●Aパート 「キョカーカカカカ、この貯水池毒入れ作戦が成功した暁には、日本は我々の物だカニ!」 夜の採石場で蟹の甲羅に身を包んだ奇妙な怪人が大きな身振りと共に笑い声を上げる。 怪人の名前はカニマシンガン。 ダイヤモンドのように強靭な殻で身を包み、右手の鋭いハサミと左手についたマシンガンで攻撃をする恐ろしい敵だ。 そして、カニマシンガンの指示に従って、覆面で顔を隠した男達が車にカプセルを運んでいく。カプセルにはドクロのマークが描かれていて、危険物であるのは一目瞭然である。 神秘業界の常識として、夜にこんな奇妙な連中がいたら、エリューションと相場が決まっている。もちろん、他の何かである可能性は否定出来ないけど。 とまぁ、そんなわけで、さりげなく日常のピンチである。 この危機を救えるヒーローはいないのか!? ●順番変わってオープニングテーマ 間も無く4月になろうという3月末。、リベリスタ達はアーク本部のブリーフィングルームに集まっていた。そして、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は、メンバーが揃っていることを確認すると、依頼の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、エリューション・フォースの討伐とアーティファクトの回収だ」 守生が端末を操作すると、スクリーンに姿を見せるのは蟹のような外骨格を持つ怪人だ。 「現れたのはフェイズ2、戦士級のエリューション・フォース。ま、見ての通りヒーロー番組にでも出てきそうな姿だな」 結構淡々と説明が読み上げられる。 高城守生15歳、クールぶりたいお年頃である。 「こいつは持って生まれた本能に従って、貯水場に毒を撒くべく、近くの採石場で準備をしている。そこを倒して欲しいんだ。ただ、ちょっと厄介な事情もある」 困ったような表情で機器を操作すると、今度は鳥のような姿をした30cm程の人形が表示された。 「これがややこしくしてくれるアーティファクト、『四月馬鹿』だ。その名の通り、周囲の状況をアーティファクトが望む状況に変えてしまう。そして、その状況に即した振る舞いをしないものは、極端な弱体化をしてしまうんだ」 その言葉に悟ったような表情を浮かべるリベリスタ達。あぁ、あの手のブツか、と。 守生は肩を竦めてそれに答える。 「そういうことだ。この場では『ヒーロー番組』っぽい状況を作ろうとしている。だから、ヒーロー番組っぽい台詞回しとか、ポーズとかを取って戦わないといけない」 そうしないと勝てない。 まったく、リベリスタとは因果な商売である。 ちなみに、『四月馬鹿』を戦闘しながら探す試みは失敗に終わるだろう。戦闘後に探せばあっさり見つかるのだろうが。 「エリューション・フォースは、さっきのに加えてフェイズ1が10体程いる。いわゆる『戦闘員』だな。それ程強くは無いが、数は多いから、気を付けてくれ」 遊んで倒せるほど甘い相手でもない。その辺、バランスは重要だ。某フィクサードも言っている。 「説明はこんな所だ。資料も纏めてあるので目を通しておいてくれ。あと、演出に必要な機材程度なら、アークでも予算は下りている」 アークすげぇよ、と心の中で呟くリベリスタ。もちろん、自作しても構わない。 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月15日(日)22:25 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 某県採石場。 ジープにえっさほいさと怪しいドクロの描かれたカプセルを運び込む覆面集団の姿があった。 間も無く十分な毒入りカプセルの準備が整う。これだけの毒が揃えば、麓の街など一たまりも無い。 と、その時、カプセルを運ぶ覆面が、石に足を取られて転んでしまう。 「貴様! 何をしているカニ!」 怒鳴り声を上げるのは、エリューション・フォース、カニマシンガン。 覆面は慌ててカプセルをかき集めると、身振りで謝罪の意を示す。しかし、カニマシンガンは、そんなことでは許さない。 