●硝煙夜に溶けて荒野と化し 三ツ池公園。 かつてアークが決戦を行なった地。 その結末において開かれた『閉じない穴』は今もなお、不安定に揺らぎ招かれざる客を呼び寄せる。 この日も招かれざる一人の客が訪れた。 ――いや、二人か。 招かれざるという点においては。 ●荒野照らす刀の煌きは月の如く コオオオォ―― 大気を震わす呼吸音。その生物にとってそれは遠吠えのようなものだった。 月明かりに照らされた姿はこの世界のもので現すなら巨大なミミズのよう――10mを越す体躯のミミズがいればだが。 生物――アザーバイトは動き出す。 知性はない。知能はない。見知らぬ土地に飛ばされた戸惑いなど、感じる理性はそこにない。 ただ求めるものは――餌だ。適応能力の高いこの生物には、食料さえあればどんな場所でも文句はなかった。 アザーバイトは動き出す。その身は肉食、狩猟で食料を得て生きてきた。ゆえにアザーバイトは動き出す。飢えを満たそう。欲求に貪欲に、命を求めて―― ――銃声。 夜の風に硝煙が混ざり。 「硝煙夜に溶けて荒野と化し」 女の声が闇に響く。 「荒野照らす刀の煌きは月の如く」 抜かれた日本刀をアザーバイトに向け。 「悪党悪鬼打ち砕く西方の風」 オレンジの髪が月明かりに照らされ、映し出されたその姿はウェスタン衣装に身を包んだ妙齢の女性。 「推参! その名もウェスタンヒーロー、ロイヤー東谷山デース!」 そしてドヤ顔。 突如現れた存在を、アザーバイトは障害と認める。障害に向けて突進し始める巨体に、ウェスタンヒーローは余裕の笑みを浮かべ刀を構えた―― ●推参! その名もウェスタンヒーロー 「西方冒険活劇のはじまりはじまりってな」 拍手と共に告げる『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。任務はアザーバイトの討伐だよと軽い口調だ。 「ええと、このデュランダルらしい人物は? リベリスタか、それともフィクサードか」 リベリスタの質問に伸暁はああと頷き。 「フォーチュナだよ。といっても革醒したてのひよこちゃんだね」 「……フォーチュナ!?」 日本刀と拳銃を構えたフォーチュナって、どこぞの鋼鉄の戦闘型フォーチュナじゃあるまいし。 「当然戦闘なんてこなせない。この直後、彼女は錐揉み状に吹き飛んで地面に頭から突き刺さって重傷エンドだ」 死なねーのかよ、優しいなアザーバイト。 「そのままアザーバイトは街に出て食事を始める。当然阻止だ。ついでに彼女の護衛も頼む」 「ていうか、なんでフォーチュナがこんなところに?」 当然の疑問に伸暁が答える。 「ロイヤー東谷山。彼女は先月までは一般人だった。ヒーロー物の映画やアメコミを好むニーt――家事手伝いだ」 ニート言うな。 「彼女は神秘などの知識は全くない。ある日映画を見ていてテンションが上がった拍子に革醒してな? 自分をヒーローだと思い込み、映画の舞台であった日本に悪党退治に来たって訳さ」 いい大人がどんなわけだよ。 「その映画が『ウェスタンヒーロー』、そう、彼女は悪党退治のスペシャリスト、無敵の超人ウェスタンヒーローなのさ。彼女の中では」 迷惑この上ねー。 「こんなでも貴重なフォーチュナだ、アークにスカウトする必要がある」 自分にヒーローのような力はないと思えば傷心してどこかに行ってしまうだろう。その力をフィクサードに利用される可能性だってある。 「彼女は自分をヒーローと思い込んでいる。その思い込みを潰さないでやってくれ」 彼女をヒーローにしたまま戦闘を終え、言葉巧みに裏方のフォーチュナ業を納得させる――それがお前達の使命さとニヒルに笑う伸暁。 「ま、のんきなことばかりも言ってられないね。足手まといのいるこの戦場で、アザーバイトはとびきりデンジャーなやつさ」 歪み穴土竜。これがアザーバイトに仮で付けられた名前だ。 「細かい能力、特性はレポートを見てくれ」 特筆すべきは時空を歪める力。歪んだ穴を多数生み出し、その全てから強力な攻撃を仕掛けてくる。歪んだ穴が出現したら、急ぎ破壊しなければならない。 「ロイヤーはかばうなりアザーバイトの攻撃対象にさせないなりの工夫が必要だろう。それでは頼んだぜヒーロー」 にっと笑い、伸暁は親指を立てて送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月02日(水)00:54 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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