●双拳の死神 「ん……? あの場所に人が来るなんて聞いていないぞ?」 雇われた中年の警備員2人が目にしたのは、関係者以外立ち入り禁止の区画。そこに数人の男がたむろしているのだ。風体も怪しく、とても関係者には思えない。 「格好からするとあの何とか言うバンドの追っかけなんだろ」 音楽のことはよく分からないが、大方そんな所だろう。男達の持つアナーキーな雰囲気からそのように判断すると、警備員は無線で連絡を入れようとする。「不審者を見かけたらまず連絡」、今回の現場で厳命された指示だ。 「おい、お前ら。油断してるんじゃねぇよ」 「ヒッ!?」 その時だった。警備員達の後ろに、音も無く巨漢が姿を現わす。そして、目にも止まらぬ速さで無線を奪い去ってしまったのだ。 「うむ、この程度の雑魚に見つかるなど笑止千万」 警備員の後ろに現れた巨漢は2人いた。奇妙なことに巨漢は同じ顔をしていた。それどころか、素肌の上にデニムのベスト、耳にした派手なピアスと、服装まで同じだ。違うところと言えば、それぞれ右肩と左肩に髑髏の刺青を入れ、ピアスの色が赤と青で違うことだ。 「まずい、逃げるぞ!」 警備員は逃げようとする。しかし、それは遅きに失した。 「吽神(うんしん)!」 「おうよ、阿神(あしん)の兄者!」 2人の巨漢がふわりと宙を舞う。それは見た目に合わず、完全に調和の取れた舞いのような動きだった。そして、そこから叩き込まれる飛び蹴り。鏡映しのように僅かのズレも無い。 「ゴフッ」 飛び蹴りをもらった警備員はそのまま血を吐いて倒れてしまう。 「この程度か、だらしねぇな。ま、オレ達兄弟の99番目の戦いの相手になれたことを幸運に思うんだな」 「我ら兄弟のコンビネーション、破れたものなど1人もおらぬ。さぁ、祭りの時間だ」 警備員を倒すと、2人の巨漢は仲間を連れて、立ち入り禁止区画の奥へと入っていく。 そう、彼らは逆凪と呼ばれる組織に属するフィクサード。 破壊と混沌を招くため、祭へとやってきたのだ。 ●『NOBU祭り2012』 「それは楽園の蛇か、13人目の魔女か。そして、お前達はそれを討つ弓矢であり、人々を護る盾」 のっけからコレである。 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を迎えたのは、『駆ける黒猫』将門・伸暁(nBNE000006)。インディーズロックバンド『ブラックキャット』のリードVoであり、アークのフォーチュナ、最近ではアークによる岡山復興支援プロジェクト『NOBU祭り2012』実行委員会委員長でもある男だ。 先の台詞はいずれも伸暁流の――リベリスタ式に言うならNOBUリッシュな――ポーズと共に行われたものである。 「逆凪の連中は知っているだろう? 最もマイティでデンジャラスなフィクサード、そいつらが俺達の祭りをブレイクするためにやって来たのさ」 つまりはそういうことだ。 現在、アーク主導で行われている岡山復興プロジェクト。その一環として行われている『NOBU祭り2012』を疎ましく思った逆凪派フィクサードが一暴れしにやって来るらしい。もう少し世相が混乱していた方が彼ら的には楽ということなのだろうか。あるいは、単に伸暁をぶん殴りたいだけなのかも知れない。その辺、フィクサードの思考というのは理解し難い所ではある。 そして、フィクサードは逆凪のお家芸である人海戦術で、ホールを攻めに来るのだという。 「その中でも、お前達に戦って欲しいのは、ジェミニのストライカー。鏡の迷宮(ミラー・ラビリンス)から現れた破壊と絶望の使者」 伸暁がパチンと指を鳴らすとスクリーンにフィクサードの姿が表示される。ホールの中央部に向かってくると言うフィクサードで、中々にチャレンジフルなファッションセンスの持ち主だ。彼らは双子の兄弟で『阿神』と『吽神』を名乗っているとか。 「こいつらが部下数名を引き連れて会場内に来ようとする姿が万華鏡に映った。お前らが動けば警備員と遭遇する前に対処出来るよ。