● 空を飛びたい。 誰でも一度は夢をみる、そんな幻想。 背中に一対の翼を携え、あの青い大空を自由に舞う。 いっそ、漆黒が支配する夜空でも良い。夕方の、綺麗な赤のグラデーションが彩る空でも良い。 でも、でも。足は地面が恋しいらしい。 縛られたように足は地面とキスを繰り返す。 嗚呼、ならばいっそ、こんな足は切り落としてしまえ。 今日の獲物はフライエンジェの少女だった。 よく耳につく、金きり声をあげながら腕の中でもがいていた。 そんな彼女に鳥の羽が突き刺さっていくごとに、その元気な腕も段々と力無く、だらりと重力に服した。 さあ、餌の時間だ。 そう合図すると、頭上を飛んでいた鳥がフライエンジェを啄ばんでいく。 まだ、意識はある。 けれど、動けない。 嘴がフライエンジェをつつくごとに、抉られ、血が流れ、絶叫が漏れる。 可哀想に、なんて可哀想に。 胸を支配する悲しみが、なんだかもう、快感になって止められない。 腕を伸ばし、食べられていくフライエンジェを慰めるように頭を撫でた。 「可哀想に、君はもう空を飛べないんだね。 もう二度と、その翼を自由に使うことができなんだね。 悲しいね、悲しいね。翼は空にあってこそ、その存在価値が見出せるのに。 でも安心してね。その翼はボクが使ってあげるから。ほら、ほら、ほら、ほら。 分かるだろう? 君の背中から翼が抜けていくことを。 感じるだろう? ぷちぷちと、一本ずつ抜いてあげるからね。 実感するだろう? 君が新たな鳥と成っていくことを」 ● 「皆さんこんにちは。一度万華鏡が捕らえたフィクサードを、再び見つけることができました!」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は資料に目を通さずとも話を始めた。 一度自身の未来予知で捕らえたフィクサードは、杏里の頭の中では完璧に情報や職、特性その他もろもろは把握しているのだ。そんな所で杏里の真面目さが垣間見える。 「名前……とは言えませんが、『鳥喰い』がお相手です。 黄泉ヶ辻のフィクサードで、異常なまでに鳥や翼に興味を示す人です」 一度相対したリベリスタも居るだろう。ヴァンパイアのインヤンマスターだが、鳥籠関連のアーティファクトを操るフィクサードだ。 しばらくして杏里は一度ブリーフィングルームを出ると、飾り気の無い鳥籠を持ってきた。それはアーティファクト『誘惑の鳥籠』だ。 前回、鳥喰いとの戦闘が終わった後、残されていたそれをアークが回収していたのだ。 リベリスタの一人が触って大丈夫なのかと心配したが、大丈夫だと杏里はにっこり笑う。 「これはどうやら、鳥喰いが殺した鳥達や革醒者の念をエリューション化し、使役するものなのです。 鳥喰いのためのアーティファクトと言っても過言ではありませんね。 だから、杏里が触っても、リベリスタさんが触っても、反応はありませんし害もありません」 その鳥籠をブリーフィングルームの長机の上に置いて説明を続ける。 「殺した、という事はもちろん死体が発生します。 それは鳥喰いが食べるときもあれば、利用するときもあるのです」 それが今回だ。 モニターに映し出された、やたら形が歪な凶鳥。 フライエンジェの子を啄ばみ、殺し、自らの一部となる様に飲み込む。 「敵は二体。鳥喰いと凶鳥です。 凶鳥ですが……これは口から取り込んだものを自らの一部として成長するアンデットです。 力の強い者を食せば食すほどその力を高めることができます。それは戦闘内であっても例外では無いのでお気をつけて」 だが、普通のエリューションをフィクサードが操ることはできない。 何かのアーティファクトか、はたまたそれ以外か。 何かあるのは否めない事実だ。 「場所は工事中の建物内です。 まだ、作って間もないようで、骨組みしかありません。なので足場を劣悪です。建物は三階建てで、鳥喰いは三階の骨組みに座っています。 