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さくら日和

●春なかば
「桜祭りがあるみたいなんです」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、パンフレットというかプリントを差し出した。
 周囲と比べると開花がちょっとずれて、遅咲きの桜がちょうど咲き乱れ満開になっているその公園ではこれから一週間ほど桜祭りが開かれるのだそうである。
「的屋さんて言うんですか? 出店っていうか屋台とかもたくさん出てて、すごく賑やかなんだそうです」
 やきそば、たこやき、お好み焼き、わたがし、型抜き、射的、チョコバナナ。
「おでんとかラーメンとか、そっち系の屋台も? っていうのもあるみたいです」
 でも、この時期にかき氷とかちょっとチャレンジャー過ぎますよねと少女は苦笑しつつ笑顔で説明していく。
 橋が架かっていてボートにも乗れる大きめの池や、せせらぎの聞こえる小川もある広い公園は昼間は普通に花見ができるし、夜にはライトアップされて幻想的な光景が広がるらしい。
 この時期だけは場所は決められているがカセットコンロ等で鍋をしたりとかもOKのようだ。
 ちょうど5月並の陽気になるらしいが、それでも夜はちょっと肌寒いかもしれないから、そういう暖かいものも良いかも知れない。
「……いろいろありましたし、ちょっと息を抜くのも良いと思うのです」
 にぎやかに、あるいは穏やかに。楽しく。
「良かったらみなさんもいかがですか?」
 マルガレーテはそう言って、プリントを手渡しながら微笑んだ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月07日(月)23:40
●このシナリオはイベントシナリオになります。
イベントシナリオについては本部利用マニュアルなどを御参照下さい。

オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は桜を見ながら楽しく飲食したり、はしゃいだり、のんびり過ごしたりしませんかというお誘いになります。


●桜祭り会場
池や小川なども作られた広い公園内に沢山の桜が植えられており、屋台なども沢山出ています。
照明が用意されており夜になると桜がライトアップされます。
火の取り扱い等も許可されているようで鍋等、可能です。

●備考
・多数の方が参加された場合、内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
(タグで括っている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCに話しかける場合、ID等は必要ありません。

マルガレーテは桜を見たりしながら会場をうろついてます。
他、ヤミィやシロ、アークの他のリベリスタたちや三高平市に住んでいるアーク協力者の一般の人とかもちょこちょこ参加してます。
御希望の方はそういった参加者と絡む描写をさせて頂きます。
(シロはR・ストマックをセットしているらしいです)
特に何事もなければ、賑わっているという背景描写以外では登場しません。


それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。

参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 


■メイン参加者 36人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
クロスイージス
蔡 滸玲(BNE001593)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
スターサジタリー
立花・英美(BNE002207)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)
デュランダル
神守 零六(BNE002500)
マグメイガス
小鳥遊・茉莉(BNE002647)
プロアデプト
ジョン・ドー(BNE002836)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
マグメイガス
斎藤・なずな(BNE003076)
覇界闘士
翡翠 夜鷹(BNE003316)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
インヤンマスター
風宮 紫月(BNE003411)
デュランダル
レイシア・アラッカルド(BNE003535)
デュランダル
御厨・妹(BNE003592)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)
マグメイガス
鳴神・冬織(BNE003709)
レイザータクト
ブラン・コラール(BNE003765)

リオン・リーベン(BNE003779)

