● 三高平にある高校のグラウンド。 春の大会を目指すサッカー部が練習に汗を流している。 「そっちいったぞ! 早くカバーにまわれ!」 ミッドフィルダー(MF)を務める少年が、ディフェンダー(DF)に指示を出す。 敵は、今まさに自軍ゴールを目指しているのだ。 しかし、DF陣は敢え無く突破され、敵チームのFWをゴールキーパー(GK)が抑えようとしていた。 「まずい!」 カウンターを狙ってセンターライン近くに留まっていたMFが仕方ないとゴールに向かったその時。 メキメキメキメキ……ッ! 「え……」 自軍のゴールが、地を軋ませひび割れさせ、動き出す。 MFの少年はあまりの事に唖然とし、その場に立ち尽くす。 その間に、動き出したゴールは、一番近くにいたGKを飲み込んだ。 「うわぁぁぁぁーーーー!!」 ゴールのネット越しに見えるGKは叫びをあげ、助けを乞うように手を伸ばす。 けれど、何かの力に阻まれて、ゴールネットからは手を出すことが出来ない。 「酒田!」 その叫びにMFは正気を取り戻し、ゴールへ駆け寄りGKの名前を呼ぶ。 「松下!! 助けて、助けてくれっ!!」 MFは、GKを助けようと手を伸ばす――と、ゴールネットを通り抜けMFの手を掴んだ。 「わぁぁぁ!!」 MFの腕を掴んだGKの力は凄まじく、MFは、ずるずるとゴールの中へ引きずり込まれていった。 「松下が喰われた!」 腰を抜かしながらも、事の顛末を見ていたサッカー部員が叫ぶ。 「俺達も喰われる!」 その声に反応するように別の部員も叫び、グラウンドから逃げ出す。 「逃げろ!!」 口々に叫び、後に残ったのは、サッカーゴールとサッカーボール。そして、飲み込まれた少年二人だけ。 ● 「サッカーゴールのエリューション・ゴーレムが出現して、そのグラウンドに居たサッカー部員を2人ゴールの中に取り込んだわ」 『もう一つの未来を視る為に』宝井院 美媛(nBNE000229)は、至極真面目な顔でスクリーンに三高平市にある高校を映し出す。 うっかり巻きっぱなしになっているカーラーが頭頂部に残っているが、リベリスタ達は暖かく見守ることにしてスクリーンを見つめる。 「現場はこの高校のグラウンドね。 学校併設ではなく、少し離れたサッカー部専用のグラウンドだから、サッカー部員以外の一般人はいないわ。 ナイター施設も完備されているから、エリューションとの遭遇時間は夜だけど、光源に困ることはないわね」 これが、飲み込まれた少年よ。と、和泉はスクリーンの画像を変える。 「サッカー部のGKと、MF……。 二人とも高校三年生になったばかりね。 ゴールに飲み込まれた坂田は、既にノーフェイスとなって自分を救おうとした松下をゴール内に引き込んでいるわ。 時間が経てば、松下もノーフェイスと変化するわ」 スクリーンに映された彼らは、いかにもスポーツマンと言った屈強な体つきをしており、爽やかな笑顔を浮かべている。 「他にグラウンドに居たサッカー部員は既に逃げて、残されたのは、エリューション・ゴーレムのサッカーゴールと、サッカーボール。 そしてノーフェイスとなったGK坂田、そしてゴールに取り込まれたMF松下。 戦闘時間が経過するとノーフェイスとなって追加される松下は、遭遇時にはまだ人間のままゴールの中にいる状態よ。 あ、それと……、エリューションのレベルは、全てフェーズ2ね」 それぞれの攻撃手段は資料にも書いてあるから、特殊なものだけ説明するわね。と、美媛は言葉を続ける。 「エリューション・ゴーレムのサッカーゴールは、物理攻撃ではほぼダメージを受けず、神秘攻撃は高確率で跳ね返すことが出来るわ。 ただし、バッドステータスは回避することができない……。 つまり、物理攻撃や神秘攻撃で直接ダメージは与えられない可能性が高いのよね……。 でも、攻撃に付加したバッドステータスによってダメージを与えることは可能だから、倒す術はあるの。 