● 小さな小鳥が泣いていた。 太陽が一番高いところで止まっている、と。 今日と同じ、朝日が沈む。 海の流れも、寂びついている。 もうだめ ここも黒く染まってしまった 大きな大海を泳いでいた。 しばらくすれば、知らない海に出ていた。 そこには沢山の希望があったのだ。私はそれを信じた。 あちらと、こちらを繋ぐその穴を通れば、待っていたのは―― 深い、深い、絶望。 金髪に飾られたスターチスの花は、全てを見ていた。 アベンチュリンを装飾した首飾りは、幸福をもたらすと言う。 悲しく思ったのか、髪に飾られたリボンが光を放った。 銀の指輪が行くべき方向を指し示す。 ――行こう、あの場所へ。 手に持つは白き貝殻。それはそれは……、とても小さなパンドラの箱。 ● 「皆さんこんにちは、桜はそろそろ満開になっても良いころ、でしょうか。 そんな時期ですが、お仕事は海です。寒いですので風邪をひかないようにですよ」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)はいつも通りにブリーフィングルームの中に居た。 「数ヶ月前ですが、人魚のアザーバイドさんが此方の世界で迷子になっていたのを助けた事がありまして。 その人魚さんが再び此方の世界にいらっしゃるのです」 それだけなら良いのだ。しかし、良くないものも一緒に連れて来てしまうと言う。 一般的には、龍と言えばいいのだろうか。 とてつもなく巨大な海蛇の様な化け物。それが一緒に此方の世界に来るという。 「人魚さんが持っているアーティファクトを狙っている様です。 それがどんなものかは不明です。それを彼女は渡しに来ている様なのです」 モニターに映し出されたのは、シンプルな白の貝殻。その中には何かがあるという。 それを持ち帰り、あとは此方で解析すると杏里は言った。 人魚の世界の物品だ。扱いはとても丁寧に行うようにとも念を押された。 「……人魚さん、少々危険でして」 そこで杏里は付け足す。 「人魚さんは、龍に傷つけられており満身創痍なのです。正直、急がないと彼女が沈みます。 時間との勝負かもしれません。渡すべきものを渡せば彼女は来た道を辿って帰るでしょう。とにかく、お急ぎくださいませ」 杏里は資料を手渡すと、深く頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月21日(土)23:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● その日、海は静かに漂っていた。 遥か彼方。広がる大海から落ちてきた。 その世界は、彼女には輝いて見えていた。 けど、けど――何かを犠牲にしてでも、故郷の海は護らなければいけなかった。 ●再び始まる物語 二艘の船が、大海原を渡って行く。 一方は後方で止まり、リベリスタの帰還をただただ待ち続ける。もう一方はそのまま進んで行っては、人魚の再来を待った。 「フォーチュナからの情報だと、ここらへんらしいのですが」 「そう、ありがとう」 船の運転手がリベリスタ達にそう言った。 『薄明』東雲 未明(BNE000340)がそれに頷きながらも、更に言葉を付け加える。 見るからには、運転手は革醒者。けれど戦闘向きなほどに力がある訳でも無さそう。 「貴方も用心してね。何が起こるか分からないわ」 しかし、此処まで来てくれてありがとう、と未明は心中を言葉にした。 それには運転手もにっこり笑い、奥へと消えて行った。 「向こうの世界は海の世界なんスかねぇ」 「そう思われる。だが、上位の世界だ、検討はつかない」 『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)が疑問を口にすると、すぐにヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)が答えた。 人魚が住む上位世界の名は未だ分からない。 その世界にも広がる青い大海があるそうだが、それが黒く染まってきているという。その一大事を解決すべく、彷徨っていた所で此方の世界に迷い込んできてしまったのが前回の一件だった。 だが、再び戻ってきた。 「……きっと深い理由がありそうですね」 『白の祝福』ブランシュ・ネージュ(BNE003399)が広がる水平線を見ながら呟いた。 いくら下位の世界といえども、人魚にとっては異世界。何が待っているかなんて検討もつかない場所に足を踏み入れようだなんて、普通は思わない。 そんな危険を孕んだ旅路でも、やらなければいけない、成さねばならない事とは一体なんだろうか。 その時だった。 