下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






<三ツ池公園特別対応>ウェスタンヒーロー

●硝煙夜に溶けて荒野と化し
 三ツ池公園。
 かつてアークが決戦を行なった地。
 その結末において開かれた『閉じない穴』は今もなお、不安定に揺らぎ招かれざる客を呼び寄せる。
 この日も招かれざる一人の客が訪れた。
 ――いや、二人か。
 招かれざるという点においては。


●荒野照らす刀の煌きは月の如く
 コオオオォ――
 大気を震わす呼吸音。その生物にとってそれは遠吠えのようなものだった。
 月明かりに照らされた姿はこの世界のもので現すなら巨大なミミズのよう――10mを越す体躯のミミズがいればだが。
 生物――アザーバイトは動き出す。
 知性はない。知能はない。見知らぬ土地に飛ばされた戸惑いなど、感じる理性はそこにない。
 ただ求めるものは――餌だ。適応能力の高いこの生物には、食料さえあればどんな場所でも文句はなかった。
 アザーバイトは動き出す。その身は肉食、狩猟で食料を得て生きてきた。ゆえにアザーバイトは動き出す。飢えを満たそう。欲求に貪欲に、命を求めて――

 ――銃声。
 夜の風に硝煙が混ざり。
「硝煙夜に溶けて荒野と化し」
 女の声が闇に響く。
「荒野照らす刀の煌きは月の如く」
 抜かれた日本刀をアザーバイトに向け。
「悪党悪鬼打ち砕く西方の風」
 オレンジの髪が月明かりに照らされ、映し出されたその姿はウェスタン衣装に身を包んだ妙齢の女性。
「推参! その名もウェスタンヒーロー、ロイヤー東谷山デース!」
 そしてドヤ顔。
 突如現れた存在を、アザーバイトは障害と認める。障害に向けて突進し始める巨体に、ウェスタンヒーローは余裕の笑みを浮かべ刀を構えた――


●推参! その名もウェスタンヒーロー
「西方冒険活劇のはじまりはじまりってな」
 拍手と共に告げる『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。任務はアザーバイトの討伐だよと軽い口調だ。
「ええと、このデュランダルらしい人物は? リベリスタか、それともフィクサードか」
 リベリスタの質問に伸暁はああと頷き。
「フォーチュナだよ。といっても革醒したてのひよこちゃんだね」
「……フォーチュナ!?」
 日本刀と拳銃を構えたフォーチュナって、どこぞの鋼鉄の戦闘型フォーチュナじゃあるまいし。
「当然戦闘なんてこなせない。この直後、彼女は錐揉み状に吹き飛んで地面に頭から突き刺さって重傷エンドだ」
 死なねーのかよ、優しいなアザーバイト。
「そのままアザーバイトは街に出て食事を始める。当然阻止だ。ついでに彼女の護衛も頼む」

「ていうか、なんでフォーチュナがこんなところに?」
 当然の疑問に伸暁が答える。
「ロイヤー東谷山。彼女は先月までは一般人だった。ヒーロー物の映画やアメコミを好むニーt――家事手伝いだ」
 ニート言うな。
「彼女は神秘などの知識は全くない。ある日映画を見ていてテンションが上がった拍子に革醒してな? 自分をヒーローだと思い込み、映画の舞台であった日本に悪党退治に来たって訳さ」
 いい大人がどんなわけだよ。
「その映画が『ウェスタンヒーロー』、そう、彼女は悪党退治のスペシャリスト、無敵の超人ウェスタンヒーローなのさ。彼女の中では」
 迷惑この上ねー。
「こんなでも貴重なフォーチュナだ、アークにスカウトする必要がある」
 自分にヒーローのような力はないと思えば傷心してどこかに行ってしまうだろう。その力をフィクサードに利用される可能性だってある。
「彼女は自分をヒーローと思い込んでいる。その思い込みを潰さないでやってくれ」
 彼女をヒーローにしたまま戦闘を終え、言葉巧みに裏方のフォーチュナ業を納得させる――それがお前達の使命さとニヒルに笑う伸暁。

