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桜の花びら、散るたびに

●せかいは、白から桃色に変わり
 いつかだろう?
 春になって、さくらが咲いて。
 散っていくのを見ると……なにか、ふしぎな気持ちになった。
 寂しいような、悲しいような。
 もっと昔は、ひらひらと舞う、その様子が……すごくきれいで、華やかで。
 わくわくするような、嬉しい気持ちになったのに。

 ああ、すごく綺麗だと思うのは変わらない。
 春がくると、なにか嬉しい気持ちになるのも、おんなじだ。
 でも、なんだろう?
 みずいろと、しろが、少しまじり合ったみたいな空を見ていると……なみだが滲みそうになるのは。
 眩しさのせいだけじゃないように思えてきて。

 それで、僕……私は……ちょっと、ないた。

●海に近い丘の公園
「すごく静かで、人気のあまりない公園があるんです」
 ちょっと寂しい感じもしたりすることもありますけど……綺麗で落ち着けるところです。
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう説明した。
 海の近くにある公園は落ち着いた雰囲気を漂わせた場所で、広場から幾つもの散策路が伸びている。
 木々に囲まれた道もあれば、海を見下ろせる高台もある。
 広場にはたくさんの桜が咲き、散策路にも所々さくらが植えられているが……人気のないのも手伝って、静かな美しさを漂わせているようだ。
「何か特別なものがあるって訳じゃないんですけど」
 だから、でしょうか?
「何か落ち着けて……考え事とかするのに向いているっていうか、不思議な気持ちになるんです」
 言ってからちょっと恥ずかしそうにしつつ。
「よかったら、いかがでしょうか」
 マルガレーテは微笑んだ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月28日(土)23:45
●このシナリオはイベントシナリオになります。
イベントシナリオについては本部利用マニュアルなどを御参照下さい。

オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
こちらは個人や少人数で桜などを眺めたり散策しつつ、物想いに耽ったり、語り合ったりしませんかというお誘いになります。
賑やかに、楽しく過ごしたいという方は『さくら日和』の方をおすすめ致します。


●公園
海の近くの人気のない公園です。
広場のような場所から幾つもの散策路が伸びています。
所々に木製のベンチやテーブルがあります。
桜は広場にはたくさん植えられており、散策路の方は少なめで落ち着いた雰囲気になっています。
高台のような海を見下ろせる場所などもあります。

●備考
・万一多数の方が参加された場合、内容を絞ったプレイングをかける事をお勧めします。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。
・グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。
(タグで括っている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・マルガレーテは桜を見たりしながら散策していますが、特に何事もなければ登場しません。
(NPCに話しかける場合、ID等は必要ありません)


それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。
参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 


■メイン参加者 25人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
デュランダル
宮部乃宮 朱子(BNE000136)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
ソードミラージュ
絢堂・霧香(BNE000618)
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
スターサジタリー
神宮寺・遥香(BNE001988)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
インヤンマスター
小雪・綺沙羅(BNE003284)
ナイトクリーク
晴峰 志乃(BNE003612)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)
クロスイージス
エインシャント・フォン・ローゼンフェルト(BNE003729)
ソードミラージュ
セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)
   

●それぞれの道
「私がはじめてアークにきたとき、一年くらい前のいまごろだった気がするのです」
 座ってぼーっとしたままイーリスは呟いた。
 いろいろな敵を倒し、人と知り合い……居なくなってしまった人も居る。
「この木の花も、もうすぐぜんぶとれてしまうのです」
 いろいろなものが、どんどん変わっていく。
「でもじぶんが、なにがどうなったとか……ぜんぜん、わからないのです」
(でも……それでいいような気がしてきたです)
 そう思えたのは、瞼に感じた重みのせいだろうか?
「あんまりきにしないことにするです」
 そう呟きながら、少女は訪れたまどろみに身をゆだねる。
 タブレットPCにヘッドフォンを接続し、音量も抑えめに設定して。
 一般人が見るべきない物も含まれている以上、念のために横や後ろから覗き見されないような場のベンチに陣取って。
 チャイカはこれまで自分が参加した戦闘のデータを、最初から最新のものまで再生していた。
 彼女はそれらを、自分の意志で殺めてきた。
(私は……自分の意思で、倒すべき敵かどうかを判断します。これまでも、これからも)
「それこそが、私が生きて考えた証になると思います」
 状況に流されて、という言い訳はしたくない。
 綺沙羅も桜の眺められるベンチと机を陣取ってPCでの作業を行っていた。
 風が気持ちいいし、ロケーション変えると作業効率が上がる。
 アークに捕まった元フィクサードという過去を考えれば、自分の現状は悪くないと言える。
 けれど、つまらないのも事実だった。
 アークには智親のような天才や塔の魔女がいるというのに、彼らの技術を学ぶ機会は皆無。
 リベリスタを始めてから彼女が得たものは、戦闘技術の向上だけだ。
 けれど、いつか彼らに負けない何かを創り出す。
 いつか、いつか、必ず。
「それこそがキサの至上命題」

