●パートA:不老不死の女 人魚は不老であるから、人魚の肉を食べれば同じ不老になれるのだ。 そういう話くらいならば、誰でも知っていようものである。 しかしどうだろう。 実際に人魚が目の前にいたとして。 あなたは食べるだろうか? ●パートB:海賊団SHARK_JACK ある海域を中心に、漁船等を襲っていたケチな海賊団がいた。 彼らはアークのリベリスタによって壊滅し、船ごとその姿を消したとされている。 しかし、リベリスタ達が調査をかけた結果、船長の日誌にとある記述を見つけた。 『マーメイドガールを見つけろ。奴は――にいる』 一部が掠れて見えなかったが、この情報を頼りに再調査をかけ、ある事実が発覚した。 否、ある存在を発見した、と言うべきだろうか。 「人魚……と呼んでいいのかもしれません」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はファイルのページをめくりながらそう言った。提示されたイラストは、まさしく人魚そのものである。 下半身を魚にしたビーストハーフ、とでも言おうか。 無論、そんなビーストハーフがいる筈は無い。 「どうやら、あるアーティファクトの効果でこのような姿になったものと考えられます」 「アーティファクト……」 「はい」 表情薄く、和泉は言う。 「仮称『人魚の涙』。自身の下半身を魚に変える代わりに、不老になるアイテムです。ただし、本人を殺害し、その肉を食うことで所有権を移動、不老効果そのものを移動できる効果を持ちます……が、分かっているのはここまでです。他に副作用があるかもしれませんし、最悪死に至る場合もあるでしょう。今回はアーティファクトを、人魚ごと回収することが目的となります」 不老の薬、である。 ならば求める者も多かろうというものだ。 「現在、無名の小規模フィクサード組織が『彼女』の居場所を突き止め、回収に向かっています。リーダーの名前は『陸鮫・歯軋』。ビーストハーフです。戦闘力は不明ですが、それなりの実力者ではあるでしょう」 資料を渡し、瞑目する。 「彼等との争奪戦が予想されます。皆さん、充分に準備を整えた上、回収に向かって下さい」 ●パートC:マーメイドガール 四畳半一間の畳部屋に、様式のバスタブが置いてあるとすれば、それは随分異様な光景だとは思う。 だがそこに、一人の少女が入っていて、その下半身が魚の尾鰭であるとすれば、異様を通り越してもはや異世界の光景である。 バスタブには水は張られていない。 少女はバスタブから半身を乗り出して、男物のシャツにアイロンをかけていた。 ぱりりとノリをきかせ、丁寧に折りたたむ。 部屋の隅の箪笥に手を伸ばすが、どうも届かない。 仕方がないとばかりに、自身をふわふわと空中に浮かせ、箪笥のところまでゆっくりと移動していった。 そんな所で、家の扉が開く。 「ただいま」 「あ、おかえりなさい」 笑顔で振り向く人魚の少女。 ワイシャツを着た男は、困った顔をして笑った。 「家事なんてしなくていいのに。飛ぶの、疲れるんだろう?」 「あなたが働いている時程じゃないわ。このくらいはさせてって言ったじゃない」 くすくすと笑う。 二人は軽くキスをして、ちゃぶ台にビニール袋を置いた。 ある日常のことである。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月13日(金)23:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●Mermaid template この世界が全て愛で出来ていたなら、それはとても幸せなことだと思う。 「不老なんて、不死なんて。碌なものじゃないわ」 車窓の外を見つめて、『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)は呟いた。 銀色の髪が雨粒のついた窓に反射する。 