●薄桃白の、花舞う夜空
 夜の公園を桜が彩っていた。
 常夜灯に照らされて、あるいはスポットライトを浴びて。
 夜風に吹かれて散る花びらに、それらの光に紛れるようにして。
 仄白い月光が、遠慮がちに……幻想的な輝きを添える。
 はらり、はらりと桜が散る。
 その薄桃白い小片を三つ四つ乗せて……野点傘がひとつ、立っていた。
 傘のもとには緋毛氈が敷かれ、柳色の振り袖を着た……年の頃二十ほどに見える女が茶碗を手にして正座し、夜空の藍と満開の桜のほんのり紅を帯びた白とのコントラストを愉しんでいる。
 傍らでは茶釜がしゅん、しゅんと湯気を噴いていて。
 通りすがった他の花見客がもの珍しげに窺うのに気付くと、彼女……滸玲は、声をかけた。
「今晩ハ」
 拙い腕ではござイまスが、宜しケレば一席如何デすか?
 素朴さを感じさせる、心和む声が、穏やかに響く。
「その……似合って、ますか?」
 薄い水色に水玉模様の浴衣姿のレイチェルは……恥ずかしさに、ちょっと視線を逸らしつつたずねてみた。
「ん、可愛いよ。とてもよく似合ってる」
 普段の姿からは見えない一面に少し照れつつ、夜鷹は彼女の問いに答える。
 お祭りの特別な雰囲気に当てられて。微笑みながら、そっと手を伸ばして。
「では、エスコートをお願いします。」
 平静を装いつつも、内心ドキドキしながらレイチェルが言葉を紡げば。
「かしこまりました。誠心誠意お姫様をエスコートさせて頂きます」
 夜鷹は伸ばされた手を迎え入れ、夜の屋台へと歩みを寄せた。
 屋台を2人で散策し、一通りまわったあとは、池の畔でひとやすみ。
「……桜、綺麗ですね」
「本当だ、とても綺麗だね」
 レイチェルの言葉に夜鷹も見上げ、月明かりに照らされる桜の花びらを目で追う。
 思い切って、不意打ちを。
 彼が桜に視線を向けている隙を狙って、レイチェルはそっと腕を掴んだ。
 背伸びして……無防備な、頬に……そっと。
 夜鷹が瞳を向ければ、真っ赤になって俯きながら。
「……お誕生日、おめでとうございます。」
 誕生日? そういえば……
「そうだったな」
 真っ赤になった彼女の頭を優しく撫でて。
「覚えててくれたのか? ありがとうな」
 礼を口にすると夜鷹はレイチェルの手を取って……親愛の、感謝の、幾もの想いを篭めて。
 その甲に、そっと唇づけした。

●さくら祭りの夜に
「それにしても、何でわざわざ夜なんだ。小学生が出歩くとか危ねぇだろうが」
 あの放任兄貴は次会ったら腹パンだな。
 そんな事を考えつつ零六が尋ねれば。
「そうです、なぜか大きな人が居ないとダメって言われました……零六が居てよかったのです!」
 零六はあまりお祭り的なものに縁がなかったらしいので、まいがみっちり教えてあげるのですよ!
 そんな妹の言葉が返ってきた。
「俺は良いからマイちゃんが楽しめよ」
 そう返しつつ、二人は色々と屋台をめぐる。
(零六はペットを飼うのにも馴染みがない様子……)
「よし、帰ったら生き物のかわいさにも目覚めさせるのです!」
 そんな事を考えていた妹は、金魚掬いで本気を出す。
「5匹も居ます、四捨五入したら10匹ですっ」
「流石に5から10は多く見過ぎじゃね!?」
 次は射的に挑戦。
「難易度が高いのです。れ……零六に任せるですよ」
「って俺かよ。い、一回だけだぞ」
 渋々という態度を取りつつ内心は結構ワクワクしつつ、零六は玩具の銃を受け取って、狙いを定め。
「……! わあ、当たりました当たりました!」
「べ、別に大した事じゃねーよ。主人公なら当然っだっつーの」
 景品は要らねぇしと受け取った品を渡せば、妹は交換と笑顔で……
(……え、これ、どうすりゃいいんだ……?)
 お返しに金魚?
 本気で迷いつつも零六は、はぐれないようにと手を繋ごうとした妹の手を、器用に回避した。
「……あれっ……こんな時まで触らない紳士です!?」