「ま、のんきなことばかりも言ってられないね。足手まといのいるこの戦場で、アザーバイトはとびきりデンジャーなやつさ」
 歪み穴土竜。これがアザーバイトに仮で付けられた名前だ。
「細かい能力、特性はレポートを見てくれ」
 特筆すべきは時空を歪める力。歪んだ穴を多数生み出し、その全てから強力な攻撃を仕掛けてくる。歪んだ穴が出現したら、急ぎ破壊しなければならない。
「ロイヤーはかばうなりアザーバイトの攻撃対象にさせないなりの工夫が必要だろう。それでは頼んだぜヒーロー」
 にっと笑い、伸暁は親指を立てて送り出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:BRN-D  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年05月02日(水)00:54
●成功条件
 アザーバイトの討伐。

●失敗条件
 ロイヤー・東谷山が重傷を負う。(非殺スキルなどで気絶させても本人の心が折れる為失敗になります)

●場所
 夜中の三ツ池公園の『閉じない穴』付近です。一般人が入り込むことはありません。現在はロイヤーとアザーバイトがにらみ合っているところです。

●人物
 ロイヤー・東谷山:ウェスタンヒーローを自称するフォーチュナ。妖しい日本語を使うアメリカン。映画、アメコミ大好き。自身をヒーローと思い込んでおり、やる気を削がれると国に帰ろうとします。
   日本刀を片手に張り切って討伐にきていますがフォーチュナの為戦闘力は皆無です。殴られたら即重傷です。革醒前は実家で家事手伝い(笑)でした。
   常にアザーバイトに接近して日本刀で攻撃します、[ダメージ0]固定です。突進の範囲に常に入っています。

 性格を現す参考発言。
 「ハーイMiss.Mrリベリスタ。元気だしていきマッショー」
 「oh! 三高平には戦国メイドカフェないのデスカー? 残念デース」
 「え? 悪いけど気分乗らないんで。いーよもう、ぶっちゃけめんどい」



●敵
 歪み穴土竜:体長10mを超える体躯で、狩猟性の強い動物的なアザーバイトです。放っておくとロイヤーをぺしゃんこにした後公園を出て街に向かいます。
   高い体力と命中、攻撃力を持ちますが、防御・回避はかなり低めです。しかし条件付で行なわれる全体攻撃はかなりの破壊力になります。初手は補助を行ないます。
   このアザーバイトはブロックすることができません。常に移動をしながら攻撃を行ないます。
   また、前のターンで自分にもっともダメージを与えた者を攻撃目標にする習性があります。この時、[ダメージ0]>[攻撃しない]になります。その為BSの[怒り]の効果を受けません。

  攻撃能力 (習性に従い、目標を攻撃するのに適した能力を使用します)
  ・コーティング (物自付、回避・物理防御・神秘防御上昇、リジェネレート付与、追加効果:[反射] 、BSによるダメージを無効) 酸を身に纏い自身を強化します。持続時間が長く戦闘中に補助効果が切れることはありません、代わりに一度使用したら戦闘中に再度かけることはできません。

  ・突進 (物近貫、高威力、状態異常:[圧倒][ショック] ) 移動した間にいる全ての敵に強力な突進攻撃を行ないます。突進時の移動は10mで基本的に直線です。

  ・酸吐き (神遠範、高威力、状態異常:[虚弱][業炎]) 移動後に強力な酸を吐き散らします。この時の移動は突進を伴いません。

  ・歪み穴 (神遠2全、ダメージ0) このスキルは歪み穴土竜のBS状態に関わらず発動することができます。歪み穴土竜がBSにより行動不能になった場合は必ずこのスキルを使用します。範囲内の敵全ての頭上に時空を歪める穴を生み出します。

  ・EX 歪み堕とし (物[歪み穴]全、超威力、状態異常:[麻痺]、追加効果:[呪殺] ) このスキルは歪み穴土竜のBS状態に関わらず発動することができます。歪み穴を使用した直後のターンに必ず使用します。全ての歪み穴から自身の足を出現させ対象を踏み潰します。歪み穴が全て破壊されていた場合は行動失敗となり、何も行動しません。


 歪み穴:スキルによって生み出される時空の歪んだ穴。対象となる敵の頭上に出現し、移動しても常に頭上より離れません。HPは500で防御はなく、回避行動は取りませんがヒット率は100%で固定されます。


●補足
 ロイヤーは完全な足手まといで、戦闘に対しノリノリです。撤退などの指示は一切聞きません。
 基本的におばかです。ダメージ0でも自分の攻撃で弱っていると信じています。
 本人の行動に否定的な発言をするとやる気をなくしてしまいます。うまいこと言って今後のフォーチュナのデスクワーク業務を納得させてください。