彼女はそう『長くない』人生の中で、愛は永遠ではないことを知っていた。時の流れ方が違うだけで、人は簡単に断絶されるのだと知っていた。 「残される孤独、だよね?」 恐る恐る頭を傾げる『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)。 「あの人達も、幸せそうなのに。そんなのつまらないよ……悲しいことだよ」 深い人生経験があるわけではない。長さと深さは比例しないのだ。 そんなアーリィにだって、分かることくらいはある。 これを齢十二歳の『スワロウ・スパロウ』出合島 白山(BNE003613)に言わせればこうだ。 「終わりのねぇゲームほど、くだらねーもんはねえのによ」 種の違いにしろ、流れる時の違いにしろ。 人魚の物語はいつも悲劇だ。 「十二年も良きてりゃ、分かるんだよ。そんなもん」 「……そうね」 ある意味でちぐはぐな、ある意味であべこべな三人は、殆ど同じ気持ちのまま、すわり心地の悪いシートに揺られていた。 『折れぬ剣《デュランダル》』楠神 風斗(BNE001434)が携帯電話を閉じる。 「……ふう」 何かをやり終えた様子に、『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)が小声でお疲れ様ですと呼びかけた。 「今回の回収」 「はい、私はその……怒られるかもですけど、回収って考え方はしてないデス。助けに行こうって」 「それは俺も同じだ。あえて悪役面をしてくれる奴もいるが、こういうとき、そう思わないヤツは居ない」 とは言うものの、風斗はどこか諦観めいた顔をしていた。 僅かな沈黙を挟んで、唐突に口を開ける。 「人を一年間頼り続けるのに、どれくらいのコストがかかると思う」 「……ええと、二百万くらい、ですか?」 「俺は少し、組織って言葉に甘え過ぎてたかもしれないな。大きな組織はお金を沢山持っている、というような。名分があればタダで動いてくれるような……。だが何をするにも、形のあるコストがかかる。全部を俺がやれればいいが、俺の身体は結局一人分しかない」 「それは、どういう?」 「いや、忘れてくれ。今回の依頼……もしかしたら、最後の最後まで付き合うことになるかもしれないぞ」 うまく行けばだが。 そう付け加えて黙りこくる風斗。心は不思議顔をしたが、深くは追及しなかった。 もしかしたらこれが、後の大きな火種になるかもしれなかったが、未来を知らない人間に察する術は無い。 そんな彼らの後ろで、『足らずの』晦 烏(BNE002858)と『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)が肩を並べていた。 「不老のアーティファクトか……殺して食って、所有権を移動させるんだろ?」 「そう考えると、今回『回収』に当たる人魚はどうやって今の人魚になったのか……って?」 「ああ、腑に落ちねえよな」 「なに……人魚伝説は悲劇と相場が決まってるもんだ」 彼らの更に後ろから首を突っ込む『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)。 「オレとしては、面白みのない三流のハッピーエンドと洒落込みたいんだがな」 ●人魚と陸鮫歯軋 ある港町から少し奥へ行くと、住宅街へ出る。 ガタガタとした、古風と言うよりボロい作りの家々が並び、アパート類が多いことから元々出稼ぎ街であることが窺い知れた。 そんな通りの一画に、人魚の住まいはある。これもまた、古いアパートの一室だった。 各所の作りがボロいだけに、通ろうと思えばどんなルートからでも侵入できる。だが相手が待ち伏せや邪魔立てを予期していない以上、通り易く、分かり易く、できればワゴン車が難なく通れる程度の道を選ぶだろう。 この程度は予測の範囲内である。 