●巨大水槽の端っこって壁に立てかけられている存在、それがマンボウ。 色黒サーファーが日課の波乗りを終え、浜辺を出ていく。 ふと気配を感じて振り返るとそこに――! なにもいない。 首を傾げつつ着替え、アロハ柄のパンツをき、アロハシャツを着こむ。ついでに星形のサングラスもした。本人的にはこれスゲーナウいと思っていた。 彼はラジカセ(ラジオが聞けるカセットテープレコーダー)を肩に背負い、ノリノリのサンバミュージックをかけながら鼻歌交じりに道をゆく。これもすげーナウいと思っている。 だがふと気配を感じて振り返るとそこには――! なにもいない。 首を傾げ、落ちそうになったラジカセを支え直してバス停へ。 バスの数が少ないのかしっかりした屋根付きベンチが設置されている。でもベンチはお年寄りと雨宿りする女子高生のためだけにあると思っている男はバス停看板の横に良い姿勢で立つ。 暫く立っていると、横にマンボウが並んだ。 ふんふーんとか鼻歌しながら、指パッチンとかしながらバスを待ち続ける男。 マンボウがゆっくりこっちを向く。 男はテープが終わったのでB面に入れ替えて再生ボタンをオン。 マンボウが身体を左右に揺する。 網タイツな美脚(ハイヒール着用)をこれみよがしにちらちらさせる。 そして男は圧倒的な気配を感じて、今度こそふりかえった。 イヤホンが外れる。 流れ出すサンバのリズム。 男は、喉の底から叫んだ。 「マンボゥ!?」 男はローリングソバットをくらい、海へ飛んで行ったと言う。 ●凄い勢いで水面から飛び出したかと思うと腹をビターンして死ぬ、それがマンボウ。 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はぱらぱらと『おさかな図鑑』を捲ると、マンボウのページを開いた。 「はい、これがマンボウさんですよ。横から見るとこんなに大きいけど、実は縦にはほら……とっても細いの。おかしいね」 「幼稚園児に語りかけるテンション、やめてもらってもいいですか?」 「あ、ごめんなさい。つい……」 ガハラさん咳払い。 「えー、マンボウのエリューションビーストが出現しました」 「マンボウ……」 一同は脳内で、海中をけだるく泳ぐマンボウを想像した。 「このように美脚が生えています」 「美脚!?」 脳内マンボウが浜辺より出現。ざばっと海中から上がってくる。 「通称陸マンボウ。かれはとても足が速く」 「足速いの!?」 スプリントダッシュで駆け出す脳内マンボウ。 「ジャンプ力もあります」 「跳ぶの!?」 脳内マンボウは次々とハードルを飛び越えると、最後にベリーロールで石垣を超える。 「戦場はこちら、バス停です」 「路上なのォ!?」 脳内マンボウは空中三回転捻りをするとバス停の横に着地。 ドヤ顔(マンボウ基準)でカメラ目線を向けた。 「あ、特技は蹴り技だそうですよ」 「マンボウなのに!?」 脳内マンボウがネリチャギでカメラさんを蹴り殺した。 「………………陸マンボウ」 何かに打ちのめされたリベリスタ達が、じっと地面を見つめた。 現実ってなんだろう。 リアルってなんだろう。 ガハラさんは笑顔になると、一同におさかな図鑑を手渡した。 「はい、がんばってマンボウさんやっつけましょうねー」 「だからそのテンションやめてくれませんか」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月26日(木)23:41 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●人によってはトラウマになりかねないアップ あなたが水族館でマンボウを見たことが無いなら、この先を読む前にググなりしてマンボウ画像を見ておいて欲しい。 きっと、今から言うことの重大さが分かって頂けるはずだ。 マンボウが外向きの円陣を組み、グラビアモデルのような脚をチアガールかってくらいリズミカルに振り上げながらぐるぐると周回していた。 「………………」 「………………」 恐怖と驚愕が混ざってホワイトアウトしたような目で男達が立っていた。 