下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






Sunset Fox

●Sunset Fox
「おかしい……」
 男はぼそりと呟きつつ、既に暗くなった道路を歩いていた。
 周囲に民家は無く、あるのは墓地と茂み、田んぼだけだ。空にはうっすらと星が瞬いている。
 しかし、男がおかしいと思うのはそんな事ではなかった。
「……さっきもここを通った気がするんだが……」
 言いつつ背後を見やる。今まで歩いてきた道は闇に覆われ、その向こうを見る事は出来ない。男はため息を吐き出しつつ、再度視線を前方へと向けた。
 その時、前から誰かが歩いてくるのを見つけ、思わず立ち止まった。
(助かった)
 男は胸を撫で下ろす。先ほどから――まるで信じられない事ではあるが――同じ道を延々と歩き続けているような気がしていたのだ。ゲームでよく聞く『ループ』、まさにそれだ。
 しかし、前方から誰かが近付いてくるのを発見できたのは僥倖だろう。あの人に助けを求めよう。そんな期待を抱き、駆け寄って声をかける。
「すいません、あの――」
 だが、言葉はそれ以上続かなかった。前からやって来たのは、黒髪黒目に短めの髪、それに上下紺色のスーツを着た――男自身だったのだ。
(俺?)
 思わず目を瞬かせる。信じられないものを見、その場に立ち尽くす男を尻目に、その『男』は近付いてくる。

 そして、『男』の手に握られているナイフが腹にめり込むのは、ほんの数分後の事だった。

●夜
「よく狐に化かされるって言うよね」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタを前に、『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)はそんな言葉をぽつりと呟いた。
「山に棲む一匹の狐がエリューション化したみたい。それを倒して欲しいんだけど……その狐、比喩とか伝説とかそう言うのじゃなくて、本当に『化かす』能力を持ったみたいで」
 イヴが言うには、とある墓地と田んぼに挟まれた道路をひたすら歩いていると、不意に自分が『同じ場所を延々と歩き続けている』ような感覚に陥るのだと言う。
 そうなった時点で、既にその者は狐エリューションの罠に落ちている。しばらくそのまま彷徨い続けていると、やがて『自分自身と同じ姿をした者』が現れ、攻撃してくるのだと言う。
「もちろん、それは狐エリューションの能力で現出している訳だけど、それに殺されると本当に死んじゃう。だから、まずはそれをやっつけて、狐の能力から解放される必要がある。
 その後は、狐エリューションを退治するだけ。術を使っている訳だから、近くにいるはず。探せばすぐに見つかるよ」
 それだけ言うと、イヴは俯いていた顔を上げ、一人一人のリベリスタの顔を見渡した。
「狐エリューションは、とっても弱い。けど、その前に戦わなくちゃいけない相手が強敵。……でも、それを乗り越えて、この依頼を成功させて。お願い」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:水境  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月18日(水)22:44
水境です。
皆さんがご覧になっている当方のシナリオオープニング数は、実際に提出するオープニングの約半分です(つまり大体半分くらいはボツ)。いえ、ひねくれたシナリオばかり出すのがいけないのですが……。

このシナリオも相当特殊ですが、どうぞ宜しくお願い致します。


●任務達成条件
 狐エリューションの討伐
 ※狐エリューション自体は10行くらいで倒せる予定ですが、その前の戦闘が厄介なものになるでしょう。

●戦場
 夜の道路。墓地と田んぼに挟まれており、薄暗いですが、電灯はあるので明かり等は気にしなくて構いません。
 狐エリューションによって作られた特殊な空間ですので、誰か一般人がやって来る事はありません。

●敵
 【リベリスタ×8人】
 参加PCの方々と、全く同じ姿形をして、全く同じ能力を持つ相手が暗闇の奥からやって来ます。
 問答無用で攻撃してきますので、これを迎撃する必要があります。

 【狐エリューション】
 フェイズ1。
 引っかいたりして攻撃してきますが、特記すべき事はありません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
プロアデプト
鬼ヶ島 正道(BNE000681)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
プロアデプト
ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)
ナイトクリーク
★MVP
鷹司・魁斗(BNE001460)
プロアデプト
カーネイジ・カタストロフ(BNE001654)
デュランダル
一番合戦 姫乃(BNE002163)

