●公園の茂みで 「私が訓練を任されたアッシュ軍曹だ。 話しかけられたとき以外は鼻をヒクつかせるな」 「鼻をヒクつかせる前と後に“サー”と言え、分かったか、家畜共!」 「ふざけるな!大声だせ!耳落としたか!」 「まぁ、仕方ない。 貴様らは力を得ていないからな、だが俺は優しくはないぞ」 「だが貴様らが俺の訓練に耐えられたら……各人が我が同士となる。 戦いを切り開く誇り高き尖兵だ」 「その日までは貴様らは糞だ! 貴様らは生物ではない」 「同胞のクソをかき集めた軟糞程度の存在だ!」 「貴様らは厳しい俺を嫌うだろう。 だが、それだけ成長する」 「俺は厳しいが公平だ、品種差別は許さん」 「ネザー、ロップイヤー、アンゴラ、フレミッシュ、俺は見下さん。 すべて価値がない!」 「俺の使命は役立たずを刈り取ることだ、愛する我が部隊の毒草を!」 「候補は腐るほどいる。 分かったか、軟糞共!」 ●現地徴兵 集められたリベリスタ達の視線は、スクリーンに釘付けだった。 「見ての通り、こっちで兵力を育てて何かしようとしてるみたい。 今回はこれを阻止してもらうわ」 なるほど、アザーバイドがゲートを抜けてくる先に味方がいれば心強かろう。 特に現地の情報を知った人間がいるのは戦いにおいて有利だ。 だが、リベリスタ達は一同に口を揃え、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)へ問いかける。 何で兎なんだ? と。 「以前、兎の姿をしたアザーバイドが一度ここに姿を現して被害をもたらしたの。 一応捕虜の形にして捕まえてから送り返したら、反撃にやってきたわ」 生きて返したのに、お礼参りとは酷い話だ。 「その時も幸いリベリスタ達の力で事無きを得たわ。 暫く音沙汰がないと思ったら……今度は真面目にじっくりと戦うつもりみたいね」 先程の映像を解説しよう。 アッシュと名乗った兎は成人男性ぐらいの体躯をした二足歩行の兎だ。 そして、彼が演説を聞かせていた相手も……兎である。 勿論、何の変哲もない、有り触れたそこら辺にいる兎。きっと食べても大丈夫、だが筆者が兎好きなのでご遠慮頂きたい。 「残念だけど、現地に着いたときには敵となった兎達がいるはずよ」 次にスクリーンへ映し出されたのは、戦場となる公園の地図だ。 四方に何かの装置が設置されているが、通り過ぎる人々が気づく様子はない。 「この装置を使って一般人が視認したり、近づかない様に操作してるみたいね、それとこっちも見て?」 コンソールを細い指が踊り、別の写真が映し出された。 中央の広場に、大型の四角い枠の様な装置が置かれている。 そこから伸びたケーブル類が傍の大型端末装置へ繋がり、制御しているようだ。 「中央にあるのは、上位チャンネルへ長時間のゲートを開くための装置みたいね。 それとさっきの装置にエネルギー制御の装置も入っているみたいなの」 ここで育てた兵士を上位チャンネルへ送り、更なる強化を行ったり、増援を呼び出し確固たる拠点を築き上げるのが目的だろう。 「今回はこの制御装置の破壊が目的、この装置さえ壊してしまえば兎達も元の兎に戻るみたいだから一石二鳥でカタが付くわ」 勿論、兎達と真正面から事を構えるのは得策とはいえない。 実力や経験が上回ろうとも、数の暴力は圧倒的だ。この公園にはかなりの数の兎達が常駐しており、数は集まったリベリスタ達より遥かに多い。 「攻撃して壊すにしても硬いから時間が掛かりそうね……、その代わり操作したり、分解した方が早そう。手段は任せるわ? でも、侮らないでね?」 兎とかくれんぼのスタートである。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月04日(金)23:59 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●兎とかくれんぼ 誰も寄り付かぬ公園、そこには無数の凶暴兎が兵士となって占拠しているのだ。 