●ねこねこじゃらしねこじゃらし 草原を女の子がスキップしている。 風に草花は揺れ、育ったばかりの猫じゃらしがふさふさと身を傾けている。 鳥のさえずりと少女の足音が重なり、あとは風の音だけがしていた。 少女は鼻歌を初め、上機嫌で野を歩くのだ。 そんな時ふと、背後を何かが駆け抜けた気がした。 反射的に振り返る。 何も居ない。 少女は口をとがらせて前へと向き直った。 その時である! 「ジャラァシッ!」 1m程の猫じゃらしが目の前に立っていた。 そう、立っていたのである。手とか脚とかが不自然に生えた猫じゃらしである。っていうかこれもう猫じゃらしじゃねえよ! などと思っている間に、周囲からわらわらと大量の猫じゃらしが湧き出てきた。少女の膝をかっくんすると、肩や顔に飛びついて押し倒す。 そっからさきはもうアダルトかつエロスかつエンジョイ・アンド・エキサイティング――と思いきや? 「わ、わっひゃ、わひゃひゃひゃひゃ!」 少女は全身をひたっすらくすぐられまくったという。 それはもう、死ぬほど笑ったという。 ●ねこじゃらしは地方によって大きさが違う 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が猫じゃらしを振っていた。 右にひょん。 左にひょん。 それを見たソニーの犬型ロボットが無駄にお手をしていた。 使い方を完全に間違えている。 あれ、今もまだ稼働してるのかなあ。 イヴは漸く集まったリベリスタ達へくぅるりと振り返ると、猫じゃらしを顔の横で振った。 「これ、人に使うとすごくくすぐったい」 し……知ってます。 なんでもとある草原地帯でエリューションゴーレムが発生したらしい。 その辺にある猫じゃらしが『ジャラシィ!』とか90年代ロックみたいなことを言って飛び上がり、むくむく1m大に巨大化したかと思うと通りがかった人間に飛びついてくすぐりかかるという悪逆非道(?)なマネをしているらしい。 さっきのイメージ映像では女の子だったが、毛深いオッサンややけに全身メタルメタルしたリベリスタさんですらくすぐり地獄の前に屈してた。 どうやらこのくすぐり自体がエリューション能力らしく、痛覚遮断しようが何しようがくすぐったいもんはくすぐったいらしかった。ちなみにイヴはこの部分を『踊らにゃそんそん』と説明していた。何のことやら。 「小柄ながらも20匹。適当に群がって適当にくすぐるわ。このまま放って置けばくすぐり地獄の被害者が次々生まれてしまう……というわけで、後は頼んだわね」 ねこじゃらしをしゅぴーんと立てると、イヴは若干イイ顔で言ったのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月23日(月)23:53 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ねこじゃらしですらエロくする……それがアーク! 突然だが『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)の表情アップを想像して頂きたい。 「ねこじゃらしなんてそんなものに、興味なんか……なんか……」 さて、ここで画角を引いて見よう。 ティセは目を大きく開き前屈体勢で、ピンと立てた尻尾とお尻が小刻みに揺れていた。 「ふっわふわー!」 「にゃっほいじゃー!」 ティセと一緒になって『老いて尚盛ん』更科・権太(BNE003201)も大空に跳躍。 群れているE・ねこじゃらしへと突っ込んで行った。 「じゃらしぃー!」 「ジャラシィー!」 ねこじゃらしに猫パンチを叩き込むティセちゃん(21)。 「じゃらしぃー!」 「ジャラシィー!」 ねこじゃらしにかぶりつく権太ちゃん(71)。 「…………」 顔から飛び込みクンカクンカスーハースーハーしている猫二匹を、『第21話:偽者現る!!』宮部・香夏子(BNE003035)は乾いた目で見つめていた。 「香夏子は……働かない子なのです……」 崖で殺害の動機を語る真犯人みたいな口調でこう語ると、香夏子は拳を握った。 「以前は香夏子が頑張ってるみたく見えてましたけど、そんなことないのです。巷では『働かないサギ』って呼ばれてるらしいですけど、そんなこと無いのです。