静かだった海だが、リベリスタ達の目が届くその奥の海が波うち、荒々しく水面を散らしているのが見える。 その水面に輝くエメラルド。だがそれだけでは無い。赤い、赤い血も一緒に軌跡を描いている。 人魚は満身創痍だった。龍に追われ、時には追い詰められ、逃げ込んだゲートの先にまで追われている。 疲労も心もいっぱいいっぱいだろう。 「ご登場よ」 『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)がそれを目にし、その目を閉じて仲間に告げた。それから白き翼を広げその方向へと羽を羽ばたかせてゆく。 「任務開始だ」 その言葉と同時に『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)が軍服に似合う帽子を深く被った。 「ではまず、予定通りに護ることから始めましょう」 それに続くようにして『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)が存在さえ珍しい己の武器の銃口を向けた。 彼が探すのは人魚では無く、それを追いかける龍だ。 氷璃が直感を利かせて辺りを探し始める。いるはずだ、いや、いないとおかしい。 目に捉えた大きな影と、硬い鱗を身に纏うそれ。 そこだ、と氷璃が龍の位置を特定し、その横をエメラルドが水面から勢いよく飛び出した。 「こっちです!! こっちに!!」 タワーオブバベルが意味を成すその声で、ブランシュが人魚に呼びかけた。それに釣られるようにして、人魚はその方向へと進んで跳ねる。 濡れた金髪が氷璃の横を通過したとき、『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が人魚の下へと飛ぶ。 だが、早さは龍の方が早かった。 見知った顔に、人魚は雷音へと手を伸ばす――だが。 久しいな、今は再会を喜んでいる場合ではないか、そう言いかけた雷音の目の前で、龍が人魚を口の中へと収めて水面へと消えていった。何かを救うには、少女の小さな手では溢れて零れてしまうのか。 長い体は顔を先頭に、それに繋がって水中を水面を揺らす。 再び顔を出した龍。その瞬間に、氷璃の響く多重の魔法陣が響く黒き閃光が貫いた。 そこでやっと翼の加護がリベリスタ達を包んでいく。 「まだ、まだこれからですから!!」 叫んだブランシュ。死なせるわけにはいかないのだ。はるばるやってきた旅路の最期がこんな終わり方なんてさせない、させてたまるものか。 その想いに飛び上がるリベリスタ達が次々と龍へと攻撃を放っていく。 物語の中の人魚はいつも不幸を背負って消えていく。 できれば目の前の人魚だけは幸福の中に居て欲しいと願っていた。 けれど、今は、今だけは、人魚よ生きていてくれと願うしか無かった。 ● 「大丈夫、まだ彼女は生きている」 魔力を高めたエリス・トワイニング(BNE002382)は直感だけでそう言う。だが研ぎ澄まされたその直感は、真実を語るのだ。 見えない人魚にテレパスを送ることは困難となってしまった。 切り替えたリルが龍へと視線を向けて、その思考を読もうを意識を集中させる。何か少しでも、視覚的にでも見えれば仲間に伝えよう。だが、見えたのは。 「……ぅ、ひぎっ!?」 リルの身体が、びくりと跳ね上がって静止し、痙攣し始める。 脳内を支配するのは、異界の見知らぬ音や声。上位世界の複雑かつ乱雑なる言葉の羅列が、一瞬で脳内を支配した瞬間にリルは頭を抑えて倒れた。 だが、情報はきちんと目に見えて分かった。 黒に染まった海水。 流れる血。 突然暴れだす龍や人魚。 感染感染感染感染感染感染感染感染感染感染。 「リル!?」 守護の結界が仲間を包むその中で、綺沙羅がリルの名前を呼んだ。 その言葉にはっと我に返ったリルは、ぎこちなく立ち上がりながらも、未だに痛む頭を抑えている。 「分からないッスけど……分かった気がするッス」 きっと、目の前の龍は自身の意思で攻撃をしていない。 きっと、目の前の龍は何かに感染している。 きっと、その原因が黒く染まる海水。 そして、その唯一の治す方法とやらが――。 そんなリルの眼前が青く光輝く。他のリベリスタから見れば、龍の口から放たれた光線がリル目掛けて飛んでいたのだ。 思考を読まれたのが気に食わないのか、それとも反射的なものなのかは分からないが、光線はリルを直撃し、その背後に控えていた船さえふっ飛ばして凍らせていく。船は脆くも、その場で横転していく。これには身体をロープで繋げていたウラジミールもそのつながりを切るしかなかった。 「あっ!?」 