ふわふわの毛皮につぶらな瞳、長い耳が可愛らしいが成人男性サイズで二足歩行、オマケに銃火器を握っているのだから可愛げもあったものじゃない。 そんなところへ姿を現したのは、事態を収束すべく集められたリベリスタ達だ。 北の入り口から静かに進入し、茂みに滑り込んだ『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)がハンドサインで他のメンバーを呼び寄せる。 続けて『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)、『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)、離宮院 三郎太(BNE003381)の3人がディートリッヒの下へ向かい、少し間を置いて『下策士』門真 螢衣(BNE001036)が向かう。 「反応はしていましたけど、姿までは見えませんでしたね」 北の入り口の時もだが、彼女のコントロールする雀が先行偵察を行っていたのだ。 そのまま周辺を飛び回った雀に、兎達が襲い掛かる事は無いが、空からの外敵に警戒する本能の名残か、茂みが動くのが見えていた。 尚の事注意深く進もうと5人は足元に気をつけながら、静かに、静かに潜行していく。 茂みの中で迂回を繰り返しながらも、無事に装置の場所まで到着。 一見回りには誰も居ないように見えるが、ディートリッヒの合図に合わせ、フィネが可愛らしい短弓を構えた。 矢にはペットフードが括り付けられており、何かに当たれば簡単に餌が零れるだろう。 傍の木の幹へ狙いをあわせれば、引き絞った弦を離す。 シャッと僅かな風切りを響かせ、矢は小気味いい音と共に着弾、餌をばら撒いた。 静寂だけが過ぎ、敵の気配も物音も無い。 「行くか」 優希の合図にそろそろと装置へと5人が接近。 なるべく物陰や茂みに隠れる様にしつつも、辺りを警戒し、作業が始まる。 (「まずは……」) トンファーに宿した電撃を素早いスイングで振りぬき、装置を叩きつける。 なるべく音が響かぬ様に気配りしても、何分限界というものはあった。 ガキンッ! と甲高い響きが流れてしまう。 「何か来ますよ……!」 三郎太の視野に収まった茂みがガサゴソと揺れ始め、近づく距離を示す様に幅が大きくなっていく。 基本的に全員小声、抑えた音声がメンバーにだけ響き、息を殺し身を潜める。 「……」 間もなくして茶色い兎兵士が現れ、手にはライフルが握られていた。 口には何か加えているのが見えるが、茂みや角度からはっきりとは見えない。 ぽふぽふと柔らかな足音を響かせ、装置に近づいた瞬間、そこに潜んだ優希が素早く回し蹴りを放つ。 風の刃が兎の脇腹を抉り、よろめいたところをディートリッヒのナーゲルリングが振り下ろされた。 一瞬の踏み込みから、勢いの乗った一撃が頭頂部に見事直撃、白目を剥きながら兎は草のベッドにオヤスミだ。 「……アスパラ」 フィネの目に飛び込んだのは、先ほど兎が銜えていた物。 ちょっとしたオヤツなのかもしれないと思うと、やはりまだまだ兎なのだなと思わされるところだろう。 兎を茂みに隠すと、今度は土砕掌をテスト。ズンと重たい響きだけだが、今度は一撃で壊れたらしく、装置の電子音が沈んでいくのだった。 ●食わせろ 「よし、開いたぜ」 金網を静かに切断し、『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)が進入路を確保した。 必要最低限の穴を3人は潜り、西側の攻略を目指す。 (「電気はそれなりに効く様で、直接中に衝撃が届く様なものの方が効果が高いみたいですね」) AFからの連絡を受けた『虎人』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)は、西側からのルートを進んでいく。 先頭に立ち、奇襲に警戒しつつ、神経を研ぎ澄まして敵の位置を探る。 ここにいる見張りと自分達の数では圧倒的に振り、隠密行動に徹していた。 東屋付近まで到達と、ここから先は『羊系男子』綿谷 光介(BNE003658)の出番だ。 「では、行ってきます!」 小声ながら気合十分に缶詰を握り締め、東屋へ接近を続ける。 抜き足差し足忍び足、静かに進めど、中々上手くいくものではない。 例えば古典的に、足元に転がっていた小枝を踏み抜いてしまったりすることもあるのだ。 「……っ!」 思わず声が出そうなところを飲み込み、抑える。だが歩哨兎の1体が気付いた様で、彼の居るところへと接近し始めている。 (「ヤバイッ!」) こんな時の為にと猛は準備したミュージックプレイヤーのスイッチを入れ、光介から少し反れた場所の茂みにそれを投げ入れた。 茂みの音に、零れる音楽は兎の耳を惹きつけ、小枝の注意を消し去ったのだ。 猛のフォローに感謝しつつ、再び光介は東屋に到着すると缶を開け、足早に移動。 (「危なかった……」) 等と思っていれば、再び災難は訪れた。交代にやってきた兎が角を曲がった瞬間に鉢合わせ。 何故このタイミングなのか? 考える暇も無く、兎は手にしたナイフを突きたてようと迫る。 (「そうはさせませんよ」) だが、それは叶わない。移動しながら集中力を研ぎ澄ましたセシウムの銃が、兎の頭部を狙い撃ったのだ。 それでも一撃で沈めるには難しい、更に猛が蹴りを振りぬき、放たれた真空刃が兎へと迫った。 あっという間に兎の背中に吸い込まれた刃は兎の毛皮を切り裂き、肉を抉る。 崩れ落ちる様に卒倒する兎を光介が抱え込む、倒れた音を聞かれては面倒だからだ。 「危機一髪だったな」 小声で声をかけつつ茂みから姿を現した猛と共に、光介は兎を茂みへと引き込んでいく。 これなんだ? ん? 食い物じゃね? マジで? こんなのみたことねぇぞ? でもいい匂いだ、俺食うわ。 ちょ、おま。 ……ウメェ。 マジかよ、よこせよ。 ふざけんな、倉庫のニンジンでも食ってろ。 何だとこの野郎! このやり取りが、無言の身振りのみで行われていた。 ともかく兎達は光介の缶詰の取り合いをはじめ、見張りなんて全力で放り投げている。 『お、お腹が空いたら、食べちゃえばいいと思うよ……!』と、可愛く祈っていた光介の祈りを全力で聞き入れた結果に、呆気に取られつつも、装置へと移動するのであった。 ●腐っても兎 「兎は5体です。3体は巡回し、2体は茂みに潜んで見張っていますね」 蛍衣は雀から得られた情報を小声でメンバーに伝える。 数は同数、上手く事が運べば一気に倒すのも難しくは無かろう。 当初の予定道理、優希が先行し、兎達の目を盗んでは影から影に移る。 そして、射程に収まりきるところへ近づいた瞬間、作戦開始だ。 「こっちだ兎共」 再び放たれる電撃の殴打、流麗な連続攻撃は兎達を一気に呑みこむかの様に見えた。 だが、この兎を育てたのは以前彼を苦しめた兎達だ。三羽は得物で受け止めたり、素早いバックステップで回避したりと、一筋縄には行かない。 続けてフィネが全身から不吉なオーラを放ち、撒き散らしていく。赤い月を思わせる輝きが、兎達を苦しめるが、それでも全てヒットとはいかず、三羽にヒット。結果1体は倒せたのはまだ良い結果だろう。 「我が符より、六つ出でて穿て鴉」 蛍衣は鴉の僕を符から生み出し、残った兎へと追い討ちを掛ける。 無傷の兎に当たるが、直撃した事は大きい。勢いで地面を転がるほどだ。 この奇襲、更にディートリッヒが続く。 「こっちだぜ!」 