少し厄介なお仕事ですが、殲滅を依頼します。よろしくお願いしますね」 杏里は深く頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月02日(水)01:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●その日、翼が散る 今日はとてもよく耳に羽音が響く日なのだろう。 先程殺した黒翼はとても艶やかな翼だった。嗚呼、飛べなくなるだなんて勿体無い。 ……おっと、そうだった、ぼくが殺したんだったね。 そうだ、今日は記念日にしよう。だって―― 「お久しぶりです。あれからどのようにお過ごしで?」 たった一文だけ置いておき、『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)の青き翼が鳥喰いの目の前を上昇していく。 目線が合致したのはたった1秒も無い、0.1秒くらいの世界。 また会いに来てくれただなんて、とても嬉しい。そう、亘の羽こそ、この口内が覚えている。 亘はすぐにでも鳥喰いへと飛び掛りたいところだが、狙うは飛び舞うアンデットの集合体――凶鳥。 だから、速いってのとか思いながらもその下から『蒙昧主義のケファ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)が飛び上がる。 「お久しぶりね、また会えて嬉しいわ」 エレオノーラが他人に興味を持って後を着けるとは、珍しい行動であって。 鉄骨を避け、ショートカット一直線で鳥喰いの下まで羽ばたけば、前回、契られた翼が目の前の敵にうずき、傷も完治しているのに痛む。 その三人を見上げる、翼無き者達。 ハイバランサーとはなんて便利なスキルだろうか。 『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE00004が鉄骨を綱渡りの如く、器用に伝っては跳躍して高さを得ていく。 視界が向くのは、不安定な足場では無く、常に敵。見つめるその視線の先で。下を向くのは鳥喰いの視線。 「おお、御厨夏栖斗か。君の妹くんの羽を極上のファーに変えたいね」 「ぜってえ、させねえ」 笑う鳥喰いの合図に、歪な凶鳥が動き出す。その支持の仕方を『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)は見逃さなかった。 紫の瞳を研ぎすまし、自由に動かしては種証の種を探す。 「亘! 後ろおお!!」 「はい?!」 叫んだ夏栖斗の声に、背後を向いた亘は凶鳥の接近を知る。上手く体勢が整えられない、その空中で、亘の背中は千切りとられていった。 「ウオオオオーイ?!!」 その瞬間に落ちていく亘を見た『獣の唄』双海 唯々(BNE002186)が、鉄骨を伝って登るのを止めて、亘の落下地点を予測しながら、狭い足場を辿る。 「オイオイ、何アンタが喰われて落ちそーになってんですかっ!」 叫びながらも、重力に従うしかない亘の体は、秒単位で速度を増して落ちていく。 このままではまずかった。飛行を無くした彼の体は地面に叩きつけれられ――最悪、ぱちゅーん! つまり『見せられないよ!』ということになる。 咄嗟に唯々は鉄骨を蹴り、空中へと身を投げ出す。両手の掌は空へと向き、亘を受け止めようと懸命に前へと伸ばした。 それから両手に受け止めた重さをそのままに、唯々と亘は地面へと落ちていき、鈍い音をたてて弾けた。 「ぉおお、しまった。折角の翼が」 言葉だけではうっかりといったところだが、危機感も慌てる様子も無い鳥喰い。 目の前で対峙するエレオノーラが落下した二人に苦い顔を向けながらも、すぐに視線は鳥喰いへと戻される。 予想はしていた。落ちるって。でも、此処から離れる訳にもいかなくて。 