●自分にできる事 カレイドシステムの力を借りて自身の見た様々なものを、画像や数値に変換してデータを作成する。 確認したり、思い出したりしながら……自分の見た、できる限りのものを。 その場に向かう人たちの為に。 運命を変革しようとする人たちの為に。 暗闇の迷宮を進むその人たちの為に、自分の力が少しでも……闇を照らす明かりになるのなら。 「……とか、カッコつけ過ぎだよね」 資料の整理を終えたマルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)は自分でむーっとツッコミを入れてからリベリスタたちへの連絡をお願いすると、資料を持ってブリーフィングルームへと足を向けた。 こういう時は本当に便利だな~と思いながら自動ドアの前に立ったところで、自分を呼ぶ声を聞いてそちらを向く。 「どうしたんです、ヤミィさん?」 以前の依頼やイベントなどで一緒になった少女の姿に首を傾げて尋ねると、少女……ヤミィは挨拶の後、持ってきた鞄に視線を向けてから口を開いた。 「実は皆さんから聞かせてもらった話を基に、アーティファクト……みたいなものを作ってみたんですが……」 「……えっ? 詳しくは分かんないですけど、それって凄いんじゃないですか!?」 「や、ダメダメなんです! 一ヶ月以上かけて色々材料も使わせて頂いて、結局何とかなったのは……ほんの数握りで……」 しかもそれもキチンと保存しておかないと、すぐに劣化してしまって……ヤミィはそう言って、少し大きめの古びた鞄をかるく叩く。 「博士みたいにはいきません……もちろん、当然と言えば当然なんですけど」 でも、がんばって……何十年かかってもいいから、あんな風になりたいです。 その為には、とにかく努力あるのみですよねと笑顔で言ってから、今回の依頼で宜しければ試しに使ってみて欲しいんですと説明した。 「一応、真白博士から許可も頂きました。もちろん現場の人たちがOKしてくれたらって言われましたけど」 「そういう事でしたらお願いする分には問題ないと思います」 フォーチュナの少女は頷くと、それではこちらにとヤミィを案内して。 ブリーフィングルームの扉を開けた。 ●敵はE・エレメント! 「今回みなさんに戦って頂く相手は、E・エレメントになります」 マルガレーテはそう言ってから、ブリーフィングルームの端末を操作した。 ディスプレイに宙に浮いた炎……火の玉のような存在と、それよりは大きめな人の上半身に似たような形の炎が表示される。 「炎のエリューション・エレメント……ファイア・エレメントとフレイム・エレメント、みたいな感じでしょうか?」 火の玉の方はフェーズ1、人型の方はフェーズ2。 「火の玉の攻撃は、近接範囲の対象に炎を燃え移らせるというものになります」 直接的なダメージを与えてはこないが炎に対する耐性を持っていない者は、かなり高い確率で火炎の効果を受けてしまうようである。 動きもそれなりに機敏。耐久力はないが、炎の塊という形状のせいか物理攻撃はやや効き難いようだ。 「あと、ダメージを受けて倒されそうになると……自爆するみたいなんです」 幸い受けたダメージで破壊力が変化したり等はなく、攻撃力は一定。 攻撃と同じく近接範囲で避け難く、火炎の効果がある。 「範囲ですので、当然味方を巻き込んだりします……」 下手をすると、自爆でダメージを受けたエリューションが、また自爆して……みたいな連鎖が発生する可能性もある。 もちろん、上手く利用すれば敵に大きなダメージを与えられる可能性もあるが。 「ファイア・エレメントの数は10体になります」 対してフレイム・エレメントの数は2体。 「数は少ないですが、その分戦闘能力は高いみたいです」 形だけ炎を人間の上半身に似せてみたという感じの外見をしたそれは、その上半身部分だけで人間と同じくらいの身長をもっている。 攻撃手段は炎の腕を振るって近距離の相手1体を殴りつける神秘攻撃と、炎を爆発させて範囲を薙ぎ払う遠距離攻撃。 「遠距離攻撃の方はマグメイガスの方のフレアバーストみたいな感じです」 加えてどちらの攻撃も、強力な炎で対象を包み込む効果がある。 「こちらは耐久力が高めです、加えてファイアの方と同じく物理攻撃が効き難いみたいです」 そして、どちらも炎に対する耐性を持っているようですとマルガレーテは付け加えた。 