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夜宴の闖入者

●花見客の悲劇
 ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!

「な……何の音だ、こりゃ?」
 運の悪い酔っ払いの耳に響くのは、太鼓が響くような音。
 花見の最中にトイレが近くなり、席を外した。そして、トイレが混んでいたから、人気の無い場所を探してみると周囲に響く怪音。良い気分もすっかり吹き飛び、嫌な予感が胸を満たす。
「は……早く戻ろうか……」
 酔っ払いは草むらに入って、用事を済ませようとする。しかし、そこには先客がいた。
「ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ」
「へ?」
 酔っ払いが出来たのは、間の抜けた声を上げることだけだった。
 草むらにいたのは巨大なゴリラ。何でこんな所にそんなものがいるのか、酔っ払いに考察する暇などありはしなかった。
 ゴリラがその逞しい腕を振り下ろすと、酔っ払いの頭はたやすく吹き飛んでしまったからだ。

●日本の花見を守るため
 4月も半ば過ぎようとする暖かな日。今日も今日とてリベリスタ達はアークのブリーフィングルームに呼び出されていた。
そして、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は、メンバーが揃っていることを確認すると、依頼の説明を始めた。
「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、エリューション・ビーストの討伐だ」
 守生が端末を操作すると、スクリーンに姿を見せるのはゴリラ。手に立派な鍵爪が付いているのは、革醒してエリューションとなった証だろう。
「現れたのはフェイズ2、戦士級のエリューション・ビースト。元は山に住んでいた野猿みたいなんだがな、今ではこの様だ。部下も3匹ほど連れている」
 随分と立派に育ったものである。
 さらに、守生は端末を操作すると、スクリーンに地図を表示させる。どうやら公園のようだ。
「場所はこの山の中になる。麓には地元の桜の名所があってな、放っておくとそこが襲われることも分かっている。かなりの犠牲者が出る羽目になりそうだ、その前に何とかしてくれ」
 攻撃力も高く、それなりにタフな相手だ。油断は禁物である。
「説明はこんな所だ。資料も纏めてあるので目を通しておいてくれ。……あー、それと……」
 説明を終えた少年は、何かを言おうとして言いよどむ。何処となく照れ臭そうだ。
「事後の処理は手配してある。戦いが終わったら、あんた達は近くの公園で花見でもしてくれて構わない」
 なんとも不器用な物言いである。守生としては、これで精一杯なのだろうが。
 そして、わざとらしく咳払いをすると、いつものようにリベリスタ達を送り出す。
「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月03日(木)00:01
皆さん、こんばんは。
春は地元の山桜、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はエリューション・ビーストと戦っていただきます。

●目的
 E・ビースト4体の撃破

●戦場
 人通りの無い山道です。
 守生の指示に従って、夕方に公園へ向かうE・ビーストを迎え撃ってもらいます。
 時刻は夕方を過ぎた位で、明かりや足場に不自由はありません。

●エリューション・ビースト
 ・ゴリラエリューション
  ゴリラのエリューション・ビースト。フェイズは2。元は山中に住んでいた猿。
  力があるため、ブロックには2人必要です。
  能力は下記。
  1.鍵爪振り回し 物近複 必殺
  2.ドラミング 神遠単 ショック、Mダメージ

 ・猿エリューション
  猿のエリューション・ビースト。フェイズは1。元は山中に住んでいた猿で3体いる。
  能力は下記。
  1.鍵爪振り回し 物近複 必殺

●その他
 戦いが終わった後に、少々時間があります。
 プレイングに余裕があれば、花見を楽しむためのものを入れてくださって構いません。
 近くの公園には桜が咲いており、まだ場所には余裕があります。
 もちろん、未成年の飲酒などは不可能ですが、花見の描写させていただきたいと思います。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
ナイトクリーク
佐々木・悠子(BNE002677)
インヤンマスター
高木・京一(BNE003179)
ダークナイト
ユーキ・R・ブランド(BNE003416)
クロスイージス
エインシャント・フォン・ローゼンフェルト(BNE003729)


