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<六道>魔剣・アツアツから揚げ串!!

●あつあつジューシーなから揚げがいつでも食べられるという夢のような話
「ククククク、ハハハハハ、ハーッハッハッハッハッハッハ!!」
 白服の男がから揚げ串片手に高笑いしていた。
「ついに手に入れたぞ、我が心より求め、欲し、願ってやまなかったこの力……!」
 から揚げはほかほかと湯気をたてており、ほんのりと油が浮き出て齧るだけでもうジューシーな肉汁が溢れだすこと間違いなしだった。
「これで我はあげたてのから揚げを無限に生み出すことができるのだアアアアアアア! フゥーハハハハハァー!!」
 から揚げ串を天に掲げる男。
 流れるようなフォームで串を振り回すと、串から外れたから揚げが周囲へ大量に跳んで行った。
 それを口でキャッチするサラリーマンやOL、お年寄りや小学生のお子様方。彼らは一瞬で至福の笑みを浮かべた……と思いきや。
「あ、アヅアアアアアアアアア!!」
 思いっきりから揚げを吹き出し、あまりの熱さとびっくりさに全員昏倒したのだった。

●一口で食べようとしたから揚げが熱過ぎてウヴォアってなるがそんな苦しみを経験して人はすこしだけ大人になる
「…………」
「…………」
 レンジでチンするタイプのから揚げが四つ程、お皿の上にピラミッド積みされていた。
 それを親の仇でも見る目でにらみ続ける『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)。
「減量中のボクサーはあえて水の入ったコップを見つめることで水を欲する気持ちを克服すると言います。ならばこうしてアツアツのから揚げを見つめることで深夜に小腹がすいた時のあの感じを克服することができ……でき……はうぅぅっ」
 苦悶の表情で身をよじるガハラさん。無駄なエロスが提供されていた。

 リベリスタ達が会議室に集まった頃になって。
「それでは説明を始めます」
 ガハラさんはファイルを片手に、妙にツヤツヤした顔で振り返った。
 お皿は空だった。
「先日から街中(主に夜のコンビニ前)でフィクサードが暴れるという事件が発生しています。彼らはアーティファクト『魔剣・アツアツから揚げ串』を手に仕事に疲れたサラリーマンや部活帰りの中高生、ダイエット中のOL等に無理矢理から揚げを食べさせると言うのです。それもあげたての! アツアツを! 分かりますか。そんなものを夜中に食べたら一個だけなんて拷問に堪えられません。もう一個もう一個と言っている間に気づけばから揚げクンが二パック無くなっていたなんてこともザラ。折角トマトを買い占めてダイエットに励んでも全て一日でおじゃんです。こうしてたまった体脂肪は腹や二の腕に蓄積しゆくゆくはコレステロールで血行を止め代謝不足を起こし様々な病気の元に――」
「脱線してる脱線してる! ガハラさん脱線してる!」
「はっ! 私は一体何を!?」
 口元に手を当てるガハラさん。口の端にはちょっとマヨネーズがついていた。
 咳払い。
「と、とにかく。このから揚げがあまりに熱く、一般人が大変な被害を受けています。あえて能力をセーブしているため舌が火傷するだけで済んでいますが、これをフルパワーで使われたら人死にが起きても不思議ではないでしょう」
「そ、それは大変だ!」
 手にマヨネーズやマスタード、ケチャップや醤油などを装備したリベリスタ達が一斉に立ち上がった。
「標的は魔剣所有者一名と同門の白服フィクサード五名。何としても彼らを倒し、から揚げを……いえ魔剣を奪取して下さい!」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 9人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月07日(月)23:47
八重紅友禅でございます
から揚げってなんであんなに美味しいんだろう。
ビールと一緒にレンチンした冷凍から揚げを食べる時なんて、生きてて良かった級の歓びがある気がします。
作った人マジで偉い。