敵を探し、辺りを見渡す兎へ茂みから飛び出しながら強烈な縦一線を放つ。 ゴゥッ と風巻く刃は盾にした突撃銃を粉砕しながら兎へと突き進む。 直撃の衝撃で、兎の足が地面にめり込むと……そのまま膝から崩れ、地面に沈む。 三郎太は攻撃には参加せず、EPを消耗した仲間の回復に専念する。 意識を集中し、ディートリッヒの意識とシンクロさせることで自身の力を分け与えていく。 手数の消耗も大きいが、破壊力を失うのは惜しい。 先程の装置破壊で消耗した優希のEPも、同じ手段で回復済みだ。 援護に徹しつつも、更なる危機は襲い掛かる。 「中央の兎がこっちに向かってきてますね」 雀からの情報を蛍衣が告げる。 戦闘の物音に気付かれたのだろう、だが何かまでは察していないようだ。 「さっさと片付け……っ!」 弾丸を受け流し、拳を避け、反撃を凌いでいた優希の腹部に兎の拳がめり込む。 込みあがる吐き気を抑えながら、兎達へトドメの壱式迅雷を見舞う。 「隠せっ!」 まだ装置を破壊していないところで気付かれるのはよろしくない。 ディートリッヒの合図で一斉に兎を引きずり、茂みに隠せば各々も茂みに身を潜める。 辿り着いた歩哨兎は、口元をもごもごさせながら辺りを見渡し、異変を察しきれぬまま遠ざかるのであった。 ●兎ラッシュ 東側、西側共に危機を脱すると装置の破壊を完遂。 猛と優希の土砕掌が内部を破壊し、これで3機破壊。 中央の破壊で本作戦は終了だ。 「うぉぉぉっ!!」 優希が雄たけびを上げながら突撃し、中央の前衛へと躍り出る。 ギロリとつぶらな瞳が彼を睨みつけ、もごもごしていた口から一斉に何かを吐き捨てた。 ……ガムである。 (「もふもふなのにガム……!」) 兵士というよりは最早ならず者だ、一体どんな教育を受けたのやら。 それはともかく、一斉に彼に向かって長銃と拳銃が火を噴いた。 同じく前衛に立つディートリッヒの背後に蛍衣が続き、巣穴が視野に収まる様に立ち回る。 「ぐぅぅ……っ!!」 弾丸の嵐、得物で弾丸から身を守りつつもラインを維持するが、激しい勢いだ。 鼻をヒクつかせながら、攻撃の手が止まる兎達は巣穴の方へと視線を向けた。 (「今です!」) 素早く巣穴へと駆けるとAFから錘を出現させ、巣穴へ蓋をする。 全部にするような余裕は無いが、直ぐに下がり、相手の増援を妨害に成功。 反撃といわんばかりに彼女の背後を狙う兎へ、ディートリッヒが立ち塞がる。 「ナイスだ!」 簡単にあの錘は退けそうに無い。 銃と剣の鍔迫り合いの最中、兎を薙ぎ払い、侵攻を阻んでいた。 一方こちらは西側、けたたましい戦闘音が響く中、徐々に敵兵を中央から引き剥がしていくのを息を潜めて見守る。 (「以前の事はしりませんが、恩知らずは鍋にしてやった方がいいんじゃないですかねぇ……」) 殺さず送り返して、再びこの騒ぎ。 セシウムは今度こそ痛い目にあわせるべきだと、心の中で呟く。 しかし、筆者が兎大好きなのでお許し頂きたい。 騒ぎに乗じて回り込む様に茂みの中を動き、開けた場所に出るのはあくまで最後だ。 「ここからなら届くんじゃねぇか?」 猛は光介に次の作戦を促す。 「そうですね……」 取り出したのは発煙筒だ、巣穴に投げ込めば増援を阻害できる可能性がある。 少なからず視野はある程度潰せるだろう。視線が消える瞬間をセシウムが計り、合図に合わせ筒が投げ込まれた。 「行くぜ!」 小声の合図と共に煙の中へと猛が飛び込む。 中には兎が2羽、煙に咳き込んでいるところへ吹き荒れる電撃の乱舞。 猛が振るう拳は正に嵐の如く兎達を叩きのめす。 鳩尾を叩き、浮いた体に体当たりをかませて突き飛ばし、首へ回し蹴り。 傍にいたもう一羽には足払いから左アッパーを顎に叩き込み、浮いた体へ渾身の右ストレートだ。 無論ターゲットを見失っている兎達は、得意のCQCを決める事は叶わない。 