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ヒーロー・アンド・ジャスティス!

●とある教団でのこと
 少年は、正義の味方を信じていた。
 悪の組織にさらわれ、邪悪な手が自らを襲う時、必ずやってくる彼らの存在を信じていた。
 だからヒーローのフィギュアをいつも持ち歩いていたし、今だって強く握りしめていられるのだ。
 そう、本当に『悪の組織』に浚われ、捕らわれている今であってもだ。

 子供を鉄格子の中に放り込み、手をはたく。
 全身を奇妙なウェットスーツで包んだ男達は、覆面をした互いの顔を見合って、ほんの小さく頷いた。
 どことも分からぬ建物の中である。
 彼等は一際広い部屋へ集まると、一糸乱れぬ動きで片腕を掲げた。
 玉座ともとれる椅子から立ち上がる、一人の男。
 彼は蜘蛛のビーストハーフであった。
 背後には巨大なタペストリーが飾られ、翼を広げた竜の紋章が描かれている。
「バスジャックは成功したようだな」
「……はい、子供たちはこちらに」
 閉じ込められた子供たちが、鉄格子のまま運ばれてくる。
 蜘蛛男はそれを見て、満足げに頷いた。
「今から彼らをサクリファイスとする、儀式の準備をせよ。全ては――のため」
「「全ては――のため」」
 深く首を垂れる男達。
 彼らの目は、ギラギラと光っていた。

●実在する正義の味方
「皆、良く集まってくれたな。とある教団が送迎中の幼稚園バスをジャックし、中にいた子供の内数人を誘拐した。まだ生きてはいるようだが、恐ろしい目に合うことは間違いない。アジトの場所は掴んである。彼らを壊滅させて、子供たちを救う……分かり易いだろ?」
 パチンと片目を閉じる『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。
 しかし、微妙に疑問は残っていた。
 リベリスタ達の戦闘を、子供たちに目撃されてしまわないかということである。
「それなら大丈夫だ。いや……大丈夫にできる、っていうべきかもな」
 首を捻って言う伸暁。
「子供達は今、ヒーローの存在を信じてる。悪い奴をやっつけて、自分たちを助けてくれるっていう、架空の存在をだ」
「……」
 リベリスタ達は沈黙した。
 それが、自分に当てはまるかどうか。
 ヒーローは実在するのか否か。
 それを考えたのだ。
「堂々と名乗ってやればいい。それで全てごまかしが聞く。大人に喋ったりもしないさ」

 配られた資料の中には、敵フィクサードの情報も書き込まれていた。
 蜘蛛男、ビーストハーフ。プロアデプトと推定。詳細不明。
 スーツの男達。フィクサードである以外詳細不明。身軽であるらしい。
 敵の数、合計で十一前後。

「話しはこれで全部だ。さ、ヒーローになって来い!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月19日(木)23:32
八重紅友禅でございます。
あなたはヒーローの存在を信じていましたか?
それは、今でも信じていますか?
条件や形こそ移ろいましたが、私は今でも信じています。

●戦場
建物内での戦闘になります。
敵味方入り乱れる混戦状態が予想されます。
そうした状況ですので、ブロック難易度は少々上がるでしょう。
一部の味方や子供達を庇いながら戦うとなれば、各個撃破作戦も難しくなるはずです。自分なりの戦い方を見つけておきましょう。

その他、オープニングでの説明の通りです。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
風芽丘・六花(BNE000027)
クロスイージス
ユート・ノーマン(BNE000829)
マグメイガス
綿雪・スピカ(BNE001104)
クロスイージス
フィオレット・フィオレティーニ(BNE002204)
クロスイージス
亞 斗夢(BNE003144)
クロスイージス
犬吠埼 守(BNE003268)
ホーリーメイガス
ペトラ・D・ココット(BNE003544)
覇界闘士
四十九院・究理(BNE003706)

