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シュガー城のお姫様

●騎士の決意
「うるせえんだよ、デブ」
 この吐き捨てるような罵倒が、彼女の運命を変えたのかもしれない。

 細田菜々子は、人よりもふくよかな女性だった。
 彼女の人生には、常にそれがついてまわった。
 小さな頃から『細田のくせにデブ』という類の中傷は聞き慣れていた。

 それでも、言われたくない相手というのはいるのだ。
 たとえば好きな人とか。

 細田菜々子は泣いた。そして、決意した。
「わたし痩せるわ……もう、貴方とはお別れする……」
 菜々子は、丸い輪郭のやわらかそうな頬を濡らし、決別を宣言する。しかし、不幸にも相手は納得しなかった。

(何故だ、菜々子……! 菜々子はそのままで十分可愛いよ! 痩せる必要なんてあるもんか!)

 何としても菜々子を守らねばならぬ、と『彼』は思った。
 菜々子の健康的な可愛らしさをデブ、としか称せぬボキャブラリーの欠如した男が彼女の生活を壊すことなど、とうてい許せることではない。

 『彼』と菜々子は今まで仲良くやってきた。
 菜々子は『彼』を求めていたし、『彼』は菜々子を癒すことが喜びだった。
 『彼』にとって、菜々子はプリンセスだった。

 彼女を守るため、『彼』は菜々子を砂糖の城に幽閉した。
 ――――『彼』は砂糖であった。

●姫奪還計画
「プリンセスを救い出して欲しい」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達は、ぽかんと口を開けている。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は手元の資料を開いて、ぽっちゃり系プリンセスの写真を示した。
「砂糖の城のE・ゴーレムに囚われている女性の名前は、細田菜々子。彼女は、普段から砂糖と懇意にしていた」
 砂糖と懇意にしていたって、どういうことだ。
 何となくは分かるけれども突っ込みたい、リベリスタ達はそんな思いを押し殺す。
「砂糖の城は、彼女を守ろうと身の内に細田菜々子を隠している。細田菜々子を城から出そうとすれば、敵として襲いかかってくるよ。
 細田菜々子も、今は気を失ってるだけだけど、このまま放っておけば衰弱して死んでしまう」
 事の発端はどうあれ状況はシリアスだった。
「それに砂糖の城の影響を受けて、アリがE・ビースト化しているから気をつけて……体長1メートルくらいになってるらしい」
 状況はシリアスだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:碓井シャツ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月05日(土)00:00
 こんにちは、碓井シャツです。
 スイーツの悪い魔法に御用心とか何とか。

●場所
 細田菜々子の自宅マンション
 玄関からキッチン・リビングまでアリ達がハッスルしている。
 (玄関からキッチンは狭いので二人くらいしか横に立てない)
 奥の自室に砂糖の城が鎮座している。

●敵情報
 砂糖の城
 E・ゴーレム/フェーズ2
 カラメル砲……高熱のカラメル弾を撃ち出します。【近単】
 砂嵐……砂糖が霧状に渦巻き、対象を切り裂きます。【遠範】
 雪崩……砂糖が大きな波となって対象を押し潰します。【遠域】

 歩兵アリ×3
 E・ビースト/フェーズ1
 噛みつき……強靭な顎で噛みつきます。【近単】

 羽アリ×3
 E・ビースト/フェーズ1
 急降下……上空から急降下して対象を押し潰します。【近単】

 宜しくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
プロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
マグメイガス
霧里 まがや(BNE002983)
プロアデプト
小梅・結(BNE003686)