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)と百草・八千代(BNE003743)である。 一応状況だけでも見ておこうと陸マンボウ発生地点とされるバス停前にこっそりと近づいているのだが……。 「うわ、何アレ何!? エリューションパネェ! みんないっつもあんなのと戦ってんの!?」 「違うと言いきれねえのが悔しいが……まあ何だ、一般人の目に触れなかったのが不幸中の幸いだな」 水所恐怖症どころじゃ済まねえぞと呟く福松。 「と言うか、絶妙にダンサブルなのがムカつくな」 「ダンサーは決まって足運びが上手いからな」 微妙にズレたことを言う『愛の宅急便』安西 郷(BNE002360)。 「あれで足技使ってくるんだからなあ……だが、魚類がちょいと功夫積んだ程度じゃ俺に敵わないってことを思い知らせて――」 「美脚うらやま」 「今何か言ったか?」 「いいえェ?」 羽柴・美鳥(BNE003191)が愛想笑いと苦笑いの中間くらいにある顔で振り向く。 「ま、コレでも敵は敵。油断大敵ですねっ」 「そうだねえ。走るの見るの、楽しみだなあ」 ぽややん顔で呟く『悠々閑々』乃々木・白露(BNE003656)。 ふと、彼の頭上で豆電球が灯った。 「ところで、他の水棲生物も足が生えたりするのかな?」 「はあ、陸タコとか陸ウツボとか陸メガマウスとかですか」 「やめて!? 想像したらすごく怖そうだったからやめて!?」 あとこんなのシリーズ化したら手抜きだと思われるからやめて!? 動揺する八千代をよそに、『戦士』水無瀬・佳恋(BNE003740)が心の鉢巻を締めて気合を入れた。 具体的に言うと、胸を前に突き出すようにして、両手首を腰の辺りでぎゅっと絞る態勢をとった。ついっと目を反らす八千代。 「ふざけた容姿だからといって容赦する道理はありません! 神秘隠匿のためにも必ずやここで討ち倒しましょう!」 「アレを前に『神秘隠匿』とか言ってる場合じゃ無くない?」 一方、その後ろで包丁をしょりしょり研ぐ『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)。 「包丁にわさび……塗った」 「こっちはこっちでナチュラルに怖い!?」 「海系エリューションは、私の属性を脅かす……スク水的に」 「や、大丈夫だよ? 絶対被ってないよ?」 右へ左へせわしないツッコミを入れ続ける八千代。 そんな皆さんからちょっと距離を置きつつ、『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)は額に指を当てていた。 「どう考えてもおかしいでしょう? 全要素に突っ込みどころしかないじゃないの……これをマンボウと呼んだ途端全世界のマンボウが泣きますよ、全く。ともかくこんな生き物を残しておいたら精神に異常をきたします。一刻も早くこの世から抹消して……あの、皆さん聞いてます?」 くぅるりと振り返る彩花。 一応皆はその辺の茂みから顔だけ出して覗いていたわけだが、そんな彼等がピシリと硬直していた。 視線の先を見やる。 陸マンボウが扇状に開いてこちらをガン見していた。 「…………」 「…………」 沈黙一秒。 「「マンボゥ!」」 「うわ来たぁぉあぁぁ!!」 陸マンボウたちは一斉に飛び掛ってきたのだった。 ●マンボウのボディは耐圧性に優れている反面衝撃に弱い。なので表皮の寄生虫を振り払おうと水面から飛び出し脇腹ビターンした衝撃で死んだりする。 これまでのあらすじ! マンボウが! 跳んだ! 「「マァンボゥ!!」」 二匹の陸マンボウが軽やかに宙へ舞い上がったと思えば、華麗な360度キックを繰り出してくる。 「そう易々と――!」 「飛び越えさせねえぜ――!」 コンマ一秒差で空中迎撃にかかる郷と彩花。 二人はシンメトリーな半身姿勢を取ると陸マンボウの太腿に自身の膝を打ち当てた。 「あれはッ!」 「ここで解説!? だよね、チェインライトニングしてるだけだと本人が映えないもんね!」 