下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






『白面』欲望を叶えるモノ


 力が欲しかった。
 皆を守れるだけの力。
 誰にも守って貰わなくても一人で戦える力。
 もう、此れ以上仲間に迷惑なんて掛けたくなかった。
 そう、思っていた筈なのに。

「あなたの力が欲しいの」 
 独りぼっちの暗い場所。
 映写機が映しだす光景を見ているような。
 何処かリアルのない世界。
「あなたの力が欲しいの、頂戴」
 映しだされた光景は。
 私じゃない私が、夜の町で誰かを襲っている場面。
 また、やってしまったらしい。
 ズキリと心が痛む。
 ごめんなさいと心の中で一心に私は只、謝り続ける。
 私の目も、口も、手も、足も。
 もう、私の自由にはならない。
 どんなに此処で叫んでも、私は止まらない。
 誰か。
 誰でも良い、私を止めて。
 そうでないと、私はどんどん罪を犯していってしまう。
 ――誰か、私を殺して。


「厄介なアザーバイドが出現したわ」
  『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタ達を見ながら言う。
 厄介、というその言葉に集まったリベリスタ達の表情が自然、引き締まったものになる。
「敵アザーバイド『白面』はある世界で造られた、仮面型の擬似生命よ」
 白くのっぺりとしたその仮面――白面は、人間に取り憑くのだという。
「白面に取り憑かれた人間は、身体の自由を奪われるのは勿論。
心のなかに仕舞い込んでいた欲望をさらけ出されてしまう」
 さらけ出される?とリベリスタ達の内の誰かが聞いた。
「例えば、お金が欲しいという欲望があったとするわ」
 そうすると、白面は取り憑いた人間の『お金が欲しい』という欲望。
 其れを叶える為にお金を集めようとするのだ。
 勿論、世間一般的に言う合法的なお金を集める手段で、では無く。
 強盗、殺人、欲望を叶える為に白面はありとあらゆる手段を使う。
 そして其の行動は、欲望を叶えるまで決して止まりはしないのだ。
「普通の人は、良心の呵責に耐え切れず遠からず心が壊れてしまうわ」
 そうして心が壊れ、廃人化した身体は朽ち果てるまで白面の思うがままにされてしまう。
「白面は現在、とある小規模リベリスタ組織に所属する少女に取り憑いているわ」
 少女の名は茉莉(まつり)。
 自分のリベリスタとしての才能にコンプレックスを持っていた彼女は、常に『力』を求めていた。
 白面はそんな彼女の、力が欲しいという欲望を叶えるべく。
 次々とリベリスタ達を襲撃しては、殺害しているのだという。
「此れ以上被害が拡大する前に、貴方達に対処をお願いしたいのだけど」
 一つだけ気をつけて、とイヴが言葉を続ける。
「白面にとって、茉莉の身体はあくまでも器でしかないわ。
茉莉を止める事だけに囚われて、仮面自体を破壊しなければまた別の誰か
――最悪貴方達の誰かに取り憑いてしまう事だって十分に考えられる」
 ミイラ取りがミイラになる、ということらしい。
 そうなってしまえば、今度は仲間同士で戦う事にもなりかねないだろう。
「倒す方法は二つ」
 一つは、茉莉を完全に無力化した上で白面のみを破壊する事。
 こちらは、如何にして茉莉を無力化するかが重要になるだろう。
 そしてもう一つは、躊躇わずに茉莉ごと纏めて叩き潰す事。
 非常にシンプルだが、場合によっては茉莉は死んでしまうかも知れないだろう。
「絶対に気を抜かない事。其れと、敵は茉莉の欲望から生み出した
自分の分身とも言える配下を何体か引き連れているから気をつけて」
 配下達は、白面同様顔のないヒトガタで。
 一体一体の戦闘力はさほどでもないが、数を武器に襲い掛かってくるのだという。

「かなり、危険な戦いになるかもしれないけど」
 きっと貴方達なら大丈夫だと信じているからと。
 そう、最後に呟いてイヴはリベリスタ達を送り出したのだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ゆうきひろ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月29日(日)23:32
皆様こんにちは、ゆうきひろです。
それでは今回の事件概要を説明致します。