注意して欲しいのは、この2人のコンビネーション。双子ならではのコンビネーションで、強力かつ正確な一撃を繰り出すらしい」 警備員は一般人なので、当然この場には行かないように既に指示してある。 忘れがちだが、伸暁も古参フォーチュナの1人。イケメンボイスで真面目な解説も行えるのだ。 「彼らに言わせると、そのコンビネーションを破ったものはいないとかね。フッ、シンメトリーが生み出す奇跡(ミラクル)と言った所さ」 気を抜くとこうなるわけだが。もっとも、リベリスタは気を抜くわけには行かない。強敵の情報に身を硬く引き締める。 「こいつら以外にも逆凪の工作員はやって来る訳だが、気にしなくて大丈夫。幸い、会場には沢山のリベリスタがいるからね。下手な国家機関よりも警備は厳重だぜ」 パチッとウインクする伸暁。もし、これを計算ずくでやっていたのだったら、大した策士である。 「Evilを逆さまにしてやればLive。俺達にとってはいつもの仕事さ。任せるぜ」 指で銃の形を作ると、「BANG!」と撃つ仕草をする伸暁。自分がいる場所が戦場になるかも知れないと言うのにこの態度である。 いつも以上にいつも通り。 これが将門伸暁という男なのであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月11日(金)00:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「どぉぉぉぉうも、待ち伏せってのは性に合わないんだよね?」 『кулак』仁義・宵子(BNE003094)は派手に煙と愚痴をを吐き出す。準備体操をしながら、器用にやってのけるものだ。実際、人一倍過激な所のある彼女にとって、敵が来るのをただ待つというのは苦痛の時間なのだろう。一通り体操を終えると、クラウチングスタートの構え――本人に言わせると、雌獅子の構え――を取って、いつでも戦えるようにしている。 「ふむ、伸暁のバンドを妨害……なあ。まあ、止めねばならないのは確かだが」 どことなく呆れている様子のアルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)。たしかに、フィクサードの悪事としては地味……というか、冗談じみている。それでも、彼女に油断は無い。この場に向かってくる戦力は、冗談で動かせる数でないことが分かっているからだ。 『NOBU祭り2012』に関しては、様々なイベントが行われ、盛り上がっている噂が漏れ聞こえている。このまま、平和裏に終わらせたい所である。 「香夏子知ってます……祭りは文化です! その文化を邪魔するなんて許せません!」 本気の表情で拳を固める『第23話:NOBU祭り2012』宮部・香夏子(BNE003035)。その言葉に仲間達も強く頷く。だが、そこで香夏子はいつものぼんやりとした顔で小首を傾げた。 「それで……NOBUって何でしょうか?」 「いやいやいやいや」 綺麗にずっこけるもの半分、ツッコミを入れるもの半分。 「まぁまぁ、NOBUというのは……、ッ!」 ずっこけた『似非侠客』高藤・奈々子(BNE003304)が、苦笑を浮かべながら説明しようとした時だ。彼女の表情が硬く引き締まる。 「折角皆が楽しんでいるのに、その乱入は無粋過ぎない?」 「そんなの知ったこっちゃねぇなぁ」 奈々子が睨んだ先に現れたのは、思い思いの武装を手にした男達。如何にも身に着けた力に驕り、力のやり場を持て余しているといった風情だ。 現れた敵の数を指折り数え、間違いが無いことを確認すると『やる気のない男』上沢・翔太(BNE000943)は剣を構える。 「逆凪派フィクサードか、相変わらずの人海戦術のようで。迎え撃ってやろうじゃねぇか」 「アークの神の目の力は先刻承知。それを倒せば、我々の名も上がろうというもの」 対して、後ろにいた巨漢が2人、前にぬっと出てくる。色違いの装飾品をつけた同じ顔。話にあった、双子のフィクサードに相違あるまい。 「ちゃーっす!