987)
デュランダル
ジース・ホワイト(BNE002417)
ダークナイト
一ノ瀬 すばる(BNE003641)
ダークナイト
一ノ瀬 あきら(BNE003715)

●おかえりなさいませー
 時は、夕方。
 空は綺麗な赤色に染まる、そんな頃。部屋の片隅でそれは居た。ただ居た。
 しーん。
 そんな言葉がとても似合う。何も無くて、誰もいなくて。
 でも、ある日突然訪れたんだ、待ちに待った家族ってやつが。

 気づけば部屋の中は綺麗になっていた。
 生活している。誰かが住んでいる。
 そう思わずにはいられない程に、家は物で溢れていた。ついでに隣にはクマの人形。
 これって、もしかして。

 がちゃん!! ばたばたばたばた!!

「うおお! ただいまー!」
「ただいまー!!!」
 おいこら、玄関壊れる。扉がミシミシッて鳴いてる。

「よっしゃーあ!! 俺の方が先に帰ってたな!! 俺の勝ち!!!」
 『四つ子、その一。『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417)』
「いーやっ!! 俺の腕が先に玄関にインしてたやん!? 見てなかったん?!」
 『四つ子、その二。一ノ瀬 あきら(BNE003715)』
「おい待てよ!! じゃあ、俺のが先にただいまって帰りの宣言したから!!」
「なんやと!? そんなの駄目やで、卑怯やー!!」
 勢いよく開いた扉からはそんな二人が靴を脱ぎ捨て、言い合いながらリビングへと向かった。
 どっちが先に帰るのか。勝敗はさておき、その後ろから。
「玄関は綺麗にしないと、運気が入って来ないと聞いたことがあった気がしまして……」
 『四つ子、その三。『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)が二人の靴を綺麗に揃えながら入ってきた。
「ほんまにうるさいなー、ちょっとは静かに帰れって、そう思うやろ? なあ、杏里ぃー?」
 『四つ子、その四。一ノ瀬 すばる(BNE003641)』
 がちゃん。
 すばるが玄関の鍵を閉めた。同時に大きなため息を口から漏らしながら杏里を見る。
 杏里はひたすら、困った笑顔をして精一杯応えていた。

 ただいま、なんて、久しぶりに聞いたかもしれない。
 なんだか、嬉しいな、戻ってきたのは、知ってる人じゃないけど……。
 お、お、おかえり……なんてね。

「おかえり、じゃのぅ」
 『祖母。『雪暮れ兎』卜部 冬路(BNE000992)』
 やさしいおかえりが四つ子を出迎えた。祖母って偉大。
 冬路の手前には和菓子やお菓子。それにお茶まで用意されていた。おばあちゃんの孫好きって可愛い。
「それにしても……妹はどうしたのじゃ? もう夕暮れ時も終わってしまうのじゃ」
「さーね、多分……ゲーセンやないかなぁ?」
 すばるがお菓子を口にポイッ。
 そして冬路が窓の外を見た。
 日が沈むのは案外早い。赤い夕日が見えていても、すぐ後ろに黒のグラデーションが着いてくる。
 既に空は黒い。月の存在感が増す、そんな頃合。

「……玄関の角、なんだかヒビが入っているようにも見えるね」
 『長男。『fib or grief』坂本 ミカサ(BNE000314)』
 仕事が終わって若干疲れた顔で、誰のせい? ってそんな目線を。
 無表情ながら殺気が篭る長男の瞳。それに見つめられたジースとあきらは顔を見合わせてから。お互いを指差し。
「あきらのせいだよ!!」
「ジースのせいだよ!!」
「……二人とも後でおしおきだね」
 ゴゴゴゴゴゴ。

 そんな時。
 パンッと手と手を勢いよくあわせた音が辺りに響いた。

「はいはいっ、遊びはそこまで! あざちゃんは気になるけれど、貴方達、駄目じゃないの!!」
 『母。『アイソレイティッド』斑鳩・洋子(BNE001987)。まさかの十九歳。まさかの十九歳』
 まさかの十九歳!!!!
 愛らしい顔をぷんぷんと怒った顔に見せて。それでも母の威厳は見えるから、逆らえない。
「とーくーに、すーちゃん!!」
「なん!?」
「お外から帰って手洗いうがいもせずに、つまみ食いなんて駄目でしょー!!
 あんたたち、早くやってきなさーい!!」
「「「「ごめんなさい!!!」」」」
 流石、四つ子を生みしこの母。おたま片手に、精一杯叫べば四つ子は洗面所へと駆け足。
「流石だね、母って」
 ミカサ、四つ子へと手を振りながら呟く。
「みーちゃんもですよー?」
 ゴゴゴゴゴゴ。
 ミカサは背中をこつんと、おたまで母アタックされた。
 本当は頭をコツンとしてやりたいとこだが、ミカサの背に洋子の手は届かない。
 息子よ、こんなに大きくなっちゃって。