●さびしく、あまく、いとおしく
「そういえばコレ、リベリスタになる前に買って貰った物だっけ」
 あの頃は、今みたいな生活になるとは思ってなかったわね。
 小振袖姿の未明は、そう呟いてからオーウェンへと視線を向けた。
 彼の方も普段とは異なり、眼鏡はつけず半そでシャツにジーンズというラフな格好でのんびりとしている。
「昔、学生としてデトロイトの街を歩く際は、こういう感じであったからな」
 視線に応えるようにオーウェンは説明した。
「甘く見るな。俺とて、勉学一辺倒ではなく……街を遊びまわっていた頃もあったぞ?」
 最も、バックストリートの喧嘩も多かったが、な。
 言葉を交わし桜の近くに腰を下ろせる場所はないかと歩いていて……未明は足を止めた。
 花の散る様は、妙に物悲しい。
「人がいなくなる時もあっという間ね、それに似てる」
「死す者が居るからこそ、新しい者が生まれ来る余裕がある、とも言うべきか」
「特定の誰かの顔を思い出したわけではないのよ」
自分でも意外だけど、祖父母を思い出したわけでもなかったし。
「……折角桜見に来たのに、何気分盛り下げてんだか」
未明はかぶりを振って、口にした。
「いえ、特に意味はない呟きよ」
それより、一緒に来てくれてありがと。
囁いた彼女の肩にそっと腕を回して、オーウェンは飴玉を口に含んだ。
「甘い方が、いいであろう?」

●歩き続ける経
「3人揃って卒業しようね」
「1人だけ留年すんなよ!」
「オレ、勉強はそこそこできるもん! たつみんこそ大丈夫なの~??」
「いったな~うりゃ!!」
「痛い痛い!! みやちゃん、笑ってないで助けて!!」
……
「思い出はこんなに近いのに、現実は遠いね……」
 海が見下ろせる展望台の手摺にもたれて、終は呟いた。
「桜を見ると懐かしいと思うのは門出の時期に咲く花だからなのかな?」
 高校の入学式の時の約束……
(結局、高校卒業できたのはオレ一人か……)
「いつになったら、そっちにいけるかな?」
 返事なんてないのは分かっている……それでも……
 すれ違った人たちと笑顔で言葉を交わしてから。
 散策路をゆっくりと桜を見ながら歩いていた志乃は、ベンチに腰掛け静かに息を吐いた。
「……良い所だね」
(ここもそうだけど、何より……この箱舟がね)
 先程とは違う物憂げな表情で桜を見上げる。
「あの時と今の自分はすっかり変わっちゃったな……」
(あの時の皆は自分の事を覚えてないだろうけど……)
 元気だよ、ただいまって……伝えたい……でも、それはただの自己満足。
「自分から逃げたって言うのに、それは虫の良い話だよね」
 それに……自分も皆も、得しない。
 だから……
 志乃は立ちあがり、歩きだす。
「本当にヒトケ無いねー」
 遥香は白犬のモコを連れてのんびりと散歩を楽しんでいた。
 出会ったマルガレーテと笑顔で挨拶を交わしながら、暫し話をして。
「そういえば同学年なんだよね……学校で話とか、したことあったっけ?」
「たぶん無かったと思います。お互い知らずに、すれ違ったりとかしてたかもしれませんよね」
(いい機会だから、友達になれたら嬉しいな)
「桜、綺麗だね……」
 咲いてる期間は短くて、今年のを見られなかった人達も大勢いると思うけど。
 だからこそ余計に……感じるのかも知れない。
 マルガレーテに挨拶し短く言葉を交わしたエインシャントは、往く人々の纏うものを感じながら……考え込んだ。
「誰しも死ぬ時は、唯独りで逝く……恋人や、家族や、親友が居たとしてもだ。一緒に死ぬ訳ではない」
 人は支えあって生きるものだが、最後は結局独りで死ぬのだ。
(過去に拘る者は、未来を失って行く……しかし、何もかも失われようとも、未来だけはまだ残っているだろう)
「……その未来とは、現在(いま)なのだ」
 散りゆく桜を眺めながら、エインシャントは一人静かにカップを傾ける。
 桜をみれば、その儚さに思うことはある。
 咲き誇って見せるのが、人の生というものなのか。
 竜一が想い馳せるのは、故人。浅くはない良き友人。
 亡くなった人々を想い……が、表立って泣くわけにも行かない。
「だって、俺は結城竜一だもの。トリックスターだもの!」
 泣くのは、心の中でいい。
 もだもだごろごろと、桜の木の下を転がって。
 いずれ耐え切れず、想いに潰れるにしても……まだ、大丈夫だ。
「まだ、耐えられる」
 だから。両手で両頬を叩いて気を持ち直して。
「マルガレーテたんのそばに行こう」
(あの子はあの子で、いろいろと抱えてるだろうからね)
 よーしよし! お兄ちゃんの腕の中で泣きんさい! うひょー! マルちゃんかわいいいいい!
 ……みたいな感じで。
「過日はお疲れさまでした」
 カイとマルガレーテの話は、先日の戦いについての事だった。
(僕はまだ弱い、力の面でも心の面でも……)
 けれど……誰かが倒れ、何かが奪われるのを目の当たりにすると……
「って、ヤミィさんに友人には頼れと言っておいて、こんな事をボヤいてるのを聞かれたら怒られそうですね」
「そんな事を言われたら、喫茶店でいきなり落ち込んじゃった私の立つ瀬がないですよ」
 苦笑いする少女に苦笑で返し、愚痴を零したことを謝ってから。
「今後も精進して本当に頼られるよう成長したいです」
「……私も、です」
 青年の言葉に少女も同じように頷いた。