●誰もが見る夢
 部屋の中心には奇妙な正十二面体が置かれている。
 ウェットスーツのフィクサード達がせわしなく動き回り、蝋燭や絨毯など、おどろおどろしいアイテムを並べて行く。
 大きな椅子に腰かけていた蜘蛛男は、悠然と立ち上がり、羽織っていたマントを翻した。
「儀式の準備は整った。子供達の血を捧げるのだ」
「はっ!」
 直角に頭を下げるフィクサード達。
 檻の中で震える子供は、自らに伸びる無数の手に怯えていた。
 ある少年は絶望し、ある少女は泣いていた。
 そんな時である。
「そぉこまでだー!」
 玉座の上にあったステンドガラスを突き破り、『ひーろー』風芽丘・六花(BNE000027)が飛び込んできたのである。
「ムゥ、リベリスタ……皆の者、迎撃せよ!」
「「はっ!」」
 ウェットスーツの腰に下げていた拳銃を一斉に抜くフィクサード達。
 立花は顔の前で両腕をクロスすると、そんなフィクサード群の中へ一直線に飛び込んだ。
「正義の怒り、さんだーぶれーくなのだ!」
 立花から放たれた大量の稲妻がフィクサード達の目をくらませる。
 蜘蛛男が苛立ちをあらわに声を荒げた。
「何をしている、相手は一人だ。取り囲んで――」
「蜘蛛男様! 侵入者です!」
 台詞を遮ってフロアに転がり込んでくるフィクサード。
 そんな彼を跳ね飛ばすようにして、『チェインドカラー』ユート・ノーマン(BNE000829)が駆け込んできた。
 慌てて銃撃を加えるフィクサード達だが、ユートは黙って巨大な盾を眼前に翳す。
 円形の、古いアメコミヒーローが持っていそうな盾である。
 盾の上を弾ける銃弾。ユートは構わず突撃すると、檻の前に群がっていたフィクサードに体当たりをかけた。
 横目で子供たちを見やる。
 元々乱暴なユートである。子供達は驚きに声を殺していたが。
「心配すんな。この盾は、アメリカ最高のヒーローから借りたモンでな……ま、後で話してやンよ」
 ユートに続いて『俺は人のために死ねるか』犬吠埼 守(BNE003268)がフロアに突入してくる。
 銃を右手に、左手には手帳を掲げ、フィクサード達に翳して見せた。
 服装は、どこにでもいるような警備員服である。
「我々はアークの者だ。武器を捨てて投降すれば悪いようにはしない!」
「アークだと……? チィ、計画に感づかれたか! このヒーロー気取りを生かして返すな!」
「ヒーローだと? フンッ」
 馬の蹄がけたたましく鳴る。
 フィクサードの一人を蹴り飛ばし、『静かなる古典帝国女帝』フィオレット・フィオレティーニ(BNE002204)が登場した。
 室内だと言うのに馬上から、マントを翻して見せる。
 手足を機械化したフェニチズムあるビキニ姿で、顔は仮面に隠している。
「将来我が帝国の幹部候補になる子供をむざむざ殺させるわけにもいかないのでな、ぶっ潰させてもらうよ! 抗争の時間だぜー! ミュージックカモン!」
「ヒーロー側のBGMでもいいかしら?」
 ちゃっかりと馬に乗り合わせた『運び屋わた子』綿雪・スピカ(BNE001104)がバイオリンを奏で始める。
「ちょとt大きな音がするわよー、耳塞いでー! はいどっかーん!」
 すると、嘶き前足を振り上げた馬を中心にチェインライトニングの雷がまき散らされた。
 その中を突っ切って行く『鉄腕斗夢』亞 斗夢(BNE003144)。
「えい、やー! 悪者なんかに負けないよ!」
 戦闘員の一人を殴り倒すと、馬乗りになってぼかすかタコ殴りにする。
「みんな安心してね、ボクが来たからには、こんな悪い奴等纏めてやっつけてあげる!」
 檻の中の子供たちに向け、びしっと親指を立てて見せる亜土夢。
 こうなれば、フロア内の混戦具合は並大抵のものではなくなってくる。
 フィクサード達は泡を食い、目につく相手に銃を乱射するしかなくなるのだ。
「唸れ、タイガー・フレイムナックル!」
 そんなフィクサードの顔面に、思いっきりパンチを入れる『じゃじゃ虎ムスメ』四十九院・究理(BNE003706)。
「燃える猛虎のニューヒーロー……」
 蹴倒したフィクサードを踏みつけにし、びしりとポーズを決めて究理は言った。
「キュリウィ・タイガー参上!」
「はいはい大丈夫。すぐにこいつら倒して、そこから出してあげるんだね!」
 自分はオマケですよとばかりにひょこっと顔を出すペトラ・D・ココット(BNE003544)。
 彼女はマナサイクルの準備をしながら頭の後ろで手を組んだ。
「ヒーローぽい人が沢山だし、僕は名乗らなくて大丈夫そうなんだね」
「……ヒーロー」
 檻の中から声がして、ペトラは肩越しにウィンクした。
「そ、アレのこと」