●遅れてただいまー
「ただいま~。今日はよう売れたよ♪」
 『父。『たい焼き屋のおっちゃん』今川・宗助(BNE001708)』
 来たぞ。十九歳を嫁にしたおっちゃんが! おっと、ここでは年齢は関係なかった!
 さておき、父親が帰ってくれば子供達はおかえりーと元気よく言った。
 その言葉に押されながら、母、洋子が宗助の手前まで。
「おかえりなさいです、宗助。ご飯にします? お風呂にします?」
 それとも、わ、た、(強制終了)
「お風呂にしようかな……。ご飯は、皆そろってから食べようね」
「わかりましたっ」
 洋子は宗助の上着を丁寧に脱がし、ハンガーへかける。
 それを見ながら、宗助はリビングの中を見回した。祖母、妻、子供達……でも、一人足りなくて。
「まったく、しょうもない子だ」
 心配した声色で、そう呟いた。

 ジースと杏里は向かい合わせで座っている。
 お互い睨み合っているのは、顔では無く宿題で。特に杏里の方は、ひとつの所からペンが進まなくなっていた。
「教えようか?」
「えっ!? いや、いいんです、こういうのは自分でやらないとですよね!」
 ですよね!の最後の『ね!』で顔を上げた杏里。
 覗き込んでいたジースの顔と、杏里の顔が、お互いの息がかかるほどに近くて。光の薄い杏里の目の奥は、漆黒に淀んでいた。結ばれていない杏里の黒髪が、肩の上からテーブルの上へと落ちる。
 咄嗟に逆方向へ跳ねる二人。顔を真っ赤に染めたジー……待て、ここから先はラブコメだ。落ち着けジース。
「リア充めっリア充めっ」
 こら、あきらよ。追い討ちをかけるでない。
「ちっげええええからああああああ!!!」
 あきらを咄嗟に羽交い絞めにしたジースは、うわあああと叫んでいた。
 これはタワーオブバベルであっても会話不能だ。
「やらしいね」
 って、ミカサがぽつりと呟いた。それは火に油まいてついでに灯油を投げるようなもので。
「ちっがああああああう!!」
「じーすちゃん! ご近所迷惑でしょ!」
 母の追撃が、ジースを冷静にした。

 トントントントン。
 野菜を包丁でテンポよくカットしていく母、洋子。その隣で野菜を洗い終えて手を拭いていたすばるが、ふと窓の外を見た。
「あ、あたし洗濯物いれてくるわ。何か他に手伝うことあったらゆうてや」
「あらあら、ありがとうですよー」
「うむ、ついでに畳んでくれると助かるのじゃ」
 なんてできた子!
 洋子も冬路も歓心。
 わかったと、すばるはそう言うと洗濯物をテキパキと家内へと入れ始めた。
 それから洗濯物をたたみ始める。ふと、何か気配を感じる家の端っこを見た。
 やはりそこには誰もいなかった。けれど、すばるには、いや、家族全員感じていた。そこには確実に何かが居ると。
「夏も、手伝ってくれへん?」
 そう言って、すばるが気配へと話しかけた。
 反応は無かった。無かったけれど。それは聞こえなくて、見えなくて、感じなかっただけで。

 ――手伝っていいの?
 気配の中。夏と呼ばれたアザーバイドの鼓動は高まった。

「た……ただいま……」
 『末っ子。『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)』 
 そんなジースの声がピタリと止んだ。両手にプライズ。流石です、幼きゲーセン荒らしよ。末っ子が帰ってきたのだ。
 沢山の人形からふぃぎゅあから、タオルやらその他もろもろ……を勝ち取ってきたのは凄いことだが、これはこれ、それはそれ。
 既に外は真っ暗で。家の門限はあるのかは分からないが、子供としては相応しくない時間帯の帰宅だ。
 そんなことは分かっている糾華は立ちながら黙っている。この空気は重い。

「おかえりー」

 一番はじめに、すばるの声。
 それからぞくぞくとおかえりの声が響いた。
 何日ぶりか、いや、もしかしたら数ヶ月か、数年ぶりか。
「ただいま」
 息を吐くのと同じくらいに簡単に出た言葉。
 長い間聞いていなかった、たった四文字の言葉に糾華は心を落ち着かせた。
「おかえり」
「うるさいわ、ミカサ」
 だが、末っ子は長男には手厳しかった。

「ゲーセンで余りお金使わないから、良いのよ」
 気配のする場所に糾華は勝ち取ってきた人形を置いた。なんも変哲も無いただの人形。
 気配の横に座らせるように置き、これあげるわと言い残して背を向ける。

 これ、ぼくに?