●錯
 薄暗い夜闇の中を歩いていた八人は、ほぼ同時に足を止めた。
「どうやら、自分達は罠に嵌ったようですね」
 周囲を見回しつつ、『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(NE000681)がぼそりと呟いた。と同時に脳の伝達処理を飛躍的に向上させるコンセントレーションを使用する。効果時間はほんの12合――つまり120秒で、一分以内に幻が出現したとしても、その効果時間は通常の半分。しかし、今は何でも手を打っておくべきだ。
 決して都会とは言えない、茅葺屋根の家々が散見される田舎道。わずかに屹立している電柱が、心許なげに八人のリベリスタ達の足元を照らしている。
 ここにエリューション化した狐がいると聞いた彼らは、危険を冒して退治のために赴いていた。
 正道の言葉に『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)は唇を引いて頷く。
「ああ。これからが本番だよな……能力は互角、気を引き締めてかかるぞ!」
 元気の良いその台詞に仲間達は頷く。
 ただしここで言う『能力が互角』というのは、決してエリューション化した狐の事ではない。その狐が生み出す幻であり、そしてそれはリベリスタ達自身の姿であるのだ。『深闇を歩む者』鷹司・魁斗(BNE001460)は、手にしたカラーボールを手持ち無沙汰に弄りつつ肩を竦める。
「自分たちが敵ってのはなかなか厄介だぜ。……出来れば、自分の幻影は自分の手で片付けたいところだが……」
「私も、それを、考えてた」
 『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)は魁斗の言葉にこくんと頷く。
「自分と、サシで戦ってみたい……けど、任務、優先」
 これから彼らの前に現れるのは、自分と全く同じ姿形をし、全く同じ能力を持った八人の幻だ。魁斗と同じく目印代わりのカラーボールを手にしたまま、『Dr.Physics』オーウェン・ロザイク(BNE000638)はただ、周囲を見回す。
「これがある限り、敵と味方の区別がつかない事はあるまい。……さて、どこからお出ましになるか……」
「どこからでも来るでござるよ! わらわ自身と戦えるなんてとてもワクワクなのでござるです!」
『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)が少女らしい歓声を上げるのを、オーウェンは苦笑しつつ息を吐き出した。
「楽しそうであるな」
「もちろんでござるよ、わらわの力が今、どれほどのものなのか確かめるチャンス……!」
「まあ、客観的に自分を分析する事が出来るいい機会ではあるな」
 モノクルに手を沿え、『Cypher memory』カーネイジ・カタストロフ(BNE001654)が言い放つ。
「もちろん相手に知性があった場合は、だが――おっと、おいでなすったようだ」
 しかし、その彼の声音に不意に張り詰めた感が混じる。と同時に、仲間達も一斉に前方へと視線を注いだ。
 ざく、ざく、ざく……、舗装された道をブーツの鋲が、あるいはゴム底のシューズが踏みしめる音が近付いてくる。
「来、た」
 天乃が誰ともなしに呟く。
 闇の中から現れたのは、正道、オーウェン、静、天乃、魁斗、カーネイジ、姫乃、そして『鉄血』ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)と全く同じ姿をした幻達。皆、その手には得物を持ち、こちらを倒さんと静かに歩み寄ってくる。
 その様子を見て、思わずヴァルテッラはわずかに目を見開いた。
「ふむ、この幻は一体どういう能力なのだろうね……? 偽者は我々の記憶や意識を元に作成されているのだろうか? となると、誰かが意識を無くせば偽者が消失する……? ふむ、全く興味深い――」
「何でもいいさ」
 魁斗が言って、鋼糸を指に巻きつける。とほぼ時を同じくして、仲間のリベリスタ達が次々とカラーボールを使用し、髪が、服が、目に痛いほどの鮮やかな色へと染まっていった。
「同じ顔が、こうも揃ってると気持ち悪ぃ。さっさと片付けようぜ」
 その言葉を鬨の声代わりに、十六人のリベリスタ達は激突する。

