●非現実的存在、『ホワイトマン』。 ビデオメッセージである。 ブラインドらしき窓から逆光が入り、幾度か画面をホワイトアウトさせる。 やや画質の悪い映像だが、それが室内であることは分かった。 なぜか環境音はしない。音声だけを別撮りしたのだろうか。 マイクに直接語りかけるように、誰かの声が入った。 「レディース・アンド・ジェントル、アークの未来有望なリベリスタへ贈る……と、こんな調子でいいか?」 合成音声である。音からは何も判断できない、かろうじて日本語と分かる程度の音声だった。 ビデオ映像が動き、パイプ椅子に座った白スーツの男が映った。 顔は見えない、胸から下だけだ。 「俺の、いや六道の武闘派グループ『斬鉄』と『鉄拳』を欲も潰してくれたな! 許せん、今こそ報復の時である! ……なんてな。そういう意図で送ったもんじゃあない。長ったらしい前フリになって申し訳ないんだが、こいつは俺なりの敬意の現れであって、アークとしっかりゲームをしようって気持ちの表明だってことを、理解してから見てくれよ。でないと必要のない勘繰りだのなんだので勝負が台無しになるからな。俺はそういうの、大嫌いなんだよ」 膝の上で両手を絡ませる。 ちらほらと、指の上をジャグリングでもするようにネジ状の物体が転がっていた。 「さて、先に言ったように、お前らアークは俺が管理していた武闘派チームの内二つ、『斬鉄』と『鉄拳』を壊滅させてくれた。そもそも、奴らがジャックを殺した程の連中とやり合いたいっつーんで、ひと舞台用意したのが始まりだ。アークが食いつきそうなケチな仕事を押し付けてな。自己研鑽が生甲斐みたいな連中だから、あの手の仕事は嫌がったが、まあおかげでアークと正面切ってことを交えることができたワケだ。長介辺りは感謝してたぜ、歴史に埋もれて二度と振れない剣をもう一度振れたんだっつってな」 手の上で、ネジ状の物体がぴたりと止まる。 「それくらい単純な連中だから、俺も上手い事利用できた。利用と言ってもしっかり相互理解があったんだぜ? 書面じゃ交わしてないが、コストとリスクを提示したつもりだ。……いや、悪いな、関係ない話が挟まりそうになった。じゃあそろそろ本題と行くか」 ネジ状の物体を指でつまんで、カメラと一緒に移動させていく。 次に移ったのは、十一人程の男女だった。 過去に報告がある、『鉄拳』のメンバーである。 「お前らも知ってるよな。過去二回の戦闘で敗北、死亡した鉄拳のメンバー十一人だ。再戦はよせつったんだが、レッドが聞かなくてな。別のことに使う予定だったが、急きょ番組を変更しまして……こいつらに、『魔剣化』してもらうことになった」 メンバーの一人。眼鏡の男。 彼の額にネジ状の物体を押し付ける。 するとネジはそういう動きをする蟲であるかのように、男の額の内側へと潜り込んで行った。 肌が黒く変色し、闇じみたオーラが全身を包み込む。 「アーティファクトだ。名前はつけてない。死体に寄生することで強力な兵器として『稼働』させられる。死体とワンセットのアーティファクトだ。蘇生じゃないぜ、『稼働』な。だから情けも容赦も知らない人型兵器だ。言うなればこいつは、『魔剣・十一星』って所だな。何故俺がここまで丁寧に説明したか分かるか? 分かるよな。今からコレの効果測定を行う。測定内容はリベリスタの抹殺――」 コンクリートの壁に、顔写真付きのレポート用紙を張り付けた。 これも過去の報告にある顔である。 「『鉄拳』の生き残り、更に言うなら裏切り者の……天道烈斗。調べた所によれば、アークの仲間に寝返ったらしいが、一足遅かったな。今からこいつを囲んで殺すぜ」 ●魔剣・十一星 「以上が、送られてきた映像です」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はスクリーンの前に立った。 VHS媒体で送られた上、不幸の手紙よろしく何人もの手を渡ってダビングされたらしく、サイレントメモリーを初めとするあらゆる調査に対する対策が取られていた。 「かなり頭の回る人間のようです。『鉄拳』と『斬鉄』をめぐる戦いも、彼が裏に居たとみて間違いないでしょう」 彼――仮称『ホワイトマン』。 年齢どころか性別すら不明であり、少なからず神秘に属する人間であることは間違いない。これまでの報告の中にも、ちらほらと散見していた人物である。 「彼の目的は、メッセージの通りです」 リベリスタ『天道・烈斗』の抹殺。 彼は元鉄拳のリーダーであり、リベリスタ達と拳を交わしたことでフィクサードからリベリスタに転身したとされている。 彼は元仲間の遺体を回収して弔うつもりだったが、そこに漬け込まれ罠に嵌ったようだ。 「彼等専用のトレーニング施設だった廃墟ビルで、交戦に入った模様です。1対11では勝てる見込みはありません。彼を抹殺した後も、きっと同じようにリベリスタ狩りをするでしょう。今すぐ現地へ向かい、彼等を撃破して下さい」 和泉から渡された資料によれば。 アーティファクトによって強化、強制稼働させられた鉄拳十一星は、どれも強力な個体である。 生前同様多彩な格闘技を扱う。詳細なスキル構成は不明だが、剣や銃などの武器使用を前提とするスキルは持ち合わせていないだろうと思われる。 ただし、活動中のキャッチフレーズが『拳でRPGに勝つ』だったこともあり、対銃撃戦には慣れている模様。 「天道烈斗の命は、皆さんの手にかかっています。どうか、宜しくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月17日(火)23:50 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 10人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|