「貴方って人は……ほんとにどうしようもないわね?」 「やぁぁ、落とすつもりは無かった、そういえば落ちるものもあった。かなりうっかりしていた。 いいや、良いんだ、青い翼はもう1つある。そしてぼくは、君が欲しいんだ、お嬢さん」 「私は、男よ。あいにく、腐りの気は皆無だからね?」 目の前で増える鳥喰い。 鳥喰いの視線はフライエンジェの翼を舐め回すように視線がなぞる。品定め、とでも言っておこう。 そのもう1つの青翼。『蒼い翼』雉子川 夜見(BNE002957)が低空飛行しながら、鉄骨をなぞる。 凶鳥の歪な姿をその目に捉えるが、鳥好きな彼にとってその存在は怒りを覚えたり、悲しく思ったりするわけではなく。ただただ、静かだった。 『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が遥かに凶鳥よりは見た目のいい烏を札で構成しては放つ。 更に地に足をつけるのは、『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)だ。 前回、己が飛び降りていればと自身を責めるが、それもこの一戦で返上しよう。 手に持つアストライアに力が篭る。外せない、外してはいけない。鳥喰いによって殺される迷い羊は、もう生み出したくない。 打ち出した弾丸が、もう一人の鳥喰いを射抜いていったとき。 「だありゃああ!!!」 鉄骨を上りきった『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)が鉄槌を大きく振りかぶっていた。 まるで野球の如くに振られる鉄槌は、威力を帯びて凶鳥に吸い込まれていく。 最大威力のその攻撃。凶鳥を形成する肉の破片が一部飛び散っていったのは、言うまでも無い。 ● 「ごきげん麗しゅう、アークだよ。君を止めに来た。君の名前はなんていうの?」 「はぁあ、殺しにきたの間違いさ。名前ねえ……さあて、なんだったかなぁ」 首を斜めに傾ける鳥喰いを横目に、階を上りきった夏栖斗が蹴り出し、真空波が凶鳥へと一直線に飛んでいく。それと共に浅倉 貴志(BNE002656)も同じ攻撃へと移っていく。 夏栖斗は落ちた動かない二人が気になるが、ただ嫌な汗が流れるだけで、生死を確認するために地上に降りるわけにもいかなくて。 すぐに体勢を立て直す凶鳥が、静へと弾丸の如く飛んでいく。 「静さん!?」 「大丈夫!」 直撃したその勢いで、静の体が鉄骨上から足場を無くして吹き飛んでいく。入れ替わるようにしてノエルが攻撃に出るが、目線は静を追っていた。 静はすぐ近くにあった鉄骨を掴んで勢いを止め、落下をせずに留まる。だが、少し鳥喰い達とは距離が離れてしまったか。 ホッと、一息。ノエルがConvictioと呼ばれた銀色の槍を先に突き出す。 「まさに凶鳥、といった風情ですね」 槍と言えども、重量は並以上のその槍。だが、洗礼されたノエルの腕は、それを手足同然に扱うのだ。 「まあ何であれ消えて頂きます。邪魔ですのでね」 槍の先端が、最大威力のそのままに、凶鳥を貫いていった。 そのすぐ横では夜見が飛び出す。 エレオノーラが攻撃を避けたその直後、小太刀を勢いよく振るっては、鳥喰いへとハードブレイクを放った。 「永遠に地に脚をつけておけばいい」 「ああぁあ、はは、そうだね、切り落とそうか、切り落としてよ」 光る小太刀が振り切られた直後、氷の雨が降り注いだ。 貴志の斬風脚が飛ぶその中で、エレオノーラが鳥喰いを向き合う。 「地に足の付かない子供の足なら、あたしが喜んで切ってあげる。優しいでしょう?」 エレオノーラのナイフはもう一人の鳥喰いへと吸い込まれる。 邪魔だなぁと眉間を歪ませながら、エレオノーラはハッと前を見た。 「ぁあ、それもいい。それとその翼も欲しいものだね」 鳥喰いの攻撃はエレオノーラと、夜見だけを見ていた。