「寝ててください」 「これで!」 セシウムの弾丸と光介の矢が空気を押しやり、兎の体へと吸い込まれる。 起き上がろうとした兎達は再び地面に叩きつけられ、起き上がることは無かった。 しかし、セシウムの弾丸はあえて喉元を狙ったのは……あくまで、声を出されるのを妨害するものと思いたい。 「これで終わりだ!」 内部から体内を破壊する掌打が、中央に設置された装置に叩き込まれる。 ズズン! と鈍い響きが装置の中で木霊し、一間空けてから何かが割れる音が連鎖していく。 電源が沈んでいく中央の円形装置と、制御用の装置は次々とランプが消えていき、機能を失う。 (「これで終わりましたけど……後は僕達が耐えれるかどうかですね」) 戦いは終わっていない、這い出てきた兎達は煙にむせ返り、こちらを見失っているので防御体制を続ければよいが、問題は既に外に出ている兎だ。やり過ごした北東の兎に南や西に残った兎達が一斉にここに殺到することになる。 「終わったようです、後は耐えるのみです」 三郎太がAFからの通信を皆へと告げる。 戦線は維持しているが、前衛の消耗は激しい。 巣穴から這い出た兎がひっきり無しに襲い掛かるのだから。 蛍衣が穴を埋めたのは一つとは言えど、消耗はそれだけでも結構下がっている。 今も何度目か分からないEP補給を優希へ施すと、今度はディートリッヒの方へと彼もひっきりなしに忙しい。 併せて負傷も大きく、ディートリッヒは蛍衣から傷の手当ても受けていた。 そんな中、轟音が響いたのは背後からだ。 「そっちか!」 北東から全力疾走で駆け抜ける兎達。二足歩行の獣が腕を激しく振りながらやってくれば、こちらを見つけると同時に手榴弾を投げ込んでくる。 オマケにどこかで見たことがあるような安いロケット砲そっくりの武器を構え、容赦なく引き金を引き絞ってきたのだ。 巻き起こる大爆発、隣に居たはずの優希の姿が見えなくなる程の一斉攻撃は、前衛の体力を根こそぎ奪おうとするかの様だ。 それでも彼は倒れない、愛剣を杖の代わりに体を支えながらも立っている。 煙が晴れると目の前には、二丁拳銃で飛び掛る兎。 相当走ったのか涎が散っている必死具合、やられてなるものかと彼も刃を横薙ぎに放ち……。 ぽんっ! 間の抜けた音と共に、目の前の兎は元の兎に変わる。 「うぉぉっ!?」 隆々とした両腕の筋肉が寸前で刃を停止させ、ロップイヤーラビットが彼の腕にしがみ付く。 がしがしと爪を引っ掛けながらも、安定するポジションを確保すれば鼻を引くつかせながら大人しくなった。 「終わった、みたいだな」 全ての煙が晴れれば、少し離れた場所に吹き飛ばされた優希の姿があり、周りに散ったただの兎に目を輝かすフィネの姿も見える。 「も、もふもふまみれ……っ!」 以前の時と違い、完全に可愛らしいただのウサギの群れは、少女の心をたっぷりとトキメかせていた。 色様々な兎達、先程までの物騒な様子は一切無く毛皮の固まりに近い彼らが無邪気に草の上を転がっている。 手近にいたアンゴララビットへと手を伸ばす、モップの様に弾けた柔らかな毛皮が愛くるしい兎は抗うことなく少女の腕に包まれる。 満面の笑みを浮かべ、頬を摺り寄せるフィネは、最大の報酬を手にしたようだ。 「おぉっと……!」 こちらもダウンした兎へ追い討ちの拳を振り下ろそうとした猛だが、喧嘩慣れの直感がギリギリでストップさせる。 足元には暢気に足元の雑草を貪るネザーランドラビット、辺りは兎塗れだ。 「どうすんだろうな、これ」 兎の対応は聞いていない。 本部に確認しつつ、今日の戦いは幕を引くのだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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