だから、だから……あ、皆さん楽しそう」 ぼーっとした顔でふらふらねこじゃらしに近づいていく香夏子。しかし途中で首を振って足を止めた。 「ダメです! 本日香夏子は働かない宣言したのです! 流れに乗ってツッコミ入れたりしないのです! プレもダラダラする行動だけで600字埋めて薄くもないのにペナルティ喰らったりするのです、経験値だけ美味しくいただく子になって世間からバッシングを浴びるのです!」 「快楽殺人に憧れる小学生か」 「さあ、小梢を姉さんを見習って……!」 きゅいっと振り向く香夏子。 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)は静かにメガネに手をかけていた。 「なんかね、魂の奥でね、何かが目覚めようとね、してるのね」 「お姉さん何でモノマネに失敗したつぶやきシローみたいな口調に?」 メガネを颯爽と外す小梢。 その瞬間背景にバラが舞い風が吹き荒れ雲は流れ洗濯物は乾き大量のカラスは空へと飛び立ち子供が泣く。 「香夏子ちゃん、ついに私も本気を出す時が」 「小梢お姉さんが本気ニィー!?」 「……やっぱ出さない」 眼鏡再装着。 一生懸命仕事していた背景さんがカキワリごと撤収して行った。 うっかりツッコミ入れてしまった香夏子は顔からズッコケた。 さて、本気を出さないと言えばこの人。『出力セーブ中』ミリー・ゴールド(BNE003737)。 あと依頼二個くらいで本気が出ると言われているが、心中の程は如何なものだろうか。 「無理無理無理無理怖いし大きいし怖いし、醜悪だし、ジャラシィ!? 嫉妬!? 嫉妬なの!?(最後は笑って死にたいって言うけど、この死に方はごめんだわ!)」 「あれ、本音と建て前逆転してね? それとも理想と現実?」 カメラを回していた『やったれ!!』蛇穴 タヱ(BNE003574)がうわーって感じの表情で呟いた。 「超逃げたい、逃げたいけど見られてるし撮られてるし、どどどどうしよう!(小さいころはユラユラしてて何考えてるか分からないのが苦手だったけど、今はもう平気よ!)」 「イイヨイイヨー、その焦った表情イイヨー」 「クールに、クールにならなきゃ! さささ三分間待ってやるわ! 三分って……何秒!? さんびゃくくらい!?(日本の風習に合わせて三分間だけ待ってやるわ!)」 無駄に顔を手で覆って『いーち、にーい』と数えはじめたミリーをカメラに収めつつ、タヱはぺろりと舌なめずりした。 「ククク、変態揃いのアークのこと、この老若男女がくんずられつほぐられつしてる映像をオクれば高値で買ってくれる筈。タイトルはどうしようかなー……『じゃれ堕ち』、これで行こう!」 今、アークに新たなフェチズムビジネスが生まれた。 ところで。 エリューションが出ているにも拘らず一向に戦闘シーンに突入しない、などと思っていは居ないだろうか。 そんなことは断じてない、と声を大にして言わせて頂こう。 何故なら今、『愛の宅急便』安西 郷(BNE002360)が必死の形相でEねこじゃらしと死闘を繰り広げているからである。 「俺は知ってるぜ、こういうの程なめてかかると大怪我するんだ。重傷負ってるだけに、怪我をするわけには行かない……そう」 集中線をセルフで表示する郷。(※クリア下敷きに定規で放射状の線を書いて持ち歩こう! これでいつでも強いられるぞ!) 「無事で帰ることを、強いられているんだ!」 今日一番のシリアスフェイスで言い切った。 原作読んでる人にとっては、なんでこのシーンばっかフューチャーされんのか不思議でならないのだろうけど。 閑話休題。 「うおおおおおトップスピーィィィドッ!」 「ジァラシィ!?」 郷はEねこじゃらしの間をジグザグに駆け抜け、次々と自慢のキックを繰り出していった。 正面にスライドインしてくるじゃらし。 「ジャァァッラシィ!」 「甘ぇ!」 連続で繰り出されるじゃらしヘッドバッドを首の動きで回避していく郷。 相手の頭を見ているのではない、相手の目を見て避けているのだ。 「勝てる、こうして一生懸命戦っていればノーダメージで完封勝利も夢じゃない……なのに」 じゃらしを蹴り飛ばしつつ、天空に指を突きつける郷。 「なんなんスかそれはぁぁぁぁぁぁ!!」 「……ん?」 