●我侭な少女達 それは山にひっそりと佇む別荘のらしき洋館での出来事。 「ぐはぁっ!?」 ならず者というのがしっくりくる荒々しい格好をした男が、空中を錐揉み地面を滑る。 彼の直ぐ傍には同じく床に転がされた同胞達が山積みとなっていた。 「まったく……人の家に入るだけに飽き足らず、盗みまで働くなんて……見た目どおり下卑た方々ですわね」 赤色主体のゴシックドレスに身を包んだ少女が、冷めた目つきで彼らを見下ろす。 ホールに纏められた男達を囲う様に何人もの少女や女性の姿、男装している者もいるが、一つだけ繋がる場所がある。 彼女達の共通点、それは先程の少女と同様ゴス風味の格好をしているところだ。 「お前等……アークに所属していないんだろ? だったら俺達と同類じゃねぇか!」 先程地面を転がった男が、フラフラとしつつ立ち上がり、語気荒く問いかける。 「えぇ、そうですわ? でも……従わされるのが嫌なだけで、貴方達の様に無礼な真似はした事ありませんの」 鼻で笑う少女は、階段の踊り場から飛び降りる。 音も立てず優美な着地を見せると、手にした剣を男へ突きつけた。 「まだやります? 次は……起き上がれる保障は出来ませんことよ?」 他の少女達も次々に戦闘態勢を取る、男の選んだ選択は降伏の一択のみとなった。 ●ゲーム ブリーフィングルームへ集まるベリスタ達を、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が渋い表情で迎える。 今から伝えられる内容がそんなに困難なのかと思えば、彼らの表情も曇った。 「……あっ、ごめんなさい。 そんなに難しい話ではないの」 ならば何故? と表情に浮かぶリベリスタ達を見れば、イヴは苦笑いをこぼし、コンソールを叩く。 「所謂、中立の立場を保つグループがいるの。 特に害もないし、プライドが高い事もあってフィクサードとつるむ事もなさそうだから、そのままにしていたんだけど……」 と、言い澱むイヴだが。 「戦いは激しくなるばかりだし、戦力はなるべく欲しい。 そこで彼等にも必要な時に助力してもらえる様呼びかけたのよ、そしたらこんな返事が返ってきたの」 再生される音声は、高く澄みきった少女の声だ。 『御機嫌よう、アークの皆様方。 先日のお話、わたくし達にとって何の利益もないと思いますの。 だからお断りしましょうかと思いますわ? だけど、皆様もお仕事でわたくし達にお声を掛けられたのでしょうから、何の成果もなく引き下がらせるのも少々酷かと思いまして、一つ提案がございますわ』 丁寧な言葉遣い、と言うよりは少々高飛車過ぎる気もするが気にしては負けという奴である。 一同は舐め腐った話の滑り出しへ静かに耳を傾けた。 『ゲームで決めませんこと? 8対8のチーム戦ですわ、同封した書類を見ていただければルールはお分かり頂けるかと……お返事待ってますわ』 ゲーム、その内容を説明しようとイヴが書類の内容をスクリーンへ映し出す。 「指定されたのは彼女達の住まう洋館の近く、練習場としても使ってるのかもね? ルールは、各チームのスタート地点にあるブザーを押すか、チームメンバーが全ての戦闘不能になるかで決めるみたい」 つまりリベリスタ達にとっては地の利に関して明らかな不利がある。 相手の方が地形を十分把握している筈だからであり、それが遊びと言わしめる理由なのだろう。 「こんな事を言ってるけど、気をつけてね? 彼女達は口だけじゃなくて腕前も一流よ」 各人、彼女達にどんな思いを馳せたかは分からないが……一泡吹かせてやろうと、準備に取り掛かるのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月14日(月)23:19 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●一癖二癖 「ルールに沿ったままなら、如何なる邪道を使っても文句はないか?」 ルール確認を終え、『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)が少女達へ問いかける。 