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Legend_of_JS

●招かれてないけど来ちゃった来訪者の話
「Oh、ココがニッポンのPopularなPlace,キョウト!」
「なんて、オモムキブカイ!」
 京の街の老舗の茶屋。その縁側に騒々しい男達が並んで団子を頬張っている。
 その姿は侍、忍者、坊主という日本の伝統的な服装を模していた。
 しかし、その格好に似合わずどれも鮮やかなブロンドの髪に蒼い瞳を輝かせる。
 ――早い話、健全な外国人観光客である。
 店主の和やかな笑みを脇目に、彼らのテンションは上昇していく。
「Ah、本当に『此方』に来て良かったデース」
「そんなことより…テラ、"Temple"はドコでーすかー!」
 湧き上がる興奮を抑えきれず、団子の串を咥えた坊主が立ち上がる。
「Wait,Johnson! お勘定が未だ終わってナイヨ!」
「店主サン、御馳走様デシタ!」
 早足で先導する坊主を、侍と忍者が大急ぎで追っていった。
 

 ――人騒がせな三人が向かったのは、京の街の某テーマパーク。
 すれ違う人々の誰もが、彼らの刺激的な格好に視線を奪われ、自然と人だかりが出来ていった。
「あらぁー、えらい可愛い格好してはりますなぁ」
「ノンノン、SamuraiはCoolですぜオネエサン!」
 周囲の黄色い声援に、侍のテンションも徐々に上昇していく。
「お兄ちゃん達は、観光に来たのかい?」
「そうデシタ! 一番大事なコトを忘れてマーシタ」
 街路を歩く老婦人の質問に、ぽむりと手を叩き忍者は答えた。
「Japanese Samuraiを探してイマース。それはそれはCoolでGreatな野郎デース」
「Yes、丁度あんな格好をした……」

「「「 Fooooooo!!!!! 」」」
 
 京都の古い街並みに合わせ、侍の仮装をした青年を見つけ、駆け出していく"二人"。
 ――後に残された坊主はというと、二人とは逆向きに走り出し、叫んだ。
「ボボボ、ボーズStaff!」
 彼が見つけたのは、彼曰くボーズStaffこと、錫杖。
 同じく法師の仮装をした青年から借り受けると、楽しげに振り回し始める。
 一方、侍を見つけた二人は興奮の儘に質問の雨を降らせていた。
「これマデ、何万人を斬り伏せてきまシター?」
「んー、あ、えと……ご、50万くらいですか」
「シアトルも殆ど全滅デース!」
「Fantastic!」
 青年の冗談に突き動かされ、更に二人のボルテージは上がっていく。
「ぜひ私と決闘! Duelをしてクダサーイ!」
 侍は篭手を外し、青年に握手を求める。
「は、はぁ……。よろしくお願いします」
 ぎゅ、と二人が握手を交わした瞬間、忍者が高々と声を上げた。
「ハタシ合イ! Duel! Fight! Yeaaaaah!!」

●侍のサム
 ――プツン、という小さな音と共に、映像は途切れる。
 投影機の傍でファイルをぱたりと閉じ、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が口を開いた。
「今回の目標は、彼ら」
 再び投影される三人の観光客の姿に、リベリスタ達は首を傾げる。
 彼らの質問を待たず、イヴは説明を続けた。
「この三人は、アザーバイドなの。外見はどう見ても人間だけど、正真正銘の他チャンネルからの来訪者。これを見て」
 イヴの言葉と共に、侍が侍(仮装)に決闘を申し込む場面へと切り替わった。
 結末を予想したのだろう、リベリスタの数人が頭を抱える。
 それに呼応する様に、こくりと頷きイヴは更にこう告げた。
「そう、彼らは侍への興味で此方の世界に降りて来たの。本当に強いのか、とか。
 だから彼らは、これから戦って試そうとする。皆には、これを止めて欲しい」
 興味本位で、京都の人間が粉々になる前に。と彼女は付け加える。