ただし、長時間の戦闘でじわじわとダメージを蓄積して戦う場合、MFがノーフェイスとなる可能性が高くなるのよ」 美媛の説明を聞くと、リベリスタ達は顔を見合わせる。直接ダメージを与えにくい敵、更に時間制限が加わると言う事は、どうしたらいいのか――。 「それから、松下がノーフェイスとなった場合、坂田と連携で攻撃してくるわ。 連携は、エリューション・ゴーレムのサッカーボールを使用した回避不可能に近い強力な遠距離攻撃よ。 坂田一人の場合は、サッカーボールを使用しての攻撃も単純だけど、連携を行った場合はかなりの威力となるから注意してね」 ここまでの説明で分かっていると思うけど――。と、美媛は資料を閉じる。 「今回は、エリューション・ゴーレム2体及び、GKのノーフェイス。 状況により、MFのノーフェイスの討伐も作戦内容に含まれてくるわ」 逃げたサッカー部員の記憶の処理などはアークの処理班が行うけど、MFを救出できた場合は、その後の処理はお任せするわね。と、続けると美媛は頭を下げた。すると、コロンとカーラーが落ちた。 「あら? どうしてこんなところにカーラーが……」 リベリスタ達は思わず噴出しながら、ブリーフィングルームを後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:叢雲 秀人 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月02日(水)00:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 夕暮れのグラウンド。 ゴールの影が伸びる先に、取り残されたサッカーボール。 本来四角であるべきサッカーゴールは、中に取り込んだものを逃すまいと丸く変形している。 リベリスタ達が戦場に到着すると、ゴールはその身を反転させ、対峙の構えを取った。 ゴールの中には少年の姿――否、一人は既にノーフェイスであるが。 その少年たちの姿を視認すると、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)はクールな表情を些か険しいものへと変化させた。 ノーフェイスに変化したGK酒井は、レイチェルの視線に気づくとニヤリと哂い、ゴールネットをすり抜けてグラウンドに降り立った。 ゴールの中に残されたMF松下は、気を失っているのか、ピクリとも動かない。 GKは、傍らに転がっていたサッカーボールを拾い上げると、掌で転がしながら、ゴールの前に立つ。それは彼の常のポジション。 レイチェルは、自らの立ち位置を確認する。ゴールから25mの距離。己の攻撃範囲にゴールをとどめると、彼女の赤い瞳が煌いた。 時間制限がある上に、攻撃が当たりにくい。厄介な敵、厄介な状況。だが、それすらも楽しく思える自分が居る。心の奥の自分が微笑む。 「……挑ませて、いただきましょう」 レイチェルの『本気』が爆発する。もとより高い命中率を更に上げる、力。最早彼女に当てられぬ的は――ない。 感情豊かとか言えない表情、けれど、その口角は微かに笑みの形を生んでいる。 厄介な敵、だけどそれがいい。時間制限に敵わなくとも、敵が増えるだけ。――倒すものが増える、それだけ。 『無軌道の戦鬼(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)は、ゴール目掛けて駆け出した。その前にGKが立ちはだかったが、彼女はその肩を乗り越え先に向かう。狙うは、時間内のゴール撃破。 肩を乗り越えられ天乃を逃したGKは、その背を追いかけようと身を翻す。 響く銃声。 その手に乗ったサッカーボールが転がり落ちた。 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)は、サッカーボールをGKから引き離すことに成功し、ボールのブロックに入った。 