反面、凍結等には弱いらしく、本来の2倍のダメージを受けるようである。 他、さまざまな状態異常効果も受けるが、そこから回復する能力はどちらもかなり高めのようである。 一応、凍結系の効果に関してはその回復能力もやや落ちるようだ。 もっとも、そういったものに対する苦手意識のようなものはなさそうである。 「そもそも意識というか思考みたいなものがないのかもしれません。戦い方も基本的に敵に近付いて攻撃、というだけみたいですし」 とにかく攻撃できそうな相手に近付いて攻撃する。 フレイムの方は遠距離攻撃があるので射程内で狙える相手で近くのものを狙う。 攻撃時はある程度味方にダメージが行きにくいようにはするらしいが、厳密に避けようとまではしないようである。 「単純ですが、その分戦いにくい面もあるかも知れません」 現れる場所は市街地から離れた荒地のような場所である。 障害物になるようなものは存在しない開けた場所だ。 「数の多い相手側に有利な場所だと思います。充分にお気をつけて」 マルガレーテはそう言って説明を終えると、今回は撃破に加えてもう一つお願いがあるんですと言い、室内に控えていた少女を紹介した。 ●仮名はヒーリング爆弾! ヤミィと名乗った少女は荷物入れらしき鞄を開くと、その中から握り拳大の……金属にもプラスチックにも見える何かを取り出して机の上にそっと置いた。 パッと見……手榴弾のようにも見える。 「実は以前リベリスタさん方に聞いた話を参考に、回復効果のあるアイテム作成してみたんです」 宜しければこれを、今回の戦いで使用してみて欲しいんですと少女は皆を見回した。 同じように作ってみた品で実験して、きちんと効果が出るのは確認済み。 「威力はちょっと低めです……こう、じわじわ~って感じでエリューションエネルギーを注入するところが難しくて……」 「ヤミィさんて結構理論的なのに要所要所で感覚的っていうか、長嶋式錬金術って言うか……」 「だ、ダメですよ!? そんな恐れ多い……っていうか、マルコちゃんは年に合わない比喩を使います」 「……そうですかね? というか僕の呼び名はそのイタリアマフィアみたいなのに決定なんですか?」 ……とと、すみませんとフォーチュナは気恥ずかしげに謝り一人称を直してから、ヤミィに説明をゆずる。 「それじゃ説明させていただきます。この爆弾は皆さんのエリューションエネルギーを起爆剤にして、回復効果を発生させて軽傷を直すという仕組みです」 種類は3種類あるが、どれも基本は同じだ。 「皆さんがスキルを使うときみたいな感じで握って力を注ぎ込むような感じにしてくれれば、爆発して近くの対象一体の受けていたダメージを一定量回復させます」 力を注いだ時点で爆弾を形成する物質が変化しまして~とか、回復効果を持続させるのが難しいので発生させる形にしてみました~みたいな感じで少女は説明するが、要約すると最初の一言で使う側には充分だった。 3種類の爆弾は、使用するのに必要なエネルギーと、回復量が違うだけ。 基本的には使用するエネルギーが大きい物ほど回復量も多い、という感じのようである。 「で、宜しければ今回の依頼で使ってみて頂きたいんです」 お願いできないでしょうかと言ってから、ヤミィはその場のリベリスタたちを見回した。 「もし使って頂けるなら……人が沢山いる所とかを通ると効果が弱まっちゃうみたいなんで、戦う場所の近くまでは運搬お手伝いで私もご一緒させて頂こうと思います」 包みを入れてきたちょっと古めかしい鞄のような物をぽむと叩き、ヤミィが真面目な顔で口にする。 「最終的な決断は皆さんにお任せします」 「もし宜しければ、使ってみて感想等を……それ以外にも要望とか頂けたら、今後の実験に活かせればと思ってます」 どうか、お願いできませんでしょうか? その言葉に少し考えこんでから……リベリスタたちは二人に、結論を伝えた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月04日(金)23:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ヒーリング爆弾配布! 「なんと! ヤミィさんの試作品が完成したのです。早速! 