「元々興味でこっちに降りてきたのだから、満足させれば帰ると思う。それで駄目だったら倒す、しかないけど」
 再度映像は切り替わり、来訪者三人の詳細な情報が表示される。
「今回、キーマンとなるのは、この侍の格好をしたアザーバイド。
 ――侍の名前は、サ……サム」

 ぶはっ
 至極真面目な表情の少女が放った言葉に、一人のリベリスタが珈琲を噴き出す。
 冗談じゃないの。とイヴはそれをきりりと睨み、ため息混じりに続けた。
「彼は普段こそ実戦経験のあるアークのリベリスタと同等くらいの強さなんだけど、結構気が短いみたいなの。
 彼が崇拝するもの……例えば日本の文化とかのイメージを汚したりすると大変なことになるかも」
 と、少女はぽつりと告げる。
 それからひとつ、呼吸を置いて、彼女は告げる。
「他の二人も同じ。普段は陽気な観光客に過ぎないけど、怒らせたら解らない。
 彼らは自分達が強すぎるの解ってないから。気をつけて」




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ぐれん  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月05日(土)00:05
JSって、Japanese_Samuraiですよ、其処の貴方。
そうそう、ステレオタイプって、当てはまると楽しいですよね。
はじめまして、ぐれんと申します。


※ネタ依頼です、楽しんでいってください※

●成功条件
三体のアザーバイドが満足して元の世界へ帰ること
or
三体のアザーバイドの撃破

●舞台
昼間の京の街です。このまま戦闘を行った場合、一般人は間違いなく巻き込まれます。
幸い、周囲には観光地に紛れて十分に広い空き地が点々とあるようです。
空き地は戦闘を行うには十分に広い平地で、障害物は皆無です。
晴れた昼間、視界を遮るものは特にありません。

また、三人のアザーバイドは好奇心旺盛で、
興味をそそってあげれば簡単についてきます。
ついでに観光気分なんかも味わわせてあげられたら尚一層楽しそうについてきます。

●目標の特徴(アザーバイド3体)
侍:Sam(サム)
3人の中では最も強力なアザーバイドです。
攻撃に特化したデュランダルに近いステータスを持っています。
短気で、怒らせると尋常ではない力を発揮します。

忍者:Arthur(アーサー)
名前には特に意味はありません。
『疾風必殺』を忍者だと確信して自らを鍛えた為、
ソードミラージュとナイトクリークの中間の能力を持ちます。
回避と命中に特化し、必殺を狙ってきます。

Bo^zu:Johnson(ジョンソン)
人一倍好奇心が強く、興味深いものにはしばしば目線を奪われます。
ステータスは神攻特化のマグメイガスに近いもの。
回復技もいくつか習得しているようです。

共通技:大和魂
日本の文化へのイメージを爆発させて、一度だけ瀕死状態から回復することがあります。
発動確率と回復する体力の値は本人の気分に左右され、怒っていると確実に復活します。
ただし、気分がいい時には潔く降参するようです。


以上です。日本に期待してやってきた観光客を、もてなしてやって下さい。



参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
デュランダル
★MVP
有木 ダンテ(BNE002480)
覇界闘士
ジョニー・オートン(BNE003528)
デュランダル
御厨・妹(BNE003592)
プロアデプト
尾宇江・ユナ(BNE003660)
覇界闘士
倉田・てつこ(BNE003690)
ソードミラージュ
セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)
レイザータクト
水無瀬 流(BNE003780)