●『魔剣・アツアツから揚げ串』の所有者と白服フィクサード
色々な都合から全員クリミナルスタアです。
バウンティカラアゲやナイアガラバックスカラアゲが火を噴くぜ。
カラアゲが身体に当たるとめちゃくちゃ熱いです。お皿や武器で受け止めようとすると何故か破裂するのでやっぱり熱いです。
ですが口でキャッチした時だけ別の効果が発生します。
かなり熱いのでダメージを受けるのですが、このから揚げがすさまじく美味しいのでちゃんと食べられれば回復します。
つまり、頑張って食べればもしかしたらダメージどころか回復するかもわからん、ということです。熱さと美味しさのどっちが勝つかはほぼ運。
くらいつけ。

以上。
色々ある昨今ですが、シリアスなし、深い話なしでお送りします。
片手にからあげを装備してどうぞ。
参加NPC
 


■メイン参加者 9人■
★MVP
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
ソードミラージュ
安西 郷(BNE002360)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
ナイトクリーク
緋塚・陽子(BNE003359)
クロスイージス
日野原 M 祥子(BNE003389)
マグメイガス
リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)
レイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)

リオン・リーベン(BNE003779)
ナイトクリーク
縁 乖離(BNE003795)
   

●深夜に見てしまったこと自体が既にアウト
 『蜂蜜色の満月』日野原 M 祥子(BNE003389)は顎のあたりにかかった髪を指先で捻じっていた。
「カラアゲっていいわよね、コンビニ行くとつい買っちゃうのよ。レジ脇にあるあのボックスからね……竜田揚げとかフライドチキンもいんだけど、やっぱりお醤油を使った和風な奴が好きね。外がカリッとしてて齧りついたらじゅわっと肉汁が出るような……」
「ちょ、ちょちょ、ちょっとまって!」
 両腕をぶんぶんと振って話を遮るリリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)。
「カラアゲなんて女子の敵じゃない! 今何時だと思ってるのよ。カロリー考えなさいよ! 全く……そう言う意味じゃ『魔剣・アツアツから揚げ串』を放置なんてできないわね。その、私が……」
 両手の指を胸の前で突き合わせるリリィ。彼女に若干被るようにして緋塚・陽子(BNE003359)が拳を握りしめた。
「理解した。なら食い尽くすまで」
「ねえ話聞いてた」
「フン、心配ないぜ。この通りキンと冷えたドリンクも用意した」
「やっぱり聞いてなかったでしょう!?」
 そこへ更に被る形でスライドインしてくる『鯱』縁 乖離(BNE003795)。
 満面の笑みでイエローマスタードを抱えていた。一本ではない。どこで収穫してきたのってくらいの山盛りである。
「かっらあげー、かっらあげー、ふっふーん……今日は好きなだけ食べて行っていいんだよね」
「こっちは依頼説明の段階から聞いてなかったんだな……」
「もはや突っ込みようがないわ……」
 額に手を当てる陽子とリリィ。
「あ、強結界張っておいたから」
 祥子が今更のように髪から手を離した。

 さて、オープニングを読み飛ばした人の為に少しだけ説明しておこう。
 魔剣・アツアツから揚げ串とは!
 揚げたてカラアゲが無限POP!
 ――以上!
 『愛の宅急便』安西 郷(BNE002360)は拳を握りしめる。
「くっそう六道め、から揚げを魔剣にしたあげくそれで一般人を襲うとはふてぇ野郎だ! 赦せん! から揚げ大好きっこを代表して俺が……この俺がこいつらを倒して……!」
「えー、でもみぞのぐち野郎でカラアゲ無限POPするから別にありがたみ無いって言うか」
「マジでかちょっと店の場所教えてくれ!」
 亜光速で振り返る郷。『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)は頭の後ろで手を組んで片足をぷらぷらさせていた。
 世の中、近くに大学や何かがあるだけでいきなり大盛り天国になるから不思議なものである。世間は美少女と食いしん坊には甘い。
 額を人差し指でとんとんと叩く『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)。
「だが考えてみてくれ。こんな魔剣があればコンビニのから揚げをボックスごと売れ残すことは愚か人を容易に太らせ食べ盛りで体育会系のフィクサードを手なずけることも簡単だ。恐ろしいものよ……」
「…………」
 よくそんな長セリフを一息で言えるな、という顔でリオン・リーベン(BNE003779)は腕を組んでいた。諸事情により登場シーンはここで終わりなのだが。
 手を結んで開いてする『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)。
「皆さん。何処までもクレバーにから揚げを食べる覚悟は出来ていますか? 私は出来ています。さあ――」

 ねんがんの魔剣・アツアツから揚げ串を手に入れたぞ!