「無能に用は無いカニ。これでも喰らうカニ」 DADADADADADA! カニマシンガンの左腕から放たれる弾丸。それは覆面を消滅させてしまう。 「キョカーッカッカッカ! お前達もこうなりたくなかったら急ぐカニ!」 カニマシンガンの言葉に慌てて荷物の準備を覆面集団。 そこに月を背にした若者達が姿を現わした。 「貴様ら、何をしている!」 「ムム、何奴だカニ!?」 「みんな、今こそ変身ふも!」 カピバラとネズミを掛け合わして可愛くしたような生き物が合図を飛ばす。その後ろにいる黒子姿の坊主に対しては、見て見ぬ振りをするのが大人の態度ってもんだ。 「悪巧みはそこまでだ! 変身!」 崖に向かって鋏を振り上げるカニマシンガン。 若者達はそれぞれ手にしたアクセス・ファンタズムを掲げると、戦いの合図を返事とした。 赤を基調とした服の元気な少女がハルバードを手にガッツポーズを決める。 「赤キ星の伴星、リベリスタレッドー! お前たちの殻が赤いのも今日までだよ―、カニマジムン」 敵の名前が違わないかと言うツッコミも何のその。 続いて青い戦闘服に身を包んだ凛々しい青年が、右手を掲げ、ポーズを決める。 「蒼き旋風が悪を切り裂く! リベブルー!」 ターンをすると、無表情な少女はカニマシンガンに背を向けたまま短刀を手にする。 「知加子チェンジャーでチカレンジャイ、リベリスタイエロー」 背中から翼を生やした優しげな少女は、自分を抱きしめるかのような仕草で、祈りを捧げる。 「癒しの乙女リベパープル……箱舟の命によりこの場に参上つかまつりました」 ピンクの全身タイツを纏い、白いマフラーをたなびかせ、明るい少女はカードを掲げてポーズを決める。 「愛のカードマスター、うーにゃピンク! カニ星人め、覚悟するにゃ!」 敵が改造系なのか、神秘系なのか、侵略系なのか分からなくなってきた今日この頃。 最後に黒い衣装の物静かな青年が、けだるげなポーズを取る。 「……リベリスタブラック」 「ゆけ、正義の戦士達よっ! 悪事を企む輩に神秘の鉄槌を下すのだっ!!」 弩島長官の熱い声で叫ぶ。長官だってたまには前線にいたい。 その熱い声に合わせて、若者達はポーズを決める。 「神秘戦隊! リベリスター!」 神秘戦隊リベリスター達の後ろで派手な爆発が起こる。 そして、リベリスターの登場を目にしたカニマシンガンは、怒りを露にして覆面たちを差し向けた。 「おーのれ、リベリスター! お前達、やってしまうカニ!」 迫り来る覆面達。 こうして、神秘戦隊リベリスターとカニマシンガンの戦いは始まったのだった。 ● 「キョカーッカッカ! カニマシンガン様の恐ろしさ、その身に刻むカニ」 カニマシンガンの笑い声と共に、戦場へ弾丸がばら撒かれ、激しい爆発が起こる。そろそろ、固有名詞を正しいものに切り替えて、描写を行うことにする。 先手を取ったエリューションは、早速リベリスタ達への攻撃を開始する。お互い、アーティファクトの望むノリに従っている限りは、ちゃんと戦えるということだ。そして、「正義の味方が負ける展開」もそのノリの中であり得るものである以上、リベリスタの敗北もあり得る。遊んでいるように見えるが、これもまた、間違い無くリベリスタとエリューションの命を賭けた戦いなのだ。 「腹が減っては何とかなのでカレー食べてても良いですか?」 そして、『第20話:4月1日は1日だけ』宮部・香夏子(BNE003035)はキャラ付けを忘れずに、カニマシンガンの攻撃を回避する。イエローと言えばカレー、基本のキャラ付けである。何故かこの戦場では「知加子」と名乗っているが、アーティファクト対策の一環なのだろう、多分。 「困った相手だが、放っておくわけにもいかないし、特撮ヒーロー番組のお約束に準じれば上手くいきそうかな。ハッ!」 流れる水のような動きから、一気に炎の拳を戦闘員に叩き込むのは『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)だ。普段からスーツアクターとして、ヒーローを演じる彼にとっては、今回の戦いは手馴れたものだ。 「みーんな害獣にな~れ!」 