実戦で試すのです」 「……あの? イーリスさん? どなたに向かって喋ってるんです?」 「細かいこと! 気にしないのです」 首を傾げたヤミィに向かって『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)は言い切った。 「こんなアーティファクトも作れるんですね」 『極北からの識者』チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)も感心した様子で受け取った品物を眺める。 「凄く興味が湧いてきましたよ、後で是非お話を聞かせてください」 チャイカの言葉にちょっと気恥ずかしそうにしつつ、少女は嬉しそうに礼を言う。 「うむ! ヤミィの研究成果を試せるのは僕もうれしい」 『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)もヤミィへと笑顔を向けた。 「ヤミィ、ボクは近づかないと回復はできない。だけどこれだと遠くから回復がつかえる」 そんな会話をする者達を眺めつつ、『廃闇の主』災原・悪紋(BNE003481)は首を傾げた。 (ヒーリング爆弾って……なんで回復するのに爆弾なんじゃろうか……?) 「とか疑問に思っておるのは我だけかのぅ……?」 聞いてみたい気もするものの……何となく声に出すのも気まずいように思えるので、黙っておくことにする。 その傍らで。 「うーん。それほど日は経っていない気もするのですが、なにやら感慨深い」 ユーキ・R・ブランド(BNE003416)は呟いた (思い返してみると、ヤミィさんとの仕事がアークに来て初めて、だったのですよね。私は) 「よし。折角の機会ですし、お世話になった恩返しと行きましょう」 そう言って爆弾を受け取ったところで……じーっと見ている悪紋に気付く。 「いや、数も限られておるしな。使いたいものが使うと良いのじゃ……我は傷癒術が有るしの……」 べ、別にちょっと使ってみたいとか思ってなかったからな! 「さっさともって行くと良いのじゃ!」 迷いはしたものの……まあ、それならと。 ユーキは遠慮なくヒーリング爆弾を2つ受け取った。 ●任務開始前に、色々と (回復アイテムか……RPGでは必須アイテムだけど、現実には今までは無かったしあれば助かる) 「どういう仕組みなんだろう?」 同じように威力が高めの方を1個受け取った『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)は、深淵ヲ覗クで仕組みを理解できないかと試してみた。 (構造上の問題点とかも発見できるかもしれないし) ヤミィの説明は抽象的で、ちょっと分からない。 「それにしても……いいな、技術開発部……」 (キサも技術開発部に移動したいのに……) 思いつつ眺めてみるものの……本来のアーティファクトと違う構造のようにも思える、というくらいしか解らない。 効率は悪いものの、疑似的にスキルに似た効果を発生させているのかも知れない。 あくまで推測になってしまうが。 『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)も、受け取った爆弾を眺めつつ考え込んだ。 (うちらが戦ってる間にも、こういう戦いをしてる人が居たんだね) 「っつか回復できる爆弾かー、これが実用できたらリベリスタ達も怪我が少なくて済むのにな」 何気に智親室長ちゃんくらい凄い発明だよ。 「うちは戦う事しか出来ないけど、それでヤミィちゃんの役に立つっていうのなら、存分に見ていってね?」 その言葉に彼女は礼を言ってぺこりとお辞儀した。 効果が弱めの物は、イーリスとユーキが2個ずつ、瞑が1個。 効果がやや強めの物は、雷音、ウラジミール、チャイカが1個ずつ。 そして効果がやや強めで消費が少し減少した物は綺沙羅が。 それぞれが受け取り、改めて使い方を再確認。 「製作秘話は程々で頼む」 脱線しそうになったヤミィに『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が冷静にツッコミを入れなければ、結構長引いたかもしれない。 「はい、皆さんの分もありますよー」 説明が終わると、チャイカは気休めとは思いつつ熱対策を幾つか施す。 