  そう、かんけいないね。
 →ころしてでも、うばいとる。(ピッ)
  ゆずってくれ、たのむ!

●市民にカラアゲを無理やり食わせ続けるだけの簡単なお仕事です
 某所コンビニ前。
「フハハハハハハ! もはやこのコンビニもここまでのようだな! 我がから揚げ串にかかればコンビニカラアゲなど温め直した肉に過ぎん。フゥーハハハハハーァ!」
 と、フィクサードが比較的平和的な暴力行為に及んでいた。
 部活帰りの中学生や仕事帰りのサラリーマン。フラフラと時間をつぶしに来たプロニート。そんな彼らにカラアゲを無理やり食わせることで客足を遠のかせ店長は無き店員はやる気をなくしバイザーさんは黙って帰ると言う非常に局地的な打撃が、やはり一方的に与えられている。
 そんな、(コンビニ関係者の)誰もが未来を諦めかけたその時――。
「そこまでだ、から揚げハンターよ!」
 壱式迅雷のスパークが宙を奔り、今日は仕事がなさそうだとカラアゲ喰いながらサボっていた白服集団を襲った。
 慌てて振り返る白服達。
 よく路駐される道路脇、三本パイプ式のガードレールに腰掛けた祥子と、パうプの上でコンパクトに直立した優希の姿があった。
 ぱさりと肩の髪を払う祥子。
「大人しく自分たちだけでカラアゲを楽しんでいればいいものを……この世に悪が栄えたためしはないわ。その魔剣を……いやから揚げを寄越しなさい!」
「何ッ、この俺様に挑戦するだと……リベリスタ風情が!」
「ならば、その味を知らしめて見せよ。無限に生み出す力を得たのだ……出し惜しみはすまい?」
「クッ……!」
 とりあえず画だけはシリアスにやり取りしてみる優希たちである。
 すると道路脇、電柱の裏からミリィが姿を現した。
 顔の前でぱちんと手を合わせるとフラッシュバンを発動。
「カラアゲの時間です。さあ、いただきましょう!」
「うおおっ、目が!」
「何やってんですか! ありゃアークですよ絶対。歯が立たないんで逃げましょう!」
 魔剣の男が目を覆う。残りの白服達は初撃のタイミングで神経が過敏になっていたのか、いきなり撤退を始めた。
 優希やミリィ達から背を向けて走り出す。
 だがその進路を塞ぐ者達が居た。
「おおっと逃がさないぜ、ここを通りたければ――」
 コンビニの裏から飛出してくる陽子。アスファルトをスライドブレーキ。じゃりりと小石を踏みしめる。
 腰を軸にデスサイズの柄を回すと、そのまま身体ごと回転させてダンシングリッパーを放った。
「通りたければ……やべ、セリフ忘れた。省略!」
「うおおおおっ!?」
 凄まじいエビぞりで回避する魔剣の男。近くにいた白服がアビャンとか変な声を上げて転倒した。
「おのれ、こうなれば仕方ない。カラアゲの力を思い知らせてくれる!」
 男はから揚げ串を顔の前で水平に構えると、目をギラリと光らせた。
「秘技・唐揚居合切り!」
 武器を鋭く抜き放ち唐揚を生じさせ対象一体を切り裂きます。(マニュアルをコピペしそこねました)