 それではよろしくお願いします。
参加NPC
ロイヤー・東谷山 (nBNE000227)
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
クリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
ダークナイト
スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)
プロアデプト
チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)
覇界闘士
ミリー・ゴールド(BNE003737)

●オープニングフェイズ――推参! ヒーロー戦隊リベリスタ
「……あ、ああ」
 夜の三ツ池公園。恐怖の張り付いた弱々しい声は、封鎖されたその空間に迷い込んでしまった不幸な女性のもの。
 眼前に広がる光景は日常とは程遠い異質の世界。神秘を知らない者にとっては、巨大な化け物に対峙するなど映画のワンシーンでしかありえないはずだから。
「だ、誰か助けて……」
 声が震える。ミミズの化物は彼女に目をやり地面を揺らして近づいてくる。その口元が、歪んだ気がして――
「た、助けて――っ!」
 悲鳴は銃声に掻き消える。

「Hey Mr.Monster! ユーの相手はワタシデース」
 夜の風に硝煙が混ざり。闇に響かせた声の主は――満面のドヤ顔で登場。
 驚き戸惑う女性の前に立ち、抜いた刀は月の如く。
「ワタシこそ悪党悪鬼打ち砕く西方の風――」
「西方の、風……? ま、まさか貴女は……」
 思いがけぬ女性の言葉に瞳を輝かせ、ヒーローは口上を打ち切り続きを待つ。その空気を感じ取り、女性は熱を持った声音でその名を呼んだ。
「――ウェスタンヒーロー!」
「オウイエー! ワタシこそウェスタンヒーロー、ロイヤー東谷山デース!」


 この時アザーバイトと対峙するロイヤーのヒーローテンションは最高潮に達した。これをさせたのはもちろん迷い込んだ一般人の女性――の演技をしていた『見習いウェスタンヒーロー』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)である。
 エリューション能力を感知させないステルスの力を活性化し、彼女は見事ロイヤーをヒーローとして持ち上げたのだ。
 背中にしがみつくようにしながら、スペードは自身をヒーローと信じて疑わないロイヤーを微笑ましく思う。
 (とても元気で素敵な人ですね。個人的にはお友達にもなってみたいですっ)
 スペードはかばわれてる体を装いながら、ロイヤーを守りぬく意思を固めた。

 眼下の存在を障害と認めたアザーバイトは動き出す。それを見たヒーローもまた余裕の笑みで刀を構える。
 いよいよ始まるヒーローVSモンスター。
「ヘーイ、ウェスタン! 助太刀するぜ」
 そこに割り込んだのはパンクファッションに身を包んだ男性、『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)。包帯フォーチュナを増やすわけにはいかないとライフルを構えた。
 彼だけではない。ロイヤーの周囲にはヒーロー小芝居の最中に事前準備を行い、戦闘態勢を整えたリベリスタ達が勢揃いしていた。
「俺達はアークのリベリスタ。簡単に言えば正義の味方、ヒーロー戦隊だな」
「oh SENTAI! チョーかっこいいネ!」
 瞳を輝かせるロイヤーに『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)は笑いかけた。
「この戦いヒーロー仲間として助太刀する」
 言うや翔太は剣を手に駆け出す――皆、守り通してアークに向かい入れるぞ!
 

●ミドルフェイズ――完成! スクエア・フォーメーション
「行くぞ優希!」
「翔太、頼りにしているぞ!」
 親友同士の掛け合い。翔太に並び突進したのは『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)だ。『M・G・K』の二人のリベリスタがアザーバイト、識別名歪み穴土竜に正面から挑みかかる!
 一気に間合いを詰め突き出すは手甲阿修羅。怒涛の勢いで叩きつけられ土竜の頭部が大地を削りとった。
 動きが鈍ったその瞬間を見逃さず――いや、親友が敵の動きを止めることを信じて疑っていなかったかのように、翔太はすでに大剣を構えていた。その剣が土竜の脆い部分を的確に貫くと絶叫が夜の闇に響き渡る。
「oh ヒーローコンビネーション! 負けてられないネ」
 沸き立つロイヤーに目をやり、優希はふっと笑みを漏らす。
 (無茶も無謀も上等か。アークへ来たら賑やかになるのは間違いないだろう、悪くはない)
 ――その為にもまずは土竜を倒す。背に生えた神秘の翼を広げ優希は作戦の立ち位置を目指し飛んだ。