だから、氷璃たちの目の前に黒いワンボックスカーが停まり、調査書通りの男達が下りてきたのを見ても大した反応はしなかった。 男の内一人が懐から銃を抜く。氷璃たちの非人間的な様子を見て、状況を半分くらいは察したのだろう。 「リベリスタがぞろぞろと、偶然通りかかりましたってことは無いよな? この場所で待ってたってことは俺を狙ってたってことだよな? だから撃ってもいいんだよな? そうだよな?」 男が銃を発射するのと、クルトが前に飛び出すのは大体同じタイミングだった。 弾丸を掌で掠め取る。受けきれない衝撃を無理やり逃がし、クルトは壱式迅雷を予告なしに放った。 車から飛び退く男達。合計四人。 クルトは素早くクルト達に目くばせをする。風斗は烏やアーリィ達を連れて人魚の元へと駆け出した。 「ナンダァ? こっちの人数まで把握してたのか? アークか? やっぱアークなのか? だったら殺さなきゃ殺されるよなあ? だったら撃ってもいいよなあ!?」 男は懐から二丁目の銃を取り出して乱射。 対して白山がクルトの後ろからマジックアローを連射。命中率を無視して威嚇射撃した。 「あんたらの縄張りじゃねえんだ。そう上手くはいかねーよ」 「それともう一つ」 ゆっくりと構えるクルト。 「鮫の船長を殺したのは俺だ」 「……刃毀さんを、か。だったらノロノロできねえな。歯軋さんが心配だ、とっとと抜けるぞ」 男はそう言うと、仲間の一人を車に乗せた。アクセルを思い切りふかし、狭い道路を突っ込んでくるワンボックスカー。 「チィ――!」 体勢を低くして駆け出し、拳にストールを巻きつける福松。 「お前らは」 強く踏み込む。 「馬に蹴られるまでもない」 腰を大きく捻る。 「オレが」 深く振りかぶり、車のど真ん中に拳を叩き込んだ。 「殴り飛ばしてやる!」 車が派手に前のめりに傾き、後輪が浮き上がる。 腰から小さい銃を取り出して運転席に連射。弾頭一個分の穴を通して、運転席の男が額を脳内を派手にぶちまけた。 無理矢理停止した車の前面を駆け上がり、白山がループパネル(天井)に乗っかって更にマジックアローを乱射する。 良い的である。男達が彼に狙いを定めた――その途端、白山に翼が生えた。確かにそう見えたのだ。 だが実際には違う。 彼の背後から湧き出るように、もしくは放出されるように、翼を広げた氷璃が魔方陣越しに手を翳したのだ。 「さあ、覚悟はいい?」 血色の鎖が大量に射出され、男達を締め上げる。 次々に力尽きる男達。最後の一人に指を向けて、氷璃は冷たい目で問いかけた。 「『彼女』を手土産に、主流七派の傘下にでも入る心算?」 男は沈黙を返す。リーディングをかけられているのを自覚しているからだ。余計なことを考えれば読まれる。 「……」 目を細める氷璃。 男の思考は僅かに走り、『チャーム・スウィーニーが人魚を欲している』という文言と、うっすらとした顔の情報だけが流れてきた。 男を魔氷拳で殴り倒すクルト。 「何か情報は得られましたか?」 彼は振り返り、氷璃に問いかける。 氷璃はぽつりとこう言った。 「この顔、知ってる気がするわ」 一方。 風斗は錆びついた階段を三段抜かしで駆け上がる。この手の階段は勢いが良すぎると踏み抜けるので、一応は気を遣う。 そして『202号』と書かれた金属扉の前で止まる。 「どけ!」 コンマ五秒程迷った後、烏が割り込んでドアノブにショットガンを突きつけた。連射。銃剣を歪んだドアの隙間に差し込んで無理矢理こじ開ける。 中は狭い部屋である。だからこそ状況はすぐに分かった。 人魚の腕を掴んだビーストハーフの男。 床に倒れて気絶している一般人の男。 あと二名のフィクサード。見た所翼の加護を受けていた。 「警戒しておいて正解だった!」 風斗は勢いよく飛び込むと、鮫じみた歯の男、陸鮫歯軋にメガクラッシュを叩き込んだ。 吹き飛ばされ、箪笥に背中からぶつかる歯軋。 そこへ垂直に飛行した心が突撃。肩を掴んで再び箪笥へ押し込んだ。木製の脆い箪笥だったのだろう。