『重性欲姫』雲野 杏(BNE000582)が空に浮いたまま寝そべっていた。 日曜日になると家族サービスもせずに和室に寝転がって野球中継をぼーっと見ているお父さんみたいな、もしくは家事は忙しいのよと言い張って和室でせんべい齧りながら茶啜ってるオバハンみたいな、そんな寝そべり方だった。 手には有名ブランドのビール缶が握られており、口にはポテチを咥えていた。 なぜか器用にすいすい飛びながら、空をふわふわ飛びながら追ってくるじゃらしの群から逃げ続けていた。 「って言うか、え? なんで? チェインライトニングしてくれるんじゃなかったのか? なんでビール飲んでんだ!?」 「三分間待ってやるって言ってたし。あとこれゼロフリーのヤツだし」 「アルコールの有無って問題じゃねえよ! 範囲攻撃でこいつらぱぱっと薙ぎ払ってくれよ! 怠けるなよ!」 「それは、ちょっと、アタシにも事情が……」 切なそうに目を伏せる杏。 何か特別な事情があるのだろうか。郷はちょっと反省した。 「普段は真面目に依頼の要点をついてるくせにいざフラグ立った女の子がかかわった途端センスフラグにガチ頼りして実質ろくな行動を起こさずにフラグを一本へし折った人に言われても……」 「ねえそれ誰のこと!? 俺へのバッシングなの? それとも優しさからくる忠告なの!?」 「なんだろう、口が勝手に。酔い回ったのかしら」 「ノンアルコール! それノンアルコール!」 「本当は、地面でただもがいてる人たちを眺めて面白がりたいだけなの」 「それが本音かあああああああああ!!」 郷は全力で叫びつつ、じゃらしの群に押し倒された。 ●『くすぐりの刑』が実際シャレにならない拷問な件について くすぐり。 一言にこう述べてもそのシチュエーションは様々である。 女の子同士が脇腹を突き合ってジャレジャレしている様や、母親が子供の足の裏をくすぐってあやす様など、大抵が微笑ましいものではあるのだが……そんな中、手足を押さえつけられ嫌がる相手を強引にくすぐり続けると言う、一見途轍もなくエロい行為が、今まさに行われていた。 さあ、想像力のメーターをMAXにして、今から描写するできごとをイメージして頂きたい。 そして本能のままに呟くのだ。喉の奥から出た言葉を。 さあ――。 筋骨隆々の権太くん(71)が涎をまき散らしながらのたうっていた。 「らめぇー! うひゃひゃひゃひゃひゃあひひひひひひあひぃーっあひひぃー! くひひくひゃひゃひゃ! しょんなとこはだめなのじゃぁ! らめなのじゃぁ! うぇっひゃひゃひゃひゃあひひひひふふふふふふひぃー!」 「だ、騙したなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 タヱが虚空に向かって絶叫した。 カメラは録画状態になっており、既にタヱは複数のねこじゃらしに群がられている。 「ひーっ、ひーっ、はひー! くしゅぐったいよぉ……やめれぇー、こしょっこしょしないでぇー、いうこときくからー! ペロペロします、ペロペロしますからー!」 何のトラウマが目覚めたのか、タヱはビクンビクン言いながら草原の上をのたうっていた。 本人いわく演技らしいのだが、ここまで人間捨てた顔する演技と言うのも珍しいものである。凄まじく本気臭かった。 彼女の向こうでは、くすぐられ尽くして悶絶死したのか、権太があられもない姿で息絶えていた。一応死んではいない。だが重傷である。 こうして無理矢理くすぐられたのは何も彼等二人だけではない。 「ちょ、やめ、にゃはは、ごめんなさいごめんなさい、許してー! 助けてー!」 ティセもまた、押し倒されて古い15禁ゲームみたいなことになっていた。 要するにわらわら状態である。 でも何が恐ろしいって、さっきからもうトイレ行きたくてしょうがなくって、このままじゃ15禁どころか18禁……ディープさから言ったら25禁レベルに達する可能性すらあったのだ。 「にゃはははははははは! た、助け、にゃひゃひゃひゃひゃひゃ! 駄目無理、もう無理、ト、トイ――!」 悲痛な叫びをあげて手を伸ばすティセ。 そこには。 「うわー。きゃー。くすぐったーいー」 読み上げソフトでも使ったのかってくらいの棒読みで、小梢がじゃらしーずに捕まっていた。 表情はびっくりするくらいにドライ。 目もどことなく死んでいた。 