 回転をかけて飛出すから揚げ。陽子の肩越しに抜けて行き、後から追いかけて来たリリィ目がけて飛んできた。
 想像してみて欲しい。空中を高速で回転しながら飛んでくるから揚げを。
「ちょっと待――ひゃ!?」
 軽く身をのけぞらせるリリィ。頬スレスレの所を飛び抜けるから揚げ。ひょいっと顔を出して歯でキャッチする乖離。
 だが飛んできたから揚げは其れ一個ではなかった。
 そう。先刻含めて四個のから揚げがいっぺんに飛んできたのである。
「わっ!」
 二個目。反対側に身体を捻じって回避。ひょこっと顔を出してキャッチする乖離。
「きゃっ!」
 三個目。身体ごと反り返って回避。乖離は完全にがら空きになったのを察して剣(?)でキャッチしてみる。とりそこねてスパッと切れる。何と言うかこう、巨大な剃刀というか、蛤刃の鉈というか、そんな形をしているのだ。
 やけに切ない顔になる乖離。
「あうっ!?」
 四個目。もうこれ以上動きようがないってんで仰向けに倒れ込むリリィ。
 乖離はこれ以上は無理と察してひらりと避けた。
 後ろから飛び込んできた郷が前歯でキャッチ。あまりの熱さに悶絶した。
「うおおおおお熱いいいいいい! 肉汁が唇の辺りにダイレクトアタックして熱いいいいいいい!」
 ほっふほふしながらもなんとか食べきる郷。
 でも味が良く分からなくてちょっと惜しい気持ちになった。
 から揚げあるある。
 郷は口元を拭ってぜえぜえと荒い息をした。
「敵の数は6。こちらは9……しかしこれまでの経験だと半数くらいがから揚げ食いに終始して戦力から外れることもある。そう、少人数で戦うことを強いら――」
「しっぷういあいぎりーい」
 嵐が起きた……と、表現して良いだろうか。
 郷がここぞとばかりに出した効果線を途中で吹っ飛ばし、岬の疾風居合切りが白服の一人を一発でジェノサイドした。
 仰け反った状態のままピクピク痙攣する郷。
「え、何その疾風居合切り。普通の倍くらい威力あるんだけど」
「そお?」
 ハルバートをダンベルを保持するみたいに両肩に乗せる形で乗せる岬。
「ほら、ボクってハルバートマスターだからー」
「説明にすらなってないだと……!?」
 まあ。
 何でもかんでも数字で解決するわけではないが、岬の攻撃力(と命中率)は並のフィクサードを一発で血煙に変えるくらいのパワーがあった。
 実際郷くらいならワンターンキルが可能である。
 冷や汗を流す魔剣の男。
「くっ、どうやら本当に囲まれてしまったようだな」
「だねー」
 ハルバートを首と脇を軸に螺旋回転。腰のあたりで構えて見せる。
「無限にから揚げを出せても、一度に出せる数は限度があるよねぇ……所詮この世は弱肉強食ーぅ」
「フン、そう思うか? よかろう!」
 男は大きく足を開いて立つと、から揚げ串を顔の位置で、地面と垂直に構えた。所謂蜻蛉の構えである。
「なぜこの魔剣が『から揚げ串』なのか……その身をもって教えてやろう!」

