● アーティファクト『スカル・ブレス』 髑髏を象ったデザインの装飾が施された銀色のブレスレット。 装着者の身体能力を向上させ、髑髏の仮面が特徴的な外骨格を構成する機能を持つ。 そんな代物を普通の中学生である鉄平が手に入れたのは本当に偶然からだった。 手に入れたその力を彼は、持ち前の正義感から悪事に使おうとはせず。 正義の善行の為に、人々の平和の為に使う事を決めたのだった。 そう、其れがこの何とも面倒な事件の始まり。 ● 「正義の味方が出たわ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタ達を見ながら言う。 正義の味方。 結構な事じゃないかと集まったリベリスタ達が思う。 「そう、結構な事なんだけどね」 其の正義の味方が、やり過ぎてさえいなければ。 イヴが深くため息をついた。 「正義の味方、鉄平君というのだけど何処で拾ったのか、アーティファクトを持っててね。 其れはもう特撮ヒーローみたいな格好になって、色々とやらかしてるの」 例えば、ポイ捨てした人を思いっきりポイッてしてみたり。 例えば、万引き犯を捕まえる為に店を滅茶苦茶にしてみたり。 小さな親切、余計なお世話とは良く言ったもの。 破壊器の力を制御出来てない彼は、正義を為そうとして逆に迷惑をかけてしまう。 なんて――不幸。 ただ、皆の為にと思ってやっただけだというのに。 やればやるほど、周りの人の迷惑になってしまうのとイヴは言う。 「貴方達にお願いしたいのは二つ。一つは鉄平君を説得し、アーティファクトを回収する事。 彼も周囲に迷惑をかけたい訳じゃないし、貴方達がちゃんと話せば解ってくれると思うの」 好きで周囲に迷惑をかけている訳ではない。 だが、だからと言って折角手に入れた正義の味方になる力。 ただただ、無理矢理に渡せと言われても渡す事はしないだろう。 場合によっては、戦闘になる可能性がある事も考えなくてはならない。 リベリスタ達の説得テクニックが問われていると言えるだろう。 「もう一つ、これは場合によっては鉄平君を説得するジョーカーに成りうるかも知れない」 彼を説得するジョーカー、つまり切り札に成りうる事。 その言葉にリベリスタ達が、大きく期待を寄せる。 「余計なお世話なんかじゃない――本当の正義の味方になれるチャンス」 イヴの話によると丁度今夜、巨大な蜘蛛の姿をしたE・ビーストが1体。 彼が毎晩変身ポーズを練習している深夜の公園に出没するのだという。 成程な、と勘の良いリベリスタが頷いた。 要は、アーティファクトがある間に、最後に1回くらい正義の味方をさせてあげればという事。 そうすれば彼も満足して、アーティファクトを渡してくれるかも知れない。 だが、其れも良い事尽くしとは行かない。 幾らアーティファクトに守られているとしても、彼は只の一般人の中学生なのだ。 最終的にどうするかは、やはり現場の判斷に委ねられるだろう。 「それじゃあ……アーティファクトの回収と、E・ビーストの撃退の2つ」 頼んだぞ、正義の味方達よ! そう、恰好良く決まったポーズを取りながらイヴはリベリスタ達を送り出したのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ゆうきひろ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月22日(日)00:15 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 深夜の公園。 普段は人通りも殆ど無い其処に今はしかし、一人の少年が我がもの顔で居座っていた。 滑り台の上に仁王立ちする彼の名は、鉄平。 「よし、今日も華麗に変身ポーズを練習するぜ!」 周囲を見回し、誰もいない事を確認した鉄平が妙に気合の入った表情へ変わる。 「右腕を腰に回して、左腕はこう斜め上に伸ばしてと」 TVで見た特撮ドラマのヒーローを真似るように、変身ポーズを決めていく。 「このまま今度は円を描いて」 斜め上へと伸ばされた左手を、今度は、そのまま円を描く様に右斜め上へと移動させる。 