●宵の桜
「ふふん、レイシアがどうしてもと言うから心の広い私は花見に付き合ってやるのだ」
 なずなは片っ端から甘いものを屋台で買い込むと、持てない分は次々とレイシアに持たせていく。
(そして後から私が全て食べるのだ。完璧な計画!)
「綿菓子! チョコバナナ! りんご飴!」
(誘って良かった)
 嬉しそうな彼女を見て、レイシアはそう思う。
「なんか疲れてるみてーだからナ、ねずねー」
「私は別に疲れてなどいない! で、でも、礼を言ってやっても良い……って誰がねずねだコラ!!」
 冗談ってのは毒気抜いてなんぼなのぜ♪
 怒られても笑って返しながら、出たゴミはしっかりと回収しつつ。
 ふたりはライトアップされた大きな桜の下へとやってきた。
 メインの目的は、これに登ること。
 一般人の目は避けつつ、レイシアは枝へと手を伸ばす。
「自慢じゃないが木登りなどしたこないのだ!」
 なぜか得意気な、なずなに手を貸しながら……薄桃色の花弁が光を浴びて闇夜に映える場所へと、辿り着く。
 その風景に、ふたりはしばし、目を奪われ……
「しかし、こうして間近で桜を見ながら見下ろすのも中々悪くないな!」
 なずなの言葉に笑顔でレイシアも頷いて。
 ライトアップされた夜桜を楽しみながら、星龍は一人酒と洒落込んでいた。
 明かりによって闇に映える桜も綺麗だが、それを眺めつつ酒を飲めるというのが彼にとって何より嬉しい事である。
 腰を据えて飲むためにと、酒のつまみになりそうな品々は既にたくさんの屋台の中から購入済みだった。
 酒の方は缶ビールになるが、それでも充分に楽しめる。
 つまみを頬張り、缶を空にしていきながら……皆の楽しむ様子も眺めながら。
 のんびりと楽しみながら……彼は昼間の光景を、思い出した。
 たくさんの人々がそれぞれの時を過ごす、桜祭りの風景を。


●ある晴れた日に
「こんにちはだ、いい天気だな? 桜は満開、風もきもちいい、こんな日は大好きだ」
 綿菓子を持った雷音は、マルガレーテとヤミィに声をかけた。
 桜が綺麗なこの時期、友人と遊ぶのは心が踊る。
「ヤミィは、発明品の調子はどうかな? ボクはヤミィの発明品のファンなのだ」
 真白室長にまけないものを作って欲しい、何かあれば遠慮なく。
「親友のために努力はおしまないのだ」
 話しながら綿菓子をちぎって2人に渡せば、雷音ちゃ~ん、と。ヤミィに、ぎゅーっとされて。
 一方その頃。
「屋台と聞いてはアレを探すしかないのです」
 アレ……それはいちご飴。
「りんごではないのです。大事なのはいちごなのです」
 そあらは、それを探していた。
「見つけたら全部買占めてさおりんへのお土産にするのです」
 最近忙しそうだから甘いものを差入れしようと、彼女はいちご飴求めて奔走する。
 ようやく発見し買い占めたところで。
(あそこにいるのはらいよんちゃんとヤミィさんとマルガレーテさんなのです)
「らいよんちゃん、こんな所で奇遇なのです。沢山いちご飴を手に入れたのです、お裾分けですよ」
 ヤミィさんとマルガレーテさんもどうぞですと、そあらはいちご飴を2人にも差し出す。
 そあららしいと言いながら、雷音はお礼にと綿菓子をちぎって。
「口の中にいっぱい入れてもぐもぐしたらだめだぞ……わんこではなくてハムスターになってしまうのだ」
「あたしはわんこでもハムスターでもないのですけれど、口いっぱいに頬張るのは幸せのしるしなのです」
 もぐもぐしながら、そあらは笑顔で口にする。
「皆さんもお目当てがあるでしょうから、色々と食べ歩いてみましょう」
 そう言って屋台を巡り、色々と食べ物と飲み物を見たカイは……先ずはシロに御馳走をと、おでんとチョコバナナ、そしてイカ焼きを購入した。
「お前もこの前の決戦ではがんばってたのかな? お疲れさま」
 頭をなでると、シロは嬉しそうにしっぽを振る。
 マルガレーテとヤミィには、たこ焼きとお好み焼き、リンゴ飴等をご馳走しつつ……桜を眺めて。
 カイはその後、皆を輪投げの屋台へ誘ってみた。
「射的は一部の方にはカモでしょうし……これなら能力の優劣関係なしで遊べるでしょう」
 もし僕に勝てたら何か好きなものを奢りますよ。
「一つ、如何です?」
 カイは笑顔で提案した。