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)の細く儚げにも見える体躯がゴール目掛けて突っ込んでいく、かと思えば次の瞬間彼女の体が掻き消えた。 ゴールの後ろに回りこんだ天乃。後ろに回ればGKなどもついてこれまいと考えた彼女の行動は当たっている。 しかも、ゴールは天乃の動きについていけず、未だ背中を晒したまま。天乃が攻撃を打つ瞬間、涼子の姿が顕現する。 ハイアンドロウとナイアガラバックスタブ――2人の猛攻がゴールネットに炸裂する――が、ゴールは悶える事もなく二人へとその身を反転させた。 「大丈夫、バッドステータスは効いてるはず」 ゴールの攻撃を避けつつ、涼子は天乃に告げる。 二人がゴールの攻撃を凌いだことを確認すると、『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)は集中する。その驚異的な集中力は、彼の感覚を研ぎ澄ましていく。 「相当な命中率が無いと厳しいというけれど、果たしてどうかな……? それなりに命中はあるつもりだけど、当てられるかどうかそわそわするよ」 ヘビーボウを構える。その狙いは、ゴールの一点。 「ふふ、何時もこのくらい緊張感があると良いんだけれどね」 くすりと笑む顔は、外見は少年でもどこか老成したそれを思わせた。 「当てにくいんはわかっちょる、けどな当たる時もあるぜよ。 せやったらその運命を引き寄せて「当てる」んや」 禍々しさを放つかのような巨銃を構える『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)。 この40秒の戦いに勝ち、MFを救えるか否か。それは一つの賭けである。 「……わっしは賭けには強いで? グランドギャンブラーやからな!」 気合とともに放たれた弾丸。けれどそれはゴールの中を素通りし、後方へと突き抜けた。 仁太から送られたアームキャノンが文月 司(BNE003746)の腕で呻りを上げる。 仲間のためにも、当てなければならない。力量が足りぬなら、ただ只管打ち続けるだけ。 司のバウンティショットは、先を行く仁太の弾丸を追うようにゴールへ向かったが、やはりこれもすり抜けてしまった。 「やっぱり厳しいな。でも、松下を助けられるように頑張っていこうぜ!」 鉄 勇人(BNE003744)は凄まじい闘気を纏うと、福松の抑えるボールへと向かって行った。 ――MFを救えるリミットまで。 残り、30秒。 ● ゴールポストが高く上がる。ゴール自体を人体と考えれば、腕を振り上げたとでも言おうか。 それがゴールに近接するリベリスタに襲い掛かり、涼子と天乃は吹き飛ばされた。 そして、ゴールは後衛に位置するリベリスタたちへ向かう。 迎え撃つは、レイチェル、リィン、仁太、そして司。 4人の瞳がそれぞれゴールを狙い、一斉に攻撃する。 「――!」 着弾したのは、半数。そしてそのダメージはゴールに跳ね返され、レイチェルの体を貫く。 同時に、リィンの体が血に染まった。 「跳ね返されたか」 リィンは呟く。『どうやら的当てが得意な人が必要な様だったからね』、その言葉の通り彼はゴールを討つことが出来るのか、それはまだ判らない。 サッカーボールをブロックする勇人と福松にGKが襲い掛かる。 だが、GKの目標は勇人でもなければ福松でもなく。 「まずい!」 GKは渾身の力でサッカーボールを蹴飛ばした。 「うおおお! こい!」 勇人の体にオーラが漲る。向かうは飛来するサッカーボール。 閃くバスタードソード。その腕に無数の刃が突き刺さり、勇人の腕を転がり刃で蹂躙していく。 「ああああああっっ!!」 腕一本を血塗れにした勇人はその激痛に耐えかねるように剣を取り落とした。 「くそっ」 福松の弾丸が飛び。しかし、GKとサッカーボールには当らず、2体のエリューションは勇人に向け、攻撃態勢を取った。 残り、20秒。 血の滴る腕。