■成功条件
敵アザーバイド『白面』の撃破。

■白面
とある世界で産み出された白くのっぺりとした仮面型の擬似生命体。
人間に取り憑き、その『欲望』を糧に力を得る特性を持ちます。
取り憑かれた人間は、身体の自由を奪われ白面にされるがまま。
其の肉体が朽ち果て生命活動を停止し、
完全に使い物にならなくなるまで決して解放される事はありません。
取り憑かれた人間を解放する手段は、その命を奪うか。
取り憑いた白面のみを破壊する事。

■茉莉
白面に取り憑かれたフリーのリベリスタ。
自分の弱さにコンプレックスを持っており、常に力を求めていました。
種族はジーニアス。
ジョブは覇界闘士、棍を使った近距離戦闘を得意としています。
彼女自身はそれ程強いリベリスタではありませんでしたが
現在は白面のEXスキル【リミッター解除】によって、肉体のリミッターを解除され
通常のリベリスタ達よりもかなり強力な力を手にしています。

EXスキル【リミッター解除】
全能力値を大幅に上昇させる。但し、行動する度に『反動:50』付与。

EXスキル【感覚遮断】
其の名の通り感覚を遮断。『怒り』『混乱』のBSを無効化します。

■ヒトガタ
白面が『力が欲しい』という欲望を円滑に叶える為に生み出した分身です。合計6体出現。
人を模した影の中に、白面同様の仮面が浮いている様な奇妙なアザーバイド。
彼等も覇界闘士のスキルを使用しますが、茉莉程の力はありません。
又、白面が破壊された場合全てのヒトガタは消滅します。

■場所
深夜の市街地の一角。
人通りは殆どありませんが戦いが長引けば人目に触れる可能性もあります。

情報は以上となります。
それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
★MVP
デュランダル
四門 零二(BNE001044)
インヤンマスター
茶野 幸太郎(BNE001945)
プロアデプト
讀鳴・凛麗(BNE002155)
インヤンマスター
小雪・綺沙羅(BNE003284)
ダークナイト
ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)
覇界闘士
四十九院・究理(BNE003706)


 覇界闘士であり、棍使いでもある茉莉。
 仲間達と共にコーンの設置等を行い周辺の封鎖を行いながら、未だ見ぬ彼女が
自分に似ていると呟いたのは『じゃじゃ虎ムスメ』四十九院・究理(BNE003706)だ。
 自らもまた、力を求め其の欲望を糧に前へ前へと進んでいると。
 究理は思う。
 間違っているのは、彼女の欲望ではなく『叶え方』なのだと。
「力を得たいというその気持ち、私にも分かるわ」
 『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が究理に頷く。
 自分もまた、力を得る為に至らない身で日々精進を重ね続けている。
 だからこそ、紛い物の力を得て思いを利用されるなんて悔やみきれないとミュゼーヌは思う。
「1人でも戦える強さが欲しい、そう思う時はありますが」
 でもきっと、誰かを信じて頼れる事も強さと『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155)が言う。
 戦う事、守る事、癒す事、考える事。
 自分は大抵中途半端だけれど、だからこそ誰かを頼る事が出来るのだと。
「彼女にもきっと守りたい仲間がいらっしゃいますものね」
 信頼する力をどうか茉莉に取り戻してあげたいと、そう凛麗は思うのだ。
「力ね」 
 其れってそんなに必要?と言うのは『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)だ。
 閃きや才能なら欲しいと思わなくも無いけど、力なら無くても何とかなると綺沙羅は思う。
 そもそも、目に見える力だけが強さではない。
 他者を守る事でモチベーションを保つ者もいれば。
 圧倒的な力を持ちながら其の力に溺れ、過信し、仲間を危険に晒す者もいる。
 力と強さはイコールしないのだ。
「オレ思うんだけどさ」
 茉莉の考えてる事は間違いだと『寺生まれの茶野くん』茶野 幸太郎(BNE001945)。
 誰にも守って貰わなくても一人で戦える力なんて大間違いだと幸太郎は言う。
 人間はそもそも、他人に迷惑をかけて生きる生き物なのだ。 
 本当の意味で一人きりで生きていける人間などこの世界にはきっと居ない。
「オレ等は弱い生き物なんだからもっと他人を頼ってもいいんだぜ」
 オレなんか超弱いから将来の夢はヒモだからなーうへへーと。
 そう、おどけながら笑う幸太郎を見て、仲間達の気持ちが少し和らいだ気がした。
「誰しも様々な『欲望』を心に秘めるもの」
 だが、それのみにあらずと『闇狩人』四門 零二(BNE001044)が言う。
 人間には仲間を想う心が、友を信じる心――絆が、『希望』があるのだ。
 其れを茉莉に伝え無くてはならないと零二は思う。
 きっと、茉莉の仲間達は茉莉の事を迷惑だなんて思っていないだろうから。
「茉莉様は死を望んでおられましたけれど」
 そう言うのは『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)。
 自分自身の強くなりたいという思いが引き金になって、周囲が傷ついていく。
 只見ているだけしか出来ない茉莉が死を強く望んでしまうのは当然なのかもしれない。
 しかし、シエルは思うのだ。
 諦めないで、と。
 其れは自分自身のエゴなのかも知れない。  
 だが、例えエゴでも構わないのだ。
 自分には伝えたい気持ちがある。
 其れを伝える為にも、茉莉を死なせる訳には行かない。
「このアザーバイドがどんな目的でこの世界に送り込まれたかは知らないがな」
 只、害しか産み出さず人の思いを利用する存在ならば。
 排除するだけだと『系譜を継ぐ者』ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)が言う。
「周辺の封鎖も完了した。そろそろ仮面の呪縛からマツリを救い出しに行くとしよう」
 リベリスタ達の迅速な行動で、既に周辺は封鎖されている。
 此れで偶然、戦場に何も知らない一般人が迷い込んでしまう事も無いだろう。
 後は、白面を破壊し茉莉を救出するだけ。
「まだ、少し時間があるから今のうちに準備を整えるべき」
 感情探査。
 茉莉が此処を訪れるまで未だ少し時間がある事を察知した綺沙羅が仲間達に言う。
 其れに頷いた仲間達が各々の準備を整え、敵の襲撃に備え始める。
 