●日本のお花見
「ふふ、ちょうど良い桜日和になったわね」
 咲き誇る桜、所狭しと並ぶ屋台。
 自分たちと同じ目的らしい、たくさんの人々を眺めつつ……ティアリアは笑顔で言った。
(ここしばらく忙しかったし、気分的にも滅入る部分があったものね?)
「のんびりと楽しませてもらうわ」
 その言葉に冬織も頷く。
(今までこういった祭り事に参加する事がなかったからな……とくに、友と呼べるような者、とは)
「たまには、めいいっぱい楽しむとしよう」
 空いた場所にピクニックシートを広げて陣取ると、冬織の用意してきた茶とジュースを分ける。
「食べ物は焼き鳥を用意するようだからな……酒はない。買えるはずもない。我慢しろ」
「ええ。今日はノンアルコールで行くわ」
 準備はすぐに終わり。
「それじゃ、乾杯といきましょう。今日のこの日に、乾杯♪」
 ティアリアの言葉と共に、飲み物で満たされたコップがぶつかり合った。
「はー、あれだけたくさん花びらが舞っていたのに、まだ咲く子がいたんですねー。 祖国にないものばかりで、驚くことばかりです」
 チャイカは日々違う表情を見せる日本の風景に改めて感動し、それを素直に口にする。
 そして、祖国の良さも知ってもらうためにと用意しておいた料理をシートの上に広げていく。
 皆に振る舞おうと作って置いたペリメニやピロシキ、集合前に適当な屋台で買っておいた焼き鳥等。
「やっぱりお花見と言えば焼き鳥よね」
 え? いつの間に日本の花見に慣れたのかって? そんなの何回か来ればわかるわよ。
「チャイカは日本は慣れた?」
 そう聞こうとして、ティアリアは……自分の分の焼き鳥に、大量の砂糖をかけているチャイカを凝視した。
「向こうの番組で聞きましたよー、焼き鳥は甘ければ甘いほど美味しいものとされるって」
「冬織は……まあ日本人だから聞くまでも無いかしら」
 視線を逸らすように尋ねたティアリアに、冬織が頷いたり……そんな事もあったものの、無事に時は過ぎ。
「ふぅ。桜が綺麗ね」
 しばらくこのままボーっとしていたいわねと、ティアリアは桜を見上げ呟き……
(適当に飲んで食べて騒いで。それだけでも楽しいものだ、な)
 冬織も一人桜の樹にもたれ掛かったまま、呟いた。