 ドォン! ドォン! ドォン!
 夜の闇の中、エリューションの威嚇する音が太鼓のように響く。
 革醒の力を受けた野獣は、その本能の赴くまま、空腹を満たすべく食べ物の匂いのする場所を目指しているのだった。そして、『Weiße Löwen』エインシャント・フォン・ローゼンフェルト(BNE003729)は、白金の幅広剣を構えると、目を細めてエリューションを睨み付ける。
「悪戯が過ぎるお山の大将…と言った所だろうか。少々、灸を据えてやらねばならんな……」
「ウッホ! ウッホ! ウッホ!」
 現れた敵の気配に猛るエリューション。しかし、迎え撃つリベリスタの顔に恐れは無い。『熱血クールビューティー』佐々木・悠子(BNE002677)が一対のカタールを抜き放つと、夜の闇の中、手の中のカタールは妖しく赤い輝きを見せる。
「楽しい花見に水をさすなんて許せませんね……公園には絶対通しません」
「犠牲者が出るままにしておけないしね……変身!」
 エリューションの気配を探っていた『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)は、アクセス・ファンタズムを起動し、その身を戦闘用スーツに包む。これ以上、索敵の必要はあるまい。後は戦うだけだ。
「招かれざる乱暴な客には早々にその場から退去してもらわないといけませんね。 桜も散り急ぐことになってしまいますから」
 桜の季節は短いものだ。春を彩る花でありながら、咲き、散るまでの時間はあまりにも儚過ぎる。『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)はその一瞬の大事さを知っている。だから、それを守るべく、守護の結界を展開すると戦いに備える。
「後のお楽しみの為にも仕事はきっちり終わらせませんとね。さて、参りますか」
 ユーキ・R・ブランド(BNE003416)の長身を闇が包み込むと、それは黒い鎧となる。オルクス・パラストに長年出向していた彼女にとって、このように花見をする機会等、数年来のものだ。それだけに、エリューションなどに負けてしまうわけにはいかない。
 似た想いを抱いているのは、意外にもドイツ出身の『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)だ。彼女も同様にオルクス・パラストの出身だ。そして、日本にやって来て、一番美しく思ったものが桜だった。それをこのような連中などに汚させてなるものか。
「今年、あまり桜を楽しめてないの。あはは! だから、邪魔しないでね」
 禁書アイネ・ファイゲを開くと、体内の魔力を活性化させるイーゼリット。
 高まる魔力の波動に猿が怯える。しかし、ボスであるゴリラは、むしろ気合が入ったのか、ドラミングを盛大に行い、威嚇し返してくる。
 そんなエリューション達の姿を見る『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)の瞳に浮かぶ感情は、戦いへの高揚でも、敵に対する怯えでもなかった。
「生命が芽吹く春……エリューション化しなければ……彼らも春を楽しめましたのに」
 シエルの瞳に浮かぶ感情の正体、それは哀れみだ。本来、エリューション化等が無ければ起きなかった戦い。そこに赴く彼女の表情は暗い。しかし、悲しみに浸っている暇は無い。ここで誰かが戦わなければ傷つく人がいるのだから。
「戦闘が終わったら花見だ! みんな、行こうぜ!」
 『てるてる坊主』焦燥院・フツ(BNE001054)の声が朗らかに響き渡る。
 その言葉が合図となり、戦いは始まった。
 その時、風が舞い起こり、戦場へ桜の花びらを運んできた。