逆凪の皆々様ゴキゲン麗しゅう。こちら関係者以外の立ち入りを禁止してまーす」 「お祭りを邪魔するなんてなんのつもりか知らないけど許せないね。きつーくお灸を据えてあげるよ!」 それに対して、同じく武器を構えながら道を塞ぐように立つのは、覇界闘士の2人。それぞれ、トンファーを構え、篭手に包んだ拳を鳴らしている。『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)と『ガントレット』設楽・悠里(BNE001610)だ。それなりに知られたリベリスタであるだけに、フィクサード表情にも緊張が走る。だが、むしろそれでこそと言った風情のものもいる。 場に一触即発の空気が走る。 その時だった。がはぁぁぁぁっと気合の声が響く。 「筋肉とはただのたんぱく質の塊ではありませんぞ。それは守護者(ガーディアン)の証明、力無き人々を守る、鋼鉄よりも強く優しい盾」 「な、何なんだ、てめぇは!?」 「ジャスティスシャァァァァイィィィン!」 阿神の問いに答えることなく、アクセス・ファンタズムをかざすと『超重型魔法少女』黒金・豪蔵(BNE003106)の身が光に包まれる。光の中では律儀にポージングを行われていた。そして、光が晴れると、彼の姿はピンクのフリフリドレス……いわゆる、「魔法少女」のような扮装に変わる。ぶっちゃけ、フリフリドレスに身を包む筋肉質の男とか、目の毒も良い所だ。げんなりしたようなリベリスタとフィクサード達の表情が、それを良く示している。 「その筋肉を悪に使うとは……この正義の魔法少女ジャスティスレイン、許しては置けませんな」 「笑止! この筋肉は、鍛錬の、そして力の証。それを理解せぬ貴様こそ、笑止千万!」 吽神が必死にシリアスな空気を取り戻すべく雄叫びを上げる。 そして今日も、月の下でリベリスタとフィクサードの戦いが、始まりを告げる。 ● 戦いの始まりと共に、ぶつかり合うリベリスタとフィクサード。お互いに攻撃力の高いメンバーが揃っているだけに、激しい乱打戦からのスタートとなった。この場合、勢いを失った方の負けだ。 「悠里!行くぜアークの覇界闘士ってのを魅せつけるぜ! 焔! 拳!」 「あぁ、夏栖斗!やってやろう! 雷! 拳!」 そして、勢いに乗ると言うことであれば、夏栖斗と悠里にとってはお手の物だ。2人の拳士は風となり、自分達を阻む敵を蹴散らしていく。それは熱い風、祭りの勢いを借りたような、熱く心地良い風であった。 「出遅れちゃったかな? ま、いいや。よーい、ドン!」 溜めのポーズから気合を入れると、勢い良く宵子も飛び出す。走りながら彼女は思いっきり腕をぶん回す。そして、その拳にぶつかった逆凪のフィクサードは思いっきり吹っ飛ばされる。宵子の動きはまったく見境というものを感じさせない。まさしく、気ままに暴れ回る獅子そのものだ。 「チッ……こいつら、強いぞ……」 1人のフィクサードが思わず及び腰になる。その前に立ち塞がったのは翔太だ。 「向こうでも盛り上がってるんだ。せっかくだ、こっちでも盛り上がろうぜ」 ブゥン、と空気が震えるような音がした。 すると、翔太の姿がいくつにも分身し、フィクサードに切りかかっていく。 「香夏子は雑魚軍団のお相手です。最初からクライマックスです」 香夏子の体がうっすらと光を放つ。するとどうだろう。放たれた光が凝り、天に赤い月が浮かび上がる。香夏子の呪力が作り出した赤い月に照らされ、フィクサード達は苦痛の呻き声を上げる。 その隙間を縫うように、アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)の投げる神秘の閃光弾がフィクサードの目を焼き、隙を作っていく。 「こいつら、さすがに戦い慣れていやがる。阿神の兄者!」 「うむ、行くぞ、吽神」 阿神と吽神の兄弟が独特の構えを取る。一切の乱れの無い、鏡写しの構え。 流れを自分達の下に引き戻すべく、目の前にいる奈々子をまず潰そうというのだ。 そして、交差する双子の蹴りが奈々子に襲い掛かる。 