「はいはーい! サム様御一行は此方ですよー!」
 侍同士の決闘が始まらんとするその瞬間、高らかに声が響いた。
 忍者と侍が振り返る先で、少女が笑顔で手を振っていた。
 『進ぬ!電波少女』尾宇江・ユナ(BNE003660)はまるで添乗員の様に来訪者達を向かえる。
「どうもはじめまして。私、あなた方に京の街のすいも甘いも楽しんで貰うべく、とある団体から派遣されました尾宇江と申します」
 丁寧にぺこりと頭を下げるユナに、忍者と侍、Bozuの三人は会釈を返す。
 続いて彼女は、紙袋から何かを取り出した。
 少女の手に握られていたのは漢字入りのTシャツ。それとインスタントカメラ。
「Oh!Thank you!」
 差し出された観光アイテムの数々に、三人のテンションは爆発的に上昇した。
 サムが手に取ったのは赤いシャツ。その背中には"侍魂"の文字がでかでかと描かれていた。
「スバラシイですよSam! "貴様には紅い衣がお似合いだ"ってきっとこのコトデース」
 物騒な言い回しと共に、坊主の格好をしたジョンソンは黄色の"坊主"とプリントされたシャツを身に付ける。
 忍者の格好を模したアーサーも、青いTシャツを取り、早速着替え始めた。
「Johnson、何て書いてあるデスか?」
「Ah、コレは……Cool、that guy…Cool guyデスよ! Cool guy!」
「Wow、本当に有難うゴザイマース!」
「いえいえ。さぁ皆さん、こちらですよー」
 決闘の話はどこへやら。満面の笑顔と共に、三人はユナの誘導に従い歩き始めた。
「はいはーい。カメラの準備はよろしいですか? 自由時間はありますから、この旗を目印についてきて下さいね」
 彼女が先導する先には、薄い茶色の着物を着こなす町娘に扮した『ブラックさん』倉田・てつこ(BNE003690)が待っていた。
「こちらですよ、皆さーん!」
 普段の口調よりか幾分丁寧で、時代劇なら任せて、といわんばかりに京の都の娘になりきるてつこ。
 疑いなく三人はてつこに促されるまま、土産屋に通されていく。
「今日は京でお買い物、デース」
「Johnson! ワタシ駄洒落嫌いイッタヨ!」
 一切の警戒なく歩く三人の背に、町娘は赤い瞳をぎらりと光らせた。



 三人が土産屋の戸口に手を掛けた瞬間、てつこは地を蹴っていた。
 町娘とは思えない機敏な動きで、真っ直ぐにサムの後頭部へ向け拳を振りぬいた。
「……な、何のつもりデースか!」
 突如向けられる殺気を察知し、サムは拳を喰らう寸前で身体を捻り一撃を躱す。
 先程迄の観光ムードは一転、緊迫した雰囲気に一同は言葉を失う。
 暫く誰もが微動だにしない沈黙が続き、その末にてつこは頭を下げ膝を突いた。
「申し訳ありません、お侍さま。実は訳あって腕の立つお方を探しておりました」
 実は、と続けようとするてつこの言葉を遮って、不意に物騒な怒鳴り声が響いた。

「――てめぇ、どの面さげて俺に文句付けてやがる? あぁん?!」
「否。拙者は只、少々乱暴が過ぎるのではと申しているだけでゴザル」
 皆の視線の先で睨み合うのは、小豆色の着物の男と赤いマフラーを巻いた忍者であった。
 赤茶の髪をぐしゃりと乱し、怒鳴る男は『ノイジーイーグル』有木 ダンテ(BNE002480)。
 普段の彼からは想像出来ない好戦的な口調。
外野から見れば只のチンピラ浪人侍。
此処まで自分を騙して見せるのはペルソナの成せる業か。
 ダンテと対峙するのは、『(自称)正義の忍者』ジョニー・オートン(BNE003528)。
 此方はさして普段と変わりなく、忍者の格好を貫いていた。
 ジョニーの首元へ腕を伸ばし、ダンテは赤いマフラーをぐいと掴む。一触即発な空気。
「どうか、彼らの争いを止めてください!」
 そんな様子をあんぐりと口をあけて見詰めるサム達へ、突如一人の巫女が駆け寄り、袖を引いて訴えた。
 大幣を携え駆け寄った巫女の正体はセラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)であった。
 「彼らは善良な人達なのですが、今は邪悪な悪霊に取り付かれしまい、些細な事でも憎みあってしまっています」
 見るからに善良ではない浪人侍を思考の外へ追い遣ると、サム達一同は互いに頷き合い、協力的な姿勢を示した。
「これを、お使いください」
 お願いします、との言葉と共に、巫女は背に担いだ包みより三本の木刀を取り出した。
「これはとある寺の御神木から削りだした破邪の木刀。どうか彼らを倒してください」
「主君のために使うべき命をかような争いで散らすはあまりに憐れ、町の者も巻き込まれるやもしれません、どうかお侍さまのお力で止めて下さい」
 巫女の言葉に続き、てつこが縋る様に三人へ訴えた。
 感情の篭った二人の演技に、来訪者たちは疑いもなく木刀を手に、未だ怒鳴りあう男達へ目を向ける。
「さぁ、お坊様もご一緒に、どうか悪霊をお祓い下さい!」
「Yeah! ワタシも悪霊退散、Devil killerになるネ!」
 てつこの言葉に鼓舞されたのか。受け取った木刀を手にジョンソンは駆け出し始める。
 普段は人間と変わらぬ様に見える彼ら。しかし駆け出す坊主の速力は、人間のそれを遥かに凌駕していた。