「隙あり!」
「グゥゥゥゥゥ」
 先手を取ったのは悠子だった。殴りかかってくる猿の鍵爪をカタールでいなすと、髪に紛れさせた気糸を防御の出来なくなった背中に飛ばす。体勢を崩していた猿は、呻き声を上げて縛り上げられてしまう。
「支援はこちらで行います。安心して戦って下さい」
 事前に相談した作戦を元に、状況に合わせた指示を飛ばす京一。その言葉に勢いを得て、リベリスタ達は猿達を攻撃していく。相手は範囲攻撃を持っている。それを一気にもらってはこちらが不利になるばかりだ。
「ウガァッ!」
「花見も楽しみにしているんだ。そうそう食らってはやれないな」
 疾風に向かって鍵爪を振るうゴリラ。
 しかし、疾風は緩やかな動きでそれをかわす。そして、流れるように攻撃に転じると、それまでの速度が嘘のような高速へとシフトする。
「ギャア!?」
 目にも止まらぬ速さでなぎ倒されるエリューション。
 その中で、気糸に縛られたものが怯えからか身をよじって逃げ出そうとする。
 しかし、その望みが叶うことは無かった。
「ギギ!?」
 逃げようとした猿は、自分が闇の中に包まれていることに気が付く。
 そこはあらゆる苦痛を収めた小さな箱――スケフィントンの娘の中だ。
『しかしまあ、態々花見の場に来なくても良かろう物を。猿害と括るにはちと過ぎますねえ』
 暗闇の中、聞こえてくるのはユーキの声だけだ。
 そして、そこに苦痛が降り注ぐ。
「ギャァァァァ!」
 悲鳴と共に転がり出るエリューション。
「助太刀させていただく!」
 さらに容赦無く剣を叩き付けるエインシャント。その力強い一撃を受けて、エリューションは動きを止める。敵の1体を倒すことで、リベリスタの士気は上がる。
 その一方で、エリューションの士気も、仲間を倒されたことで逆に上がった。あるいは、血に酔っているのかも知れない。どちらにせよ、そう簡単に屈服するほど、甘い相手ではなかった。
 ドン! ドン! ドン!
 力強い音がこだまする。
 リベリスタ達の士気を捻じ伏せようと、ゴリラが激しくドラミングを行ったのだ。
「ぐっ……」
 衝撃に対して、大地を踏みしめて耐えるイーゼリット。この程度のことは、覚悟を決めている。だから、耐えられるはずだ。
「ウッホ、ウッホ」
 さらに、前衛陣とぶつかる猿達。乱戦となっていた戦場で、エリューションの鍵爪が閃き、桜の舞う戦場を朱に染める。エインシャントが思わず膝を付く。
「さすがに、数が揃うと厄介だぜ」
 フツも袈裟を血に染めながら、運命の力を借りて、かろうじて立ち上がる。しかし、敵の数は多く、再び襲い掛かられたらまずいと判断する。それでも、負けられないと式符を構えた時だ。
 背後から、何かが蠢く音がした。
 その迫ってくるものの姿に、エリューション達は怯えの表情を浮かべた。
「くすくす……気持ちは分かるけど……集まっていいの?」
 童女のような無邪気な笑い声。
 そして、うねり全てを飲み込もうとする黒い鎖がそこにあった。
「滅びなさい!!」
 イーゼリットの号令と共に、彼女の血から生まれた黒鎖が、エリューション達に向かって襲い掛かる。
 濁流のようになったそれは、エリューション達を押し流していく。
「皆さん、あと一息です。頑張って下さい」
 そして、シエルが捧げる祈りが、高位存在の力を顕現させる。現れた癒しの息吹はリベリスタ達の傷を消し去り、桜の花びらを舞い上げる。リベリスタ達は、再び宴を乱す闖入者へと抗う気力を湧き上がらせる。
「そうですね、相手も弱っているはず。だったら……畳み掛けます!」
 悠子と猿が交差する。エリューションに切り付けられ、彼女の肩口から血が流れる。
 しかしその時、エリューションに植えつけられたのは死の爆弾。
 一瞬遅れて爆発する。すると、エリューションはゆっくり崩れ落ちた。
「これ以上、長引かせるわけには行かないですね、ハァッ!!」
 再び一筋の雷へと姿を変える疾風。風を超えた光の速さの一撃が、エリューション達を貫く。
「今です、畳み掛けて下さい!」
「桜も邪魔者はいらないって言っているぜ、やっちまえ!」
 京一とフツの声に後押しされるように剣を構えるユーキ。すると、彼女の剣は告死の呪いを纏い、黒く輝く。
「ふむ、覚悟はお済みで?」
 ニヤリとエリューションに笑いかけるユーキ。
 むしろ、その笑みから恐怖を感じて後ずさろうとするエリューション。
 そして、その隙を見逃さず、ユーキは上段から剣を振り下ろす。
 幾重にも重なった呪いの力を受け、エリューションは動きを止めた。
「思いの外に強敵だったが、どうにかなったようだな」
 傷ついた体を引きずって、エインシャントは立ち上がると、処理班へと連絡を取る。
(せめて安らかな眠りが得られますように……)
 そして、シエルは倒れたエリューションに対して、小さく祈りを捧げるのだった。


「一番、焦燥院フツ、もとい、焦熱院フツ! 般若心経ロックいきます!」
 戦いが始まったとき同様、花見においてもスタートを切ったのはフツの朗らかな声だった。

 焦がれるのは、オレの想い
 燃えるのは、お前らの心!