●花に、ふたりで
「散り行く姿も見送るのが、花見なんだと思う」
 霧香の言葉に頷きながら……宗一は呟いた。
「花が散るっていうのは寂しいものもあるよな」
 最近色々なことがあったからだろうという自覚はある。
「俺は何とか生き延びたが、一歩間違うと俺もあの中に居たかもしれないしな」
「……そんな事言わないでよ、宗一君」
 宗一君まで、行ってしまいそうで。怖いよ、あたしは。
 ふと零してしまった一言彼女を傷つけてしまったと感じた宗一は、かるく被りを振った。
(……こういうことを考えるのはどうにも、な)
「悪い。大丈夫だ、俺はまだまだ死ぬ気はない」
 そう謝ってから、別の言葉をなげてみる。
「霧香も色々あっただろ。この期にぶつけてみなよ」
「……うん。じゃあ、ちょっと話すね」
 少し考えこんで、霧香はぽつりぽつりと話し始めた。
 任務で助けた人達に、自分達が石を投げられたこと。
「命は確かに助けられた。けど、あたしはあの子達の心を助けられなかった」
 禍を断てば、それで救えるんだって信じてた。
「でも、それだけじゃダメなんだ……」
「……そう、か」
 辛かったんだな。
「……宗一君、ちょっとだけ……ごめん」
 縋って静かに泣く霧香の肩を宗一は……少しだけ迷ってから、そっと抱き寄せた。
「大丈夫だ。お前は間違ってないぜ」
 今は、甘えていい。
「これから、まだ前に進まないといけないしな」
 呟いた彼に、霧香も静かに頷いてみせた。
「大丈夫、あたしは、まだ前に進めるから」

●至るべき時の為に
「決戦が終わり、咲誇る桜もその時期を終え花弁を散らす、か……」
 どの様な事があろうとも、時の流れは止まらない。
「……いずれ、終わりは来る。始まりがあるのであれば」
 海を見渡していて、ふと……掌へと舞い降りた花びらを眺めると……拓真は呟いた。
 俺も然り。誰とて例外ではなく、言うなればこの世界とて同じ事。
(だが、理不尽な終わり方は認めない)
 何時か見た理想を……自分自身を裏切らない為に。
 立ち止まれない、理由がある。
 彼はそのまま……其方に振り向くことなく、静かにその場を去った。
「……守り抜いてみせるさ」
 誰にとなく言葉を紡ぐ。
 それが、己に出来る唯一の事なのだ。
「ねぇ……花子? アンタんとこに生き急いだ子達が先に行っちまったみたいだよ……」
 それとももうそっちにいるのかい?
 自分より後に生まれ、先に逝ってしまった大切な者へと、富子は呼びかけた。
「アタシはねぇ……アークって所が、今の日本の状況が、のっぴきならないってのは十分理解してるつもりだよ」
 それでも、それでもねぇ……アタシらみたいな上のモンより先に逝っちまうなんて……
「アタシの代わりに叱ってやっておくれよ? 『まだ早い』ってね……」
 それだけ絞り出し……何とか気持ちを切り替える。
 自分にはまだまだ、やらなければいけないことがあるのだ。
 来るべき日が来る、その日まで。
「それまで見守ってておくれよっ?」