●瞳に映る、すべて
「屋台いっぱいッスねぇ。匂いに釣られそうッスよ」
 ひしめき合うように並んでいる屋台と漂ってくる香りに誘われ、リルは素直に口にする。
 射的とかゲームで遊びつつ、途中の屋台で買い食いをして。
 凛子も歩きながら桜を楽しみつつ、途中の屋台で足を止めた。
「杏飴を一つ」
 受け取って……ふと、リルの視線に気付き、なら一口と渡せば、一口齧ってお礼を言ったリルは、お返しにと綿あめを。
 人が多いところを歩く時は、手を繋いで。
「はぐれると危険ですからね」
 舞い散る花びらに桜の儚さを感じつつも、笑顔の凛子。
(はぐれないように手を握ってもらえるのは、なんか子供扱いっぽいッスね……。ぐぅ)
「はぐれないッスよ。子供じゃないッスし」
(でも凛子さんの手、温かいから好きッスよ)
 口には出さず、ぎゅっと握り返して……一緒に隣を歩きながら。
(凛子さんやっぱり桜が似合うッスね)
「花言葉通りな人ッス」
 リルは小さく、聞こえないように呟く。
「さて、此度の桜はどのようなものでしょうね?」
 現地に着くまでの楽しみにしていたジョンは、その風景を見て目を細めた。
「満開の桜も良いですが、散り初めの桜も風情があって何よりのものです」
 桜の花は日本では古来より親しまれていた花とのこと。
「日本は四季というものがはっきりとしていますね」
 そして、それぞれの季節を楽しむのに気を遣っているように思える。
「夜桜も……良いけれど……」
 やはり、日の光の下で……楽しみたい。
 昼間の桜を見に、エリスは公園を訪れていた。
「ここの……桜、は……どんな……桜が、あるのか……楽しみ」
 桜は色々と種類があるけれど、それぞれ特色があって楽しめる。
 蕾が少しずつ綻んでいく姿を見るのも好き。
 満開の花が咲き誇る姿も好き。
 散り初めの桜の花弁が舞い散る中を歩くのも好き。
 始まりから、終わりまで……その全てが楽しめる。
 時が経つのも忘れて、エリスは桜たちの姿を……眺め続けた。

●ふたり
「こじり、あーん」
 夏栖斗が差し出したサンドイッチを毟り取ると、こじりは自分で口に入れた。
 しょんぼりした夏栖斗は、今度は両手いっぱいの食べ物を広げてみせる。
「食いきれるかな? 屋台のって、なんでこんなに美味そうにみえるんだろうな?」
「御厨くん、食べきれないのなら、買うべきではないわ。そうでしょう?」
 怒られてしょぼーんとする夏栖斗に……こじりは一層、こう……表現できない気分になった。
 ぜんぜん、分かってくれてないのだ。
 食べ物なんて欲しくない。
 桜の花なんてどうでも良い。
 そうじゃなくて、そうじゃなくて。
 以前一緒に来た時に感じた祭り独特の賑わいが、今はただの喧騒にしか感じられない。
 此処は五月蝿いわと、ふたりは川縁へと移動して。
「春だよな。リベリスタの任務についてもう1年かぁ……あっという間だよな」
「そうね、もう一年。でも、貴方と出逢ってまだ、一年」
 桜を見ながら夏栖斗は呟き、こじりは頷いた。
 どこか、遠くを眺めながら……少年は少女の手の上に、自分の手を重ねる。
 その重ねられた手と、彼の顔に、少女は交互に瞳を向けて。
「まだ、この程度しかできないけどさ」
 情けない彼氏でごめんな。わかってる。
 少年は、口にした。
「僕はもっと強くなる」
 これだけの事なのに、綻ぶのは貴方が好きだから。
 今はまだ吹けば消し飛ぶ苗木でも……
「強くなりなさい、御厨夏栖斗」
 少女は……源兵島こじりは、口にした。
 貴方はもっと大きな大樹になれると信じているから。

●幸せな風景
 のんびりと、あるいは賑やかに。
 楽しそうに、あるいは物想いに耽るように。
 たくさんの人々が其々の形で、この祭りを楽しんでいる。
 そんな風景を、守るべき人々の姿を、宗一は瞳に焼き付けていた。
(この身が例え傷つく事になろうとも、この光景を守るために戦えるのなら、それは誇るべきことだな)
「皆が平和に祭りを楽しむためにも、これからもっともっと頑張らないといけないよな」
 暫し……その光景を、守るべき風景を目に留めて。
(……余り、考え事ばかりでもいけないな)
「屋台で食べ物でも買って、食べ歩くか?」
 自身に提案でもするように口にすると、宗一は静かに桜を見上げる。
「ふむ……桜祭り、か」
 一通り、屋台などを眺めた後、拓真はのんびりと冷茶を飲みながら落ち着ける場所へと腰を下ろした。
(多くの人が楽しんでいる雰囲気の中、その場に紛れるだけでも祭りを楽しめると言うものだ)
 思いつつ周囲の風景を楽しんでいて、ふと……近くで日向ぼっこをしていたらしい犬に気付く。
「……なんだ、先客が居たのか。誰も居ないと思っていたが……」
 視線が合うと白い犬は人懐っこいのか近付いてきて……頭を撫でると、嬉しそうにしっぽを振った。
 暖かい日差しの中、舞い散る桜を眺めていると……溜まっていた疲れのせいか、瞼が急に重みを増して。
(まあ、偶には悪くは無かろう)
 拓真はそのまま、まどろみへと身体を委ねた。