未明はふと、船の運転手が気にかかって振り返るが、もう攻撃の手を止める訳にはいかない。 すぐに龍を見据え、高速で切りかかってゆく。 「全く、龍のクセに不老不死にでもなるつもり?!」 切り裂く剣には、普段異常に力が篭っては、混乱の呪いを置いていく。 それに続いて氷璃が再び堕天の陣を紡ぎ始めていた。 かの、フィクサードの操った陣を脳内で自然に思い出しては、それと同じように繋いでいく。それは幾度となく発動させてきた。もう手足を使うように容易く陣を描く事が可能だ。 白い翼の背後で、漆黒に輝き栄える陣が氷璃の身体と一体化しては、黒き閃光が周辺を包む。 「貴方は招かれざる客なのよ。お引き取り願えるかしら?」 貫かれる龍は、その身体の異変に悶えていく。攻撃力こそ無いものの、その石と化していく感覚はなんとも不愉快だ。 横転した船の上で器用に位置を取り、運転手の首元を掴んで救出していた星龍。 「おい、生きてるか」 「は、はい……」 若干震える運転手から手を離し、星龍が眼に神秘を持たせて強化させる。 だが、それだけれは終わらなかった。そのまま向けた銃口の先を龍へと向けたまま、トリガーを躊躇い無く引くのだ。 「仕事は、早く済ませたいもんでな」 意志と魔力を込め、光を描いていく弾丸は石化した鱗を弾き飛ばしながら龍を射抜いたのだ。 大きな身体こそあっても、避けられるほど俊敏では無かった龍。 とぐろを巻くその長い身体が海上に見え隠れしている最中で、顔だけはリベリスタ達を見下ろしていた。 「い……っ!?」 龍の牙が、未明の腕を突き刺してはそのまま海中へと誘う。大きな水しぶきと、大きな音を立てて水面が荒く弾けて龍と未明を受け入れた。 未明の腕。貫通した牙からは血が漏れ出しては、海の青へと浸透する。 水中では上手に身動きが取れない。まだ人魚が健在なのならば、彼女は迷わず未明を助けに潜っただろう。 視界が歪む、その水中。 息さえ苦しいその中で未明は喘いだ。 不自由な片腕は、塩水に激痛が走る。もう片方の腕は天へと向けた。 誰か。誰か。 未明の頭には愛しい金髪の彼の姿が思い浮かぶ。けれど、戦場には彼はいなくて。小さな腕は、天へと這い出ることも叶わない。 しかし、その未明の腕は、確かに誰かが掴んだのだ。 (あんまり、手間かけさせてんじゃないわ。仕方の無い) それはエメラルドに輝く人魚でも、誰でもなく――水中に似合わない、白き翼を携えた氷璃の暖かい手だった。 水中から飛び上がる、氷璃と未明。 それに続くようにして龍も再びその顔を水面から出しては、リベリスタ達を見据えた。 数秒ぶりの空気に氷璃と未明の肩は忙しく上下していた。 「ありがとう」 「……ええ」 一瞬だけそう言葉を交わし、二人を裂くようにして放たれた龍の氷結の光線。 が、二人はそれを回避し、逆の方向へと空中を走る。 龍の攻撃はそれだけでは終わらない。言葉というよりかは音として聞こえる咆哮を高らかにあげながら、その大きな頭を一閃、横に振る。 それにリベリスタが弾き飛ばされる中で、ウラジミールは己の武器と腕を交差して龍を受け止める。 足場の無い空中では、襲ってきた力を流す場所は乏しい。信じられるのは、己の身だけである。 「ぐ、っ」 思わず声が零れた。 だが、それこそシャウト効果で龍の強力を受けきる力となる。お帰り願うのだ。任務のためならどんな事でもしてみせよう。 そのウラジミールの背から星龍の弾丸と、綺沙羅の作った烏が龍の頭を貫通していく。 「人魚を、返してもらおう」 それから飛び出したヒルデガルドが輝く気糸を放っていく。それは真っ直ぐな弧を描きながら龍の血走った目を射抜いていく。 眼球を狙われた龍は痛さに身体を揺らし、水面を尾が弾いては水飛沫がリベリスタ達へと降った。 しばらくして、人魚が吐き出されると共に、水上に浮かぶヒルデガルドへとその人魚の身体がぶつかる。ヒルデガルドはその衝撃に耐えつつも、人魚を受け止めては大事にそうに抱えた。 大丈夫、エリスが言っていたようにその息はまだある。だが、虫の息だ。 震える人魚はヒルデガルドへと手を伸ばす。その手の中にある、それはそれは大事な――。 その人魚の手にヒルデガルドは手を重ね、確かに貝殻を受け取った。 異邦の娘。これ以上、触れさせはせん。 ヒルデガルドがキッと向けた視線の先で、龍の巨大な頭部が勢いよくリベリスタ達を薙ぎ払っていた。 それに翻弄されつつもブランシュが空中で回転しながら体勢を整え、吼える。 「もう、これ以上、好きにはさせませんからね!!」 響く、ブランシュの歌。 傷つき、倒れそうになりながらも此方の世界に来た人魚を殺すわけにはいかない。 それに応えるように歌は威力を増しては、人魚を巻き込み、更にはリベリスタ達の傷を癒していく。 