 事前に仲間に移動を助ける翼を与えると、『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)は状況を見極めるように遅れて動く。回復に攻撃に、土竜の特性を考えればやれることの多い彼女の行動は重要になるのだ。
 (よく一対一で戦えますね……私だったら絶対無理ですよう、やーん)
 実際の実力はともかく、たった一人で土竜と対峙していたロイヤーの自信と勇気は特筆すべきもの。
 そんなロイヤーに一般人の方を連れて下がって欲しいと伝えてはみるが――
「ヒーローのワタシが戦わないと始まりまセーン」
 ドヤ顔な発言で一蹴でした。やーん。


 歪み穴土竜はその巨体を持ち上げると大きな口を開く。その口元から流れる酸が自身の身体を包み込むと、表面で固まり分厚くコーティングされる。柔らかかった皮膚が鉄を連想させるように黒光りし、戦闘態勢を整えていった。
 一際高く上げられた咆哮は狩りの始まりに対する興奮か。そのまま土竜は獲物に向かって前進を始め――
 ――一発の銃弾がその身に深い穴を開けた。
「よし、パーフェクト!」
 アウラールの放った銃弾が狙いを違わず酸の分泌口へ打ち込まれると、土竜は苦悶の声を上げ転げまわる。酸の分泌が止まり、固まっていなかったコーティングが剥がれ落ちてしまった。
「――コーティングの消失を確認した。よくやったな」
 暗闇を見通す目でしかと観察し、『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)は仲間に告げた。防御能力の低下はリベリスタ達に大きなアドバンテージになるだろう。
「さて、ではオレ達に出来る事をやっていこうか」
 フォーチュナのように未来予知はできずとも、自分達は戦う力を持つ。福松の言葉にアウラールは頷いた。
「ああ、この人喰いミミズには負けられない」

「何あれ! でっかい! 気持ち悪い! グロテスク!」
 機関銃のようにさえずり『出力セーブ中』ミリー・ゴールド(BNE003737)は顔をしかめて土竜を睨みつけた。
「仮称が土竜なのにビジュアルイメージはミミズなんですよね。もぐらとみみず……似てるん、でしょうか……?」
 その隣で『極北からの識者』チャイカ・ユーリエヴナ・テレシコワ(BNE003669)は不思議そうに表情を動かしながら気糸を放ち土竜を打ち付ける。
 動きは鈍りコーティングの剥がれたその柔らかい皮膚を傷つける。皆が攻撃を重ねるこの機会を見逃さず――
「一刀両断デース!」
 ものの見事なへっぴり腰で斬りかかるロイヤーにため息をつき、ミリーは腰を深く落としその拳に炎を纏わせる。
「このフォーチュナ、トニー・ジョーズの犬より落ち着きがないわ!」
 叫びとともに繰り出される鋭い突きが皮膚を穿ち焼いた。土竜が身をのけぞらせ逃れるように動くと、チャイカは翼を広げ間合いを詰める。
「フォーチュナは落ち着いた人が多いので、エネルギッシュな方が入るのは嬉しいですね。趣味も合いそうです」
 どこか対照的な二人がそれぞれの意見を交わしながら――事前の作戦通りの陣形を整えていった。


「ちょっとあんた! ミリー達には出来ない特殊能力があるらしいじゃない。未来予知だっけ?」
 言われてロイヤーはキョトンとして。
「ワッツ? 未来予知? ノンノン、ヒーロー眼デース」
「どうでもいいわよ!」
 ミリーの言葉にえーと声を上げつつ説明を始める。自分達には出来ないというのが鼻高々のようである。
 曰くこの場所に入ったのも、自分が特殊なルートを通って封鎖された公園に入り込む未来を予知できたからだった。
「そりゃすごいな! その力、俺たちに貸してくれないか?」
「奴の動く先が見えたら教えてくれ、その通りに動こう。ロイヤー、君がこの戦場の指揮官だ」
 アウラールの言葉に重ね、翔太がロイヤーの自尊心をくすぐった。
 oh 指揮官! 叫ぶロイヤーに優希がトドメの一言。
「俺は攻撃することしか能がない。だがお前はお前の能力がある。その力を最大限に生かし、勝利に導いて欲しい」
 満面のドヤ顔で頷くロイヤーに、一同は目を合わせ笑いあった。