簡単に砕ける。 「守りに来ました!」 驚きに目を見開く人魚に、心は一言だけ叫ぶと、羽と足の力を強めて歯軋を押さえつける。 「リベリスタか。お前らも生きるのに金が必要ってか」 「お金? 強盗しに来たんじゃないです!」 「とぼけんな。そこの人魚がいくらになるか知ってんだろ? でなきゃこんな必死に横取りに来ねえよなあ」 「……な」 横目で人魚を見る。 人魚は小さく首を振ると、扉と窓を交互に見やっていた。 「死にたくなければ伏せていろ!」 銃剣を構えて転がり込む烏。男が二人がかりで人魚へ掴みかかったが、それをタックルで押し倒す。地面に腕と頭を押し付ける。腹に拳銃を突きつけられたが無視した。引金を矢鱈滅多に引かれて二発貫通。一発は腹の中にとどまった。 「ああ、クソッ……!」 じわじわとシャツに血が広がる。 残り一人が人魚を狙っていたが、今は風斗と取っ組み合っている。 振り返る人魚。ドアへの直線ルートが開いている。 一瞬、気絶している同居人の男に目をやったが、強く目を瞑ってその場から飛び出した。 ドアから逃げよう。飛んで逃げても捕まる筈だ。どうしよう。どうしたらいい。でも逃げなければ。 彼女が玄関口に達した所で、アーリィが立ち塞がった。 いや、塞がってはいない。通ろうと思えばいくらでも通れるくらいの隙間を開けて、アーリィが強い視線を送ってきたのだ。 「待って下さい!」 「…………」 スキルとしてのマイナスイオンは出ているらしいが。落ち着ける状況ではない。無視してもよかったし、現に半分くらいはドアから出かかっていた。 しかし、なんというのだろう。 アーリィの必死な視線が彼女を繋ぎ止めていた。 「あの、上手く言えないですけど……普通に暮らせるように頼んでみますから、だから」 この状況に何を言い出すんだ。 何に頼むと言うのか。 お父さんにでもお願いするつもりか。 怒りが沸く。殺意にも似ていた。 しかし、言葉には出なかった。 「信じて、欲しいです」 悪意はないのだろう。 そうでなければ、ここまで申し訳なさそうな顔はするまい。 人魚は黙って頷くと、その場にふわふわと浮遊したまま留まった。 アーリィは直角に頭を下げて、風斗たちの戦いに加わる。 人魚はそこから目を反らした。 ●不老の肉 この場合結論から述べた方が冗長にならずに済むだろう。 風斗達は、狭い室内だけに苦労はしたものの、実質的には大した人的被害を出すことなく歯軋たちを倒した。 いや、『倒した』などと甘えた表現をするべきではないだろうか。 一人残らず殺害したのだ。ショットガンで頭を吹き飛ばし、心臓を抉り、徹底的に打撲を与えた後窓ガラスから放り出し、車のボンネットに突っ込ませた。無惨な死体が複数出来上がり、その処理に多少なりとも手を焼いた。 それを、人魚は気持ち悪そうに眼をそむけていた。 彼らと合流したクルトは、その様子にどこか引っ掛かりを覚えていたが、言葉には出来ていない。 大きな音がしたので大家や近所の人間が顔を出してはいたが、結界があるからかあまり積極的には触れてこなかった。元々、近所づきあいも薄かったのだろう。 ともあれ。 家具や壁、窓や扉を滅茶苦茶にしたままではあるが、事態は一時的な落ち着きを見せたのだった。 傾きかけのちゃぶ台に、ティーカップが置かれている。 クルトがどこからともなく出してきたものだ。 元来『お茶を出す』と言う行為には、相手を現地に縛る意味がある。 柔らかな拘束というべきか。人魚も正座するように下半身を折りたたんで畳の上で浮いていた。 同居人らしき男はまだ意識を取り戻していない。薬でも嗅がされたか、強制的に落とされでもしたのかもしれない。 「『Choose thy love. Love thy choice』」 「……ドイツの言葉、ですね」 目を反らしたまま人魚は言った。 クルトは自分も紅茶に口を付けつつ、穏やかに瞑目した。 「このままでは君の恋は叶わぬものになる。