通気性の高い服装、水分補給の他、塩分、ミネラルバランス等の維持も忘れずに。 「戦闘に影響は出ないと思いますが、終わった後が心配ですからね」 速やかに処理せねばなるまいと、ウラジミールも頷く。 炎のエレメントは厄介だ。 「それが複数体ともなれば捨て置けぬ」 小火が火事になる前に速やかに撃破し、消火作業を行わねばならない。 「見ていてくれ、かっこ良くがんばってくるのだ」 彼女……親友の両手を握って雷音は言った。 「だから応援していてくれ」 大切な友達が後ろにいて、そして守れる。 「リベリスタとしてとても嬉しいことなのだ、でも絶対に出てきちゃだめだぞ?」 「うん……雷音ちゃんも、みなさんも……お気を付けて。無茶は絶対にしないで下さいね?」 ぎゅーっと手を握り返し皆の顔を見回すと、ヤミィは不安げに口にした。 そしてリベリスタたちは、彼女に見送られ戦場へと接近していく。 エレメントたちの姿を発見したウラジミールは装備を確認しながら口にした。 「これより任務を開始する」 ●戦闘開始! E・エレメントたちを確認したリベリスタたちは距離を詰めながらそれぞれ戦闘態勢を整えていく。 エリューションの側も距離を詰める中、初手から攻撃を仕掛けたのは雷音だった。 「來來氷雨! 全てを凍らせろ!」 呪力によって生み出された魔の雨が、炎のエレメントたちに降りそそぐ。 攻撃を受けたうちの2体がその冷たさによって一部を凍結され、直撃を逃れたものたちも小さくないダメージを受けた。 反撃とばかりに人型をしたフレイムエレメント2体が、腕のような部位をリベリスタたちの側へと向ける。 前衛と後衛、ウラジミールと綺沙羅の近くに炎の塊が現れ……次の瞬間、爆発が起こった。 範囲攻撃に警戒していた為、巻き込まれた者はいないものの、2人が受けたダメージは軽くない。 加えて炎はそのまま消えることなく、ふたりの身を焼こうとする。 「簡単に燃やされたりはせぬよ」 ウラジミールはそれを無効化すると、防御のオーラを巡らせ戦闘態勢を整えた。 両者の距離は近付き、戦闘準備が終わる。 ハイスピードを使用して更に反応速度を高めていた瞑は、高速の連続攻撃を火球の一体に向けて繰り出した。 雷音は再び印を結び氷雨を降り続かせ、脳の伝達処理能力を向上させたチャイカは 全身から伸ばした気の糸で人型のフレイムエレメント達を攻撃する。 ほぼ同時に動いたフレイムエレメントは、前進してきた前衛たちの内の2人に狙いを定めた。 一体がウラジミールに、一体がユーキへと炎の腕を振りかぶる。 ウラジミールは無理せず守りを重視した戦い方でE・エレメントを迎え撃ち、漆黒解放によって無形の武具を纏ったユーキも大盾を活用して防御に徹する事で被ダメージを最小限に留める事に成功した。 ファイアエレメントたちの数が多い間は無理せず防御重視でというのがウラジミールの戦法である。 一方、ユーキも受けた傷を呪いに変えるダークナイトの能力を活かせるようにダメージが蓄積するまでは防御に専念する方針だった。 「正直相性の悪い相手ですが……やりようが全く無いわけではありません」 2人が炎の人型を引き付けている間にイーリスが動く。 「目指すは短期決戦なのです!」 彼女は全身に巡らせた破壊の闘気を爆発させると、ヒンメルン・レーヴェで爆裂する一撃を叩き込んだ。 目標は瞑が狙ったのと同じファイアエレメントである。 エリューションは物理攻撃に対してある程度の耐久力を持ってはいたものの、強力な攻撃の集中には耐え切れなかった。 強い風か何かで炎が掻き消されるかのように、火の玉は空中で消え失せる。 陰陽によって刀儀陣を展開した綺沙羅は、癒しの符で自身の受けた傷を治療した。 初手で守護結界を張り巡らせた悪紋は、続いて式符で自分を援護する小鬼を作り出す。 リベリスタたちが動いた後、火の玉たちは前衛たちへと近付き攻撃を開始した。 とはいっても、直接的なダメージをあたえる攻撃ではない。 火炎噴射によって自身の炎を対象へと燃え移らせるというだけである。 とはいえ決して油断の出来ない攻撃である。 火炎によって消耗したところに、もう一方の攻撃……自爆を受けるような事になれば。 複数のエレメントたちの攻撃よってウラジミール以外の3人が直撃を受け炎を浴びせられた。 