●其々の、刻
「花見の席で鍋っていうのも、何だか新鮮ねぇ」
 お弁当持って行くイメージ強かったし。
 一通りの道具や基本の食材を持ち込んだ未明は、準備をしつつ周囲を見回しながら呟いた。
「さて……鍋をやると言う事だが、まぁ色々準備せねばな」
 具材と、スープの元を所持してきたオーウェンも、カセットコンロ等、鍋の準備を開始する。
「オレが持ってきたのは、これだ!」
 フツがそういって皆に見せたのは菜の花だった。
「春っぽいし、菜の花の味って好きなんだよな」
 後は、筍とか、新キャベツも鍋には合うか?
「春だし、アサリも追加してみましょ」
 未明がそう付け加え持ってきた材料を見せる。
 ロールキャベツとか、どうかな……?
「お家で下ごしらえして来たから、煮こむだけ。皆で食べましょ」
 あひるはそう言って、一緒に下ごしらえをしてきた筍も差し出した。
 準備は終わり、鍋はすぐにくつくつと音を立て始める。
 蓋を取ると、いい香りがふんわりと、ただよって。
「……こういう時、お酒が飲めるともっと楽しいのかしらね」
 周囲を眺め、そんな事を思ったりもしつつ……未明は容器や箸を分け、具を取り分けて。
 桜の許での鍋が始まる。
 フツは鍋を食べつつ……筍は、あひるを寮に呼んで下ごしらえを手伝ってもらったと、さり気なくみんなに自慢して。
「フツと一緒に下ごしらえして……なんだか、ふ……夫婦みたい……なんて」
(フツと一緒の道中、荷物を分けっこして桜を見ながら…こ、ここ、恋人つなぎとか…しちゃったり…!!)
 あひるも顔を真っ赤に染めて。
「ん、コレ美味しい」
 そう感じた物をオーウェンに、あーんと差出せば、オーウェンは恥ずかしげもなく口を開ける。
(コレくらいはまぁ、いっか)
 やった後で恥ずかしくもなるけれど、そう自分に言い聞かせた直後。
「お返しである」
 オーウェンが箸で取った具を差し出し、あーん、とさせ返す。
(あひるの作ったロールキャベツ、食べてもらうんだ)
 あひるもフツに、あーんっ、と差し出せば、フツは笑顔でほお張って。
「鍋はみんなで食べた方がウマイ!」
 一人でいるヤツがいたら誘ってみようというフツの言葉に、あひるは頷く。
 皆でワイワイ同じお鍋を囲んだら、きっとすぐに仲良くなれる。
(友達と一緒に食べるのって、楽しいし……桜も綺麗で、より親密になれそう……!)


 いや、でもね?
 ふと思ったのですが……ここ、ぼっちの人が誘われたら……余計、切なくなりませんか?