●ヒーロー・アンド・ジャスティス
「このキャノンで……うわわっ!」
 重火器を構えれ1$シュートを連射する斗夢。
 対してフィクサード戦闘員達は、器用に球を避けながら矢鱈滅多に発砲してくる。
 慌てて防御する斗夢だが、あっというまに体力を削り尽くされてしまった。
「うお、大丈夫かへんな恰好のひと!」
「えっ」
「ここはあたいに任せろー!」
 立花は斗夢が開けた穴を塞ぐようにスライドインすると、腕をぐるぐると回した。
「ひーろーろまん、ふれいむなっこーぅ!」
 ていやーと言いながら拳を突き出す立花。同時にフレアバーストが発動。戦闘員たちを一気に焼き払う。
 などとやっていると、バイオリン片手にスピカがうっとりとした顔をした。
「あらよく燃えること……じゃあこっちも」
 問いってフレアバーストを乱射。絨毯や蝋燭を巻き込んで戦闘員たちをめらめらと焼き払った。
「まぁ、燃える燃える」
「…………」
 子供達がドン引きしていた。
「いいでしょ? 燃え盛る戦場って、カッコイイと思うのよ?」
「城攻めイコール焼き討ちはどうかと思うけどな」
 フィオレットはぼんやりと呟くと、乗っていた馬を再び嘶かせる。
「我が名は悪の秘密結社、静かなる古典帝国女帝フィオレットであるぞ! 組織の将来を担う若者を殺すとはさすがは愚民、秘密結社として超ド三流だな!」
「何だと、PTAに怒られそうな格好をしおって猪口才な。ものども、奴を馬から叩き落とせぃ!」
「ははっ!」
 四方八方から飛び掛ってくる戦闘員。
 フィオレットは唇をちょっとばかり尖らせると、右手を閉じたり開いたりした。
「来るか、では死ぬがよい」
 変形した腕からジャスティスキャノンを連射。戦闘員を撃ち払った。
 ……などと。
 ヒーローなのか悪役なのかいまいちハッキリとしない連中の乱入に、子供達は見るからに動揺していた。
 それを察したのか、守は鉄格子をコンコンと叩いて微笑みかける。
「大丈夫、きっと無事に帰れますよ。俺は平気ですから、ちょっと下がっていて下さいね」
「……」
「その代り約束して。君達も、誰かがピンチの時には、助けてあげて下さい。どんな時でも」
「どんな時、でも?」
「そうです」
 そこまで言うと、守は高く跳躍した。
 空中で身体を丸めて二回転。戦闘員たちが群がっている中心へ着地する。
 慌てて銃を向ける戦闘員たち。
「――装着」
 途端、守の鎧が展開した。黒い犬のような印象を与える全身装甲である。
 装甲は弾を悉く弾き、蹲る姿勢から直立体勢へと移行。その間に身体を捻り、腰から抜いたニューナンブを四方八方に乱射した。
 直立体勢。顔の横に掲げた銃の弾倉を開け、ぱらぱらと空薬莢を地面に落とす。
 そして子供達の方へ振り向くと、フェイスガードを親指で上げて見せた。
「ね、平気でしょう?」
 実を言えば、守の全身には大量の弾頭がめり込んでいる。貫通させまいと筋肉でわざと押し留めている分、今も死にそうな激痛が走っていた。
 それでも笑うのだ。
 牙無き人の盾となり、苦しい時こそニヤリと笑う。
 それが、彼を彼たらしめる、父親の教えだったからだ。