「変……身ッ!」 掛け声と共に掲げた左腕を腰に戻し。 今度は腰に置いていた右腕を左斜め上へとビシッと伸ばす。 正しく、世に言う特撮ヒーローな変身ポーズが、其処にはあった。 「くぅっ!決まったぜ!いやぁ、俺ってかっこいい!」 誰に言うでもなく自画自賛しながら、何度もポーズを取り直す鉄平。 そんな彼に。 「わー、かっこいいです!」 突如、何処からか拍手と共に声がかけられた。 「かっこいいって言って貰えた……ってええッ!?」 ガッツポーズを取った直後にそのままの勢いで突っ込む。 彼の眼の前には、桃色の髪の少女。 リベリスタの1人――『もそもそ』荒苦那・まお(ID:BNE003202)。 「あ、突然ごめんなさい。やもりさん探してたらここに着いちゃいました。まおは、まおです」 ぺこり、とお辞儀をしながらまおが鉄平に微笑みかける。 「ま、まおちゃんか。驚いたなぁ、全然人が居るって気づかなかった。っていうかやもりって」 ツッコミが多いお年ごろ、鉄平君。 そんな鉄平君のツッコミを軽くスルーして。 「もしかして、ポーズの練習をされてますね」 それだったら、まおも混ぜてもらってもいいですかとまおが鉄平に提案する。 どうしようかな、と悩む鉄平。 其処に。 「興味深いポーズだ……どんな想いが込められているんだい?」 「そりゃ勿論、人々の愛と、平和と、自由と、正義とってまた誰かきた!?」 突如として、後ろから飛んできた問いかけに答えながらまたこの反応。 グルンっ! と物凄い勢いで後ろを振り向いた鉄平。 彼の眼に最初に映ったものとは……! 「ハエトリグモ……?」 ハエトリグモだった。 「これは帽子だね」 ハエトリグモを模した帽子を被った『鷹蜘蛛』座敷・よもぎ(ID:BNE003020)が其処に居た。 「それで、君も変身ポーズに興味があるの」 そう、問いかける鉄平に。 「私は今までこういうものに縁がなくてね、よかったら教えてはもらえないだろうか」 よもぎが首を縦に振りながら、そう答える。 「よし、一緒に練習するか!」 こうして、奇妙なポーズ特訓が始まった。 ● まおとよもぎが鉄平と接触を開始した同時刻。 公園の茂みの陰に隠れ鉄平達の動向を見守る者達が6人。 「これがアークでの初任務、か。任務と呼ぶからには当然本気でやるとも」 茂みの中から公園で変身ポーズを取り合ったり、 特技を見せ合う鉄平達を観察しているのは安羅上・廻斗(BNE003739)だ。 正義の味方に憧れるのは、子供の内だけだろうと彼は思う。 「直ぐに現実を知る事になる。が……子供の内くらいは夢を見させてやっても良いだろう」 例え正義の味方なんて本当は存在しないんだとしても。 子供を見殺しにするのは流石に夢見が悪いしな、と廻斗は言う。 「本当、実に青臭いです」 ま、中学生ですし本人なりに頑張っている所は 評価しますよと『論理決闘者』阿野 弐升(BNE001158)が呟く。 評価はするものの、結果はさもありなん。 フォーチュナの話によれば、鉄平はアーティファクトの力を完全に使い余しているという。 「ヒーローになる。男の子だったら誰だって一回は夢見る事だぜ」 そう言うのは『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)だ。 自分は運命に愛された。 だからこそ、運命を――力を与えてくれた世界を愛して正義を為したいと彼は言う。 きっと、同じ。 「鉄平も力を手に入れたから、力を使ってみんなを幸せにしたいって思ってるんだろ」 ちょっと、いや、かなり空回ってはいるけれど。 「男の子……だものね。本当、正義の味方に憧れてソレを目指すはよくある話だわ」 其れに結果が伴うかは。 また別物なのだろうけどと『紡唄』葛葉 祈(BNE003735)が言う。 「まぁ……実際の正義の味方なんてカッコイイばかりじゃないからね」 だからと言って鉄平の夢を壊すのも それはまた間違いよねと『委員長』五十鈴・清美(BNE003605)。 彼の夢を叶えて満足させつつ、ヒーローの厳しさも知って貰えればと彼女は思うのだ。 「正義を行うには絶対必要不可欠なものがある。