企み笑みを静かにこさえるオーウェンを見て、紫のゴシックドレスに身を包んだ女がうっとりとした笑みを浮かべ、体を震わす。 「いいわねぇ、そういう顔。是非、年下の男の子を壁際に追い詰めt」 黙れと仲間の少女達に一斉に諭され、拗ねた様に頷く女。 (「アークも大概ですけれど、この方達も随分と種々多様ですね」) 意味は分からないが、善からぬ事であるのは『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)には分かり、苦笑いを浮かべる。 (「……こんな娘達をスカウトしないとならない程、アークは人材不足なんだな、同情を禁じ得ない」) 『系譜を継ぐ者』ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)は小さく溜息を零す。 大和が心の内で呟いたのと同じく、アークの面々に劣らぬ癖の強さを感じたのだろう。 (「綺麗なお姉さまが、いっぱいですね……」) 違う面から捉えていたのは『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)である。 親近感が沸く服装に、ここに来る前から期待に胸を膨らませていた。 その様子は『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)が直ぐ傍で目撃済み。 出迎えた時、少女達もリンシードの可愛らしさに飛びつく様に反応しており、『可愛い!』だの、『こんな妹欲しい!』だの、ウケは抜群である。 (「うんうん、こういうゲームはたのしくしないとね」) 満面の笑みで殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)が少女達の騒ぎを眺めていた。 溢れんばかりの戦闘意欲は仲間達にとっても心強いのだが、今回は殺しはご法度。 『だーいじょうぶ、今日の俺様ちゃんはお腹いっぱいだから衝動はないよ』 道中で仲間の懸念を解き、戦いの集中できるように配慮も欠かさない。 しかし、満たされているという事は、既に誰か殺していることになるのだが、気づいた仲間はいたのだろうか? 「話が逸れましたわね。ルールの範疇ないなら別に問題はないですわ」 他に確かめる事がなくなれば、 非戦闘スキルを全員解除し、準備完了だ。 「ホントすげぇ訓練場だなぁ、早速暴れさせて貰うぜ。宜しく頼む!」 ツァイン・ウォーレス(BNE001520)は、敷地内の訓練場から彼女達の鍛錬を感じ取る。 気合十分な彼の言葉に、少女達も微笑を浮かべて返す。 (「かわいいゴスロリなんかに負けないんだからーっ!」) 『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)にしては珍しく、戦意剥き出しと言わんばかりの意気込みだ。 何時もなら臆病なところが彼女を、危機回避の為と落ち着かせてくれる筈。 そんな彼女の胸の内、答えは少し子供っぽくある。 (「……ゴスロリ着てみたいなんて……思って……ないもんっ!」) 見栄か嫉妬か寧ろ両方か。きっと少女達に気付かれたなら、部屋に連れ込まれクローゼットから似合いそうなを引っ張り出し、着せ替え人形状態だろう。 ●始まり 「攻撃は頼むぜ!」 防衛を担当するツァインは十字の印を切り、仲間達へ加護の力を宿す。 同じく防衛を任されたハーケインは地下通路の方へと向かう。 「何もしないよりはマシ、という程度だな」 針と鈴を使い、簡易トラップを施したのだ。 「あれは」 崖へ先に到達したリンシードと大和の目に飛び込んだのは、キルハウスの窓から飛び降り、中央バリケードを駆けるソードミラージュだ。 AFを介し、連絡を入れるリンシード。続けて仲間が到着するが、何故か崖に敵の姿が無いのだ。 (「どういう事だ?」) この異常にオーウェンは困惑した。 他の仲間達もだろう。満場一致でここは重要なポイントと考え、直ぐに押さえに掛かったのだから。 「でーっかぁい、はなび、いーくよっ!」 思考を遮る能天気な声、崖に到達したメンバーが見上げた先には脅威が迫る。 血で作られた黒い鎖が荒れ狂う波の如くリベリスタ達を包む。 