「あなた達の力が欲しいの」
 背後からか細い少女の声が響く。
 来たか、とリベリスタ達が背後を振り向き、声の主を見据える。
 夜の闇の向こうから現れたのは、金属製の無骨な棍を火花を散らしながら引きずり歩く
白くのっぺりとした仮面『白面』をつけた少女――茉莉。
「あなた達の力が欲しいの、頂戴」
 壊れて狂ったラジカセの様に、同じ言葉を繰り返す。
「断る」
 力が欲しいと言葉を繰り返す茉莉に零二が言葉を返す。
「俺達は茉莉、君を助けに来た。其の仮面の欲望を満たす為じゃない」
「茉莉様」
 シエルが一歩、意を決した様に前へ出る。
「頂戴、頂戴、頂戴。あなた達の力が欲しいの、頂戴」
「茉莉様……聞こえますか?」
 只々、頂戴と繰り返す茉莉にしかしシエルは言葉を続ける。
「人は人である限り……独りではどうしようもなく弱いのです。
でも……人は皆で力を合わせる事が出来る……故に強くなれる」
 其れは、茉莉に伝えたかった言葉。
 貴方は独りではないのだと。
「貴方様の『心の力』……私達に見せて下さいまし!」
「茉莉さん、貴方の力が欲しいという気持ちは凄く良く分かるの。
でも、だからこそそんなものに負けないで、気を強く持ちなさい!」
 シエルに続くようにミュゼーヌが茉莉に呼びかける。
「誰でも失敗をし、自分は無力だと考える瞬間があります」
 でも、そこで諦めなければ、その人は強くなれるのだと。
 そのチャンスを掴む為にも貴方を助けてみせると凛麗が言う。
「頂戴、頂戴、力を、強さを、頂戴」
 茉莉の、否――白面の返答は変わらない。
 其れでも。
「茉莉、強くなりたいんだろう。だったら負けるな!
お前の気持ちを利用してるその白面は私達が打ち壊すから!」
 フォーチュナは言った。
 白面を倒す方法は2つ。
 茉莉ごと白面を破壊する事と、白面だけを破壊する事。
 二択を迫られた其の時から究理の、リベリスタ達の答えは既に決まっていた。
「お前は私達が止める。助かる望みが少しでもある限り、この手が届く限り」
 必ず救ってみせるからと究理が吠える。
「この戦いが終わったら、言いたい事もあるしさ」
 白面を前にし、少し恐怖を感じながらも幸太郎は変わらない。
 仮面の所為で其の顔までは伺う事こそ出来ないが。
 強くなる為、努力を欠かして無かったのか茉莉の程よく引き締まった身体に胸が高鳴る。
 超直感まで使って計ったスリーサイズは流石にこの雰囲気の中言えなかったのか。
 幸太郎は心のなかに仕舞う事にした。
 傍から見れば馬鹿にしか見えなくても。
 可愛い女の子を助ける事に、幸太郎は躊躇いはない。  
「そういう事だ。悪いが、マツリは解放して貰うぞ白面。仮面の呪縛は此処で俺達が解く」
 ハーケインが茉莉ではなく、白面に向けそう言い放つ。
 其の言葉に、只々言葉を繰り返し続けていた茉莉の動きがピタリと止まった。
「茉莉?」
 もしかしたら、自分達の言葉が茉莉に届いたのかも知れないと究理が茉莉に近づいていく。
 が。
「違う、離れて!」
 綺沙羅が唐突に声を上げる。
 其の声にハッとした究理が茉莉から距離を取った、其の刹那。
 究理が一瞬前まで居た場所を恐るべき業火を帯びた茉莉の右腕が薙ぎ払った。
「この……外道!」
 騙し討ち。
 自分達の茉莉を助けたいという思いを利用してあわよくば葬ろうとしたのだろう。
 足元に落とした棍を蹴りあげ、構えを取る白面にミュゼーヌが激昂した。
「クカカカカ! 仲間に感謝するのだな、小娘。危うく我に殺される所だったぞ?」
 おおよそ茉莉本来の人格とは思えない口調で茉莉が高笑いを上げる。
「其れがお前の本性か、白面」
 零二が白面を睨みながら言う。
「如何にも、我は白面。人の飽くなき欲望を叶えるモノなり」
 白面の足元から闇が生まれ、ズルリと6体の仮面をつけた影――ヒトガタが浮かび上がる。
 其の全てが同じ様に影から生まれた様々な格闘武器を携え、構えを取る。
 其れを見たリベリスタ達もまた各々の武器を手に取り、戦いが始まった。