それは力だ!」 『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)が吠える。 「勿論、力と言ってもただ単に腕力が強ければいいというものではない」 むしろ必要なのは心の力だと彼は言う。 「それを俺は少年に、戦いを通して伝えていきたい」 ヒーローとは如何なる者なのか、と。 ● 鉄平、まお、よもぎの3人が交流を深め始めてから少し経った頃。 その生物はゆっくりと、這うように闇の向こうからその姿を現した。 通常自然界ではおおよそ有り得ない巨大さを誇る大蜘蛛。 「か、怪物!?」 公園に突如出現した怪物――E・ビーストを見て鉄平が絶句する。 特撮ドラマの撮影でもなんでもない。 今までTVの中でしか見た事がないような醜悪な怪物。 コイツも、TVの中の悪役と同じ様に人を襲うのだろうか。 だとすれば、今こそ正義の味方になるべきではないだろうか。 自分には其の力が、正義を為す為の力があるのだ。 「キイィィィッ!」 大蜘蛛が吠え、そのまま鉄平達目掛けて一気に突進する。 やるしかない。 今やらなければ、動かなければ。 自分に付き合ってくれた2人に危険が及ぶかも知れないのだから。 決意を胸に、大蜘蛛の前に鉄平が立ちはだかる。 しかし。 「だ、ダメだ!やっぱりこんなの勝てるわけ……」 迫りくる大蜘蛛に気圧された鉄平が其の場にうずくまって目を閉じ、覚悟を決める。 幾ら正義の味方に憧れていても。 アーティファクトを持っていたとしても。 鉄平は、やはり只の平凡な一中学生でしかないのだ。 ドンッ! 暴走した車が人を撥ねる様な音に、鉄平は己の最後を悟る。 が、不思議な事に痛みは全くない。 ゆっくりと眼を開いた鉄平の視界に映ったのは自分を庇って吹き飛ばされたまおの姿。 「まおちゃん!?」 まおの軽い身体が宙を舞う。 そのまま地面に激突すれば、只の人間であれば重傷は免れられないだろう。 そう、只の人間であれば。 吹き飛ばされ、宙を舞うまおはしかし宙空で態勢を整え、華麗に柵へ着地する。 呆気に取られる鉄平を他所に。 今度は鉄平の傍に居たよもぎの足元から激しい風が巻き起こる。 「き、君たちは一体」 「鉄平くん。君と同じだよ」 「同じ?」 そう、問いかける鉄平に2人は息を合わせ。 「「正義の味方さ」」 一緒に練習した変身ポーズを取りながら、2人が言い放つ。 「正義の味方」 君と同じ、と彼女達は言った。 右腕に装着した髑髏の双眸が輝くブレスレットを鉄平は見る。 「ダメだ、俺はだって、君たちとは違う。さっきだって、戦おうとしたのに怖くなって」 足が震えてまともに動かない。 怖くて堪らない。 この身体から湧き上がる正義感だけなら、誰にも負けないって思っていたはずなのに。 「でも、鉄平様は戦おうとしてくれました」 まおが、そっと鉄平の手を取り言う。 「正義の味方になりたいんだろう?それに大丈夫。君は1人じゃない」 「1人じゃない……?」 こくりと、よもぎが頷く。 そして、其れを合図にして。 「うっす!ヒーロー一人で戦うなんて水くさいぜ!」 いの一番に飛び出した夏栖斗が、鉄平にサムズアップする。 「大丈夫、小さな正義の味方さん?ヒーローのピンチと聞いて、駆けつけさせて貰ったわ」 公園の茂みから次々に飛び出て来たリベリスタ達に 動揺する鉄平を安心させるように、祈が微笑む。 「加勢する。ヤツは、世界に仇なす化け物だ」 「世界に仇なす化け物」 世界に仇をなすという廻斗の言葉に、鉄平が反応する。 「若さって何だ?振り向かない事さ!」 二度ある事は三度ある。 三度目になる背後からのやけに気合の入った声に、思わず鉄平が振り向く。 仁王立ちで、自分を見つめる甲冑――剛毅が其処にいた。 「へ、変身ヒーローまで!?」 「ヒーローになりたがっている少年というのはお前だな!」 「は、はい!」 その圧倒的な存在感に鉄平が気圧される。 「俺の名はフルメタルセイヴァー!己の正義の信念の下、日夜悪と戦っている」 「正義の信念……」 「そうだ、そしてその信念とは力。といっても其れは単なる腕力ではないぞ。 その力とは、悪に立ち向かう挫けぬ心と手にした能力に溺れぬ心!」 