「先手を取られましたかっ!」 「中々やるねぇ」 大和と葬識の体を鎖が痛めつけ、体力を削る。 他の面々はどうにか脱出、傷も無い。 ただ一人、アーリィを除いて。鎖の波が消え去り、残された小さな体からは全身を染め替える様に血が溢れ、地面に沈む。 攻撃の出所はキルハウスだろう。だが壁の裏に隠れ、既に敵は見えない。 「坂から来るよっ!」 文の目に映るのは坂に陣取る3人の姿だ。 スターサジタリーは小さく跳躍すると、沈んだアーリィへ狙いを定める。 「ベルジュさんっ!」 彼女の前へ大和が飛び出す。 発射された間は黒いオーラの尾を引き、一直線に大和へと向かう。 ターゲットを隠されたスターサジタリーは即座に狙いを大和にあわせなおしたのか、先程傷を受けた場所へ弾をねじ込んだのだ。 「く……っ!」 脳を焼き尽くさんとする痛み、傷を悪化させられ、彼女に溜まったダメージもかなりのものだろう。 (「彼女は私達の生命線、倒させなどっ!」) 体力とエネルギーの供給源となるアーリィが倒れる事は、補給を絶たれるも同意だ。 長引けば長引くほど不利である。 クリミナルスタアの少女が飛び上がると、二丁拳銃からおびただしい数の弾丸が弾幕となって襲い掛かる。 庇い手で必死に受け止める大和だが、盾になりながら己まで守るのは無理だ。 「っ……ぁ……」 呻き声は小さく、手に握った刀がけたたましく地面を転がる。 (「後は任せますね」) 口にしたと思った言葉は届かない、前のめりに倒れた彼女の意識はここで失われた。 ●抗い 「坂を突破する!」 オーウェンの特殊なフラッシュグレネードが、坂の敵へ投げ込まれる。 広範囲に飛び散る光は激しく、視野を一瞬にして白く染め上げた。 「ナイスだよ、オーウェンちゃん」 視野を破壊され、ふらふらと体が揺れる彼女達へ、葬識の闇が続く。 噴き溢れん瘴気が体を蝕む毒の如く3人を包む、光に包まれた後は逆に闇で包みまれ、体力をも奪う。 不吉な力が行動力を阻害し、勢いを盛り返す。 「リンちゃんは前に行って」 ぺたりと地面に座り込んだ状態に体を起こすアーリィのお願いに、彼女の顔色が曇る。 「呪縛を解いたら援護するから大丈夫だよ」 苦し紛れに笑みを浮かべる友の願いに答えぬわけにも行かない。味方の陣地にも敵が進行しているが、上限の所為で戻れない。 その時は前に出る、決めていた事だ。 「行ってくるね……?」 坂のほうへと走るリンシードの剣がうねりを上げ、分身の如く崖の3人を切りつけていった。 (「守ってもらったんだし、その分頑張らないと、だよ」) 気力を振り絞り、体を蝕む異常状態を振り払おうと抗い、アーリィは立ち上がろうとする。 だが、意思だけで突破できるほど体の傷は深く、呪縛を打ち破れない。 失血と毒が残った体力をそぎ落とし、再び地面に倒れこむ。 (「まだ……っ」) 奇跡に頼らぬ奇跡、それを掴み取るだけの力も無く、アーリィの意識は闇に沈むのであった。 穴から本陣に戻ったマグメイガスが坂へと踏み込み、魔法を放つ。 「しまった……っ!」 「きゃぁっ!?」 オーウェンと文がモロに鎖に捕まってしまい、体をズタズタにされてしまう。 身動きが取れない様に封じ込められ、行動可能な人数はほぼ同数と押し返されてきた。 「俺様ちゃんはまだ動けるよ~」 同じく直撃を回避した葬識は反撃に移る。 再び漆黒のオーラを浴びせ体力を抉り続けるが、倒れる様子は無い。 そのダメージもホーリーメイガスの回復が打ち消してしまう。 「皆、待たせたわね」 穴から姿を現したのはプロアデプトの女。 更に掲げた掌から浄化の光を放ち、仲間達の異常を取り除いたのだ。 「うぁっ!?」 身動きが取れない文へ容赦なく呪いの弾丸を撃ち込むスターサジタリー、これで己の力で打ち破るのは難しいだろう。 オーウェンへ引導を渡そうとクリミナルスタアの少女が一斉発射の弾丸を放つ。 「そうはいくか!」 全力で体を逸らし弾丸を回避したところへ、デュランダルの少女が接近。 「捕まえたよ?」 可愛らしい声と共に彼の頭を跳躍しつつ掌で捕らえ、頭蓋骨の軋む音を聞かせながら宙へ誘う。 電撃を至近距離で流し、腕力任せに地面へ叩きつける。 肺の空気を吐き出し、頭部が地面にめり込む。 