「クカカカカ! 感じる、感じるぞ。お前もまた力を欲する、欲望に取り憑かれた愚か者なり」
 白面が、棍を手にミュゼーヌの間合いへ一気に滑りこんでゆく。
 肉体のリミッターが強制的に解除され、常人を遙かに上回る瞬発力を以って。
 ミュゼーヌが回避する隙すら与えずに、強烈な棍の一撃を与えんとする。
 避けられないと悟ったミュゼーヌが即座に防御の構えを取るも。
 大雪崩落。
 防御の其の上から、棍が叩きつけられ痛みに思わず顔が歪む。
 まるで雪崩に飲み込まれたかの様な衝撃。
 動けないミュゼーヌを強引に、そのまま地面に叩きつける。
「他愛無い。どうだ、我の力を手に入れてみないか?そうすれば強くなれるぞ」
 そう言う白面の手は、棍を強く握りしめすぎたせいか血が滲んでいる。
「絶対にお断りよ」
 強い意思を持って、白面にミュゼーヌが言い返す。
「其の遠吠えが何時まで続くか見ものだな、クカカカカ」
 白面に続く様に、ヒトガタの一体が手にした武器を構えハーケインに向かっていくも。
「紛い物に用はない」
 ヒトガタなど、眼中にないと迫りくる攻撃をハーケインがいなす。
「闇に沈め」
 返す刃で確かな質量を持つ漆黒の闇をヒトガタ達に向け、放つ。
 迫りくる闇を察知した白面と3体のヒトガタが即座に距離を取る。
 反応が遅れ、残された3体のヒトガタはそのまま闇に呑み込まれて行く。
「クカカカカ! 後一手、我に届かせるには足りないぞ!」
 流石に、全て纏めてとは行かないかとハーケインが口惜しそうに言う。
 しかし、其れでも幾つかのヒトガタには手傷を負わせる事は出来た。
 後は、仲間が続いてくれる。
「影といえど、正々堂々と対峙させてもらうぞ」
 先ほどのハーケインの攻撃で隙が生まれたヒトガタの内の一体へ究理が迫る。
 流水を思わせる構えを以って精神を集中し、茉莉と同じ棍を手に強く雄々しい炎を纏う。
 そうして炎を纏った棍をそのまま眼前のヒトガタに浮かび上がった白い仮面に叩きこむ。
 叩きこまれたその先から、仮面にヒビが入り砕け散る。
 仮面が砕け散ると共にヒトガタの影の様な身体もまた、呻き苦しむように霧散した。
「これで、一体!」
 棍を構え直し、お前の思い通りになんてさせないと白面を究理が睨む。
「一体倒しただけで何だと言うのだ、そら、まだまだ此方の攻撃は続くぞ」
 白面の其の言葉通り。
 ヒトガタ2体が同時に動き、前衛に立っていたリベリスタ達を倒さんと。
 圧倒的な速力を武器に雷撃を纏った武舞を次々に撃ちこんでいく。
 左右から繰り出される息をつく暇すら与えぬ、凄まじい連続攻撃。
 既の所で躱しきったミュゼーヌを除く究理、ハーケイン、零二の3人が怒涛の攻撃の嵐に飲み込まれていく。
「コイツらに構っていたら、何時までたっても茉莉さんを救えない」
 頷いた綺沙羅が、味方を巻き込まない様に気をつけながら。
 其の手に携えた閃光弾を白面やヒトガタに向け投擲する。
 瞬間、目を眩ませる凄まじい光が放たれ白面やヒトガタ達の動きが完全に停止した。
「勿論これで終わりじゃない」
 続くミュゼーヌがヒトガタ達から僅かに距離を取り、リボルバーマスケットを構える。