 これで、一家が揃ったのかな?
 なんだろう、このあたたかさ、とても久しぶり。
 見ていたい。ずっと、ずっと。

「ぎゃああああああ!! ギブ!! ギウッ!?」
 ソファに座る長男、ミカサの場所を奪おうと突撃したあきらはカウンターを受けていた。
 ミカサの長い腕の中で、もだえる弟の首は段々と色が青くなっていく。
「外れる!? 外れる!?」
「次、侵略するなら外すからね? 持ってくからね?」
「俺、何持ってかれるんや!?」

●母って偉大
「はーい、みなさーん、ご飯ですよー」
 洋子の言葉に反応し、宿題していたり、くつろいでいたり、プロレスしていたりの子達が行動開始。
「働かざるもの、食うべからずです」
 そう言い、洋子はジースから順番にを指差す。
「じーすちゃん、お箸置いてくださいー」
「わかった!」
「みーちゃんは飲み物取ってきてください」
「お茶でいいかな?」
「あーちゃんは、小皿を取ってきてくださいー」
「多めに持ってこよか」
「すーちゃんは洗濯物ありがとう。座っていいよ」
「うんや、何かせーへんと落ち着かんでなぁ!」
「あんちゃんはテーブルを拭いてくださいー」
「はいっ」
「あざちゃんは、これ運んでください、持てる?」
「ええ、問題無いわ」
「お母さんは……お茶飲んでてください」
「うむうむ」
「宗助さんは……」
「うん?」
「ふふ、愛してますです」
「いやぁ、照れるねんでー」
 ラブコメ回収しました。

 そんなこんなな夕食準備。
 子供が臨機応変動いてくれるから、母があれから何を言う事もなく準備が整う。
 座る椅子は全部で九脚。と、思いきや、十脚。
 この家にはもう一人、家族がいるもの。
「なっちゃんも早く座りなさいー」
「食事は皆揃わないと駄目やんなぁ」
 洋子と宗助が部屋の隅を見ながら手招きをしていた。はたから見れば明らかに不審な行動だが。
 揺れ動き、招きに応じるがままに立ち上がったホームシック――夏は最後の席へと向かう。
 何も見えないというのに、椅子が一人でに後ろへ動いては、何かを乗せてから前へと動く。
 ぽっかり、人が一人分いるかのような空間ができ、でもそこにはまぎれも無く夏がいて。
「さ、皆、冷めないうちにいただこうか」
 宗助がそう言えば、響く次の言葉はいただきます。
「そうや、なあ、あざかちゃん」
「な、何よ」
「皆心配してしまう。何処にいるのは解っているけれど。
 遅くなるんなら、できれば連絡くらいはよこしたって?」
 それは父の、優しい気遣いで。糾華は一度だけこくりと頷いた。
「今日の骨付きマトンのカレーは、懇親のできなのです」
「うん、洋子さんの作る料理は美味しいね」
 ゴットタンを使わずとも、洋子の料理は美味しいだろう。最高の愛情が隠し味。
「はい、あーんですよ」
「照れるね……」
 幸せ者め。


「むむむ……また、また負けなのじゃ」
 冬路、目が死んでる。
 夕食も終わり、リビングでゲーム大会。参加していた祖母は、孫達には勝てなくて、ついため息をもらした。
「なぜじゃ、なぜ勝てぬのじゃ」
「次、勝てますよ……」
 ふと、杏里が冬路の頭をなでなで。着いている耳をさわさわ。
「撫でるなーっ!!?」
 鼻歌を奏でながら洋子は茶碗を洗っていた。その横で宗助は鯛焼きを焼く。
 二人、見事なほどに慣れた手つきで事をこなしていく。なんなんだ君たち。

「次は夏の番だぞっ! ほら」
 人生ゲーム。ボードの上をサイコロの数だけ進んで、ゴールを目指す。
 人生のゴールって? と考えるとちょっと怖いゲームのような気もするが、それは置いておき。
 渡されたサイコロは、気配の場所へ。
 ポルターガイストのように、というかそれ。サイコロが自動で動いて、目がはじき出される。
「お! なっちゃん二位ちゃう!?」
 あきらが駒を進めながら、目をキラキラさせて夏にそう言った。

 え? ぼく、勝ったの?