 ごくごく普通のマンションだ。
 この何処にでもありそうなマンションの一室に砂糖の城が築城され、姫が幽閉されているなんて誰が信じるだろうか。
(シリアスと書いてシュールと読む。その心は……ないわ)
 『霧の人』霧里 まがや(BNE002983) は、絶賛やる気のないオーラを放出中だった。
「おかしでさとうでおしろ~じょしのゆめなの~」
 まがやとは対照的に、『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミ-ノ(BNE000011) は今すぐにでも駆け出したい様子でそわそわとしている。
 おかしでさとうでおしろ~じょしのゆめ……そう、ありゃしない。馬鹿げた白昼夢。
 そんな馬鹿げた事件にまがやが参加した理由……それは偏に『暇つぶし』であった。痛覚遮断を発動させるのが『日課』の男であるから、その理由も驚くべきことではない。
「……E化して暴れる位、お砂糖に愛されてるなんて……どれ位、愛用してたのかしら……」
 『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463) は、どこか論点のずれた疑問を口にして、きょと、と眠た気な目を瞬かせる。
「ハッスルしてるアリさん達をしばきたおしてお城にたどりつくのだ! テーマパークのアトラクションみたいで面白いのだ!」
「いざ! 城へ攻め込むのですぅ! お砂糖はわたしのだぁ~!」
 その隣で興奮気味の声を上げたのは小梅・結(BNE003686)と『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)だった。
 童話から出てきたかのような少女達とシュガー・キャッスルは、確かにお似合いに違いない。
「まず部屋の鍵なんだけど……」
「そういう時は拳にお任せ♪」
 話をまとめようとした『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)の言葉にかぶせるように、『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)が明るく拳を振り上げる。
 そのフルメタルの鉄拳を押しとどめて、アウラールは作戦の存在を主張した。本当にやられたら、鍵どころか扉が吹っ飛びそうだ。
「管理人さんに電話してきたよ。すぐ来てくれるって!」
 駆け戻ってきた『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)にアウラールは頷いてみせる。彼の作戦はこうだった。
「菜々子には田舎に妹がいるらしい。壱也には俺の超幻影で妹の振りをしてもらう。それで大家さんに鍵を開けてもらえばいいんじゃないかな」
「超幻影って単純な動きしかさせられないですよね? 大丈夫ですか、喋ってるときとか」
 エーデルワイスがシビアなことを言う。
「えっと、適当に口をパクパクさせとくから上手く合わせてくれよ」
「で、出来るかなあ……頑張るよ」
 斯くして作戦の成否は壱也に託されることとなった。


「な、奈々子妹もでっかいな……まぁ、これで妹に見えるよね?」
 壱也の前に『ぽっちゃり系プリンセス・菜々子』に似た、ふっくら少女の幻影が作り出される。あくまでも前面のみなので、後ろから見るとバレる。これは綱渡りだ。
 若干の不安に襲われた壱也だったが、マンションの管理人らしきお婆ちゃんが歩み寄ってくるのに気がついて慌てて背を壁につける。
「お待たせしましたわねぇ」
「すいません。お姉ちゃんに会いたくなって来たんですけど、連絡とれなくて……お部屋で待っていたいので、開けてもらえませんか?」
(せ、声優の気持ちになるのよ、わたし……!)
 幻影のパクパク動く口に合わせて、壱也は考えておいた台詞を披露した。
 その様子を、物陰からリベリスタ達が固唾を呑んで見守る。特にアウラールは超幻影の効果が切れないようにと、神経を使っていた。
「それにしても……ふっくら羽柴さん、かわいいの」
 そんな中でもマイペースにときめけるのが那雪さんの良さだと思います。
「まぁまぁ。遠くからいらしたのに大変でしたねぇ」
 実際のところ口の動きと声が合っていない部分もあったのだが、目の悪い老婆は気に留めなかったようだ。
 マスターキーが鍵穴にさし込まれる。ガチャリ、という音が開錠を報せた。
「もう大丈夫です、お姉ちゃん部屋汚いんで!」
 あろうことか管理人さんが扉を開けようとしたので、壱也は慌てて制止した。今、扉の中はワンダーワールド。扉が開けば、巨大アリが飛び出して来かねない。
「あらあら。早く菜々子さん、お帰りになるといいわねぇ」
「はい、ありがとうございました!」
 納得して去っていく管理人さんに、壱也は幻影の裏で深々と頭を下げた。


「わんだふるすいーとさぽけいはかいとーしミーノさんじょうっ」
 管理人さんの姿が見えなくなると、ミ-ノがしゅたたっと物陰から駆けだしてくる。他のメンバーもミーノに続いた。
「よし、準備はいいか?」
 ドアノブに手をかけ、アウラールがアリさんとコンニチワする覚悟のほどを皆に尋ねた。三者三様に頷いたのを見て扉を開け放つ。
「でか! きもっ!!」
 リビングから玄関に向かって移動してくる巨大アリに、アウラールは思わず声を上げた。下手すると結と同じぐらいの大きさがある。
(おっと、引いてる場合じゃない!)
 真っ先に部屋に踏み込んだ壱也に並ぶようにして、アウラールも最前衛に立った。玄関からキッチンは狭く、二人並ぶので精一杯だ。
「おじゃまするのですぅ! むぐぐ、狭いですぅ……! お城はもっと広くなくちゃ、このお城はダメなのですぅ!」
 お城の存在に気が逸っているロッテは強引に部屋に押し入ろうとする。背中をぐいぐい押されてアウラールは面食らった。
「わあ! 城は奥だから落ち着けよ。押すなって!」
「ぜったいにみんなとはなれずにこうどうっ!」
 更にミーノが立ててきた作戦に従って、前ならえに続くものだから堪らない。ぎゅむぎゅむぎゅむぎゅむ。
 何だこれ、と思いつつ、まがやは邪魔しない様に玄関の外に立っていた。面倒くさかったとも言う。
「わかった! とりあえずスペースつくるねっ!」
 壱也が全身のエネルギーを『はしばぶれーど』に集中させ、進路を妨げていたアリに叩きつける。吹っ飛んだアリの距離の分、リベリスタ達は進軍を果たす。とりあえず、全員が部屋におさまることに成功した。