防御の構えを取ろうとする彼女だが、完全なコンビネーションを防ぐことは出来無かった。 バキッ 「キャッ! 聞きしに勝る……とは正にこのことね」 思わず奈々子の口から可愛い悲鳴が上がる。しかし、実際に受けた負傷はそれ以上のものだ。もし、直撃を受けたら、倒れることを免れることは叶うまい。 「ひゃっはぁ! どうよ、俺達のコンビネーションの味は。てめぇらを片付けたら、あのいけすかねぇNOBUにも味あわせてやるぜ」 挑発的な言葉をぶつけてくる吽神。 それを聞いて、奈々子の意地に火が点いた。 「黙れ……」 「あぁん?」 「二人分の力を受け止めれるほど、私の実力は出来ちゃいないわ。でもね、この祭りで心を救われてる何百人もの人を邪魔しようとする愚か者を無視できるほど……人間も出来ちゃいないのよっ!」 威勢良く啖呵を切る奈々子。彼女の心はまだ折れていない。 「笑止、力無きものの戯言に耳を貸す理は無し。ここで倒れるが良い」 再び構えを取る双子。 再び技が放たれ、奈々子の命運も風前の灯かと思われた時だ。 「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」 「こ、これは!?」 吽神が悲鳴を上げて、黒い箱の中に閉じ込められる。コンビネーションの一撃、二身一身拳が崩れ去ったのだ。 「今です、この筋肉の光を受けなされ……ふん!」 隙を突いて豪蔵が奈々子の傷を癒していく。ポージングと共に現れる息吹の中、奈々子の怪我は見る見る消えていく。 「そうか……貴様の仕業か……」 阿神が目をやるとそこにいるのは黒衣の女騎士。 「如何なる相手であろうとも、この檻の中で身動きなど取らせはしない」 吽神を包む箱の名は「スケフィントンの娘」。暗黒の騎士が使う、あらゆる苦痛を詰め込んだ拷問具。 いかなるコンビネーションも、片割れの動きを封じれば成立しない。 「即席のコンビネーションではあるが、貴様等に負けはしない。ここからは私達の番だ」 アルトリア・ロード・バルトロメイは凛然と言い放った。 ● 数において勝っていたのは、たしかにフィクサード達だ。しかし、個々の質、そして何より戦いにかける覚悟においては歴然とした差があった。戦力が近しい以上、相手をいたぶるつもりで来ている連中が、相手を倒すつもりで来ているものに勝てる道理は無い。 また、癒し手の有無も、少なからず戦況に影響を与えていた。そこに気付いたフィクサードが、隙を探って向かおうとするのも既に手遅れである。香夏子はすぐさま立ち塞がると、その攻撃を防いでしまう。 「油断大敵ですね。今度はそちらにお返しする番ですよ……!」 香夏子の手から放たれたカードが突き刺さると、デュランダルは倒れる。 「香夏子は脇役でいたいのに、困ったものです」 倒した香夏子の表情は涼やかなものだ。多少の疲れも『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)が癒してしまうからだ。会場の中から聞こえてくる歌声が耳に心地良い。 こうして着実に、戦局はリベリスタの側に傾きつつあった。 「つーかキミ達バカだよねー。お祭りなんだから上手い事商売した方が利益になるってのにさ」 「そんなんは、上の連中が考えることだ。俺達は暴れられれば良いんだよ!」 全身に傷を作りながら、後衛のクリミナルスタアの真っ只中に突っ込んだ宵子。銃に囲まれながらも臆することは無い。正直、律儀に回復が飛んでくることに関しても、必要ないとさえ思っている位だ。 「へぇ、そいつは同感だね。たださ、それなら男がてっぽーなんて使うんじゃないわよ、惰弱な!」 拳銃を構える男に向かって拳が叩き込まれる。容赦の無い一撃だ。宵子にとっては拳が相棒で十分。あんな安っぽいおもちゃに頼るような雑魚に負けるようでは、獅子など名乗れない。 「ひっ、ひぃ!」 獅子の威圧に負けて逃げ出すものも出てくる。さすがに劣勢を感じたのだろう。先ほど、別働隊の連中からも会場内のリベリスタに敗れたとの連絡が入ってきたのも理由の1つだ。 