●最近の冷凍から揚げは質が良すぎる
 魔剣の男が大見得を切ったので、凄まじい攻防が繰り広げられるのか……と思ったかもしれない。
 だがしかし。
「くう、流石はアークのリベリスタ……」
「この俺達を倒しても第二第三の白服が……」
 部下の白服達がジェンガタワーみたいに積み上げられていた。
 内股でガタガタ震える魔剣の男。
「ま、マズイ……無茶苦茶強い……今だけ停戦協定を結ぶと言うのは」
「無しに決まってるだろうが!」
 郷のドロップキックが炸裂。
 男はもんどりうって倒れた。
「くらえ、から揚げとソニックエッジの融合――ソニック・フライド・チキンンンナアァ!」
 倒れた男をひたすらスタンピングする郷。
 どの辺にから揚げが融合しているのかは、是非想像力で補って頂きたい。
「うおおお死ぬ、死んでしまう……!」
 ばたばたと転がるように逃れる男。
 気を取り直して立ち上がると、今度は牙突的な構えをとった。一々構えだけはキメてくる男である。
「こうなれば奥の手を使わざるをえん……喰らえ、唐揚迅雷!」
 高速連突から三段斬りの演武を繰り出すと、アツアツの油を纏ったから揚げが無数に発射された。
 思わず口でキャッチした郷は、二個目が放り込まれてぶっ倒れた。
「超エキサイティーン!」
「郷ォー!」
 倒れた郷の後ろには優希がいた。取りこぼしたから揚げを地面に落としてしまわぬためである。
「くうっ!」
 口でキャッチ。下と上あごの部分が焼ける。なんかこう、口の天井がべろっと捲れるような感覚があった。
 涙をにじませ、気合で咀嚼。そして飲込む。喉を通り過ぎる熱さ。
「独り暮らしのコンビニ弁当……そしてお惣菜。レンチンして温めても揚げたてには勝てん。これぞ至福! やけどなど構うものか、揚げたてが食べられるなら……!」
「貴様16歳なのになぜそう一人所帯じみているのだ!?」
「もっとだ、もっと寄越せえ!」
 高速連突でから揚げを飛ばしまくる男と、一人高速チューチュートレインでカラアゲをキャッチしまくる優希。そこへミリィが加わった。
 二人チューチュートレインである。
「あなただけに良い恰好はさせませ……熱っ!」
「大丈夫かミリィ!」
 口からウヴェアと零しかけ、気合で持ち応えるミリィ。
「この熱さの先に、私達の求めるエデンがあると信じて……!」
 そうだ。この世に楽して手に入る楽園などない。苦労して働いた後の一杯が美味いように。熱さに堪えて食べたから揚げは美味いのだ。あと天ぷらも。
「うおおおおおもっとだあああああ!!」
「何故だ、何故倒れん。既に口内は限界の筈!」
「まだまだ、この程度の熱さ……!」
「ならば焼け焦げるまで食らわせてやる!」
 勢いだけはシリアスな彼等である。
 そんな彼らを、リリィはちょっと後ろで見つめていた。
「あんなに美味しそうに……はっ、だめよ! こんな時間に食べたら絶対太るじゃない! 育ちざかり女子のカロリー吸収率を舐めたらダメよ! でも一個くらいは……ああっ、だめっ、いけないわ……いや……」
 お腹と腰の辺りを抱きかかえるように身をよじるリリィ。
 新ジャンルエロス『から揚げと女子中学生』。
 などとやっていると、郷とリリィの二人トレインを抜けて一個のから揚げが飛んできた。
「きゃ!?」
 予期していなかったのか、思わず口に放り込まれてしまう。
 こうなればもうオートマチックだった。
 口の中でほふほふして軽く噛みながらゆっくりと飲込むまでの一連の動作は本能によって行われる。間違っても吐き出すなどという乙女失格なマネはできなかった。というか食べたかった。
「ああ、アツアツ美味し……あああああああ食べちゃったじゃないのよ!」
 そしてリリィは膝から崩れ落ちた。
 ちなみに口内は重傷だった。
「フハハ、まずは一人……!」
 不敵な笑みを浮かべて構えを変える魔剣の男。
 そんな彼目がけ、背後から陽子が飛び掛った。
「後ろががら空きだぜ兄ちゃん!」
「ハッ、甘い!」
 肩越しにから揚げ串を突き出す男。突如発射されたから揚げが陽子の顔面に直撃した。
「――ッ!!」