心の力、勇気。 「鉄平君。持て余す力を正しい事に使おうとするその正義感、実に好ましい」 でも、気持ちだけじゃあダメだと弐升は言う。 何事も、結果に繋がらなくては意味がない。 「想像してたより、ずっと怖いでしょう。ヒーローってカッコイイばかりじゃないのよ」 清美の言葉に、鉄平が首を縦に振る。 TVの中のヒーロー達は、なんて勇敢だったのだろうと鉄平は思う。 彼等はいつもこんな怖い思いをしていても、それでも悪に立ち向かって行く。 そして其れは、今自分の傍にいるこの人達も同じなのだろう。 鉄平が、ゆっくりと眼の前の大蜘蛛を見据える。 「皆さん、俺……怖いけど、正義の味方になりたい」 だから、力を貸してくれと鉄平が叫ぶ。 「さっき言っただろ。一人で戦うなんて水くさいって」 夏栖斗を始めとしたリベリスタ達が各々の武器を手に取り、大蜘蛛と対峙する。 「俺、今までこの力で迷惑ばっかり本当はかけてて、でも今日は違う!」 本当の――人々の平和と自由を守る。 「正義の味方になるんだ!変……身ッ!」 決意と共に、何度も練習した変身ポーズを取った鉄平の身体が光に包まれる。 やがて、其処に現れたのは髑髏の仮面にライダースーツを身に纏った戦士。 アーティファクト『スカル・ブレス』の力によって鉄平が変身した、正義の味方だった。 ● 「まずは機動力を削ぎましょう」 清美のガントレットに激しく唸りを上げながら、炎が燃え盛ってゆく。 彼女が狙うは、大蜘蛛の脚。 素早い動きで間合いに入り込んだ清美は、大蜘蛛が回避を試みるより早く。 強烈な炎のブロウ――業炎撃を叩きこむ。 脚に叩きこまれた凄まじい一撃に、大蜘蛛の身体が大きく揺らぐ。 其処に、追い打ちをかけるように。 「論理決闘者で群体筆頭、アノニマス。正義の味方、というのをご教授しよう」 今度は弐升が生み出した気糸が、大蜘蛛を絡めとり動きを封じ込めてゆく。 その様は、まるで蜘蛛の糸に自由を奪われた哀れな獲物のよう。 本来捕食する側である大蜘蛛が、今はそうなっているなんて、なんて、皮肉。 「す、凄い!」 脚を狙う事で機動力を削ぎ、そうして生まれたチャンスを決して逃さずモノにする。 「俺は諸事情で無理を押してこの件に携わっているのですが やらなきゃならん事なので、という理由もありますが……一番は 鉄平君の青臭い正義感が眩しくてね。ちょっと、羨ましくなったのですよ」 どうかその、正しい事に力を使おうと努力する志を忘れないでと。 擦れてしまった先輩からのアドバイスだと弐升は言う。 「忘れない、絶対に!」 強く頷いた鉄平が、構えを取る。 拳を胸の前で強く握りこみ、跳躍する。 「!?」 バッタを思わせる強大な跳躍力。 空高く飛び上がった鉄平が視界から消えた事に大蜘蛛が困惑の表情を見せる。 「スカル・パンチッ!」 真っ逆さまに急降下する勢いを最大限に活かし、大蜘蛛の脳天に鉄平の拳が炸裂する。 アーティファクトによって高められたそのパンチ力は、10tをゆうに超えるものだ。 脳天に直撃を受け、ピクピクと情けなく大蜘蛛が震える。 「や、やった!」 鉄平が大蜘蛛に背を向け、リベリスタ達に大きくサムズアップをしてみせる。 しかし。 「危ない少年!」 後衛に位置し、戦況を見渡していた祈の声に、我に返った鉄平が大蜘蛛の方を振り返る。 が、時既に遅く眼前には視界を覆い尽くす程の、大蜘蛛が吐き出した毒液。 大蜘蛛はまだ倒れてはいなかったのだ。 間に合わないと鉄平が思った時。 咄嗟に彼を庇うべく前に出た夏栖斗が毒液の直撃を受ける。 皮膚に付着した毒が、じんわりと浸透し身体を締め付けていく。 毒液自体の威力は想像していた程ではなかったが、この猛毒は厄介だ。 即座に駆け寄ろうとする鉄平に。 「正義の味方ってさ、こんな風に、痛い目だって何度もあう。 異能の力で戦うっていうのは、逆に行使されることも覚悟しなきゃいけないんだ」 異能の力を使えるのは何も自分達だけではない。 相対する敵もまた、その力を行使してくるのだ。 「気を抜くな」 身を持って、その意味を教えてくれた仲間の為にもなと言う廻斗に鉄平が強く頷く。 