●戦
 最初に動いたのは静と偽静。自分の偽者がハルバードを握り締めて駆けてくるのを見、静は手を叩く。
「やーいノロマ、スローリィ! お前の速さはその程度かよ!?」
 挑発するが、しかし偽静は彼を見ていない。姫乃の元へ一直線に向かい、そのハルバードを振りかざすのを見、彼は舌打ちする。
「あっ、何だよ……あの静! 姫乃さんを狙ってやがる!」
 待機どころではない。慌てて自身も駆け、姫乃の前に立ち塞がり――自身の偽者が生み出したオーララッシュを、全く同じハルバードで弾き返す。
「静さんっ……」
「姫乃さんは出来る限りオレが守るから。攻撃は頼むぜ」
 眼前に佇む、全く同じ顔を睨みつけながら呟く静。それを横目で眺めつつ、魁斗はバックステップで下がってブラックコードを両手で引く。
「作戦通り、行くぜ」
 鏡写しのように十メートル程前方にいる偽魁斗も同じようにブラックコードを構えるのを見て舌打ちするが、すぐにそれを振りかざした。
「行くぜ!」
 彼の手前の空間がわずかに輝き出す。そして眼前に現れた道化のカードは彼の手に収まった後、次の瞬間敵陣に佇む偽オーウェンに向かって投げつけた。
 カードは狙い違わず偽オーウェンに命中する。一歩、二歩と相手が後退するのを見、魁斗は唇の端を引いた。
「ほら、前に出て来いよ」
 だが、同時に偽魁斗の放ったカードはヴァルテッラへと命中していた。すぐ傍らでよろめくヴァルテッラに魁斗は瞠目する。
「…止める」
 呟く天乃。スローイングダガーを手中で躍らせると、突出してきた偽静にギャロッププレイを放つ――その動きを止める偽静。だが、ほぼ同時に敵陣の中から現れた偽天乃は、同じくスローイングダガーを構え、こちらの姫乃に対し同じくギャロッププレイを解き放った。庇う静。しかし、こちらの本物の静も代わりにダメージを受けたためか、麻痺しその場で立ちすくむ。
「い、いてっ……」
「ごめ、ん」
 偽天乃が行ったことではあるが、反射的に天乃は謝罪する。やや混戦状態となってきた前衛から意識を外し、オーウェンは前方へ佇む偽オーウェンへ、ひたと視線を据えた。
 魁斗からのダメージを受けたものの、偽オーウェンには些かも臆する様子は見えなかった。オーウェンは気配遮断を行いつつコンセントレーションを使用するつもりではあったが、コンセントレーションも戦闘手段の一種。気配遮断は戦闘行動を行っていない時にしか使えない。こちらは諦めざるを得なかった。
 オーウェンは心中で毒づきつつ、後退しつつも集中によって脳の伝達処理を高めて行く。が、不意に偽オーウェンが動き出す気配が感じられ、目を眇める。
「仲間の死活に関わらず高みの見物でもするつもりか? 大した策略家だな」
 しかし、返事は無い。相変わらず痛みや感情があるのか分からない偽オーウェンは、そのまま流れるような動作で気糸を展開させ――ヴァルテッラへと襲い掛からせた。その身体を絡め取られるヴァルテッラ。
「ヴァルテッラ氏、もう少し耐えていてくれ」
 カーネイジが銃剣を構える。同じく眼前にいる偽カーネイジも同じような動作を行うのを眺めつつ、彼は目を細めた。みるみるうちに湧き上がってくる集中力にを感じつつ、一歩、二歩と後退して行く。
「よ、よくもやってくれましたでござるね……! 行くでござるよ!」
 と、カーネイジのすぐ眼前で、静に庇われている姫乃が大太刀を握り締めるのが見えた。そして静の脇を通り過ぎるようにして駆けると、そのすぐ前方にいる麻痺したままの偽静にオーララッシュで襲い掛かる。鏡写しのように飛び出してきた偽姫乃も、姫乃に近付こうとして――彼女を庇う静に向けて、オーララッシュ。
 一撃。姫乃と偽姫乃の攻撃が命中。しかし二撃目は二方とも退けられ、二人の姫乃はその場に舞い降りた。
「ふむ……ここで押し切りたいものですな……!」
 未だコンセントレーションの効果――ほんのわずかではあるが――を残す正道は、ヘビーアームズを構える。そして接近してきた偽静に向け、その攻撃を受けて揺らぐ隙を突き――一撃を放つ。
 がづっ! と鈍い音が当たりに響き渡る。彼の攻撃は、狙い違わず偽静に命中していた。が、同じく偽正道のトラップネストもすぐ傍らにいるヴァルテッラへと命中していたのだ。
「……自分で自分を解剖するまでは、倒れる訳にはいかない、ね」
 攻撃を受けて一歩、二歩と後退ったヴァルテッラは、重火器を握り締め、目を閉じ集中力を高める。自分の偽者らがいる位置から少しずつ距離を取り、痛みの滲む腕を庇う。
 背後での状況を横目で把握しつつ、舌打ちした静は、前方から麻痺から立ち上がった自身の偽者がハルバードを振りかぶり、襲いかかってくるのを見て唇の端を歪めた。
「……へっ」
 思わず息を吐き出す。姫乃を庇ったままの彼は、動かない。
「オレが敵に回るとこんなに手強いなんて、嬉しくなっちゃうぜ」