 先手を取ったリベリスタ達だが本番はこれからだ。大気を震わす雄叫びを上げて土竜がいよいよ動き出す。
「――だが、予測済みだ!」
 突進を受け身体を弾かれるも、事前にわかっていれば準備はできる。最小限にダメージを抑え、優希は空中でバランスを取り着地する。
 巨体の突進は本来ならば多くの被害を生む。だがこの攻撃で傷ついたのはたった一人であった。
「予想通り、ロイヤーは土竜の正面に向かっちまうのな」
 翔太の苦笑。ヒーロー願望の強いロイヤーは巨悪に対し真っ向から挑む習性があるようだった。
「だが問題ない。陣形完成が間に合ったな」
 仲間達から離れた位置の福松が指示を飛ばし、土竜が動き出す前に決めていた陣形を完成させた。この陣形がロイヤーを攻撃範囲に巻き込まない策であった。
 この陣形は土竜、その正面に立つロイヤーと多くの仲間達、土竜の側面につく優希、遊撃のように離れる福松とアウラール、4つの固まりでできた陣形。
 自らに大きな痛手を与えた者を狙う習性を持つこの狩猟生物、その特性を利用し突進を優希に向けさせ攻撃を固定させる。相手の特性の弱点をついた優秀な防御陣形である。
「これがスクエア・フォーメーションよ!」
 ミリーの声が、クライマックスへの序曲となる。


●クライマックスフェイズ――誕生! スーパーウェスタンヒーロー
「ナイスですよヒーロー! 私も援護射撃します!」
 ロイヤーが振るう刀にタイミングを合わせチャイカの気糸が土竜を打つと、まるでロイヤーの攻撃で傷ついたかのよう。
「ヘイ、ヒーロー! 敵はびびってそっち向けないみたいだな」
 今攻撃を一身に引き受けているのはアウラールだ。土竜の標的になるべく放つ十字の意思は、神秘によって心を乱せずともその火力で狙いを引き寄せる。
 敵の攻撃が来ない為多くのリベリスタが安心して全力で一斉攻撃を重ねていく。防御面の切り札であったコーティングもなく、土竜は激しく削れていく。
 当たり具合の精度で一度福松に突進が向けられたが、遊撃手ゆえ作戦に支障はない。すぐに陣形が修正され、作戦の完成度の高さを物語っていた。
 幾度かの突進で傷ついた優希は一旦距離を取り、呼吸を整え治癒を早めている。状況は鉄板、討伐は近い。


「――っ、来るぞ!」
「ロイヤー!」
 福松と翔太が同時に叫ぶ。二人の観察眼が土竜の奇妙な動きを捉えていた。言われたロイヤーが頭上を指さす。
「――穴!」
 歪み穴。これがミミズの化物に土竜と名付けられた要因。時空を歪め出没した9つの歪み穴から、奇妙奇怪な足が覗かせている。直下の獲物を、一蹴せんと。

 リベリスタ達の行動は早い。
 翼を広げ仲間の元へ一瞬で飛び込んだのは先程まで怪我を癒していたはずの優希。その身が雷を纏い、電光石火の如く拳を穴に叩きこんでいった。
 時空をひしゃげさせる烈火の勢いに穴が急速に縮んでいく。
「ミミズが足はやしてるんじゃないわよ!」
 ミリーの放った火球が頭上へと向かい爆発を起こす。その熱が下にいた仲間の毛先を焦がし巻き起こった煙が晴れると、固まっていたリベリスタ達の頭上の歪み穴は消え去っていた。

「やーん、やらせませんよぉ!」
「私に任せて下さい!」
 残る歪み穴を土竜ごとイスタルテの放つ意思の閃光が、振り回されたチャイカの気糸が穿ち削りとる。
「これで終わりだな」
「さっさと落ちろや!」
 止めを落ち着いてそれぞれアウラールと福松が刺すと、後に残ったのは最後の逆転手段を失ったでくのぼう。
 これもまた、万全の策を用意していたリベリスタの完勝だろう。