「ちょっと黙ってて下さい!」 身を乗り出す美鳥と八千代。背景に走る稲妻(チェライらしさ)。 「テコンドーやサバットで繰り出す回し蹴りは足を斧に見立てて振り込みます。つまりああして斧の柄を抑えるようにしてやれば衝撃が最低限で済み、場合によっては……」 盛大に風を煽ぐ音と共に陸マンボウの身体がスイングされる。まるで動いても居ない相手を掴んで振ったかのような勢いだ。そこからの二人の動きは完全なアシンメトリーだった。 「動き回られると、面倒です!」 彩花は腰の辺りに添えられた相手の足を掴み飛び込み前回り受身と似たような動線で陸マンボウを地面に叩きつけた。 一方の郷は軽い膝トスで距離を開くと相手と位置を入れ替え、回転の勢いをつけてローリングソバットを繰り出した。 「ソニック――ローリングソバットオオオオアアア!」 距離をやや離して着地する二人。 そのタイミングに合わせて彩花は地面とサンドするような魔氷拳。郷は踏み潰すような踵落としを叩き込む。 「そして、ネリチャギャアア!」 「ちゃぎゃあ?」 郷独特の発音に首をかしげる八千代。 美鳥がここぞとばかりに眼鏡(今かけた)を光らせた。 「相手の大技を根元で潰すと言うことは、イニシアチブを完全に握ると言うこと。態勢を上手く崩せれば限定的にですが一方的な連打を叩き込めるというものです」 「あ、うん。解説終わった?」 一応ダメージを受けてるらしい郷たちに回復をかけつつ顔をあげる八千代である。 「これ聞いちゃっていいのかワケンネーけど、何でロリソバとネリチャギなんだ? サバットとテコンドー混ざってねえ?」 「語感……じゃないですかね」 ちなみに先刻郷が出したのは厳密にローリングソバットではなく跳躍三百六十度ヨブチャギというテコンドー技である。本人はあまり自覚が無いが、ソニックエッジをとにかくテコンドー技で出し続ける癖が彼にはあった。年代のせいかもしれない。 などとやっている一方で、残りの陸マンボウ三匹は地道に陸をスプリントダッシュで突っ込んで来ていた。 あんな脚してるくせに、膝から下をメインにして最低限の動作で走るという美しいフォームである。 「チィ、抜かせるか!」 正面で待ち構え、顔面(マンボウの顎部分)に無頼の拳を叩き込む福松。 「あれは――」 「おおっとまた来るか解説」 身を乗り出す白露。おこぼれ描写を強かに狙う八千代。 「足速いねえ」 「しねえのかよ!」 顔から倒れる八千代。 ぽやんやと笑う白露。 代わりに解説するが、福松はマンボウの勢いを殺すべく額を横にガッと擦るように殴っていた。これが人間相手だったなら、上あごを力点にてこの原理で脳をゆすり三半規管をバカにするという、走ってきた人間を倒すための殴り方をしていた。これがマンボウに効果があるかは不明である。 「すばしっこいがブロックは効きそうだぜ」 「分かりました!」 両手でしっかりと剣を握る佳恋。横目で梨音に呼びかける。 「私達も負けていられません。身体を張って押し留めますよ!」 「はいすぴーぃど……」 「聞いてます!?」 梨音は包丁(魚解体用の大きくて長いヤツ)を顔の前で水平に構えた。目がどんより光る。 「水族館から出てきた以上、人間の食料となる運命、今晩のおかずとして、孤児院に持って帰ってやる……」 「すっ、しょっ、ばっ、こっ……!」 突っ込みどころが多すぎて言葉に詰まる佳恋。 ひとつずつ言うと……。 水族館から逃げたわけじゃないでしょうに。 食糧にはなりませんよ。 晩御飯には大きすぎます。 孤児院にトラウマを持ち込む気ですか。 ……である。 などと言ってる間に陸マンボウは突っ込んでくる。 佳恋は剣を水平に持つと、エッジの先をつまむようにしてマンボウの衝撃を受け止めた。 この場合斜めに撫で切って勝手に倒れるように仕向けるというやり方もあるが、佳恋は初心者なりに堅実な受け止め方をしたのだった。性格が出たのかもしれない。 となれば後は足の踏ん張り合いである。 「相手の攻撃を受け止めるのも前衛の役目。そう簡単にパスしてもらっては困ります……!」 お腹に力を入れ、踵を杭のように地面につっかえる。 