●決
 己の偽者を放ったライアークラウンを鋼糸で受け止めた魁斗は、口腔に残る血液を乱暴に地面に吐き出す。
「……魁斗君……すまないね」
 自身の背後にて肩で息をしつつ体勢を整えるヴァルテッラから、魁斗は視線を外す。
「チッ、手間かけさせんじゃねーよ」
 言いつつも、魁斗はヴァルテッラを庇ったまま動こうとはしない。そのままの態勢で戦況を見つめる。
 静と偽静がほぼ同時に倒れた後、彼が最後まで庇っていた姫乃が敵の集中攻撃を受け、後を継ぐように倒れた。今は必死に天乃とオーウェン、それから正道が倒れた二枚の前衛の代わりをこなそうと奮戦している。
 しかし、敵もまた無傷ではない。偽静が消えた後、敵陣の中でひたすらトラップネストを打ち続けていた偽オーウェンを、つい先ほど、魁斗自身のライアークラウンとカーネイジの1$シュート、それからヴァルテッラの遠距離攻撃でどうにか仕留めたところだった。
 ある程度回避力の高い偽オーウェンを潰すために時間がかかり、こちらの戦力がやや大きく削られてしまった感は否めない。
(……それでも、ここを退く訳にゃいかねぇな)
 背後のヴァルテッラは満身創痍。魁斗が退けば、その後の事は予想が出来る。彼は鋼糸を握り締めると、再度攻撃に備えて身構えた。

「撃たせる訳にはいかん」
 オーウェンの呪印が舞う。それは狙い違わず偽天乃を直撃し、カーネイジの1$シュートが続けて命中する。命中率の高いその攻撃は、偽天乃の体力をみるみるうちに奪って行く。
 だが、当のカーネイジにもやや前進してきた敵カーネイジの1$シュートが命中。胴に衝撃を受けた彼は、軽くふらつき、しかしすぐに足を止める。
「……厄介だな」
 己の偽者を見つめ、呟く。幾度か敵陣後方から放たれる技によって、彼も無傷の状態ではなかった。
「大丈夫でございますか、カーネイジさん」
 気遣う正道に頷き返す。正道はそのカーネイジの様子に瞳を眇めつつも、満身創痍の偽天乃に向けアデプトアクションを放つ。いくら踊るように動く偽天乃とは言え、コンセントレーションにより強化されたその技術を避けられることもなく――そのまま地に伏し、消失した。正道が『目が離せない』との感情を抱く彼女の偽者が消える様子を、どこか複雑な胸中で見つめていると、後方から偽ヴァルテッラの攻撃が届けられた。
 偽天乃と偽姫乃の攻撃を立て続けに浴びせられていた彼は、ぐったりとその場に倒れる。が、やがて身体をほのかに輝かせつつ、もう一度立ち上がった。
「……こればかりは、偽者は真似出来ないでしょう」
 フェイトを燃やし、命を再度燃え上がらせたのだ。世界から与えられた力が彼の傷をみるみるうちに癒して行く。
「……」
 自身の偽者が消えた場所をちらりと横目で見つつ、天乃はほんの一瞬だけ瞑目する。
「……バイバイ、私」
 そしてすぐに視線を上げると、傍らでこちらに向けて大太刀を振り上げる偽姫乃へと駆け出した。踊るように駆けて放たれるギャロッププレイ。そしてオーウェンから放たれるトラップネスト。しかし偽魁斗の放ったライアークラウンもカーネイジへと命中する。今度こそ、その場に倒れるカーネイジ。
「カーネイジさん……くっ」
 立ち上がり、駆け寄ろうとした正道は動きを止める。倒れ、動かないカーネイジの身体を唇をかみ締めつつ見つめた後、また前方へと視線を向けた。
「早く終わりにしなくては……!」
 言って、構えたヘビーアームズから放たれたアデプトアクション。偽姫乃の最後の体力を奪い、その力を失わせ――消失させる。肩で息をするヴァルテッラは、魁斗の肩越しに見える偽正道に目を移す。己の本物である正道に向け、アデプトアクションを放つその相手へと照準を合わせ、撃つ。
 しかし、援護するかのように命中する天乃のギャロッププレイ、オーウェンの縛の呪印。それこそ封じられたこの空間に、閃光のように次々と光が舞い踊った。