それでも怯むことなくリベリスタたちは火球たちへと攻勢を続けていく。 ●実験開始! ある程度負傷した人に早い段階で使ってみようと考えていた瞑は、ウラジミールの負傷を見て使用を決めた。 「使ってみるね~」 ちょっとだけ下がってから、聞こえるかは分からないが離れた場所にいるヤミィに一声かけ、手に持った爆弾に力を籠める。 ちょっと吸い込まれるような感覚があって、すぐに爆弾の手触りが変わったような感触があった。 実際は変わってないのかも知れないが、何かこう……柔らかくなったかのような? とにかくそれを振りかぶって、ウラジミールに向かって投擲する。 爆発というよりは、霧状になったそれが拡散するという感じだろうか? 一瞬、傷口が泡立ったような感触が走る。 負傷個所を直視したウラジミールは、エレメントによって直接的に受けた傷の程度が軽くなっているのを確認した。 その様子を目に留めつつ、雷音は引き続き氷の雨を降らせていく。 「今の動きだと……この子なら大丈夫ですね。いきますよー!」 チャイカも気の糸でフレイムエレメントたちを攻撃しつつ、ダメージの大きそうな火の玉一体を狙い撃った。 味方の様子を確認したウラジミールは、複数が炎を受けているのを確認すると邪気を払う光を作り出す。 イーリスが更に1体を撃破し、回復で態勢を立て直した綺沙羅も氷雨によってエレメントたちを攻撃する。 そしてエリューションの攻撃によって負傷したユーキも、傷の痛みを呪いへと変換する能力によって相対するフレイムエレメントへと攻撃を開始した。 戦闘態勢を整えた悪紋は、氷雨でダメージが蓄積した火の玉に向かって符術で作り出した鴉を放つ。 それらを耐え切ったファイアエレメントたちの2体ほどが、後衛達へと向かい始めた。 自爆の可能性なども考えてチャイカは気の糸の狙いをフレイムエレメントのみに定める。 そのフレイムエレメントたちの攻撃は前衛の二人に集中した。 闇によって作り出した武具によって負傷を僅かずつ軽減していたユーキの身を、強力な炎が包み込む。 それを、他の前衛たちも炎に包まれているのを確認し、ウラジミールが再び浄化の光で味方を照らす。 消耗を気にせず猛攻を続けるイーリスが更に1体を倒し、綺沙羅も氷雨での攻撃を続けていた。 ユーキも抑えを目的として無理せぬように注意しつつ、ペインキラーでフレイムエレメントを攻撃していく。 悪紋の鴉は直撃しなかったものの、ダメージは確実に蓄積されていた。 だが、ここで幾体かのファイアエレメントたちの負傷が自爆の段階まで達したらしかった。 前衛たちと相対していた火球が、それぞれ1体ずつ爆発する。 後衛へと近付いていたうちの1体も、雷音を巻き込んで爆発した。 それだけでは済まなかった。 ウラジミールとユーキに接近していたファイアエレメントは1体だけだったが、イーリスと瞑にはそれぞれ2体が接近していたのである。 爆発に巻き込まれた火の玉は……そのダメージによって、自爆段階に達した。 続くように爆発が起こり、2体の火球も消滅する。 これによって残っているファイアエレメントはチャイカに近付いていた1体のみとなった。 だが、リベリスタたちの負った傷も決して軽いものではなかったのである。 ●全弾使用! 任務完了! 瞑はフレイムエレメント班の援護に向かう前に回復をお願いしようと一旦後退した。 そして、負傷を回復しようと皆が一斉にヒーリング爆弾を発動させる。 「ふむ、使い勝手はわるくないのだ」 雷音は自分に使用し、チャイカは目標を後退してきた瞑へと定める。 「なるほどー、ここからエリューションエナジーが反応して……」 握って力を籠めながら、その感覚を確認しつつ……投擲。 フレイムエレメントの攻撃を耐え切ったウラジミールとユーキも、投げずに自分で使用した。 「……コレ、作戦の参加人員に回復役が居なかったときには本当に有り難いですね」 真面目な話アークに量産して頂きたいぐらいです。結構ありますからね、回復役の欠損。 効果を確認しつつユーキが呟く。 「この効果! 見るです!」 イーリスもババーンと掲げるようにして、自分に使用。 綺沙羅は戦闘後の報告の為にと感覚や様子等を確認しつつ、回復が不足していると感じたユーキへと投擲した。 ある程度は持ち直したものの自爆によるダメージは大きく、完全には回復し切れない。 