 一般生活を送っているとまずない経験だと思うが、もしあるのなら、羽交い絞めにされた上でおでんをゆっくりと口に近づけられたと思いきやフェイントで顔に突きつけられる状態を想像してほしい。
「あづぁっ!」
 陽子は地面をごろごろ転がって悶絶した。
 大口ボトルから冷水を出し、顔にかける陽子。なんか夏場にやる清涼感溢れるCMみたいな絵だったが、やってることはから揚げの熱さ処理である。
「くっ、用意した水が既に底をついたか……」
「良かったではないか。熱いから揚げを食べるたびに冷水で体感温度を戻していては、毎回熱い思いをしなければならなかったところだぞ?」
「……おお、そうか」
 陽子はぽむんと手を叩いた。
 じゃあさっきから食べ続けてる勇気やミリィは熱さ感じてないんじゃないだろうか、なんていうツッコミはあえて入れないでいてあげた。
「あー、食べ物を粗末にしたらいけない系……」
 地面に落ちたから揚げを切なそうに見つめる乖離。
「あ、すまん。顔に当たったもんだからつい」
「手足無くして沈められちゃう系……」
「中国の所刑法か何かかよ」
 死刑より酷い刑罰じゃねえかよ。
 などというツッコミもなんのその。乖離はどこまでもマイペースにイエローマスタードの蓋を開けていた。新品なのか、内側に銀紙がついている。それをはがして出せる状態にして……。
「んあー」
 自分の構内ににゅるんと入れた。
 もし知らない人がいたらいけないので忠告しておくが、マネしてはいけない。
「かひゃひ、は……はやくー!」
「……」
 男は、このまま放って置いたらこいつ自滅すんじゃないだろうかと思ったが、あんまりにも純粋な目で求めてくるもんだからから揚げを一個だけ投げてやった。
 犬のように飛び付く乖離。
 もぐもぐごっくん。
「もーいっかい!」
 そして犬のようにアンコールをしてきた。
 ……ので、四個くらいいっぺんに叩き込んで黙らせた。
 迷惑行為と知って楽しんでいた手前あまり喜ばれたくないという、悪人の人情だった。
「んー……かなり熱そうね。あたし猫舌だからキツイんだけど」
 乖離のカバーに入った祥子がウーロン茶片手に呟く。
 熱い思いをするたびに冷やしていてはイカンというのはもう分かっているのだが、脂っこさをウーロン茶で払いたいという気持ちもまたあるのだ。
 中華料理にウーロン茶。つきものである。
 だが……。
「このレモン汁、どうしよう」
 から揚げにレモン汁をかける派とかけない派がいるものだが、祥子は割とかける派だった。
 ちなみに、口内の粘膜が弱っていたり、口内炎ができていたりするとレモン汁が凶器に代わるので、そう言う人が居る時はかけないであげる配慮をしてあげよう。意外と好みだけの問題ではない。閑話休題。
「これってどのタイミングでかけたらいいのかし――」
「そいっ!」
 岬が間にスライドイン。飛んできたから揚げを途中で口キャッチ。
「新党滅却すればなんとかだよー!」
「意図的な誤字だとしたら凄い左発言ね」
「更にレモンをー」
 から揚げインした口を上に。そして切ってもいないまんまのレモンを顔の上に掲げる岬。ザ・テレビジョン状態。
 そしてまさかの。
「素手絞りができるリベリスタって便利ー」
 ぐしゃあっとレモンを潰してそのまま飲んだ。
 つくづく人類の枠に収まってくれない少女である。
 ひとしきり食べ終えると、岬はハルバート片手に男を指差した。
「さーて、食べ過ぎてぽんぽんペインになるまで行くよー」

 その後、彼等は数時間に渡る命がけのから揚げ食べ放題キャンペーンを続け、最終的にはフィクサード達をけちょんけちょんにぶっ飛ばしたのだった。
 地元のコンビニは救われ、店長は諸手を上げて喜び店員は舌打ちしながらサボりをやめバイザーが笑顔で帰って行く。
 だがその裏にはから揚げを食べつくしツヤツヤテカテカになったリベリスタ達がいたことを、忘れてはならない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
深夜ほどから揚げが欲しくなる。
それが人の情ってもんじゃあありませんか。

今回のMVPは『から揚げに素手レモン』と言う新派閥を生み出した岬さんに差し上げます。