 ロングバレル・ロングストック化された其れは。
 フランス銃士隊で活躍した祖先に倣い、マスケットを模した特注の中折れ式リボルバーだ。
 マスケットの銃口が火を吹き放つのは、銃撃の嵐。
 蜂の襲撃の様に襲い来る銃弾は閃光弾に苦しむ白面を、ヒトガタを、等しく撃ち抜く。
 手傷を負わされていたヒトガタ達がその一撃で仮面を砕かれ、消滅していく。
「今、傷を癒します」
 シエルが天使の歌で仲間達の傷を癒し、更に幸太郎が守護結界で後押しをしていく。
 傷を癒され、万全の態勢を整えた零二が残ったヒトガタ達に狙いを定める。
「オレは自身の力量よりも、支えてくれる仲間を信じている」
 例えまた傷ついたとしても、その時は仲間達が傷を癒してくれる。
 愛用のバスタードソードを手に、残像を伴う程の速度で零二が次々にヒトガタを斬り刻む。
 そうして斬り刻まれたヒトガタ達が、次々に仮面が砕け霧散していく。
 が、白面だけは傷ついた身体を無理矢理に動かし零二の鋭い剣戟を躱す。
「クカカカカ! 惜しかったな」
「オレは一人で戦っているんじゃない。オレの刃が届かないとしても」
 仲間が其れを補ってくれる。
 その零二の言葉に応えるように、凛麗が動く。
 茉莉を傷つけぬ様に、精密に放たれた気糸が白面の仮面のみを貫かんとする。
 気糸は貫く事こそ出来なかったものの確かな衝撃と共に白面を大きく仰け反らせる。
 しかし、其れでも白面は何事も無かったかのように。
 肉体の限界を超えた動きで飛び上がり、そのまま態勢を整え直す。
「僅かに傷を癒した所で、意味など無いと教えてやろう」
 身体の麻痺を早々に解いた白面が、肉体を硬化させ構えを取りリベリスタ達へ迫る。
 一番最初、究理を騙し討ちしようとした時と同じ様に、今度は恐るべき業火を棍に宿らせ。
 自らの周囲に存在する者全て、其の一切を灰燼に帰していく。
 ヒトガタ達とは比べ物にならない一撃に前衛のリベリスタ達が焼き払われ、倒れていく。
 更にそれだけでは留まらず、今度は炎の向こう側にいる者達を切り刻まんと。
 虚空を割く程の威力を生む蹴りを放ち、後ろに居た幸太郎の身体を斬り裂く。
「くそっ、ちょっと見とれてたかも……」
 鋭い蹴撃を受けた幸太郎が、片膝をつきながら白面を苦渋の表情で睨む。
「クカカカカ! どうした、倒れていてはこの者を助けるなど、夢のまた夢だぞ?」
 自らの前に倒れ伏したリベリスタ達を見下ろしながら、白面が嘲笑う。
「そんな事、お前に言われるまでもない……」
 嘲笑う白面の足元から、声が響く。
「約束したのだ」
 フラフラの身体に喝を入れ、究理が立ち上がる。
 そしてそのまま、白面に炎を纏った棍の一撃を撃ちこむ。
「約束?」
 其の棍の一撃に一切怯まず、白面が問い返す。
「必ず救ってみせると約束したんだ!」
 茉莉と。
 そして、自分自身の心と。
 此処で倒れたら、その約束を果たせない。
「そういうことだ」
「人の願いを、思いを利用する畜生が……お前を倒すまで、私達は倒れない」
「オレ達は、『希望』がある限り決して屈する事はない」
 一人、また一人とリベリスタ達が立ち上がり武器を取り直す。