けれど、苦痛も、焦燥も、後悔も、全て後に回す。 今はただ、この直感を信じ撃つのみ。 「目標に集中を!」 レイチェルの誇りが矢の体を為し、真っ直ぐにゴールポストへと向かう。 瞬くほどの速さで飛んだそれは、ゴールポストの継ぎ目に当たり、ゴールが悲鳴を上げる。 「当たった!」 「じゃあ、僕もいくよ。傷は、多少痛いかな。しかし、手を緩める事は一切しないよ」 手は痛みに震えるが、狙いを定めれば震えも止まる。 放たれた矢はレイチェルが射た場所に突き刺さった。 襲い掛かるサッカーボールに翻弄される勇人。 GKとの連携により、不規則な攻撃は更に複雑になっていく。 福松はサッカーボールを狙うべく“サタスペ”を構えた。 放たれる弾丸。しかし、GKがそれを反射し、福松の肩に銃弾が食い込む。 「くぁ……っ」 「あ――!!」 福松のうめき声と同時に上がる絶叫――。サッカーボールから生えた刃が、勇人の胸に突き刺さる。 倒れた勇人は、最早起き上がる事はなかった。 残り、10秒。 GKが、ゴールを見遣る。 ゴールポストに突き刺さる2本の矢。 彼はサッカーボールを放り投げると、大きく脚を後方へ振り上げた。 蹴られたボールは弾丸の如く、リィンへと向かう。 「させるか!」 横から飛来した物体に、サッカーボールが弾き飛ばされる。物体――いや、それは福松の拳であった。 「ふっ、オレのパンチングも中々のものだろう?」 救われたリィンは、矢を番える。 これでゴールを倒せなければ、MFは――。 最後の手に賭ける。40秒あった猶予、後は自分達の力次第。 「殺さなくてすむか、どうか――」 涼子の暴れ大蛇――しかし、ゴールにはダメージを与えられない。 「当てて見せます」 レイチェルはアーリースナイプを撃つ。直後に痛みが身を襲った。 ゴールはゴールポストを振り回す。 華麗に跳躍し、ポストの角に着地したのは天乃。 ツインテールに結われた髪がふわりと閃く、その全身から気糸が放たれゴールを縛り付けた。 同時に、天乃の体中から鮮血が噴出す。 リィンは矢を放つ。彼は知っていた。『確実に』当てられるのは2人しか居ないことを。 その力に相応しく、矢を命中させた彼は、蓄積したダメージに顔を歪めた。 ゴールがゆっくりと動く。しかし、MFはまだその身の中に収められたまま。 司のアームキャノンが火を吹く。 けれど、ゴールにダメージを与えるには敵わない。 仁太が巨銃を構える。この一撃でゴールを倒さなければ。 「これを当ててこその強運や!!」 グランドギャンブラーの力が火を噴く。 その銃弾はゴールを貫いた――が。 ――タイムアップ。 ● ゴールは、まるで羽ばたくようにゴールポストを外側に開いた。 中から、MFが這い出してくる。けれど、それは最早以前までの彼ではなく――。 「くそっ、間に合わなかったか」 福松が呟く。 ノーフェイスとなったMFは、GKと目配せする。 GKはボールを蹴ると駆け出した。 MFへパスが通り、リベリスタ達へ向け放たれるシュート。 それは地吹雪を上げるように飛び、残像を生み出す。 「うあっ」 「おおっ」 次々にボールに打たれるリベリスタ。 3体の連携が生み出した技は、リベリスタたちへ多大なダメージ与える。 「回復します。これで、仕切り直しましょう」 レイチェルは、自らも受けたダメージを堪えつつ、天使の歌を響かせる。 「あ――」 「くっ」 癒しの力が届かなかったのは、リィン、仁太、司――そして、レイチェル本人。 更に、致命の力をもたらしたダメージ(クリティカルヒット)は、リィンと司の生命力をギリギリまで追い詰めていた。 移動するゴールと近接していた涼子と天乃は、標的をボールに切り替える事も出来ず、その動きを抑える事に終始していた。 否、ゴールが二人をブロックしていたとも言えるかもしれない。 「あっ」 ゴールが再びゴールポストを外側に開くと、涼子の体が宙に浮かぶ。 涼子は抗う間もなくゴールの中へと消えていく。 「……動く、な。