紡がれた詠唱と、札が空に消えては氷の雨を降らせる。 それはリベリスタ全員の身体を貫いて、階下へと落ちては砕けて消えていく。たった一人、エレオノーラだけはそれを回避していて。 「あら、そんなもの?」 「あはあ、これはこれは……手強い駒鳥よ」 その後ろから夜見が一閃した自付を吹き飛ばす、その攻撃。だが、寸前で鳥喰いがかわしてしまう。 興味があって見られいるのは、夜見ではなく、背中のモノ。つい、奥歯を噛み締めた夜見は思いだけで身体が動いた。 「くだらない」 全て幻想だって、どうして気づかない? そう、一文だけ置き去りにして、夜見はもう一度小太刀を一閃させる。 攻撃は集中的に凶鳥へと続いていた。 静の真空波が宙を飛び、夏栖斗の拳が防御を貫く。 ノエルの槍が治らない傷を与え、エレオノーラの身体が敵の攻撃をあざ笑い、貴志もその脚を振るう。 更に、夜見の小太刀が神秘を吹き飛ばし、ユーヌが癒しを送る。 その真下から凶鳥を狙う杏樹は、弾丸を放ちながらも横目で血の海に沈む二人を見ていた。 「おい」 シスター服から伸びる彼女の白い腕が、唯々の頭を撫でた。 かち割れたその頭には、血が溢れる。もちろん、杏樹の手にもそれが着いては染めていく。 「おい、大丈夫か?」 杏樹の呼びかけにも、すぐに応答しなかった。 「おい、此処で終わるのか? 違うだろう?」 撫でる腕に力が篭る。今、その時でさえ、頭上では仲間が戦っているのだ。 ぱちりと、目が開いた亘。 動かない唯々の上に重なるようにして寝ていた亘が、揺ら揺らと起き上がった。 「……唯々さん、すいません」 未だ動かない唯々から離れた亘が、翼を広げようとした。 だが、走る激痛。後ろをみて、覗いた翼がそれはそれは、あまりにもボロボロで――。 「きゃ!!」 頭上では、エレオノーラの声が響いた。 落下までには至らず、低空飛行が幸だったか、すぐに鉄骨にぶつかり難を逃れた。 けれど、鉄骨にしがみ付くエレオノーラを見て、鳥喰いの口端は横に裂けていく。 呪縛の印が、彼を襲う。 ●羽はひとつでは飛べなくて 「ちょっと、何するのよ!?」 「あああ、大丈夫、手荒にはしないよ、翼にはね。来てもらおう」 呪縛が絡んで、エレオノーラは動けない。それを良いことに鳥喰いは彼の体を担ぎ上げた。 飛び出した夜見が、エレオノーラを助けようと攻撃しようとする。だが、その一歩手前で鳥喰いは重力に従うようにして落ちていった。 「んんああ、これが好きでねぇ」 「待ッ!?」 夜見が咄嗟に鳥喰い、エレオノーラだけでも掴もうと手を伸ばしたが、届かず、鳥喰いの身体は地上へと。一緒に担がれたエレオノーラも堕ちていく。 逆に上っていた亘の横を通過し、鳥喰いの脚はついに地上とキスをした。 事態に気づいた夏栖斗達が一斉にその軌跡を目線で辿った。けれど、凶鳥はまだ、健在で。主の行動を妨害させないようにして、高く、すばやく。けれど、ふらふらと揺れるそのアンデッド。終わりは近いことは目に見えて分かっていた。 「すぐ行くよ!! エレオノーラさん!!」 静が最速で鉄槌を凶鳥にぶつけていく。だが、やり返すようにして、はばたいた凶鳥の翼が範囲内のリベリスタを容赦なく貫いていく。 更にはその擦り切れた身体で、夏栖斗の胴へと飛び込んではその身体を吹き飛ばす。 夏栖斗の身体が鉄骨にぶつかり、それを掴んで落下は防いだが……毒が身体に回っていた。その激痛に耐えながら、彼は飛び上がる。 「……っざけんなよ!!」 これ以上、目の前で誰かが連れて行かれるだなんて。消える夕日に金色の瞳が赤金に輝く。 勢いだけで振り回した脚。ぶちかますから、避けてくれと言えない程の速度で回転した蹴りは、凶鳥を討ち、もう一人の鳥喰いを貫いていく。 「邪魔です!!」 ノエルが咆哮する。鳥喰いへ向かった仲間達。そして残った目障りな影人を壊すのは己の役目だろう。 振り上げた槍に思いを込めて。此処で倒さないといけなくて! 