明るく飛び跳ねるような動きで、『ピンクの害獣』ウーニャ・タランテラ(BNE000010)は、偽りの赤い月を呼び出す。その光を受けて、覆面エリューション達には倒れるものも出る。しかし、過半数はまだ健在だ。互いに顔を合わせるとナイフを抜き、リベリスタ達に切りかかってくる。 「ブラックシュート!」 しかし、ウーニャに向かうナイフは『リベリスタブラック』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)が阻む。そして、お返しとばかりに放たれた弾丸で、倒される。 「勘違いをするな、お前を倒すのは僕なのだからな……」 セシウムのキャラ立ては、いわゆるツンデレ。そして、名乗りを上げた時の爆発は、総て彼が準備したものである。意外にも、一番状況を楽しんでいるのかも知れない。 「リベリスターが大変ふも! みんな! ぼくが今助けるふも! ふんもっる! ……イテテ、いや、オレはいないことにしてくれって」 『神秘戦隊リベリスター』のマスコット『フモル』の可愛い声を必死で演じる『てるてる坊主』焦燥院・フツ(BNE001054)にも、ちゃんと覆面は襲い掛かる。覆面たちにしてみると、『フモル』を襲う扱いなのだろう。しかし、そんな中でもフツは『フモル』の仕事として、仲間のために守護結界を展開する。見上げた根性だ。 その後ろで、仲間達の回復を行う『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)と『求道者』弩島・太郎(BNE003470)の動き方は、それぞれ真逆だった。 「皆様の御怪我は私が癒します……だから、負けないで!」 「ふんぬっ!」 「癒しの乙女リベパープル」として、「神秘戦隊リベリスター」の回復を行うシエル。戦隊モノの奥深さを知った彼女は、知人に言われた通り、「癒しの乙女リベパープル」として振舞っている。 一方、普段人前で戦うことに慣れていない太郎の動きはどこかぎこちない。だが、それも正義のヒーローを後方から支援する、「弩島長官」らしさなのかもしれない。 そして、仲間の支援を受けて元気を取り戻したリベリスタレッドこと『吶喊ハルバーダー』小崎・岬(BNE002119)は勢い良く前に飛び出すと、愛用のハルバード「アンタレス」を覆面に叩き付ける。 「一度倒れて立ち上げるくらいじゃないとレッドらしくないかもー」 数こそ多いが、覆面達の戦闘力はそれ程高くない。 赤い光と爆発が飛び交い、岬の「アンタレス」が再び振り下ろされた時、覆面は1人残らず姿を消していた。 しかし、「神秘戦隊リベリスター」を襲う衝撃の展開は、まさにこの後で起こったのである。 ● 「たくましいハサミと甲羅の厚みが素敵だにゃ……」 「そのピンクの髪、白い肌、全てが魅力的だカニ……」 うっとりとした口調で、ウーニャがカニマシンガンの元へ駆け寄る。頬を赤らめ、まさしく恋する少女の表情だ。エリューションもまんざらではない雰囲気で、彼女を受け入れる。 「え!? そんな……こんなことって……」 「ネガエリッシュ!」 掛け声と共に華麗に宙を跳ぶウーニャと香夏子。 「貴様ら何故裏切った! まさか……」 問い詰めるセシウム。 「ごめん。うーにゃんは恋に生きる普通の女の子になるにゃ!」 「知加子は裏切らずには居られない……っ! なぜならもうカレーを食べてしまったから」 いつの間にやら、悪っぽいコスチュームに変わっている2人。 「キョカーッカッカッカ! 所詮、正義などその程度のものカニ。さぁ、正義の無力さを味わったところで、死ぬカニ!」 カニマシンガンは鋏を振り回して、勢い良く襲い掛かってくる。 「何て攻撃だ!」 必要以上に派手に吹っ飛ぶ疾風。 「く……強いです……私は何のお役にも立てな……い……の?」 「まさか蟹側につくなんて。故あれば寝返るのかー」 仲間の裏切りに同様を隠せないリベリスタ。士気は落ち、今まさに正義は敗れようとしていた。 だが、その時だった。 「目を覚ませっ!!」 太郎の一喝が戦場を揺るがす。 すると、ワルっぽい笑顔を浮かべていたウーニャと香夏子の表情が元に戻る。