「まいも、戦うですー!」
 
 ――超人的な加速をする坊主の進行方向へ飛び出したのは、『マザーシスター』御厨・妹(BNE003592)が扮する町娘であった。
 彼らは自身の力を未だ理解していない。他に怪我人を出さない為に、彼女は身体を張ったのだった。
「What……っ!」
 人外とはいえど、空中での減速手段は持ち合わせていない。かなりの速度を保ったまま、妹の華奢な身体と衝突した。
 どんっ。
 鈍い音を立てて、妹は地面へと叩きつけられる。ちりめんの髪飾りが、かさり、と儚く落ちた。
 極めて単純な死んだふり。けれどサム達には十分な効果があったらしい。
 予想外の出来事を目の当たりにし、慌てて妹に駆け寄る三人を押しやり、巫女は大幣を天に掲げる。
「ああっ、妹ちゃんが……待っててね。すぐ助けるから。神楽舞!」
 大幣を左右に揺らす巫女の呼び声に応え、現世に舞い戻った魂。
 一つ大きく呼吸をすると、妹はゆっくりと身体を起こし、言う。
「……はっ、もう朝なのです?」
 きょろりと辺りを見回す少女の様子によかった、と胸を撫で下ろす一同。
「舞で、妹チャンがいきかえっ……」
「そこマデ、Johnson。妹チャンに謝るヨ」
 目から星が飛ぶほどに強く殴られ、坊主は素直に謝罪を始める。溜息と若干の怒気を込めて、巫女はいった。
「今のは一度しかつかえませんから、注意してくださいね」
 人間はこんなにも脆いの。あなた達よりも、ずっと、ずっと。
 そんなメッセージを込めた妹の行動に、三人の来訪者達は深く深く頷き、言った
「ワカリマシタ。絶対、これ以上キケンな事しない。申し訳、ゴザマセンデシタ」
 拙いながら心からの謝罪を受け、リベリスタ達は満面の笑みで来訪者達を許した。
 不殺を誓い、改めてダンテ達の元へ走る三人の背を見ながら、演技派のリベリスタ達は互いに目を合わせ微笑んだ。