少女のうれしそうな微笑が、この戦いの最後の記憶となり、沈むのであった。 「お菓子、あるんだけど……ちょっと面白い、人形もあるよ」 リンシードに誘われるがまま前に出ようとしたマグメイガスが、ホーリーメイガスの手に捕まる。 満面の笑みで肩を極め、体で教え込む。なんだろうか、どこかで見た気がしても気のせいだろう。 その間にリンシードの高速攻撃が前衛へ襲い掛かり、体力を削っていた。 葬識の攻撃も合わさり、範囲攻撃で手数を補う。 呪縛の力で身動きの取れない文へ前衛3人が沈めに掛かる。 「ん……っ!」 胸を狙う狙撃を身を捩り、肩で受け止めダメージを殺す。 クリミナルスタアの至近距離射撃の嵐が、追撃をかける。 それを右に左に、必要最低限の動きだけで直撃を回避していく。 正確に言うならば、この様な避け方しか出来ないのだ。 体の動きを封じられ、派手に動けない分、確実に一つ一つを見極めて避ける。一歩間違えば直撃し、そのまま飲み込まれてしまう。 (「まだ、やられないもんっ!」) 一撃も与えていないのにやられてたまるかと、意地でも喰らいつく。 弾丸の嵐に乗じて、デュランダルが文の懐に潜りこんでいた。 「うぁぁっ!?」 アイアンクローで捕らえられた頭に激痛が走る、胡桃割りに掛けられたかの様だ。 持ち上げられた文はジタバタと体を捩り、必死に逃れようとするが無駄な事。 「これでお終い!」 遠慮無しのフックが鳩尾に直撃、口の中に酸味が染み渡るも、直ぐに痛みに支配される。 開放された文は地面に転げ落ち、意識を失ってしまった。 ●速攻 時は遡り、リベリスタの本陣。 敵接近の知らせを受け、ツァインとハーケインは防衛の準備を行う。 闇を纏い、十字の加護を重ね合わせ、防衛力を増す。 バリケードの隙間を縫う様に駆け寄ってきた少女は、一足飛びで音速の刃を振りぬいた。 狙いはハーケイン。だが事前に察知していた事もあり、サイドステップで軸から逃げ、空振りの轟音が響いた。 「外しましたわ」 残念そうに呟くと、少女はショートソードを握ったままスカートの裾を摘む。 「ご挨拶が遅れましたわね、私は留美。宜しくお願いしますわ」 貴婦人の様な丁重な挨拶の仕草を見せる。 「ツァインだ、改めて宜しく頼む」 「ハーケインだ、受けて立つ」 挨拶を返し、構える二人。そして地下通路から接近する気配にハーケインは気付く。 鳴子が響いた様子は無いが、張り巡らせた警戒までは誤魔化せない。 「もう1人来たかっ!」 地面を滑る様に駆け抜ける少女。 突き出されたナイフをカッツバルゲルで打ち払おうと迎撃を試みるが、まるで蛇の如くしなやかな腕が防御をすり抜けた。 「ぐはぁっ!?」 パン切り包丁の様な刃を宿したナイフがコートの隙間を切り裂き、更に爆発。 大ダメージに一歩後ろへよろけた。 「血ぃ、今の花火さいこぉ」 首を右に傾け、何処と泣くうつろな瞳をした少女は苦悶を浮かべるハーケインを見て満足げに微笑む。 「今度は真っ黒な花火を見せてやる」 闇に包まれたオーラをはじけさせ、少女二人へハーケインの反撃が襲い掛かる。 留美と名乗った少女は闇の隙間を縫うように避け、ナイトクリークの方は乱雑な動きで避けてしまう。 「さぁ、おっ始めようぜぇ!」 当てやすいほうから始末すべきと、ナイトクリークの方へとツァインが仕掛ける。 刃に掌を滑らせ、眩い白き光が宿ると盾で太刀筋を隠しながらブロードソードを振りぬいた。 横薙ぎに振るわれた刃が少女の太股を切り裂き、ガクリと体が揺れる。 その間にも留美はハーケインへ音速の刃を叩きつけたのだ。 速さに防御が間に合わず、直撃した刃がハーケインの体を痺れさせていく。 チャンスを逃すまいとナイトクリークが再び襲い掛かるも、ツァインが盾を構え立ち塞がる。 「早く立て直すんだ!」 ナイトクリークの刃を弾き、音速の刃からも耐える。 やられまいと強靭な防御力と体力で、ハーケインへの集中攻撃を庇い、チャンスを待つ。 「……いくぞっ!」 活性化し続ける体は体力を回復させつつも、体の痺れを消し去る。 行動可能になったハーケインはカッツバルゲルに闇の力を込め、ツァインの陰から飛び出す。 