 ほっとしたのも束の間、仲間が攻撃を受けたと知って、部屋内の巨大アリ達がわらわらと結集してきた。
 侵略者を排除せよ! 兵隊アリの守りは固い。
 無血開城とはいかないようだった。


「ひさびさにトリガーハッピー♪」
 あはははっはっはhhっはh――エーデルワイスが壊れた笑い声を上げながら、フィンガーバレットをぶっ放す。目にも止まらぬ連射がアリ達の急所を次々と撃ち抜いた。
 広く布陣を展開できないのは敵も同じ。エーデルワイスにとって、射線に立たざるをえないアリ達は良い的と言えた。
「ふふ、じゃあねアリンコ、恨むなら自らの弱さを恨みなさいね♪」
 吹っ飛ばされたエリューション・巨大アリの前足が、体液を撒き散らしながら宙を舞う。ちょっとグロい。
「う、考えてみると、かわいそうなアリだな……こうなったからには、倒さざるを得ないが」
 砂糖のとばっちりを受けてE化してしまったアリの身の上を思うと、アウラールは同情を禁じ得なかった。
 前衛の頭上を飛び越そうとした羽アリは、一瞬にして飛ぶための器官を失う。今まで沈黙を守っていた那雪から放たれた光糸が鋭い精度をもってアリの羽を貫いていた。
「羽があろうがなかろうが、やることは変わらないさ。大人しく、堕ちて貰おうか」
 部屋に入る前とは打って変わって、那雪の口元にはクールな微笑みが浮かんでいる。脳の伝達処理能力を高めた那雪は、戦闘スイッチの入った状態だ。
 ただのアリに成り下がって落下した羽アリが、すかさず結の魔弾に射抜かれた。逃げる間もない光速射出だった。
 リベリスタ達の容赦ない攻撃にアリがあらぶる。その強靭な顎にも怯まず、壱也が前線を維持する。
「纏めてドーンの精神でいこう。狙うのも面倒だし」
 まがやが鳴らした指の音に応え、雷撃が頭上からアリ達を貫く。
「ウザったいなぁ」
 懲りずに頭上を行こうとする羽アリはエーデルワイスの餌食となった。
「堕ちろアリンコ、あは♪ やっぱりアリンコは地べたに這い蹲る姿がお似合いね♪ ボロボロの羽も似合ってるわ」
 もうどっちが悪役なんだか。前線に守られたリベリスタ達はやりたい放題だった。


 狭い渡りを押し切ってリビングまで突入を果たすと、途端に視界が開ける。
 行進のごとく隊列を組んで進んできたリベリスタ達は、やっと横に散開することができた。
 ここまで来ると、奥に鎮座する砂糖の城の威容がよく目立つ。
 空間を無視した巨城だ。城壁は繊細でイノセントなシュガー・ホワイト。窓の代わりにつけられた色とりどりのアイシングクッキー。
「あまぁい匂いするのですぅ~! 倒したらなくなっちゃうんですよね……残念ですぅ……」
 部屋に充満する甘い香りにロッテが身悶えた。
「たしかにざんねんなの……でもミーノもりっぱなおかしのいえをもってるのっ!!」
 ミーノが自分のお菓子のお家型のアクセス・ファンタズムをロッテに見せびらかす。
 女子って何で、スイーツの話題だけでそんなに盛り上がれんの? という声が何処かから聞こえてきそうなガールズ・トークだった。