 オレの念仏を聞け!
 全員極楽へ連れてってやる、Fire!

 温厚な表情からは想像も付かない熱唱が、公園に響く。
 一人でやったら馬鹿騒ぎだが、この喧騒の中ではちょうど良い位だ。桜もきっと笑って許してくれるだろう。それにしても、マイマイクを持参している辺り、この男、本物である。
「皆様のお口に合うと良いのですが……」
 宴が始まったところで、シエルがおずおずと重箱を差し出す。中身はハンバーグに唐揚げ、ポテトサラダ、野菜の煮付けにおむすび等。これに対して「口に合わない」等と言ったら、罰が当たってしまうとほど、素朴だがすばらしい品揃えだった。
「やっぱり花見は何も起きずに、皆でのんびり楽しくできるのが何よりですよね」
 続いて悠子が差し出したのはサンドイッチ。こちらも場の雰囲気にふさわしい、何よりのご馳走だ。自分用の水筒はちゃんと手元に置いてある。
 そうして並んだ食事を前に、ユーキも気恥ずかしそうに弁当箱を取り出す。
「いやあ……申し訳ありません。戦闘班への差し入れで料理を覚えたものでその、若干大味な味付けに。お恥ずかしい」
 持って来たのは塩気が強めのおにぎりに、わっさりと積まれたからあげ。普段、長身で精悍な印象を与えるユーキだけがもじもじしているのは、少々意外な姿だ。
「いや、気は心というものです。こういう場所で食べるには良いじゃないですか」
 全員に飲み物を配りながら笑い飛ばす京一。花見において大事なのは雰囲気を楽しむことだ。烏龍茶を片手に、レジャーシートへ腰を下ろすと、桜に目をやる。桜は程よく咲き誇り、リベリスタ達を迎えてくれた。
「美味しそう、ありがと… それじゃ……いただきます」
「さて……と。それでは、そろそろ乾杯と行こうか」
 エインシャントの並べた菓子の姿を見て、仲間達から一斉に声が上がる。
 Gefüllte Praline、Geschnittene Praline、Dressierte Pralineが美しく並べられ、食べて欲しいと囁いているかのようだ。
「それでは、Prosit」
 紅茶を高く掲げて乾杯の音頭を取るエインシャントに続いて、次々に乾杯をするリベリスタ達。
 しばらくは花より団子と、戦闘の疲れを癒すべく、料理に手を伸ばす。
 しかし、しばらくして落ち着いてくると、桜を愛でる時間も出来てくる。
「綺麗ね……」
 ぽつりとイーゼリットが呟く。ようやく得た桜を楽しむ機会なのだ。一瞬たりとも無駄にしたくないのだろう。
「綺麗な桜は心が洗われるようだよ」
「目を瞑るのが勿体なく感じます……」
「そうだな。祭雅卿、また世話になったな……こうして飲めるのは良い事だ」
 桜を眺める疾風に相槌を打つと、エインシャントは軽く紅茶のカップを持ち上げる。それを見て、疾風は再びカップをぶつける。
 そんな中、ちびちびと酒を飲んでいたユーキは思う。
(自棄でない酒はやはり良い物ですねえ。碌でも無い仕事も多いですが、こういうのも偶には良い)
 命がけで死闘の続く、アークの戦い。
 その中で勝ち取れる平和な時間など、わずかなものだ。
 だが、それでも、この桜のように美しいものがあるのなら、それも悪くないのかもしれない。
 そんな儚くも優しい時間の流れる中、宴は続いていくのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『夜宴の闖入者』にご参加いただきありがとうございました。
パワフルなエリューションとの戦闘、並びに、お花見の時間、如何だったでしょうか?
花見に向けて、様々な準備があり、こちらも書いていて楽しかったです。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!