そんな相手を見て、翔太はいつものようにやる気なさげに剣を納める。逃げ出そうとしたフィクサードはそれに気付くと、思わず足を止めてしまう。 「な、なんで……?」 「邪魔もする気はないよ。今回は祭りだ、楽しい結果で終わると良い」 翔太はあくびを噛み殺すと、フィクサードに背を向けて、別の相手に向かっていく。フィクサードは複雑な思いを抱えて逃げ出すのだった。 一方その頃、双子のフィクサードとの戦いも様相を一変させていた。 阿神と吽神は決して無能なフィクサードではない。しかし、得意戦術を封じられては、状況を覆すことが出来ないでいた。 「どうしたの? 怖気づいたかしら?」 「ぐ……ぐぬぬ……」 劣勢を感じている阿神。こんなはずではなかったという動揺を隠すことすら出来ずにいる。 そんな阿神に奈々子は大きく息を吸い込むと、再び啖呵を切る。 「傾く事も出来ぬ無法者に賭ける情けは無し! 傾奇者が一人、高藤奈々子! 無粋には無粋で返し、百勝前の一敗を刻ませてもらう!」 その言葉自体が何かしらの攻撃であったかのように、阿神は一歩退いてしまう。 「折角その筋肉があるのですから、他者の為に力を使うのが正しい道だとは思いませぬかな?」 「し、笑止な。得た力を自分のために使って何が悪い!」 優しく諭す豪蔵に対して、狼狽しながら答える阿神。既に最初の余裕は失われている。 そんなフィクサード達の様子にアルトリアは嘆息すると、後ろを見やる。 「分かった、任せよう。後はお前たちのコンビネーション、存分に見せ付けてやれ!」 その先にいるのは、雑魚と戦っていた2人の覇界闘士、悠里と夏栖斗だ。 そして、これは偶然なのだろうか? 会場の中から聞こえてくる曲が変わった。インディーズロックバンド『ブラックキャット』の曲の中でも、もっとも熱く激しい曲だ。会場の中も、いまやクライマックスを迎えていた。 「君たちと僕達の絆、どっちが上かな?」 「んじゃま、正義のヒーローらしく、強くてイケメン様が撃退してやんよ!」 祭りの邪魔をしようというフィクサード達に対して、少なからず怒りはあった。しかし、そのようなもの、既に吹き飛んでいた。いまや、目の前の覇界闘士と力比べできるということそのものが楽しくてたまらない。 「う……うぅ……兄貴ぃ」 ようやく「箱」の中から開放される吽神。それを見て阿神の胸に、希望が生まれる。そうだ、今までにも強敵はいた。だが、二身一身拳で打ち破ってきたのだ。これさえあれば……! 目を覚ますと、吽神はのろのろ立ち上がる。 状況を察した吽神と共に、阿神は二身一身拳の構えを取る。 「我ら兄弟のコンビネーション!」 「破ったものはいねぇ!」 宙に浮かぶ双子のフィクサード。 対する悠里と夏栖斗も、迎え撃つ構えを取る。悠里の拳は氷に覆われ、夏栖斗は気息を練り上げる。 「僕達を舐めるな!」 「マブダチとのコンビネーション、受けてみろ!」 ● 戦いが終わったホール外の広場で、悠里と夏栖斗が大きくハイタッチを行う。 無事に逆凪は撃退されたのだ。他の場所でも、「たまたま」フィクサードと遭遇したリベリスタが交戦し、勝利を収めたという。 「じゃ、NOBU祭り、残り時間を楽しんでこようかな」 既に遅くはなっているが、祭りの時間が終わったわけではない。むしろ、終わりが近づいた時間だからこその雰囲気と言うものもある。宵子の手にはしっかりとチケットが握られていた。 「意外とミーハー宵子ちゃんでした☆ おつかれちゃーん」 先ほどまでの荒々しさは何処へやら、チケットをふりふりさせて会場の中に入っていく。その姿を見るリベリスタの口に思わず微笑が浮かぶ。 その中で、香夏子だけはきょとんとした顔をしていた。 「それで……NOBUって何でしょう?」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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