「覚悟しろ!! これ以上、私を怒らせるな!!!」 影人を貫く、その銀色の槍は、影人の防御さえ軽く貫いた――。 「……ちょっと! なに考えてるのか知らないけど!!」 「まあまあ」 何もできずに持っていかれるエレオノーラに、鳥喰い。 持ち帰られれば何をされるか、考えただけでぞっとする。やめろその羽だけは毟らないで。 凶鳥さえ消えた今だからこそ、その逃走は始まっていた。階上のリベリスタが向かうには時間が必要で。けれど―― 「おい。何処へ行こうっていうんだ?」 女の子らしい高い声に、少し怒りが混じって低くなった。そんな声。 杏樹だ。 無表情で怒りに燃える杏樹が仁王立ちしていた。 「ああ、地上に降りると不運かな」 「ふざけるな。エレオノーラ、返してもらう!!」 この時、スターサジタリー(杏樹)は武器(アストライア)を捨てた。 ――誓ったんだ、今度は逃がさないって。もう二度と、逃して、悲劇を起こさせないって。 前回動けたからこそ、今回は逃せない。 走り出す彼女はシスター服に似合わない牙を剥いた。 完膚なきまでに、潰そうじゃないか。顔も知らない、存在さえ分からない、これから鳥喰いに殺される誰かを思って。それを防ぐために、アークは存在していて。それを行うのがリベリスタであって。 「お前みたいなのが同じヴァンパイアだと思うと、気が滅入る」 この時までに研がれた牙は、鋭く光る。 それで鳥喰いに噛み付いては、腕を巻きつけて鳥喰いの移動を止めたのだった。 「……いてて」 むくり。 その時、血まみれの唯々が赤い海の中から起き上がる。目は虚ろで、荒い息が口から出入りしていた。手は頭を押さえていたが、それが出血を止めることには繋がらない。それでも。 「逃がさねーですよ? テメーには地面が這い蹲ってるのがお似合いなんですからね」 ナイフだけを両手に収め、唯々が血を振りまきながら前へと走った。 杏樹が牙を離した直後に、彼女の気糸が鳥喰いを縛る。 「その籠(いと)の中で、死ぬといーです!!」 動きを止めるのは、たった10秒で良いのだ。油断すれば解かれる気糸を使い、唯々は懸命に彼を縛る。 「貴方は空を愛していた。そうでしょう?」 痛む背中のなんのその。自分の今ある全ての力と想いを、ぶつけに。 亘がいち早く、鳥喰いの下へと駆けつけた。唸るAuraからは光が弾けている。魅了を司るスキルを使って―― 「空は逃げたりしません。空はいつでもそこにあるんですから!!」 ――鳥喰いを打ち砕く。 「ああ、あああ、そう、そうか、そうだね、確かに愛していた」 エレオノーラを掴む腕が緩み、鳥喰いは両手を広げた。 「なんだが、晴れ晴れとする。でも、翼は確かに憎かったよ、いや。焦がれていたか」 鳥喰いの視界には見えている。10人のリベリスタ武器を牙を拳を持ち寄ってスキルを発動させて、迫っているのを。 「ああ、でもそうだね」 翼を折って、翼を噛み千切って。誰より憎んでいたのは彼。 けれどその執着はおぞましい程の愛でもあって。 「たったひとつ、後悔があるとするならば」 ――お腹は空いていたよ。 轟音が響くその中で、鳥籠の形をしたペンダントが砕けて消えた。 薄れていく意識の中でも、最後までその目は翼だけを見ていた――。 静かになった工事現場。鉄骨は傷つきながらも、そのまま冷たく建っていて。 その真下で力尽きた唯々が再び倒れた。 その身体を亘が両手で抱えながら、消える夕日を目にした。 頭上では、凶鳥から開放された、七色の羽が散っては風に飛ばされ昇っていく。 一体何羽だろうか。とでも言いたくなるほどに、その羽の色は様々で。 亘の足元。青い羽がそっと地面に落ちた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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