「いや、まて、おちつけ。ぼっちでも生きていていいはずだ!」
 いや、そうじゃない。俺がすべきは、縁日屋台の制覇か?
(いや、違う)
「そう! マルガレーテたんと仲良くなる事が今回の目的だ!」
 竜一にツッコミを入れる者は、誰もいなかった。
「さあ、マルガレーテたん! わたがしだよ! ふわふわで甘いよ! 食べて食べて!」
「先輩、子供扱いしないでください」
「チョコバナナも買ってきたよ! はい、あーん!」
「だから、私はそんなお子ちゃまじゃ!」
「タコヤキももちろん買ってきたよ! タコがはいってなかったりする場合もあるのは御愛嬌!」
「……あ、本当に入ってなかったりするんですね……じゃなくてっ!!」
「オデンはリアクション芸の見せどころだよ!」
「だ・か・らっ!! ……あれ? 新田先輩?」
「や、マルガレーテさん、寄って行かない?」
『しずおかおでん』と書かれた屋台の下にいたのは、守護神、じゃなくて快だった。
「静岡おでんとか食べたことある? 無いなら是非試していってよ」
 大丈夫。味はベテランのテキ屋さん仕込みだから保証する。
 そう言われ、少女は煮込まれている具に興味深そうな視線を向ける。
「一年住んでいれば、地元の名物にも愛着が沸くってもんさ」
 牛すじのだしの効いた濃いツユ。だし粉と青のりで仕上げた静岡独特のおでん文化。
「……考えてみると鰹節とか青のりって、お好み焼きとか焼きそばみたいな感じなんでしょうか?」
 ツユも意外とあっさりな……
 美味しそうにほお張る少女に、屋台は多いほうが楽しいだろうしね、と言って。
 快は笑顔で取り皿へと具を追加した。

●お昼時の賑わい
「これが桜か」
 アマンドの花によく似ている。そんな事を考えながらブランは薄桃色の花々を見上げた。
「とっても綺麗だ……綺麗で……おなか空いたぞ!!」
 屋台がいっぱいで迷うが、それも一瞬のこと。
「これが、オコノミヤキ! なんだ、とても茶色いな……食えるのか!? ……うまい!」
「タコヤキ! これも茶色で、まんまるだな……アッツゥウ!! ハフハフ……でもうまい!」
 素敵な食べ物があると思いながら、どんどん次々と食べていく。
「な、なんだこのフワフワした物は! とても甘い匂いだな……」
 ほわぁあぁ……! あ、あまぁい……!
「これ、気に入った! 沢山くれ!」
 ブランは日が暮れるまでと、次々美味しいものを食べ続ける。
「鯛焼き、うまー」
 弾けるようにさけび、
「たこ焼きも、超美味しい!」
 かみしめるように縮こまって、
 終は全身で美味しさを表現していた。
 パパンとママンにもお土産に買って帰ろう☆
「お兄さん、もう1パックお願いしま~す☆」
 ホクホクしつつ注文したところで……あるものに気付く。
「は……!!? あれなるはリンゴ飴……!!」
(やっぱりこれがなきゃダメだよね。みんなの分も買って行こうかな~??)
 そこで……リンゴ飴を飢えた狼の如く貪り喰らう乙女らの姿が脳裏に浮かぶ。
(……ま、いいんだけど)
「えーと、何本買えば足りるかな……」
 ひぃふうみぃ、と頭の中で。終は、お土産を買っていく人の数をかぞえ始める。
 お昼時ともなると、会場の、屋台の賑わいは最高潮となった。
 その賑わいを眺めつつ、茉莉はのんびりと歩いていた。
 こみ合ってはいるものの、その喧騒もそれはそれで楽しいものである。
 だからこそ、この時間を選んだというのもある。
(桜の花も良いですが、祭りに来ている女性という花も楽しめそうですので)
 折角だからお酒も少しは楽しみたいところ。
 外見が外見なので未成年と間違えられる可能性も充分にある。
 念のためにと証明する物をしっかりと持参して。
「そぞろ歩きで楽しむも良いものです」
 素敵な花見になりますように。
 小さく呟き、彼女は賑いの中を歩いていった。