「こんな街中で喧嘩ナド、とてもnonsenseデース!」
「何だてめぇら、邪魔立てするのかよ。二度とお天道様を拝めねぇ様にしてやろうか?」
 掴んだジョニーの胸倉を離し、侍を正面から睨むダンテ。完全に悪者である。
「拙者の前に現れるとは……、命を捨てに来たでゴザルか?」
 ダンテに続き、不敵に笑うジョニー。此方もノリノリである。
「悪霊に憑かれて好戦的になってるデースね……」
 覚悟、という呟きと共に、悪霊退散の戦いは始まった。
 サムの薙ぎ払いを、ダンテは後方に小さく跳ね躱す。
 侍が振るった只の一薙ぎが生む風圧は、来訪者達の本来の強さの片鱗を見せる。
 格好だけはつけておくか、とダンテは、一撃に臆する事無く大太刀を構え、腰を落とす。
「喰らえ!有木流、詩鷲斬!」
 掛け声と共に振るわれた一撃は、目にも留まらぬ疾風の居合斬り。
 しかし幾分の手加減を含む一刀の速度はサムの反撃を許した。
「貰う……デスッ!」
 肯定とも"Death"とも取れる言葉と共に放たれるサムの一刀に、これまで観戦を続けていたセラフィーナは叫ぶ。
「殺してはいけません! 正義の心で戦うのです!」
 巫女の叫びが届いたのか、サムの一撃はダンテの腹部を捉えた処で振り抜かれることなく止まっていた。
 間一髪。生死の境を彷徨うことを免れたダンテは、従来の計画通り体をぐたりと脱力させ、演技を続ける。
「Well、大丈夫デスか?」
 倒れる浪人侍に駆け寄るサム。不意にダンテはびくりと身体を痙攣させ、起き上がった。
「……ちっ、どうやら助けてもらったようだな。てめぇらの大和魂見せてもらったぜ」
 先程の顔から一変。爽やかな笑顔でダンテは立ち上がる。嗚呼、よかった。彼は悪霊から救われたのだ。

 ――そんな最中、忍者同士の一進一退の攻防が繰り広げられていた。
「お主の全力、みせてみよ!」
「拙者が目指すは疾風必殺ヨ。受けてみるでゴザらぁあああ!」
 静と動。アーサーの一撃一撃を、ジョニーは敢えてその対極、流水の如き動きで受ける。
 アーサーが放つ拳を、蹴りを、鮮やかな迄の動きで受け流していく。
 対してアーサーは自身の信念を貫かんと、相手の隙を探す。そして。
「流水の忍者殿、その防御、破らせて頂くで御座るッ!」
 先程迄の高速の連撃から切り替え、体重を乗せての全力の攻撃。不殺等、気を配れる程実力差は無かった。
 只の木刀を使っているとはいえ、武芸者の全力攻撃にジョニーは後方へ吹き飛び、何とか受身を行った。
 立ち上がるジョニーの体勢は万全ではなく左右に揺れる。しかし――
「忍法、集気の法っ!」
 言葉と共に吸い込んだ大地の生気は、みるみる内に彼の傷を癒し、再び立ち上がらせた。
「流石でゴザル。疾風必殺を信ずる心、確かにみせて貰ったでゴザル」
 木刀での一撃を受けたジョニーは予定通りに――ただし至極満足な表情と共に――正気に戻った口調で握手を交わす。
「コチラこそ、流水の拳、Fantasticだったでゴザル。怪我、大丈夫でゴザルか?」
 握手を返すアーサー。忍者という共同意識は語尾まで侵食してしまったようだ。
 ――無事に"浄化"を終え、和やかムードの一同に駆け寄る者があった。
「大変です!助けてくださいまし!」
 黒髪ウィッグと深緑の着物で町娘に扮した『空泳ぐ金魚』水無瀬 流(BNE003780)が駆けてきた。
 彼女曰く、この怨霊騒ぎの源がこの道の先に居て、それを倒さない限り怨霊に憑かれる人は増え続けるらしい。
「Wow……」
 そんな気はしていたのだ。この世界にある"Game"なる遊戯具は、最後に一番強い敵を倒してクリアするものなのだ。
「うぅっ……お坊、様……」 
「だ、大丈夫デス?」 
 突如苦しみ始める流に駆け寄る坊主。しかし流は膝をつく体勢から空へ跳躍し、普段は隠すその翼を、敢えて皆の目に晒した。
「さぁっ、貴方達はもう我が術中。お覚悟をっ!」
 空を翔ける翼は幻術、と語る流。彼女に乗り移ったのは、くの一の魂だったのだ!
「今すぐ、退治するヨ、待ってて娘サン!」
 ジョンソンは流を"浄化"せんと木刀を振り上げ、駆け出した。
 ごう、と唸る程の速度で振るわれる木刀を、華麗に回避していく流。
 上下左右にふわりと回避を続ける彼女は、突如動作の挙動を変化させた。
 坊主の心臓目掛け急加速。握ったナイフを突き立てんとする流。
「Sorry、少し痛い、カモッ」
 くの一が放つ一撃を、坊主は寸での処で躱し、言葉と共に流の頭へ木刀を当てる。
 若干の痛みと共に役割の完遂を確認した流は、ぐったりとその動きを止めた。
 そして再び立ち上がり、満面の笑みとともに言う。
「あ、ありがとうございますお坊様っ!」
 よかった、彼女も無事に、救われたのだ。