悪紋は下がった瞑へと傷癒術で治療を行った。 (元気になったら攻撃してエレメント早く潰すのじゃ!) 「あいつらメッサ怖いのじゃ……」 あ、逆……というツッコミは無しとして。 雷音や綺沙羅の傷癒術も使用して、リベリスタたちは態勢を立て直し、チャイカに近付いた最後の1体を集中攻撃によって撃破する。 そして、残ったフレイムエレメントに対しての総攻撃が開始された。 ウラジミールは両腕の武器に、破邪の力を宿らせ揮う。 「この戦いはヤミィさんの作ったアイテムのお披露目なのです!」 イーリスはハルバードを叩きつけた。 頑張ってくれたのです! だから負けられない戦いなのです! そして! これがあれば勝てるのです! 「初陣を汚せるものか! 突撃! あるのみ!!」 限界に近付いた彼女にチャイカが力を供与し、綺沙羅は攻撃を式符で作り出した鴉によるものへと変更する。 回復を傷癒術に頼る事になったために範囲攻撃を受ける形にはなったが、それでも大勢は揺るがなかった。 フレイムエレメントたちは限界を迎え、攻撃に掻き消されるようにして消滅する。 ウラジミールは撃破後も油断せずに周囲を調べ、完全に火種が消えた事を確認すると最初と同じように淡々と口にした。 「任務完了だ」 ●戦い後の情報収集 「だ、大丈夫でしたかっ!? 皆さん?」 戦闘が終わったと連絡するとヤミィはすぐに到着した。 皆の負傷している様子を見て表情を固くしながら心配げに問いかける彼女を安心させるように声をかけて。 雷音は負傷している者たちを癒しの符で回復させていく。 「無事に何とか片付いたかのぅ?」 辺りを見回してから悪紋は呟いた。 もし誰かのヒーリング爆弾が余っていたら記念に一回くらいと思っていたものの……全て使用された事は自分の目でも確認している。 (仕方ない……諦めるのじゃ……) 「べ、別に残念とか全然思ってないのじゃ!」 不思議そうに首をかしげたヤミィに向かって。爆弾の感想を瞑は説明し始めた。 受けた時の回復の感じ方をホリメの回復と比較してどうか、等を自分なりに。 「まー、役に立つかわからない様な感想だけど、うちバカだからこんな事くらいしか思いつかないしね」 時間が掛かるかも知れないけど出来るだけ実践投入まで持ってって欲しいと話を結ぶ。 ウラジミールも使用感等を細かい部分も含めて報告した。 「力を込める場所を作ってそこに力を込めない限りは発動しない方がいいかもしれぬ」 2人から使用感などを聞いたヤミィは、お礼を言いながらメモを取る。 「……いえ、これは正直要望を出すのが申し訳無い出来です」 使い手を問わず回復も一定というのは真剣に有り難いとユーキは素直な感想をのべる。 「現在のヒーリング爆弾の欠点は劣化の早さと持ち運びの不便さだね」 依頼で使用を考えればAFに収納できるといい。 「その辺はAF開発者に助言求めてみてもいいかもしれない」 綺沙羅はそう言ってから、異常回復機能が付いてたり、範囲に効果を及ぼすタイプとかがあっても面白いかなとつけ加えた。 報告を終えた後、チャイカはヤミィと今回の件を含めたアーティファクトのお話を話題を振ってみる。 深淵を活性化した天才少女チャイカさんならきっと、ヤミィと専門技術的な会話も出来るはず! (工学系の同志ならお友達にだってなれるはず!) そんな感じで話してみると……ヤミィは理論的ではあるものの、結構職人気質な部分もある感じ。 特に感覚的な部分が厄介そうかもしれない。 もちろん、理解し合えたら楽しそうではあるけれど。 治療を終えたあとで雷音も色々と話をした。 防御や攻撃力を高めるものもあれば嬉しいかもしれない。そんな話をした後で。 「けれど、もっと嬉しいのは、こういう形でヤミィと一緒に戦えるということだ」 素直な想いを口にする。 「ありがとう、ヤミィ」 これからもよろしくなのだ。 そう言えば、少女は顔を真っ赤にして……改めて皆にお礼を言ってから、雷音の手を、ぎゅーっと握って。 雷音が養父に送ったメールは、こんな一文で始まった。 「回復爆弾のつかいやすさ、お話ししたいので聞いてください」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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