 偽正道が倒れ、偽カーネイジが倒れる。ヴァルテッラに向けられる攻撃は、庇う魁斗が退け、もしくは防御する。立ち上がった正道が再度倒され、偽者たちの攻撃はオーウェンに向けられるも、しかし数の減った偽者たちの火力はリベリスタ達によって蹴散らされる。
 天乃が偽魁斗をブラックジャックで叩きのめした時、既に周囲には天乃とオーウェン、それからヴァルテッラと最後まで彼を庇っていた魁斗しか残っていなかった。
「終わっ、た?」
 天乃が息を吐き出しつつ呟くと、オーウェンは小さく頷く。
「しかし、これで終わりでは無いだろう。あとは――」
 彼がその言葉の先を紡ぐよりも早く。
 周囲からは違和感が去り、田畑や電柱、そして周囲に纏わりつく暗闇自体が蜃気楼のように揺れ――
 不意に四人の目の前に、一匹の狐が出現した。疲れた身体に鞭を打ち、傷ついた身体を奮い起こして立ち上がる正道。
「早く終わりにしましょう」
「……そうだね」
 ヴァルテッラが頷く。その手に握った重火器を、魁斗の肩越しにぴたりと狐に照準を合わせる。それを見た狐は、すぐに逃げ出そうとするも天乃が駆け、その前に回りこんだ。
「……だめ」
「大人しくしてな」
 魁斗のブラックコードが闇夜に煌く。次の瞬間、彼の放ったライアークラウンは的確に狐の首筋を貫いていた。


 倒れた狐から視線を外すと、天乃はカラーボールにて汚れた髪に触れつつ、小さく息を吐いた。
「……色、取れるかな」
「よく洗えば落ちるだろう。それより早く、皆を運ばなくては……」
 ヴァルテッラの言葉に天乃は頷く。静、姫乃、正道、カーネイジ……。偽者と撃ち合い、もしくは仲間を庇って倒れていった仲間達。彼らを順繰りに見渡すと、天乃は頷く。
「ちっ、服が台無しだぜ……さっさと帰るぞ」
 同じくカラーボールによって汚れた服を気にしつつ、魁斗は毒づきながらも正道を支え上げる。
 それにオーウェンは頷き、天乃とヴァルテッラを促したのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 20ターンを超える長期戦となりました。
 Sunset Foxをお届けします。本物も偽者も、なかなか天乃さんと魁斗さんに攻撃が当てられませんでした。

 判定は文中に示してありますが、詳しい解説など。

◆PCとその偽者の行動判定は『同時』に行いました。相打ちとかも可能でした。
◆鬼ヶ島さんは戦闘前にコンセントレーションを使用するプレイングをかけていらっしゃいましたが、敵の現れる70秒前にスキルを使ったものとみなし、5ターンの間命中にプラスを行いました。ただ、偽鬼ヶ島さんもその間同じだけの命中プラスを行っております。
◆偽者に魂というか精神は無いので、挑発等は無効とさせて頂きました。これを可能とすると、究極的には「改心して仲間にさせる」「説得して戦闘をやめさせる」等が可能になってしまいますので。
◆偽者につきましては、
 かばう・全力防御などの特殊手は無し
 フェイト復活はなし
 を前提にして、後は皆様の作戦に沿うような形(向かってきたら迎撃するなど)を取り、手の空いた偽者にはSTが最善と思う行動を行わせました。
 偽者の攻撃した順番は、前衛で回避力の低い順、もしくは遠距離攻撃を持っている場合は後衛で回避力の低い順 です。
 回避力の高い魁斗さんが防御(庇う)に回って下さったお陰で、偽者が狙っていたヴァルテッラさんへの攻撃をある程度抑えることが出来、戦線が長く強く維持できたと思います。ので、MVPを授与させて頂きたいと思います。


 とにかく、今回は狐退治お疲れ様でした、そしてご参加ありがとうございました。