「殺意を向けられて、正義を為すために相手を殺して、いつ自分も殺されるかわからない」 毒に蝕まれる身体を奮い立たせ、夏栖斗が構えを取る。 刹那。 目にも留まらぬ蹴りの連打が虚空を切り裂く。 更にその勢いはとどまる所を知らず大蜘蛛の身体をもズタズタに切り裂いていく。 何が起きたかも理解出来ぬまま。 その身を縦横無尽に切り裂かれた大蜘蛛が、耳をつんざく悲鳴を上げる。 「誰にも感謝されることがないかもしれない。報われることがなくても」 それでも誰かの笑顔に繋がるなら嬉しいよなと鉄平に笑いかける。 既に満身創痍と判斷したまおが、気糸を生み出し何重にも大蜘蛛の身体を締め上げる。 相手の命を奪うだけの力は気糸には無かったが、今に限ってはむしろ好都合とまおは思う。 まおの意図を理解した仲間達が、互いに頷き合う。 「今よ鉄平! あの化け物にトドメの一撃を!」 頃合いを見計らった様に大蜘蛛を指さし言う清美に続くように。 「ヒーロー物の最後のシメは必殺技、と決まってますよね?」 「少年! 本当のヒーローになりたいなら、此処で決めて魅せなさい!」 「今こそ、お前の『力』を見せる時だ!」 リベリスタ達が、次々鉄平にエールを送っていく。 「さあ、鉄平くん。最後を飾る王手は君の役目だ」 善い姿を見せてくれないかい?というよもぎの言葉に強く頷き鉄平が大蜘蛛に向き直る。 「うおおおおおおッ!」 鉄平の叫びに呼応する様に、紫色のオーラが渦巻いていく。 「スカルッ!」 必殺技の名前を叫ぶと共に、大きく鉄平が跳躍する。 宙を舞い、身体を大きく捻りながら、周囲に渦巻いたオーラを両脚へと収束させていく。 オーラが収束し、公園一帯を照らす程の強烈な光が鉄平の両脚から放たれていく。 まともに喰らえば、最早勝機はないと悟ったのか。 大蜘蛛が頭上遙か高くに位置する鉄平目掛け得意の毒液を放っていく。 が、そんなもの物ともしないどころか渦巻くエネルギーに大蜘蛛の攻撃をも取り込み。 「ハンマーッ!!!」 放たれた高高度からの強烈な飛び蹴りが大蜘蛛に炸裂した。 全身のエネルギーを両脚に収束し、急降下の勢いを活かした超威力の飛び蹴り。 其れこそ、正義の味方鉄平の必殺技――スカルハンマー。 まるで隕石が落下したかのような衝撃に、地面が大蜘蛛ごと大きく隆起する。 隆起した大地には、必殺技の証であるスカルマークがでかでかと刻まれていた。 そして其の一撃が決め手となり、大蜘蛛は完全に消滅したのだった。 ● 「そう、だったんだ……このブレスレットを回収する為に、皆は」 戦い終えて、リベリスタ達に事情を説明された鉄平が少し物憂げな顔になる。 「ごめんなさい。 鉄平様が正義の為に使いたいと思ったその道具を回収するのがまお達のお仕事なんです」 今の鉄平の様に危ない力に振り回されて辛い思いをする人を止めなくてはならないと。 瞳に涙を浮かべながらまおが言う。 「強すぎる力も、大きすぎて守りたいものを壊してしまうことだってある」 力っていうのは使い手次第なんだと夏栖斗は言う。 脳裏にふとよぎるのは、今でも彼の中に残る苦い思い。 手をすり抜ける守れなかった人達の記憶。 同じ想いを、鉄平には決してして欲しくはない。 「お前の正義感があれば、それが無くても正義の味方にはなれるだろう」 精々努力する事だ、と廻斗が言う。 「君の分も、私たちが正義の味方になるから。 それに、最後の君は格好良かったわ。本当の正義の味方みたいに、ね?」 優しく微笑みながら、祈が格好良かったよと鉄平に言う。 「今度は鉄平くん本人の力でかっこいい所を見せてほしいな。駄目かい?」 「俺、自身の……分かった」 鉄平が、右手に取り付けていたブレスレットを外す。 そのままちょっと汚れたハンカチと一緒に、少し照れくさそうにまおに渡し。 「俺、これが無くたって自分に出来る範囲で正義の味方になってみるから」 だから、そんな泣かなくても大丈夫。 むしろお礼を一杯言いたいくらいなんだからと、鉄平が微笑む。 そうして、一つの事件は正義の味方達の活躍によって終わりを告げたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|