そこにオルゴールの優しい音色が流れ、合わせてフモルが2人に呼び掛ける。 「ぼくはぬいぐるみだから、痛みってわからないふも……でも、ウーニャとカナコの心が泣いてるのはわかるふも! ほんとはこんなことしたくないって……みんなを傷つけたくないよって、泣いてるふも……!」 フモルの下でオルゴールを回すフツ。 「無駄だカニ! この2人は既に我々の味方だカニ! ……な!?」 ウーニャと香夏子の瞳から涙が零れ落ちる。 それを見たリベリスターは、2人に残った人間の心に訴えかける。 「平和を愛する心を思い出すんだ!闇に心を奪われてはいけない!」 「本来の貴方様の姿を思い出して下さいまし」 「「ネガエリッシュ!!」」 掛け声と共に華麗に宙を跳ぶウーニャと香夏子。 衣装は再び元のものに戻っている。 「信じてました……きっと戻ってきて下さると……」 涙を流して喜ぶシエル。そして、現実を受け入れられないのはカニマシンガンだ。 「バ、馬鹿な……何故裏切る……カニ」 当然、一連の流れはアーティファクトの望む流れを作るための、リベリスタの策である。裏切った仲間を正義の心で説得する、確かに王道中の王道だ。それにしても、あっさりと策にかかってしまったのは、エリューションの出自としての本能ゆえであろうか。男として、気持ちは分からないではないが。 「ゆけっ! 今こそ、神秘の鉄槌を下すときだ!」 「りょーかーい!」 「さあ、ここからが本番です……」 最早ここまで来たら、最後のお約束をやり抜く――悪へのトドメを刺す――だけだ。 「人々の平和を護る為、負けられないんだ!」 「受けろ、新たな力、ブラックゲイズ!」 疾風の拳がエリューションの身を焼き、セシウムの視線がエリューションの精神を砕く。 そこへ岬が「アンタレス」を手に駆けつける。 「ダイヤモンドのように硬いってのは砕かれる定めにあるって、カニマジンに教えてやろうぜ―、アンタレス!」 「カニマシンガンだカニ!」 様々な愛称を付けられ、今更のように反論するカニマシンガン。だが、ツッコミも防御も全ては遅かった。 「蟹はひっくり返ると起き上がるの大変ー、ひっくり返すぜー!!」 「アンタレス」にエネルギーを込めて、思い切り殴る。 それはひっくり返すなどという生易しいものではなかった。 吹っ飛ばされたカニマシンガンは、衝撃に耐え切れず、空中で爆散する。 「エリューション帝国に、栄光あれ、カニー!!」 念のため言っておくが、そんなものは無い。 ● 「よくやった、諸君。その調子で、これからもよろしく頼むぞっ!」 朝日を背に、『四月馬鹿』を回収したリベリスタ達を迎える太郎。既に「弩島長官」を演じる必要は無くなっているわけだが、ついついやってしまう。実は彼も今回の戦いを楽しんでいたのかも知れない。 その後ろでは、フモルがみんなを温かく迎えてくれる。フモルの下にいる黒子が全力で楽しんでいたのは間違い無いだろう。 「こうして平和は守られました……ました?」 締めようとして、思わず自分の言葉に疑問点をはさんでしまう香夏子。もっとも、実際にこのエリューションを止められないと、意外と洒落にならない規模の事件になっていたわけだが。 「知加子の戦いは終わりました……明日からまた普通に香夏子としてがんば……いえ、がんばりません」 まったくいつも通りの香夏子に戻ると、その場に座り込んでしまう。 そんな香夏子を見て、リベリスタ達の表情に笑みが浮かぶ。 シエルは回収した『四月馬鹿』を手に思う。 (このアーティファクトは、純なる子供の願いから生じたのかも? 孤児院の子供達……ヒーローごっこや魔法少女ごっこが好きですし。でも、それは憶測であり、何とも言えませんね……) 真偽の程は分からない。 ただ、クリスマスの日にだって奇跡は起こるのだ。 エイプリルフールに奇跡が起こっても悪いことは無いだろう。 冗談を愛する、冗談のようなアーティファクトは、何も答えなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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