一方で梨音はどうしていたかと言うと。 「めっさつ」 姿勢を低くして包丁を低空スイング。容赦なく脚の健をぶった切ると、失速したマンボウの側面んでコンパクトにスピン。回転の勢いで片目に包丁を突き刺した。 冒頭のチャプターで言ったと思うが、包丁には山葵が塗りつけてある。 山葵には揮発性の痛覚刺激剤が含まれており勿論水に溶けるのも早い。唐辛子や塩に比べ数十倍の痛みが走るのである。 ……みたいな解説を加えるまでもなく、陸マンボウはのた打ち回った。 子供特有のむちっとした脚(裸足)でマンボウを踏みつけ、梨音は包丁を逆手に持った。 「慈悲は無い」 サディスティックな微笑みに、陸マンボウだけでなく佳恋までも震えあがったと言う。 ●マンボウは稚魚の頃は身体がトゲトゲで覆われ手裏剣みたいなことになっている。 さて、序盤からかなりのリードで進んでいた対陸マンボウ戦。その後衛チームはどうなっているのか。 蹴倒された八千代が頬にヒール突っ込まれてぐりぐりされていた。 「あじゃまえす(ありがとうございます)!」 「…………」 「…………」 ブロックが抜かれた、とか言うつもりはない。 いわゆるお約束である。 「ヒュー! 破れタイツーゥ! ブーラボーゥ!」 「マンボウ!」 無表情のマンボウにひたすらスタンピングされながら八千代は嬉しそうにビクンビクンしていた。 人間の喜び方じゃなかった。 額に手を当てる美鳥。 「ちょっと通してみてと言われたからタッグ攻撃のチャンスなのかと思いきや……踏まれたかったんですか?」 「我々の業界ではご褒美ですから」 「澄んだ目で言わないで下さい!」 職業柄(?)そう言う人達に免疫のある美鳥だったが、足の生えたマンボウに踏まれて喜ぶ奴はいくらなんでも知らなかった。なのでドン引きだった。 せいっと声をかけて八千代を蹴り飛ばす。あじゃまえーすと言いながら転がって行く彼を無視し、マンボウにマジックミサイルを連射した。 「白露さん、トドメ!」 「うん。痛いけどごめんね?」 横倒しになったまま起き上がれないのかビチビチもがく陸マンボウ。そこへ手を翳してマジックアローを連射。 陸マンボウは血煙をあげて消滅した。 「はい、終わったよー」 笑顔で振り向く白露。美鳥は額の汗を拭った。 「喜んで蹴倒された時はどうしようかと思いましたよ八千代さん?」 「え……ああ、うん。早く帰らない? 脚の生えるマンボウとか、マジ萎える」 「テンションが違う!?」 などとやってるその一方。 「一網打尽とは、このことです!」 彩花はガントレットを顔の高さまで掲げると、紫電を纏わせながら変形。ブレードを展開してクロー状に変えた。 「壱式迅雷!」 腰のスイングと共に腕を大きく振る。放射状に放たれた雷が陸マンボウへ襲い掛かった。 古今東西電気ショックを食らった魚と言うのは一様なもので、ビクンと跳ねてすっころぶものである。 「ここまでです」 佳恋が転んだマンボウをまたぐように立ち、剣を上下逆さ(中世の騎士が倒れた相手の心臓を正確に貫くための持ち方)構える。 「どうして貴女が生まれ、なんでこんな姿になったのかは知りません。私にできることは貴方を倒すことだけ……必要なら、恨んでください!」 タイツとハイヒール履いた美脚のマンボウにかけるにはあまりにシリアス過ぎるセリフを吐き、腹らしき場所に剣を突き立てる。 マンボウは複雑な悲鳴を上げて絶命した。 「ここまでです」 梨音が転んだマンボウをまたぐように立ち、包丁を上下逆さ(サスペンスドラマで発狂した女が被害者を滅多刺しにする時の持ち方)で構える。 「どうしてあなたが食べられ、なんで食用になったのかわからない。私にできることはあなたを捌くことだけ……必要なら、味付てください!」 タイツとハイヒール履いた美脚のマンボウにかけるにはあまりに食いしん坊過ぎるセリフを吐き、腹らしき場所に包丁を突き立てる。 マンボウは複雑な悲鳴をあげて絶命した。 同じような攻撃をしてるのになんでこうも違うのか。 福松は帽子を目深にかぶって思考を放棄した。 こっちはこっちで残りのマンボウを相手にしなきゃならんのだ。 