「くらえー」 へいやーと言って拳を振る小梢。へにゃへにゃと繰り出された拳が当たり前のように空を切る。 「あうー、あたんないー」 「…………」 ティセはこの時、自分の社会的死亡を確信した。 そしてティセの目からハイライトが消え……。 ――暫く権太(71)のアヘ顔ダブルピースをご覧ください――。 「ダメージが無いからいいけど、くすぐったいなー……ん?」 うつ伏せ状態のまま、鼻をくんくんと動かす小梢。 視線の先には、笑顔のまま硬直したティセがいた。 「…………」 「…………」 「…………」 「ぱーふぇくとばりあー、りたーん」 小梢は全てを無視してパーフェクトガードをかけ直した。 「ふふ、そろそろ出番のようね!」 目を光らせて飛び込んでくるミリー。 長いツインテールを翻すと、花束の形をした鈍器を振り上げた。 燃え盛る花束。 「こ、こここのもんどころがめにひゃー!」 メニヒャー、享年1984。イタリア人考古学者。嘘。 ミリーは大量のじゃらしに群がられ、一瞬で押し倒されたのだった。 「そんなー! 前半の出番が少なかったのはここで大活躍するフラグだと思ったのにー!」 「あれだけ長セリフを喋ったら出番メーターもガンガン減るわよ」 杏が腕組みしながら地面に降りてきた。 ちなみにビール缶とじゃがりこは頭上でタワー状に鎮座していた。 「さあ単独ライブの始まりよ!」 などと言いながらチェインライトニングを辺り構わずまき散らす杏。 まさかの全方位ぶっ放しである。 「う、うわー! こっちにまで来たー!」 尻尾にビリビリ来たおかげで意識(?)を取り戻したティセが地面を跳ねまわった。 「あれ本当にノンアルコールだったの!? 本当に酔ってないの!?」 「あ、生きてる人はバックダンサーってことで」 「途中までポテチ食べてた奴にそんな目立ち方許せるかぁー!」 稲妻をしゃがみ回避(できるのかなあ)して郷が叫ぶ。 杏は面倒くさそうにポテチを二枚重ねにして口に咥えた。 「はい、アヒル」 「おちょくってんのかテメェ! ほぐお!?」 キレて立ち上がった郷が稲妻にぶち抜かれて転がる。 転がった所で、無表情の小梢を目が合った。 頭がアフロになっていた。 「…………」 「…………」 沈黙する二人。 そんな彼らの間を、和風厚底サンダルみたいな靴が遮った。 香夏子である。 「あれ、香夏子ちゃん無事だったの?」 「お陰さまで、随分サボれました」 「何やり遂げた風に言ってんだよ。って言うかこの位置からだとお前浴衣の裾……」 「イヤーッ!」 「アエェェェェェ!」 足に沿って視線を上げようとした郷は側頭部を踏まれた。 「そろそろ、バッドムーンフォークロアぶっぱの時間ですね」 「え、今『ぶっぱ』て言った!? 味方認識パスるって言った!?」 「本気出さないですけど、香夏子やる気ないですけど、本気出さないですけど」 「いや、そんな念を押されても」 「イイヤーッ!」 「アエェェェェェ!」 草原を覆い尽くすバッドムーンフォークロア。 元々か弱いじゃらし達が、全力で駆除スキルをぶっぱする杏や香夏子に叶うはずが無く、ものの三十秒で一斉に片付いたのだった。 ●ねこじゃらし……じゃらし……。 アヘ顔で痙攣する権太(71)。 その周囲で、アフロになったり焦げたりしつつティセや小梢がころころ転がっていた。 その原因の一旦(というか半分以上)があるにもかかわらず、杏や香夏子はどこ吹く風。草原を撫でる風に髪を揺らしていた。 「今日は風が騒がしいわね」 「でもこの風、少し泣いています」 「おい誤魔化すんじゃねえよ」 二人の肩を叩く郷。アフロヘア。 その足元では、ミリーとタヱがビクビクしながら転がっていた。 「いつか……いつか、真価を……発揮するから……」 「今日の様子見る限り、それ無理なんじゃねッスか?」 「……えいっ」 タヱが手放したカメラの映像を再生するミリー。 『ペロペロします! ぺロぺロしますからー!』 「うわーんみんな嫌いだー!」 そらから少なくとも一日は、ねこじゃらしを見るたびにゾクっとする癖がついたと言う。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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