回復の手は十分に揃っているリベリスタ達。その傷は完全に癒えていく。それは、状況が非常に有利であることを示していて。 「こっちに興味を持つと良い。けれどそれがお前の過失となる」 綺沙羅が札を前へと放り、それが形を成していく。飛翔する漆黒の小さな鳥。それが、龍を射抜いては散っていく。それが龍の怒りを買い、その攻撃の矛先を綺沙羅へと向けるが――。 「そっちを見ている暇があるのかね?」 「身体の割りに、脳は小さいんじゃない?」 ウラジミールの、影を吹き飛ばす程に光り輝くコンバットナイフが。 未明の、止まらない早さから振り落とされる剣が。 二つの矛が、龍の身体の傷つけては、空中を滑っていく。そして―― 「どうやら終わりは見えているようだな」 星龍の、幾度目たる呪いを撒き散らす弾丸が銃口から射出されていく。 それが龍を射抜いていく瞬間に。 「ボトムチャンネル、なめてんじゃねえッスよ」 頭痛から脱出したリルが龍の身体を駆け上りながらも、その身体に気糸を絡めさせて縛っていく。 龍の頭上に足をかける頃には、光る気糸が龍の自由を奪いつくしていた。 「貴方にも役目があるのでしょうけれど、手加減はしないわ」 氷璃が今度は四色の魔光を従えた。 混合されていく四色が、煌びやかに龍の身体を蝕んでいく。 堪らない、そう本能で察したか。ついに龍は、その見下ろす顔を海面へと落としていく。その顔に続いて胴体が、尾が海面へと続いて沈んでいく。 残ったのは、リベリスタと人魚だけ。 静けさを取り戻したそこに、人魚の荒い吐息と波の音だけがリベリスタ達の耳に響き続けた。 ●エピローグであり、プロローグ 予備で控えていた船の上。 ボート上に、海水を少し浸して。その中で、人魚は身体を濡らす。傷ついた身体が海水に浸みるが、顔色一つ歪ませない人魚に、切羽詰った状況が垣間見えた。 「……なるほどね。これはそういうものなのね」 綺沙羅がうんうんと顔を上下に振りながらそう言った。深淵を視ることができる彼女はそのアーティファクトを理解した。 「つまり、黒く染まる海は、そこに生きるモノを凶暴化させていて。今まさに戦った龍もそうみたい。 そしてこの秘薬こそ黒く染まった海や、凶暴化を治す手立てなの。でも、どうしてそんな大切なものを此方に?」 『……それは』 意志の疎通は雷音を介して行われるが、人魚はそこで言葉を止めてしまった。 打開されない重たい雰囲気に、ブランシュができるだけ明るい声で言う。 「まあまあ! 人魚さんも無事なことですし、難しいことは後にでも! 今傷を治しますからね」 ブランシュの丁寧に紡がれた魔力が、聖なる風となって人魚の傷を埋めていく。 それには人魚も感謝していた。でも、相変わらず表情は重たく、そして風邪でも引いたかのように顔色が悪い。 未だ黒く染まる原因は人魚の口から話されない。 静かな空気が流れる中で、大きく息を吐いた未明。 「あんまり無茶しないのよ、心配する奴は多いんだから」 人魚は恥ずかしそうに照れながら、顔を真っ赤に染めていた。そこに更に追撃の、リルの甘いお菓子。 信じている下位たる世界に受け入れてもらえているようで、嬉しくて。 「力なら貸して上げるわ」 氷璃が濡れた髪をかき上げながら、真っ直ぐに人魚を見据えた。 『それは、是非とも、お力をお借りしたい……です』 力の無い返答に氷璃は首を傾げた。 「それで、秘薬をどうして欲しいのかな?」 『持っていて、ください。きっとそれが、役に立つ時がくるはずです』 綺沙羅は貝殻に収まった秘薬を大事に仕舞う。その言葉が本当なのなら、それはどういう意味なのだろうか。 それからまた人魚は口を閉ざしてしまった。これ以上は聞けない、いや、言えないのだろう。 「任務完了だ」 ウラジミールがそう言えば、人魚は来た道を戻ろうと尾を動かす。 そういえば、と。去り際に綺沙羅と雷音が人魚を呼び止めた。 「ボクは朱鷺島雷音、君の名前が知りたい」 遅くなった自己紹介。人魚は少し躊躇いながら、こう答えた。 ――レヴィアタン。 しばらくしてだった。 開いた穴から黒が侵入し、侵食を始めていた。 『う、うぅ、私も、もうモタナイ……ゴメンナサイごめんなさい』 さよならの合図はとっくに終えた。消える自我の中で謝罪を続ける。 恩を仇で返した戒めは、彼女の身体を蝕んで。 綺麗な歌を響かせる口は、今こそ血を啜る刃と成るのだ。 それをただ、髪に飾られたリボンは静かに見守っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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