●Dear Sir
『親愛なるクリスさんへ
 まず、告別式にも全く音沙汰なくてごめんなさい。
 心の整理がつかなくて、未だ貴女が死んだという事実をなかなか実感することが出来ないまま』
 桜の花の下、糾華は手紙をしたためる。
 家の中では書けなかったけれど……ここなら書けそうな気がするから。
『思い返せば、お互い少しおかしな関係だったわね。
 友人と言うには一緒にどこか出かけるということが一度もなくて、
 ライバルと言うには近しくて、戦友というにはお互いが子供過ぎて……』
 でも、今ならば胸を張って言える。
『私達は、最高の親友でした。今までも、これからも……』
 少女は天を見上げた。
(桜、すごく綺麗だけれど、どうしてかしら……)
 滲んで、見えないわ。

●桜の杯
 この世界を護り……先に逝った英雄達の高潔なるその魂。
「そして後を託された我ら、その揺るがぬ絆に」
 刃紅郎に応じるように、みなが杯を掲げる。
 何を嘆く事のあろうか。何を悲しむ必要があろうか。
「見たであろう。彼奴らの最後を。あの鮮烈なる輝きを」
 過日の決戦にて命を散らした戦友を想い、ゼルマは仲間と共に盃を捧げた。
 いつか砂の小僧とやり合うときに肩を並べられぬのは少々残念ではある。
「が、左様なことは些末事よ」
 自分の意志を貫き通し、生き様を貫いた。これだから人間は素晴らしい。
 さらば、愛しき戦友達よ。
(いつの日かヴァルハラでまた会おうぞ)
「いや、彼奴は地獄に落ちたほうが喜ばしいかも知れぬな」
(さすれば存分に火の小僧と戯れることも出来ようぞ)
 話を聞き、酌をしながら……ティアリアは語りかけた。
「聞かせて頂戴、皆の思い出を」
(わたくしはまだ、半年)
 別れた人たちとも面識は少ない。皆の話を聞いて、少しでも思い出を増やしたいから。
「ミーノとカズトはオレンジジュースでいいかしら?」
 杯が空きかけたふたりに、偶にはこういうのもいいじゃない、と。
 散りゆく花びらを手に受け、去り逝く仲間に思いを馳せる。
(……綺麗に咲き誇ったのよね、皆)
 わたくしは皆の花を語り継いでいきましょう。
 次なる世代へと繋げるために。
「……はい。続けて?」
「あのね、ミーノね、しってるよ?」
 前の時も今回も、仲間がいなくなったこと。
 注いでもらったジュースを飲みながら、ミーノは口にした。
 がんばって、がんばって、助けしようとしたけれど……自分ひとりじゃ足りなかった。
 みんなの力が必要で、みんなが皆のことを想って、みんなの心をひとつにして……それでも、敵は強くて。
「でもミーノも、もっともっとつよくなるから……」
(くにこちゃんも、てんごくからみてるとおもうの……はなこちゃんも、うるざちゃんおとーさんも)
「みんなきっとみてるから、ミーノがんばるっ!」
 もっともっとおたすけできるようになって、みんなをさぽーとするのっ!
 だから……