不意打ちに近い状態でナイトクリークへ接近した彼の刃が上へ降りぬかれ、胸元を斜めに切り上げる。 飛び散る血しぶき、確かな手ごたえを感じる。ツァインが追い討ちを掛けようと、再び輝く剣を振るうも、寸でのところで皮を掠めるだけだ。 「これでどうですっ?」 再びハーケインへの集中攻撃が始まり、砂を巻き上げる程素早く走る留美が二本の刃を並べて横へ薙ぐ。 防御が間に合わず刃が深々と彼を切り裂き、ボタボタと血が地面で弾ける。 「もっと見せてぇっ!」 最初の一撃以降、大降りばかりで外れていたナイトクリークの一撃がこんなときに限って当たってしまう。 再び傷口に突き刺さったナイフはオーラの爆弾を仕込み、抜けると同時にハーケインを焼き払う。 「がはっ……」 自己回復能力を上回る連続攻撃が、彼の牙城を破砕し、地面に沈める。 流出する血の流れ、抗わんと起き上がろうとするが力を失いすぎた彼に成す術はなかった。 ●暴力 「どんどんいくよ~!」 「……」 予定とは違ってしまったが、リンシードの幻影剣と葬識の暗黒は確実にダメージを与えていた。 前衛陣を混乱させ、攻撃を妨害しつつ、下落させた運は彼女達の復活率を阻害する。 「中々……しぶとい」 幻影を撒き散らしながら前後左右から襲い掛かるリンシード、今度は若干深く踏み込んだおかげでどうにかマグメイガスも巻き込むことが出来た。 再び混乱の渦へ沈んだ4人は同士討ち状態になるのだが、運は気まぐれである。 「そこかぁっ!」 目をグルグル回しながらも、飛び出したデュランダルの拳が偶然にもリンシードに当たってしまう。 息が吸えなくなる様な体の異常は小さな体の体力を一気に奪い、後ろへとよろめく。 「リンシードちゃん!?」 先程まで直撃しなかった華奢な体があんなバカ力で打ちのめされ、葬識に不安が伝わる。 「まだ、大丈夫……です」 息を整えながら、リンシードは再び長剣を構える。 「隙あり!」 好機を逃さず、プロアデプトが仕掛けた。 絡め取られた彼の体は痺れ、オマケに毒まで打ち込まれてしまう。 「これはマズいよね……」 ホーリーメイガスの浄化の光がスターサジタリーを混乱から解き放てば、呪いの弾を葬識へ撃ち込み、畳み掛ける。 パターン化された戦闘方法が1人ずつリベリスタ達を静めていくのだ。 自力で混乱から脱したクリミナルスタアと本陣のプロアデプトは、バリケードのほうへと駆け抜けていく。 『ハーケインがやられた、援護を頼めるか?』 FAから飛び込んだのはツァインからの応援要請だ、本陣も危機に陥り、状況は最悪だ。 「リンシードちゃんは本陣に行ってくれるかな? 多分、さっきの2人は挟み込むか本陣に走った筈だからさぁ」 坂の残った二人を倒せば、後はツァインのみ、そちらをじっくり倒すもよし、増援を送ってねじ伏せるも良しだ。 「……わかりました」 二度目の移動、今度こそはと胸に誓いを立てつつ、リンシードは崖へと走る。 「可愛いお嬢さんのお誘いに乗らないなんて男の子がすたるよねぇ~、俺様ちゃん、頑張っちゃうよ」 満身創痍だが口調は変わらず、調子は失われない。 リンシードが穴の滑走する最中、崖から聞こえた重なり合う銃声と爆発音は彼の結果を伝えていた。 ●終焉 回避能力を押し殺す手数、防御力をねじ伏せる数の暴力。 本陣防衛は開始直後にリンシードがスターサジタリーの狙撃に倒れ、ツァインだけが残った。 「降参しませんのね、何故ですの?」 剣を杖に荒い息で立ち続けるツァインへ留美が問う。 「何故ぇ……?倒れなきゃ負けないからだ、単純だろうがっ」 少しでも勝てる希望を求める、彼の実直な心が今を支えていた。 「感心しますわ、でも本日はこれで幕引きですの」 ザンッ、突き抜ける風と共に、ツァインの体は切り裂かれる。 膝を突き、気力で再び立ち上がろうとする彼だったが、やはり立ち上がるのは無理だった。 「……その最後だけは、認めますわ」 膝を突いたまま意識を失い、地に倒れず、戦いは終わりを告げた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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