「ななこさんを避難させないと、流れ弾があたったらたいへんなのだ」
 城の入口から垣間見える、気を失った菜々子の姿に結がウサギを握り締める。
「必要なのは王子様の優しさじゃなく、布団を剥ぎ取る強引さ……ってことで良いんだろうな……いいやそういう事にしておこう」
 まがやが独り言のち自己完結して、魔力増幅の詠唱をはじめた。体内の魔力が呼び声に応えて活性化する。
 突然の轟音が、いざ救助に走ろうとしたリベリスタ達の足を止めた。
(何だ、お前たちは! 菜々子と僕を引き離す気か! させない、誰にも僕のプリンセスを傷つけさせはしない……!)
 頭の中へ直接に響いてくる声。
 シュガー城が床を鳴動させながら変形する。城の入口は閉じられ、砂糖の城はその体で完全に菜々子を閉じ込めた。
 ロールケーキで出来た砲身が、城壁の上から次々と突き出す。
「攻撃が砂糖だなんて……攻撃、べたつかないんだろうか」
 眼鏡を指で押し上げながら那雪が口にした疑問は、やはりマイペースだった。
(兵隊達よ! プリンセスに仇なす侵略者を制圧せよ!)
 城が残党のアリ兵達を鼓舞する。
 アリがロッテに向かって特攻した。頑丈な顎の口撃に、ロッテのドレスが引き裂かれる。更に追い縋ろうとするアリを、張り巡らされた気糸の罠が阻んだ。
「まひまひなのだ!」
 テーマパークのアトラクションだったなら、ハイスコアを叩きだしそうな結である。
「ぽっちゃりプリンセスよりプリンセスなのは、このわたし!! プリンセスの座は渡さないのですぅ!
 むっき~! 当たれ! プリンセス☆ピンポイントォ!」
 『プリンセス』というワードはあまねくロッテが得るべき称号だ。それを侵す者、許すまじ。怒りの気糸がアリの急所を貫く。
 兵を失った孤独な城は、開城を拒んで怨怨と唸った。


(菜々子と僕は強い絆でつながっているんだ!)
 城から舞った粉砂糖が薄いヴェールのように部屋を漂う。
「どんなにだいすきなものでもきょーせ-されたらいやになっちゃうよ?」
 ミーノがリベリスタ達に守りの術式を与えながら、悲しげにピコピコと狐耳を動かした。
(黙れ! お前なんかには分からない!)
 空気中の砂糖が敵意をもって渦巻く。嵐となって吹き荒れる白砂が前に出ていたリベリスタ達を切り裂いた。
 顔を腕で庇いながら攻撃に耐える面々には、アウラールに分け与えられた治癒の力が効果をもつ。失われた活力が少しずつ身の内に戻って来る。
「随分と器用な攻撃をするわね。倍にして痛みを返す!」
 エーデルワイスが狙いを定めたのは、一瞬。銃口が火を噴く。
 フィンガーバレットの高速連射が城壁を抉るが、穿つにはいたらない。その予想以上の硬さに、エーデルワイスは低く舌を打った。
「燃えろ。或いは溶けろ。もしくは爆ぜろ」
 まがやが指を鳴らす。
 まるでそれがライターの火打石であったかのように、膨れ上がった熱気が炎となって城を襲った。熱風が長い髪を揺らす。
「こっちだぜ!!」
 アウラールは、正義の光撃をぶちかまして城の注意を引いた。彼がいつも囮役を買って出てしまうのは、性分というやつなのだろう。狙い通り、城の怒りはアウラールに向けられる。
(菜々子に近づく男! 許さない!)
 ロールケーキ型の砲台は狙いを違えず、高熱のカラメル弾でアウラールの剥き出しの腕を襲う。
「熱っああああ!!!」
 粘度の高いカラメルは、よく腕にはりついた。あまりの熱さにアウラールは飛び上がる。
「このカラメルもって帰っていいのかな? プリンにかけたら美味しいかもしれない……」
「カラメルの甘い匂いが……帰りに、お菓子でも買いにいかないか」
「壱也も那雪も、もっと他にコメントないのか!?」
 二人の呑気なコメントにアウラールの泣きが入った。