●おくる言葉
「早すぎんだよ……まだ、恩返しとか、してねぇよ」
 ジュースを飲みながら夏栖斗は怒ったように、口にする。
 ちっちゃな銀髪の子と、金髪の女の子のことを。
 いつだって届きそうで届かないものがいっぱいで……
 つかもうとした桜の花びらはひらりと手を避けて……また手をすり抜ける命。
 手に届かない、もの。
 朱子も飲料を手に、皆と想いを馳せた。
 癒し手として私達の危機を何度も助けてくれた、二度も運命を歪めて私達を守ってくれた彼女。
 ……私よりずっと弱かったのに、いつの間にか私よりずっと強くなっていた彼女。
「こんな日は強い酒の方が合うし……クリスさんの故郷の酒だから」
 快が皆の盃にウイスキーを注いだ。
 礼を言って盃を傾けながら……悠里も想いに耽る。
「また、助けてもらっちゃったな……」
 家族を、友達を、守りたいと思い戦ってきた。
「でもちっぽけな僕の力じゃあ、全てを守ることは出来ない」
「すべての悪を倒すと、ずっと戦って……力は手に入れたつもりだった」
 なのに……こんなにも私は……弱い。
 朱子は、絞り出すように呟いた。
「昔からずっと……何も変わってなんかいないんだ」
「わかっていた。そんな事はわかっていたんだ」
 悠里も同じだ。
 覚悟だって、していた。
「それでも……」
 顔を思い出せば涙が溢れてしまう。
(でも……今だけは許して欲しい)
 思い出して泣くのは、今日で最後だ。
 僕は守らないといけない。僕は、守りたい。
「だから、君たちに誓うよ。必ず、この世界を、アークの仲間を守るって」
「私は……もっと強く……強くなる」
 朱子も、続けるように呟いた。
 あの子と並んで戦えるような強さなんて今でも持ってない。
「それでも私が持っているのは……戦う力、だけだから」
 もう誰も失わなくて済むように。
 思いを託してくれたあなたのためにも。
「だから……見ていて、私の戦い」

 ありがとう。
 さようなら。
「大好きな僕の友達」
 それが、悠里が大切な友達へと贈った、最後の言葉。

●絆
「一緒にさ、砂蛇を倒そうって約束したのに、あいつらマジでバカだよ」
 ふたりとも覚悟を持って、自分の信念を貫いた。
 ソレはわかる……けどやりきれないこの想いは僕だけのものだ。
 ジュースを一気飲み乾すと、夏栖斗は空の二人にむかって叫んだ。
「こっちは死ぬまで目一杯楽しく生きてやっからな!! ざまーみろ!」
 そんな相棒を見守りながら……快もまた、クリスとマリーを偲んで盃を傾けた。
『誰も死なせたくない』
 それを成すために、逝ってしまった友がいる。
(俺は彼女達を守れなかったことを後悔しない)
 なぜならそれは、彼女達の選択と覚悟を汚すことだから。
 だから俺は、ただ敬意をもって、彼女達を見送りたい。
 けれど、
 けれど。
(あれが最期の命令で、あれが最期のキスで、なんて)
「俺には哀しすぎるよ……」
 そして、涙することも許されぬ王の生き方も……
「悪い、ちょっとだけ……桜が目に染みた」
 そう言って目元をそっと擦った快に……刃紅郎は微かに頷いてみせた。
 皆の滲ますものを……彼は決して、嫌ってなどいなかった。
 好ましいとすら思っていた。
 それを己に許さぬのは、彼が自身に課した誓約故である。
(我はクリスに、勝利の為に命を捨てよと命じた)
 世界と友の命を天秤に掛けるのが王の責務。
(ならば……涙などは許されぬ)
 視線を向ければ、新田が、夏栖斗が、皆が……瞳に心を滲ませている。
 今は、それでいい。
「我もクリスも……良い友を持った」
 ただ、それだけ口にして。
 刃紅郎は杯を傾け、薫る琥珀を五臓六腑へと沁み渡らせた。
 傍らに在る、縫いぐるみを手にとって。
「ふん……暫くは会いに行けそうにないな」
 微かな呟きは誰の耳にも届くことなく……天へと、すいこまれ……


 高台で、ひとりの少女が空を見上げていた。
(姉さんは強くて、格好良くて……誰よりも優しかった)
「戦友のために、自分の命をかけられるぐらいに」
 少女は名を、セラフィーナと言った。
(生きてて欲しかった。それだけで良かったのに)
「姉さん。私、アークに来たよ」
 呟いて……こみあげてきたものを、ぐっと拭って。
 少女は誓った。
 これからは自分が、姉さんの代わりに戦おうと。
「命も、思いも、世界も全部全部、私が守ってみせるから」
 だから……姉さんも見守っていてね?
「またね、姉さん」

 返事を望まぬ呼びかけを、空へと響かせて。


 ひとつの物語が……次の章へと遷り変わってゆく。
 幾つかの物語が幕を閉じ、幾つかの物語が幕を……開けた。

 花びらは、しずかに降りそそぐ。
 幾つもの始まりを、祝福するように。

 幾つもの想いを……愛しむ、ように。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
物語の、始まりと終わり。
終わりと、始まり。
自分の記したものの一文字でも、皆様の心に僅かでも何かを響かせられたのであれば。
これに勝る喜びはありません。

御参加ありがとうございました。
それでは、また何処かで機会ありましたら。