 ばたばたと戦闘員が倒れていく。
 その様子に、蜘蛛男は怒り狂った。
「これだけ集めた戦闘員が、こうもあっけなく……おのれアーク!」
 蜘蛛男は全身から気糸を放出。まるで弾丸のように飛ばしてきた。
 それを盾で打ち払うユート。
 巨大な盾である。その裏で、ユートは自嘲気味に笑っていた。
「ぐぬっ!」
 糸を収束させ、ユート目がけて連射してくる。
 正直盾で防ぎきれるダメージではない。身体がギシギシと軋み、今にも五体がバラバラに砕けてしまいそうだった。
 けれどユートは歯を見せた。
 彼の後ろに、子供達がいたからだ。
「俺は昔、諦めてたんだ」
 この世にヒーローは居ない。居たとしても、きっと自分の所には来ない。
 遠い記憶である。汚物と血煙に覆われた町に、ヒロイックなんてものは無かった。
 希望は死に、優しさは踏みにじられてきた。
 それでも彼が、パチ物で馬鹿みたいに重い、アメリカ模様の丸盾を捨てなかったのは、お約束でご都合主義のヒーローコミックを捨てなかったのは。
「信じたかったんだよ、ゴミ溜めでも、最低な世界でも、ヒーローは……居て欲しかったんだ」
 膝が震え始める。耐えられる限界が来ているのだ。
 だが耐えなければならない。
 かつて夢を見た少年が、報われるには。
「この世には、ヒーローが居る……それを俺が照明してやるンだよ!」
 ユートは地面を蹴飛ばした。
 大きく猛牛のように突撃すると、蜘蛛男に体当たりを繰り出す。
 ぐらりと揺らぐ蜘蛛男。
 そこへ、究理が怒涛の勢いで突撃した。
「喰らえ、悪党!」
「そうはいくか!」
 繰り出された拳を強引に打ち払う蜘蛛男。
 ごろごろと地面を転がる究理を受け止めて、ペトラは彼女達を回復してやった。
「おい蜘蛛男。子供を生贄にするような行為が、何に見合うっていうんだ」
「……うむ?」
「幼稚園バスジャックなんて間抜けな悪事をする割にはやけに真面目じゃないか。ふざけるなよ、僕は怒ってるんだ!」
「怒ったからどうした。じきに人類はストーン様にひれ伏すのだ。邪魔になるならば、貴様等もここで死ぬが良い!」
 気糸を拡散させて放つ蜘蛛男。
 咄嗟に顔を庇ったペトラの前に、フィオレットが立ち塞がった。馬上から軽やかに飛び降り、地上に片手をつく。足首と手首を展開し福音を響かせる。天使の歌を発動させた。
 ダメージを受けた端からカバーしていく。
「臣民の期待を裏切るわけにはいかんのでな。良い所は譲ってやろう、ヒーロー!」
「お言葉に甘えて」
「うりゃりゃー!」
 バイオリンの弓を高く翳すスピカ。一方で地面と水平な飛行で突っ込んで行く立花。
 マジックミサイルとフレアバーストが蜘蛛男を襲った。
 マントで全身を庇う蜘蛛男。
「フン、この程度か! ヒーローなど」
「……など、なんです?」
 マントから顔を出した蜘蛛男の額に、ニューナンブの銃口が突きつけられていた。
 残弾の限りにぶっ放す大きく仰け反る蜘蛛男。
 そこへ究理が飛び込んで行った、
「うなれ必殺、タイガーフレイムナックルぅ!!」
 顔面に叩き込まれる業炎撃。
 蜘蛛男は後頭部から地面に激突した。
「この私を倒した所で、意味は無いぞ……既にストーン教は、動いて……」
 かたん、と蜘蛛男の腕が床に落ちた。

●ストーン教とドラゴンの紋章
 フィオレットは馬上でマントを翻すと、気を失った斗夢を抱えて子供達に背を向けた。
「少年少女よ、ヒーローにいつまでも縋っていては駄目だ」
「……」
「いつかはキミらもヒーローになれ。私は……戦える日を待っているぞ!」
 そこまで言うと、フィオレットは馬を嘶かせて走り去っていく。
 一応ここが室内だと言うことは、もはや誰も突っ込まなかった。
 で、もって。
「鍵らしきものがさっき圧し折れていたから、牢屋の鍵は強制的に壊すわねー」
 はいせーのー、と言いながらバイオリンを振りかぶるスピカ。
 子供達が悲鳴を上げた。
「おいちょっと待て、やり過ぎた!」
 スピカを羽交い絞めにするユート。
「何するの、離してー」
「はいはい、ちょっと離れてて下さいね」
 その間に守が錠に銃口を近づけて二度ほど発砲。無理やり鍵を開けた。
「た、助かった……」
「また悪の組織が君達を狙えば、必ず駆けつけるのだ! だからまっすぐな心と、そのフィギュアは大切にな」
「……これを?」
 少年は、手の中にあったフィギュアを見つめた。
 横からそれを覗き込む立花。
 なんというか、見たこともないフィギュアである。全身をヒロイックなスーツで包んだ赤いフォルムは明らかに何かの特撮ヒーローっぽいのだが。
 守に目で合図してみたが、これは知りませんねえという顔をされた。
「ま、とにかく。自力で帰れるところまでは送って行ってあげるんだね!」
 手を差し伸べるペトラ。
 子供達はおそるおそる手を取った。

 皆が立ち去った後のアジトには、正十二面体の石が怪しい光を放っていた。
 正体不明のヒーローと秘密組織ストーン教。
 この戦いが、今後どのような運命を招くのか……それはまだ、誰にも分からない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
thank you hero!!