「――っう、あ……」
 苦悶の声はスペードのもの。何事かと目を向けたロイヤーの瞳が大きく開く。
 そこにいたのは一般人の女性であったはず。けれど、今そこにある女性からは先程まで感じなかった大きな力を感じる。これは自分が経験したのと同じもの。これこそが、革醒!
 ――実際は演技をしていたスペードが自身の力を隠すステルスを解いたのだけれど。
「きっと、貴女が力を分けてくれたんだと思う」
 そういうこともあるのかと。ヒーローに目覚めた自分がいるのなら、ヒーローによって目覚めるヒーローもまたいるのだと!
「この力の使い方を、教えてほしい」
 弱々しかった瞳はすでになく。そこにあるのは決意の瞳。
 守られる命は勇気と決意を得て、守るヒーローへと転じるのだ!
 ――そう。
「アナタは」
「私は」
『ウェスタンヒーロー!』


「トドメいくわよ!」
 ミリーが叫ぶと左右から土竜へと向かう二人の影。
「負けられっかよ!」
「勝つのは俺達だ。そうだろう、指揮官!」
 翔太と優希の渾身の一撃が土竜を突き貫く。
 痛みに絶叫する土竜を、正面からミリーの拳が叩き上げた。

「硝煙夜に溶けて荒野と化し」
 騒がしい夜は終わりを迎える。
「荒野照らす刀の煌きは月の如く」
 ヒーローある限り晴れない闇はないのだ。
『悪党悪鬼打ち砕く西方の風』
 ロイヤーの日本刀とスペードのCortanaと名付けられた欠けた剣。二振りの刃が剣閃を描く。
『推参!』
 振り抜かれた剣――そしてドヤ顔。
 背中を向けた後ろで、地に沈む大きな音が勝利の証。


●エンディングフェイズ――ヒーローになりたい!
「とても立派でしたよ。指揮官としても、ウェスタンヒーローとしても」
 弾むスペードの声に、ロイヤーはヒーローならば当然デースと満足気。
「貴女はただのヒーローではなく、さらに他人を導くこともできる存在。それはきっとウェスタンヒーローさえ超える……スーパーウェスタンヒーローですねっ!」
「oh Super! ではアナタが今日からワタシの代わりにウェスタンヒーローですネー」
 ちょっと調子づかせすぎな気もする。

「せっかく日本に来たんだし。どうだ、その力で俺達を今回みたく導く役目を担ってみないか?」
 翔太の言葉に頷き優希が続ける。
「今後もその力で俺達アークの力になってほしい」
「ヒーローは弱きを助けるものだろう?」
 アウラールの言葉に、ヒーローはくすっと笑った。


『クリーク! クリーク! クリーク!』
 チャイカが用意した『カリスマっぽい人が軍勢を引き連れている』アニメの動画をタブレットPCで流しながら――
「我々アークはヒーローを探しているんです。未来を予知し人を動かせる貴方のようなヒーローを! やってみませんかカリスマなお仕事!」
「ロイヤーさんのお力はフォーチュナと呼ばれるものです。アーク最強はフォーチュナなんですよお」
 識り、対応出来る力。それは限られた者だけが持つ圧倒的な強さだとイスタルテは微笑んで説明した。
「あんたはオレ達に指示を出すべきコマンダーだ。サムライと言うよりは……そう、ショーグンだ」
 福松の言葉にジャパニース・ショーグン! と瞳を輝かせるロイヤー。どうやら戦国好きらしい。
「マァ、すでに決めちゃってマース」
 言葉は笑顔と共に。紡ぐ言葉は皆の期待通りのもの。
「あ、この動画後でDVDに焼いて届けてくださいネ」
 余計な一言もついて。

「まあなんだ、楽しい仲間が増えるのは純粋に嬉しい事だよな」
 アウラールの言葉に一同頷いて。
「これからはロイヤーさんって、お呼びしても宜しいでしょうか……?」
「これからはあんたがミリー達をひっぱるのよ」
 スペードの、ミリーの言葉に。
「オウイエス! 皆ヒーローの友達ネ!」
 ヒーローは満面の笑顔で答えたのだった。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
何にもできなかった!

えー、皆様の作戦は完璧でした。
ロイヤーが常に正面に立つことも読み取り、様々な状況に対応できる陣形を組んだこと。
一人一人が作戦の意図を読み取り最善の行動をとっていること。
何一つ文句なし。
問答無用の大成功です。

ウェスタンヒーローはアークへと参加しました。
これからも末永くよろしくお願いしますね。

それではご参加ありがとうございました。