アークなら、生かしたまま君を解放する手段を探すだろう」 「…………」 烏が煙草を携帯灰皿に押し付けながら苦々しい顔をした。 今の言葉が半分は嘘だと言うことを、何となく察したのだ。アークは大規模組織だ。だから何でもできるわけではない。そして慈善団体でもない。可哀そうだからといって途方もない投資をして、ただ一人の人間を助けようとするか……確証はないのだ。最悪殺して焼いて骨だけ残して冷凍保存するかもしれない。肉さえ食わせなければアーティファクトとしては無力化するのだ。コストからみればお手軽な方法である。 だが大規模組織である分、極端な決定をすぐにはできまい。其れまでに、自分たちができる限りの探査をすることは……まあ、可能では、ある。 「まあ聞いてくれ。なにもあんた達の仲を割きたい訳じゃない。そこだけ解ってくれればいい」 携帯灰皿にキャンディの棒を突っ込んで、福松はあぐらをかいた。 「ま、騙すくらいならわざわざ説得しねーで連れ帰ってるぜ。野郎ぶっ殺してな」 未だ気絶している男を横目で見る白山。 風斗が鋭い視線で彼を見た。 「物騒なことは言うな。あと武器をしまえ……頼む」 「……あいよ」 白山が武器を収納したのを確認して、風斗は改めて居住まいを正した。 「まず最初に。我々はあんたを『保護』しに来たんだ」 目的は回収だが、あえてこう言う。 「よろしくない連中に目を付けられてるってことは分かるな? 勿論、彼と別れさせるつもりはないし、人間に戻れるように手を尽くす。彼がいつでも会いに来れるようにも、手を尽くすつもりだ。だから――」 「おい、それじゃあ警戒されるぜ」 ちゃぶ台に肩肘をついて、白山が胡乱げに睨む。 「『自分たちは何でもできるしやってやるから信じなさい』って、それじゃあ信用できねえや。後で何要求されるか分かったもんじゃねえからな。十二年も生きりゃ分かるぜそのくらい」 「…………」 風斗は苦々しく口を閉じた。 白山は視線を人魚に移す。 「本当に相手を想ってんなら、万一いっしょにいられなくても平穏に生きて欲しい……そう思うモンなんじゃねぇの? 愛ってよ」 アーリィは人魚の様子を観察する。 十歳前半の、小学生程度の人間に大きなことを語られていると言うのに、彼女は随分と真剣に話を聞いていた。 自分で言うのもどうかと思うが、福松にしろ白山にしろ自分にしろ、あまり説得力のある容姿はしていない。スレた子供の意見だと一蹴されてもおかしくは無いのだが。 ……なんだろう? こういう中身と外見があべこべな人間を見慣れているような対応だった。 少なくとも、普通の人生は送っていないな。 やや沈黙が続いた所で、心が身振り手振りをしながら喋り始めた。 「本当はアーティファクトの回収って任務だったんですが、うちのボスろまんちすとなんで、きっと悪いことにはならない筈デス」 「……」 「少なくとも私は、最後までお守りするデス。最終防衛機構鎧ガールズが一角、姫宮心が!」 こつんと鎧のブレストガードを叩く心。 人魚は深く頭を下げると、宜しくお願いしますと言った。 結局の所、同居人の男はその場に残してきた。 家も大変なことになってしまったが、仕方あるまい。 人魚を連れ、車を発射させる。 その後部座席で、氷璃と人魚が並んでいた。 銀色の髪が、雨粒のついた車窓に反射している。 髪の色が同じだ、などと思う。 「ねえ」 氷璃は穏やかな、それでいてどこか高圧的な声で問いかけた。 「貴女は何故、人魚になってしまったの?」 ゆっくりと振り返る人魚。 死線が一度だけ交わり、そしてまた車窓へと逃げた。 窓ガラスに唇が反射している。 「言いたく、ありません」 車は、港町を離れていく。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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