吐き出、せ」 涼子を飲み込んだゴールを、天乃の気糸が絡め取る。死を齎すほどの苦しみに、ゴールは呻き、涼子を吐き出した。 解放された涼子の体は力を失い、まるで鉛のように重い。 もう、さっきまでのようには動けない――。 MFのシュートは福松の拳をスルーして更に後ろへと向かう。 ダメージを多く受けたものを優先的に倒す。知性を残す彼らは、そう判断し攻撃の手を打っていた。 司の体に、無数の刃が突き刺さる。 腹にシュートを受けた反動で、そのまま後方に吹っ飛び、司は仰向けに倒れた。 暗闇に落ちていく意識。しかし、フェイトを燃やして意識を呼び戻した。 再び立ち上がった司。その背中が弓なりに反る。 ギシギシと背骨が軋む音がする。口腔に満ちた液体は、血なのか、胃液なのか。鞭のようにしなったゴールポストが司と仁太を吹き飛ばした。 そして――。二度倒れた司は、戦場に戻ることは叶わなかった。 ● 凄まじい音を立ててゴールポストを振り回すエリューション、その風圧までもがダメージとなるほどの勢いは仁太と涼子をなぎ倒す。 そこへ走りこんでくるGKとMF。ボールとの連携技が仁太と涼子も飲み込んで炸裂した。 レイチェルはすかさず天使の歌を施す。けれど、仲間達全てを癒すことは叶わず――。 リィンと仁太はフェイトを燃やし立ち上がるが、涼子の意識は闇の深みへと落ちていった――。 「まずいですね」 レイチェルの唇が小さく動いた。 勇人に次いで司が倒れ、そして今、涼子が倒れた。敵は1体も倒れていないと言うのに、この状況は分が悪すぎる。 考えている間にも敵は動く。 福松の銃口がボールを狙うが、その射線をGKが遮った。 先ほどから何度もこの状況を作られ、福松はボールへ決定的なダメージを与えられずに居た。 ボールを利用して攻撃してくる以上、ボールを狙えばその射線に重なってくる可能性は当然高い。 「くっ」 やむをえず、とばかりに福松はバウンティショットを撃つ。その弾丸はGKの背中を撃ち抜いた。 しかし、GKの走る勢いは変わらず、リベリスタ達はまたも三位一体の技の餌食となった。 「くぁっ」 「うぉぉ!!」 回復が効かぬ身のままのリィンと仁太が倒れる。 仁太の瞳に映るのは、GKとMFの虚ろな瞳。 「誰も傷つけんように、殺してやりたかったんやけどな……」 『すまんな』と呟いた言葉は、最早聞こえなかった。 そして仁太と時を同じく。リィンももう、立ち上がることは出来なかった。 更に、この攻撃は福松までも地へ転がす。 闇の淵が大きく口を開け彼を飲み込もうとするところを、すんでの所で光を掴み取る。 そして福松は立ち上がった。 追い詰められたリベリスタ。 グラウンドには動くことのできなかった仲間たちが倒れる。 残っているのは、3人。敵の数は、4体。 「……駄目か、な」 残った3人――福松と天乃、レイチェルは取り囲む敵から互いを守るように背中合わせに立つ。 「せめて、あいつだけでも倒したい所だったが――」 その視線の先にはサッカーゴール。 あれを残しては、また誰かを取り込むかもしれない。 「このままにはさせん。もう一度戻ってくるにしても、奴を残しておいてはその間に何があるかわからん」 「そうですね……。それに、一体のエリューションも倒せなかったとあっては、遺恨も残ります」 レイチェルが指先でメガネを上げる。 そして、矢を番えた。 「ゴールの弱点は見切りました。必ず――倒します」 渾身のアーリースナイプはGK、MFのガードを掻い潜るシュートの如く、ゴールポストに突き刺さった――。 ――起き上がれぬ仲間を背負い、リベリスタ達はグラウンドを後にする。 グラウンドでは、サッカーボールを蹴る音がいつまでも聞こえていた――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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