 その声は聞こえなかったものの、勝ったのは事実。
 満たされていく、心の穴。

「げ?! まさか俺が最下位!?」
「最下位は私なのじゃ」
 ジースは青い顔をしながらサイコロを杏里へと渡した。
 そして祖母よ、生きろ。
「もう!! あきらには勝ぁつ!!」
「なんやとおお! やってみろ!!」
 熱くなるジースとあきら。羽交い絞めまでにはいかないとしても。
「あっ」
 そこに杏里の声が響く。
「すばるさん、ゴールですね!」
「せやな! やっと勝てたわー!! 杏里も次でゴールできそうやな?」
 ジースとあきらと冬路を残して、着々とゴールは駒で溢れていく。
 え? 一位?
「いいから、早く次のダイスをふりなさいよ」
 椅子に座り、優雅に紅茶を片手に。
 糾華の一位以外有り得るとでも?

 そんな光景を見ながらミカサはため息。
 凄く体が痒いし、逃げたくなる。
「親は子供の幸せを思うものなの?」
 どれだけ捻くれていても。上手く情を受け止められない子供にでも。
 吐き出したのは疑問そのもの。
 しばらく鯛焼きを目の前に、新聞を見つめていた宗助。重い空気が二人を支配していた。けれど。
「愛してるんやから当然やよ」
 返ってきたのは、たった一つの理由。
「上手く受け止められへん言うけど、それは上手く受け止めたい思ってくれてる言う事やろ?
 その気持ちがお父ちゃんは嬉しいよ。
 例えミカサ君がお父ちゃんの事を忘れてもお父ちゃんはミカサ君の幸せを願ってるよ」
 宗助が話している間、ミカサはじっと動かなかった。手元にある飲み物の水面をじーっと見つめていた。
 ミカサには父の応えが100%理解できたかというと、もしかしたら30%も理解していないかもしれない。
 けれど、こういう時、なんて言うかは知っていて。
「ありがとう、父さん」
「ん」
 宗助はにっこり笑って見ていてくれた。


 時は越えて、就寝時間。
 風呂で若干一緒に入るだとか覗くだとかで揉め事はあったものの、無事こうやって一日が終わる。
 皆で川の字になって。一緒に、隣で。
「おばあちゃんと寝たい子はおらんのか!」
 その胸に抱かれて寝たい。
「はは、母さん落ち着くんや」
 宗助の冷静な突っ込みが祖母の暴走を止めた。
 だが、糾華が冬路の袖を引っ張る。それに気づいた冬路は糾華と向き合って、やさしく抱きしめた。
 そんな彼女らの横では洋子が宗助の腕を抱きしめていた。今日もお疲れ様です、母さん、疲れたでしょうに。
 洋子に背を向けるようにして、ジースが杏里の寝息を聞いているが、ときどきぴくぴく動いていた。未来予知してるんだと思う。
「寝相悪そうなのばっかりやからな! 夏、こっちおいで!」
「なっちゃんは、俺の横で寝るんや!?」
 すばるとあきらは夏の奪い合い。もじもじと動かない夏は、すばるへいったり、あきらへきたり、困っている様子。
 二人の奪い合いの声もだんだんと小さくなっていき、最後には皆で夢へと落ちる。

「行くのかい?」

 ミカサがただ一人。超直感か、最後に飲んだカフェインが効いていたか、起きていた。
 すばるとあきらの間に居た気配は、そっと家を出ようとしていた。

「君が、幸せって思って帰れたら良いって思うよ」

 消えていく気配を背に、リベリスタ達はさようならと、心の中でいう。
 夏のおかげで家族と向き合えたから。
 それぞれの、思い思いの家族と、思うことを胸に夜は静かにふけていった。

 最後に残った、たった一枚の集合写真。
 九人の家族の中心で、十人目の家族が――帽子を深くかぶって顔が見えない少年の姿が居た。
 あたたかい食事に、あたたかい家庭。

 もう、涙で見えないから。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
依頼お疲れ様でした
結果は上記のとおりになりましたが、如何でしたでしょうか?
わきあいあい、ときに羽交い絞め、楽しく執筆できました!
また違う場所で会いましょう!