「あいしてるなら相手の自由を認めて、つかれたときの拠り所になればいい。閉じ込めるのはただのヤンデレなのだ。こわいのだ」
 敵の痛いところを突きながら、結が気糸を展開する。ロールケーキ大砲が絡めとられ、狙いを定める自由を奪われた。
「お砂糖いっぱい! いっただきまぁす!」
 その隙をロッテは見逃さない。すかさず城に駆け寄ったロッテは、砂糖の城壁に牙を突き立てる。砂糖とクッキーは甘くロッテを癒した。
「おさとうのあまいかおりのゆうわくにまけない!」
 ミーノは自分も飛びついていきたい気持ちを抑えて、ぷるぷると身を震わせながらサポートに専念する。
「お互いが求めるのはすごくいい関係だけど、好きなら認めて前を向かせることも大事だよ!」
 気合と共に、爆発的なエネルギーが壱也の振るう大剣に集中した。破壊の斬撃が城壁を割る。そのひびはエーデルワイスを歓喜させるのに十分だった。
「ダメダメね砂糖さん。低カロリーじゃない砂糖なんて、女性の敵よ……おデブさんの為にもちょっと頭冷やしましょうか!」
 幾ら硬い城壁でも一点に集中すれば貫ける。
 コンマ数ミリもずれない連続集中狙撃がエーデルワイスには不可能ではない。
「ターゲットロック、バウンティフルファイア!」
 凄まじい早撃ちの集中砲火。壱也のつけた傷をエーデルワイスが穿つ。

(菜々子、泣かないで……僕が守る、僕が守るから……)

 エーデルワイスの穿った穴から砂糖がざらざらと流れ出した。その流れが大きな奔流となりはじめる。
「来るぞ……!」
 広域の攻撃を警戒していたアウラールが注意を呼びかける。しかし、何処にも逃げる場所がない。
「みんなとぶの~っ!」
 ミーノが叫んだ。ミーノの付与した翼の加護がリベリスタ達の飛行を可能にしていた。全員、全力で上空に飛び上がった。

 砂糖の雪崩が音を立てて床の上のものを巻き込んでいく。その地響きが止むと、もう砂糖の城は跡かたもなくなっていた。


「おいしそうだなぁ……シロップかけて食べたい」
 壱也は砂糖の雪原に降り立ちながら、よだれを飲み込む。壱也さん、砂糖にシロップかけたら大変なことです。
 菜々子は傷一つなく、砂糖の海の上に横たわっていた。結が一直線に駆けていって抱き起こ――そうとして挫折した。ちょっと重かった。

「……わたし」
 意識を取り戻した菜々子は丸い頬を押さえて震える。
(ぽってりした女性らしい指に小さい爪。お姉さん座りした時の足首のむっちり感、かわいいと思うけど……)
 それを罵倒するなんて、心ない人間もいたものだ。アウラールは自信を失った菜々子の様子に悲しくなる。
「奈々子ちゃん、大好きなもの、我慢するのはつらいよ。ちょっとづつ減らしていけばいいんだよ」
「そうなのだ。いきなりのお別れは精神衛生によくないのだ」
 壱也と結が口々に菜々子の無茶をたしなめた。
「菜々子様には抹茶と和菓子を置いておくのです。日本のお菓子は太らないと聞くのです」
「砂糖の彼との良い付き合い方の提示その1なのだ。きよくただしいお付き合いをお勧めするのだ」
 和菓子を差し出して、ロッテと結は親身に菜々子にアドバイスをする。まがやも和菓子を所持していたが、これはわたしのおやつだ、と謝絶した。
「女性を、侮辱する人……貴女から、ぽいして、いいと思うの……。今だって十分、可愛らしいの」
 那雪が、労わるように菜々子の頭を撫でる。菜々子のふくよかな稜線を涙が伝った。
「女の子は見た目じゃないけど、痩せたら自信持てるのです! 菜々子様にも自信を持って王子様にアタックして欲しいですぅ!」
 王子様へのアタックなら得意分野、とばかりにロッテは菜々子の手を握って激励する。その力強さに、菜々子はありがとう、と頑張る気持ちを新たにした。
「あ、でもプリンセスの座は渡さないのですぅ」
 付け足された牽制に、菜々子は瞬いたあと笑う。可愛らしい笑顔が」こぼれる。
「一番大切なのは、奈々子ちゃんの笑顔だから! それだけ忘れないでね!」
 壱也の言葉にアウラールは強く頷く。
 それこそが砂糖の彼の願いでもあったのだろう。

 リベリスタ達は那雪の提案でお菓子を買って帰ることにした。甘い香りの誘惑はやっぱり強力だ。
 アウラールはアリの巣にお裾分けをしてやろう、と思うのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。

そうか、ダイエットには和菓子なんですね。勉強になりました。
皆さんのアドバイスでぽっちゃり系プリンセスにも春が来るといいですね。

ありがとうございました!