「所でよう」 リボルバー弾倉を開いて空薬莢を捨て、予めセットしたホルダーから装弾。手首を振ってガチンと弾倉を戻す。 「なんて美脚自慢の奴はこぞって反復横跳びで弾丸避けるんだよ面倒なッ!」 「マァァァンボゥ!」 踵(ヒール)を狙ってばかばか銃弾を叩き込む福松。 陸マンボウは高速反復横跳びで弾丸を回避した。 地面を物凄い勢いで跳ねていく弾。 陸マンボウは途中で足を揃えぴょんぴょんとバックステップ。軽く助走をつけたかと思うとベリーロールじゃんぷを繰り出した。 彩花や郷のように空中戦で落とせるか? 福松はすぐに無理だと判断した。地に足付けるのが彼のスタイルである。だが今はやっておかねばならない時だった。 「見よう見まねか……やって出来ないことは無い!」 垂直ジャンプ。 個人的にはバスケットボールのダンクシュートをイメージしていたが、高さの問題で身体をぴんと伸ばし、やや仰け反った姿勢から身体のバネを使って叩き返す他なかった。翼の加護を受けているとは言え移動速度は一緒なのだ。 だから正確には、バレーボールアタックと言っておくべきだろう。 「陸に上がったのがお前らの敗因だ、悪く思うな!」 「マンボゥ!?」 バチンと弾き返され、陸マンボウは地面に転がった。 溶けるように消滅を始める……のを待たずに、陸マンボウを別のマンボウが踏みつけた。 両足によるスタンプである。マボォウとか言う奇妙な悲鳴を上げて破裂する陸マンボウ。 が、踏んだ方はそれを気にしている暇は無かった。 「ソニック――ネリチャギャアア!!」 助走をつけた大股のステップから踵落としを繰り出す郷。 陸マンボウは身体を半歩前に出すことでかわすと、動きの小さなローキックを繰り出した。 たかがローキック、されどローキック。今繰り出されたのは利き足の脹脛を踵でダルマ落としするような、パンチで言う所のフックに当たる蹴りだった。 思わずバランスを崩しそうになる郷。だが踏みこたえるよりもあえて転がって衝撃を逃がす方を取った。 コンマ五秒前まで寝ていた地面に陸マンボウのヒールが突き刺さり、アスファルトを抉り砕く。 郷は転がった勢いのままブレイクダンスの動きでぐるんと起き上がると、構える間もなくローキックを繰り出す。陸マンボウと郷の間でローキックが相殺。利き足を入れ替え今度は相手の腰に鞭を打つようなサバットキックを繰り出した。両者再び相殺。 郷と陸マンボウの目が一瞬鋭くなる。 身体を僅かに反らし、膝を高く上げるような構えをとると、二人は鋭い伸びによってゼロ距離ハイキックを繰り出した。 頭の高さで交差する脚。 「へっ、やるじゃねえか……ちょっと本気、出しちまおうかな!」 まさかのガチ戦闘シーンである。 二人(?)は片足跳躍で1mづつ距離を取り合うと、一度両膝を深く曲げた。 「いくぜ、ソニック――」 「マンボゥ――」 クラウンチングスタート、ではない。初動で既に跳躍し、空中で前方向に反転。片足の靴底を叩きつける蹴り。つまり。 「「キイイイイイイイイイイイイイイイックッッッッァ!!」」 眩い光が走った、と思って頂きたい。 「うっ」 目を瞑る彩花達。 実際に光りはしなかったし、あまりのミスマッチなガチっぷりに目を覆いたくなっただけかもしれないが、とにかく一度閉じていた目を開いた。 そこには、スライディング態勢で着地する郷と、体の真ん中に穴を開けた(どうやってだろう)陸マンボウが存在していた。 「マンボウは、食べる気しねえな」 「(決め台詞!?)」 そして、陸マンボウは爆発四散したのだった。 かくして、凶悪なエリューション陸マンボウは倒された。 だが忘れてはいけない。 彼らに続く陸戦あまんちゅシリーズがもしかしたらまだ居るかもしれないということを! 白露が『まだいるの?』とか言ったが為に本当に出てくるかもしれないことを! その時にこそ、また会おう。リベリスタ達よ! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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