● ――誤って放たれた毒矢が当たり。祈りに祈って、天へと昇る。 見下ろす地へ手を伸ばしても、虚しいほどに届かない。 引かれた弓は、何を狙うか。 深夜。 茶髪に顔の綺麗な男が、紅い燕尾服の男の目の前にやってきては突如倒れた。満身創痍、という言葉が似合うだろうか。忠誠を誓いし主により、身体に着けられたハイヒールの跡がやたらと目立つ。 「あはははははははは、染色さん超ウケますね! 店の再起不能はそんなに響きました?」 「上司に恵まれてえ」 この時『歩く染色機』と呼ばれる茶髪の男は、永遠に実行されない闇討ちを決意。 そんな上司のような先輩のような『Crimson Magician』クリム・メイディルはお腹を抱えながら子供の様に指をさして笑っている。 「なんでお前には折檻が無いんだ」 「だって、俺の店じゃないし、俺は休憩がてら遊びに行ったら色々巻き込まれちゃっただけですし」 この狐が。 言葉遊びの様に理由を並べるクリムに、染色機は大きくため息を吐いた。 「とまあ、戯れは此処まで。一緒にお仕事です」 「結局尻拭いされてんじゃねえか」 あははと頭を掻くクリムが、ゆるゆると視線を動かす。 鎖やらワイヤーやら縄で自由を奪われた少女達が、脅えた瞳で此方を見ていた。中には泣き続ける子や、震えの止まらない子も居る。 その一人が拘束を抜け出したか、走り出し、出口へと向かった。だが出口へとたどり着く前に、彼女を幾多の数のナイフがその身体を貫いては命を落としていった。 「おや、大事な商品。壊しては困りますよ染色さん」 「悪いな、つい」 「ではお得意の染色で、彼女達を手駒にしちゃってください」 「へえへえ」 壊された店の再建は、時間もお金も長く掛かりそうだ。 「で、あれはなんだ」 染色機が指を向ける。その先にあるのは不気味に輝くアーティファクト。 「ああ、射手座の聖杯。 何処かで天秤座の聖杯っていうのもあるみたいなんだけど、まあその似た様なものっていうか、そんな感じ。 で、その効力がちょっと面白いからね。持っとくと便利かなって。 これがあればほら、リベリスタとかにもきっと負けない! みたいな」 と言いながらも緩く笑うクリム。その手前で顔が引きつる染色機。所謂リベリスタと一戦交えるかもという直感からの保険。彼等も仕事を邪魔される訳にはいかない。 「まじかよ」 「まじだよ。本気と書いてまじと」 「お前もうしゃべんな」 しばらく微妙な空気が続いた。 ● 「皆さんこんにちは。三尋木のフィクサードを万華鏡が捉えました。 そうやら以前アークが潰したお店を再建しようとしているそうなので、それを阻止してください」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は忙しく手元の情報を整理していた。 見えますか? とモニターを指さして杏里は口を開く。 「あれは聖杯型のアーティファクト。射手座の聖杯です。 情報によると、一定の人の命、またはフェイトの消失によって効果が発動されるものなのです」 杏里は資料とにらめっこしながらも、どうにか伝えようと苦戦する。 「仕事道具として一般人の少女達を誘拐したのですが、リベリスタが止めに来る対策として聖杯を置いている様です。 あちらもこれ以上邪魔されるのは嫌な様でして……。 見えている罠に突っ込むのはとても危険ですが、一般人が関わっている以上、放置することはできません」 捕らえられた一般人の数は十五。それは聖杯を満たす水にもなる。 アーティファクト発動の贄は人の命か、リベリスタの命。捧げる命で効果さえ違えど、危険であることには代わりは無い。 「場所は古い廃屋です。此処に誘拐した一般人を集めて染色機の力により、一斉に支配しようとしている模様です。 今から行けば、その寸前で着くことができます」 モニターを見る限り、少女達は一箇所に固められている訳ではなく、疎らに放置されている。だが拘束されていて身動きは取れていないようだ。 敵は、顔を合わせた者も少なくは無いだろう。圧倒的な攻撃力を持ったクリム・メイディルとその部下、染色機が相手だ。 だが、敵はあくまで三尋木フィクサードで、穏健派と称される彼等だ。もしかすれば交渉は可能なのかもしれない。 「店の再建を阻止し、これ以上一般人に被害が出ないように。お願いします」 できるだけ平静を装いながら、杏里は下唇を噛み締めた。それから深く、頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月13日(日)22:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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