●双華
「折角のお花見です。陽が高い間、桜の風情を楽しみましょう」
 水葵の柄の着物姿の悠月が微笑む。
 紫月は薄緑の色合いに桃の花の柄をあしらった着物姿で。
「……初めてですね。姉妹で、こういう所に来るのは……」
 ふたりはのんびりと、桜祭りの会場を散策する。
「思いの外、賑やかですね……ふふ、とても楽しそうです」
 ほんの少し逸る気持ちを抑えつつ、紫月は姉さんの隣を歩く。
 姉妹でお祭りに来れる事を嬉しく思いながら。
「お花見客に屋台……春のお祭り、という所ですね」
 お花見自体はともかく、桜祭りというのは……悠月も来るのは初めてになる。
「夏祭りとは方向性が違うけれど、劣る物でもないですね……とても賑やか」
 妹と並んで歩きながら、屋台の様子や行き交う人を興味深げに眺めて……
 出店を見回りながら、わたあめを一つ購入した紫月は、小川を眺める事の出来るベンチに悠月と一緒に腰を降ろした。
「……今日は、私の我儘に付き合って貰ってありがとうございました、姉さん」
 楽しかったです、とても。
 笑顔で口にすれば悠月も微笑みかえす。
「……また来ましょうか。三高平に居る今なら、何時でも行けますし」
 それから暫しの間。
 ふたりは一緒に……春の陽気を、桜の風情を、楽しんだ。

●唯、そこに生まれる想い出
「エイミー今日は袴か、えと……よく、似合ってるよ」
(何で緊張してんだ、俺)
 アウラールは逸れないようにと、英美の手を取って一緒に歩いていた。
「随分集まったものだな、皆暇なのかな」
 落ち着かなくて、ちょっと恥ずかしくて、それを誤魔化すように辺りを見回して、そんな事を口にする。
「暇を作って、思い出を作りに来てるんですよ」
 私たちのように。
 そう、英美は口にして。
「思い出か……」
 それだけ呟いて、アウラールは繋いだ手を少しだけ強く握りしめた。
「私が日本に来たのは去年のこの時期でしたけど、その時は慣れない日常で花見はできませんでしたからね」
 こうしてアウラさんと一緒に歩けるのは幸せです。
 そんな言葉に更に緊張して、
「俺たち、バカップルっぽいな……」
 冗談めかして口にすれば、
「思い込みが激しく直情的……私達は最強のバカップルですよ……えへへ」
 お互い想いあってると知ってるから、私達は強いのです。
 笑顔の彼女が眩しすぎて、アウラールは彷徨わせた視線を屋台へと向けた。
「エイミー、何か食べようか? 何がいい?」
 正直どれもよく分からない食べ物ばかりで、どうチョイスしていいやら……
「どうせなら、何かめずらしいのがいいかな?」
 何とか話題を振りつつ、余分に購入してシロのとこへ行き、シロにも分けて、食べるのを見ながら。
「将来は犬飼うのもいいかもしれないなぁ……いやでも、ぬこがいいかな……」
 そんな彼の姿を見ながら、静かに佇む桜達を見ながら……英美は、想う。

 桜は人の目を気にしてはいない。
 唯、悠然とそこにあるだけ。
 それでも人は桜を見て心弾ませる。

 人もまた、自然の一部であるのなら。
 生きて、有る、ことに意味があるから。

 あなたのそばに私がいること。
 きっと意味があるのだから。


 さくらは、何もこたえない。
 けれど……もし、こたえられるのだとしたら……ありがとう、と。
 紡ぐのだろうか?
 楽しげで、幸せな姿を見れて、楽しくて幸せだと。
 綺麗だと想う心が、綺麗なのだと。
 大切だと想う心が、すてきなのだと。

 もちろん、さくらたちは何も言葉には、しない。
 ただ、咲き誇り、花びらを散らし、何かを紡ぐ。
 皆の心に……何かを、おくる。

 人が生きていくのと、同じように。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
御参加、ありがとうございました。
悪くないひと時を過ごせた……そう想って頂けるなら、嬉しいです。

それでは、また御縁ありましたら。