 ――地鳴りにも似た音が響き、町外れの空き地の方で砂煙が舞い上がる。
 揺れの源に目を向けると、一同は揃って呆然としてしまう。
 視界の向こう、空き地の真ん中で立ち上がる輪郭は、まるで奈良の金剛力士像。
 鮮やかなまでのおしろい顔に、凛と掻き上げ、簪で結った吹髷の髪。注連縄を身体へ巻くその姿は、御神木さながらの神々しさを纏っていた。 
 その正体、『三高平の肝っ玉母さん』丸田 富子(BNE001946)は、サム達を待ち受ける様に仁王立ち、高らかに叫んだ。
「HAHAHA! 我こそはジャパニーズナンバーワンスモウレスラー、トミーコ!」


 あれが怨霊の源。Gameでいう、らすぼすなるもの。
 しかしこれはゲームでなく現実。勝てるのかどうかも、生きて帰れるかも解らない。
 リベリスタ達の渾身の演技の甲斐あってか、三人の訪問者は完全にこのショーの世界に引きこまれていた。
「「「「お願いします、この街を守れるのは、お侍様達しか居ないのです!」」」」
 神に祈る様に手を合わせ、心からの懇願を示す町娘三人に、巫女。女の本気とは、恐ろしいものだ。
 皆から一歩下がった位置。残ったダンテ、ジョニー、ユナの三人が必死に笑いを堪えるのも知らず、来訪者は深く頷く。
「拙者達が、片付けてくるでゴザル。そしたら娘サン、拙者とお茶して下さいでゴザル」
 懇願する少女達の前に跪き、胸に手を当て誓うアーサー。それはお前、フラグってやつを知らないのか。
「約束でゴザルよ娘サン方!」
 返事も聞かずに先頭を切って出る忍者。それを追う侍とお坊様。
「水クサイ、Arthur! ワタシ達も、一緒ダ!」
「私達が一緒でないと、10秒ももたないデス!」
 皆揃って死亡フラグを立て、富子の許へ駆け出す三人。なんと、良い奴らなのか。
「このアタシとやりあおうってのかい? いい度胸じゃないかっ!!」
 予想通り、といった処か。此方へ駆ける三人を前に四股を踏みながら凄む富子。
 不慣れながら心の篭った台詞が、その場を一文字毎に色付けていく。
 皆で作り上げた大舞台、皆頑張ったんだ。アタシが最後に京の花、咲かせてやろうじゃないかっ!
「さぁさぁっ! どんどんいかせて貰うよぉ!!」
 三人が木刀を構えた瞬間、再び地鳴りを起こす程の四股を踏み、叫んだ。
 富子は地を抉る様に蹴り、前方へ加速。一気に距離を詰めた。
「ドッセーイ!! アタシのテッポウ攻撃をくらったらただじゃぁすまないよっ!!」 
 速度に乗った儘、魂を込め掌を突き出し、振り抜く。
「ぐっ……、ワタシ達が成敗するのデス!」
 速度の乗った突きでよろめくも、直ぐ様反撃に出る侍。破邪の剣を握り、富子の腹部へぽかりと一振り。
「まだまだっ、そんなんじゃ成仏してやれないねぇ!」
 "不殺"をきちんと守る来訪者達に尊敬や慈愛の念を覚えながらも、近付く彼らに張り手を続けざまに見舞う富子。
 その動きと言葉、仕草迄全てが、まさに悪のスモウレスラー。
 肝っ玉母さんの魂の張り手の威力は、三人の体力を確実に削っていく。
「京の街を、守ると決めたのデスっ……!」
「貴方の魂は、キチンと極楽ジョウドに届けるネッ!」
「お茶の約束、破る訳にはいかないでゴザルっ!」
 互いの肩を貸しあい、再び立ち上がる侍達。 蒼く燃える瞳に宿すは、街を守るという、熱い熱い輝き。
 富子は肩でする呼吸を一つ深め、言う。
「それじゃ、これで仕舞いにしようかねぇ……!」
 どすんっ。
 再び一つ四股を踏むと、正面から三人へ突っ込む富子。そして――