 どんなに自分が厳しい状況でも、茉莉を殺すつもりはリベリスタ達には無い。
 彼女の意思が途切れぬ様、諭し叱咤しながら。
 ミュゼーヌがマスケットを手に、1$硬貨さえ撃ち抜く程の精密射撃で白面の仮面を撃つ。
 直撃した銃弾がその薄っぺらい仮面からは想像も出来ない強度で弾かれる。
「茉莉、きっとキミはこうして傷つきながら戦うオレ達が君のことを迷惑がってると思うだろう」
 零二が集中力を高め、バスタードソードを手に白面の間合いへと踏み込んでいく。
 強引な踏み込みと共に打ち込まれた強烈な一撃が白面を圧倒する。
「迷惑だなんて想っていないさ。そして其れは君の仲間達も同じだ」
 『絆』……何より強い大切な力を、君はもう持っていたんじゃないかと。
「還って来るんだ、茉莉。仲間が、皆が……キミを待っているよ」
 キミを待っている。
 その言葉に、白面の動きが止まる。
 まるで、何かに抑えつけられるかのように硬直し、仮面にヒビが入る。
 棍を落とし、白面が苦しみ呻き始める。
 戦いが始まる前の、演技とは明らかに違う様子。
「我の、邪魔を……するなぁぁぁっ! 人間がッ、欲望塗れの下らない生き物が!
我は貴様の願いを叶えてやっているのだぞ?感謝こそすれ、この様な……!」
 口調を荒げ取り乱し、激昂する。
 茉莉が白面に抗っているの。
 リベリスタ達がそう直感するのに最早、さほどの時間はかからなかった。
「茉莉様の身体も、限界が近いはずです」
 エネミースキャンによって、白面の、茉莉の肉体の限界を悟った凛麗が仲間達に告げる。
「もう一度、フラッシュバンで確実に動きを止める」
 手にした閃光弾で、白面の自由を綺沙羅が奪う。
「女の子を縛り上げるとかマジやばいけど今はそんな事言ってる場合じゃないもんな」
 これは正統な手段だもんな、仕方ないなと。
 フラッシュバンの閃光に視界を奪われた白面を、幾重にも張り巡らせた呪印で束縛する。
「茉莉様の『心の強さ』見せて頂きました」
 シエルが厳然たる意志と共に茉莉を見据える。
「聖なる光よ…邪なるモノに裁きを…彼女に救いを」
 神気閃光。
 茉莉に取り憑いた邪悪に裁きを下さんと聖なる光が白面を襲う。
 光が消えると共に茉莉の身体が糸が切れた様に解放される。
 崩れ落ちかけた其の身体を幸太郎がすかさず抱きとめ、ホッと一息。
 ヒビだらけの白面が外れ落ち、ようやく見る事の出来た茉莉の顔は何処か安らかな寝顔。
「わ、我が……馬鹿な、こんな……」
 仮面のみに成り果てた白面が、地面の上で細かく震え始める。
「まだだ、我は終わらぬ。貴様らに取り憑っ!?」
 周囲のリベリスタに取り憑こうと目論んだ其れを、ミュゼーヌの鋼鉄のヒールが踏み砕く。
 砕かれ散らばった白面の破片が、茉莉の悪夢の終わりを告げる様に霧散する。
 そうして、一つの事件は終わりを告げたのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆様お疲れ様です。
MVPは絆の大切さを茉莉に教えてくれた貴方に。
強さとは、単に何でも自分一人で出来る事ではなく。
時に誰かに頼ったり信頼する事が出来てこその強さです。

本当に、皆様お疲れ様でした。
それではまたお会い出来る日を心待ちにしております。