「うわーこいつは強い! 退散だー!! この借りはいつか必ず返すからねぇ、覚えてるんだよっ!」
 力尽き倒れる忍者と坊主。それを守るように立った侍の破邪の一撃。脳天に一撃、ぽかり。
 その一刀に安っぽいながら渾身の捨て台詞を吐き、空き地から離脱する富子。
 勝った、俺達は勝ったのだ。怨霊の根源、スモウレスラートミコに。
「Year! We're devil killer! 勝ったよ、勝ったヨ!」
「Sam、nice kill. やっぱりオマエがNo.1でゴザル」
 高らかに、サム達は叫んだ。


「助けてくれた礼だ! この街のいいところ、全部見せてやるよ!」
 らすぼすに勝利した喜びに満ちる一同の中、ダンテが思いついた様に声を上げた。
 そうですね、と笑みを零したのは流。
「やはり、案内役が居た方が観光は楽しいですよ」
 笑顔でそう告げると、すっかり着こなした着物を揺らしユナと共に皆を先導する。
「三人とも順番に、肩車してくださいなのですっ」
 楽しげにせがむ妹のお願いに、侍達も笑顔で応える。
 ――それから一同は、思い思いの土産屋を回り、観光を楽しんだ。
「そうじゃねぇ、一気にすするんだ。かっくらうんだっての」
「ムズカシイ。音、上手く出ないデース」 
 先程までの悪人面は何処へやら。ダンテはサムに蕎麦の粋な食し方を教授する。
「やっぱり、お団子は本当に美味しいデース」
 その傍らで、町娘達とお茶会を楽しむアーサー、ジョンソン。

 最終的に彼らの観光が終わったのは、もう日が紅く染まる頃だった。
 まるでサンタの様な大きな袋に詰め込まれた、大量の和菓子、木刀や手裏剣の模造品に、妹の手作りのお守り。
 ほっこりと満足気な笑顔を浮かべる三人を囲む様に集まり、並んで。
「ハイ、チーズ」
 ユナがかしゃりと、皆の集合写真を撮る。それを最後に、三人は何処か寂しげに。
「そろそろ、帰りマース。色々と御世話にナリマシタ」
 またくるよ。
 一日の観光を経て、幾分流暢になった日本語で彼らは告げ、京の街を後にした。
 ――彼らが"Cool guy"と覚えた『冷奴』の漢字の意味は、結局、誰も教えてやらなかったようだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 お騒がせな三人との観光は、如何だったでしょうか。
 三人ともそれぞれ満足して帰ってくれました。


 プレイングの内容ですが、単純な戦闘だけでなく、
 観光の案内や戯れの内容も考えてくれていて、とても嬉しかったです。
 
 MVPはチンピラ侍に化けてくれたダンテさんに。
 蕎麦かうどんかは存じませんが、
 サムは向こうの世界でもすすって食べると思います。