●蠢く風 パチパチと篝火が爆ぜて石垣の裾にちらちらと動く影を作る。 具足を嵌めたものが動く音が篝火の音を打ち消して鳴る。 此処は『鬼ノ城』、その城壁。この城を攻略せんと決意を固めるリベリスタ達を阻む扉。 その守護を一任された四天王の『風鳴童子』の激が部下達に飛ぶ。 「『禍鬼』の奴……ボクを二度と侮れない様にしてやる」 握りしめられた拳が音を立てる。直後に怒りの混じった声で叫ぶ。 「いいか! お前ら! 此処に来る敵を僕の元に辿り着かせるなよ!」 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!」 一斉にその場にいる鬼達が吠える。己の獲物を打ち鳴らす。彼らは全力を賭してこの場所を守るだろう。 その後、集められた部下達が三々五々に散っていく、その中で小隊を組んでで動く鬼達が居た。 彼らは手慣れた様子で隊列を組んで歩いている。 「私達はこの辺りで敵の攻撃に備えるわよ」 艶やかな黒髪揺らして、艶めかしい黒肌を緩く着た襦袢で隠した美しい女性……いや、頭に生えている角が人ならざる者であることを示し、覗く脚に括りつけられた札の様な物が彼女が術師であることを教えている。 その鬼が指示を出してすぐに。 「ウガァ」 先行していた3体の鬼が振りかえり、止まる。此方は先程の鬼とは違い、全身を甲冑で覆い尽くし、両腕で身の丈ほどの盾を支えている。兜からは太く、ねじれた角が突き出していた。 前の鬼に合わせてその場に止まった白い透けるような肌の上に白い着物と羽織着て、ふわふわとした印象を与える白鬼が黒鬼に聞く。 「城壁の回りの柵や防御に適した場所ですね、此処で足止めですか?」 「そうなるわね、遊撃部隊を蹴散らしつつ攻めてくるであろう敵を此処で遅らせるのが私達に与えられた仕事よ」 「それこそが、私達の勝利に繋がるんだな」 先程の鬼と同じように白い肌だが、蒼い髪を持ち、蒼い着物と着た鬼がその場で戦う準備を整え始める。 「そうよ、私達が此処で時間を稼ぐほど、私達は有利になるわ」 黒鬼がふふふ、とまるで紅が差してあるように赤い唇に細い指を当てた。 ――自分達の強固な守りに、固く閉ざされた城門に絶対の自信を持っている。そんな笑みを彼女は浮かべた。 ●齎される混乱 先日の『逆棘の矢』の争奪戦はアーク側が切り札たる矢を2本獲得すると言う結果に終わった。 これを用い、鬼の王たる『温羅』を討つ。というのがアーク側の算段であった。しかし、自体は風雲急を告げる。 アークが誇る予知装置『万華鏡』が鬼達の行う大進撃を察知したのだ。 これに対しアークはこの未来を潰す覚悟を決めた。 鬼の本拠地『鬼ノ城』の制圧と鬼ノ王『温羅』の討伐が作戦の目標である、果てしなく高い壁に思えるが、覚悟を決めた以上やるしかない。 崩界を防ごうと言う確固たる信念を持つのはアークに所属するリベリスタ達のみ、自分達が諦めてしまえば世界は蹂躙されるしかないのだから――。 ● 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がリベリスタをブリーフィングルームに集める。彼女の体は心なしか強張っているように感じる。 「もう知っていると思うけど――」 イヴの白い喉が上下に一度動く。ゆっくりと息を吸って、吐く。 「『温羅』が、動く、コレによって大きな惨劇が起きる。この未来は、現時点において確定している」 リベリスタの間からざわめきが起きる。そのざわめきをただ視線を動かすことによって抑えたイヴが続ける。 「私はこの未来を許すことは出来ない、それは皆も同じだと信じる だから、私は貴方達を信じてこの作戦を、託す」 イヴが言葉を切ると同時にモニターが切り替わる。 「これが、『温羅』率いる鬼達の本拠地、『鬼ノ城』。ここに夜襲をかけて、制圧する。でも、この作戦は簡単じゃない」 微かな機械音を伴いさらにモニターが切り替わる。表示されるのは『鬼ノ城」の俯瞰図。 「まずこの城自体がとても強固。生半可なことじゃ落とせない。それぞれの要所で『温羅』の側近たる四天王が動いている、これがまた厄介。 『烏ヶ御前』の遊撃隊、『風鳴童子』の守備隊、『鬼角』の精鋭部隊、『禍鬼』の本体守護。それぞれが地の利や、数の利を生かして貴方達の進撃を止めようとするに違いない。その規模は、私達アークと、鬼達の戦争とすら言える。 それでも、一か所一か所潰して、『温羅』辿り着く以外に私達がこの決戦に勝つ術は、ない。 此処に来てもらった貴方達には城壁を守護する『風鳴童子』の率いる守護隊の一部隊を倒してもらいたい」 俯瞰図の城壁付近がズームされる。 「この辺りに、小隊を組んで動いている鬼がいるわ、時間稼ぎをして此方の進軍を止めるつもり。 前衛に盾役が2人、後衛に攻撃術師と回復術師が居るわ、シンプルだけど、だからこそ攻略しにくい」 しかし、この城壁をスムーズに解放することができれば、此方側の進軍が効率化される。とイヴは語る。 「散々貴方達の不安を煽るようなことを言ってしまったけど、貴方達なら出来るわ。鬼達の守りを、貫いて。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:吉都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月12日(木)23:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●鬼と人との交差点 篝火が爆ぜ、夜の闇を削り取る範囲内に6体の鬼がいる。いずれも風鳴童子に忠誠を誓いこの場を守ると決めた者たちだ。彼らは陣形を組んだまま待つ、此処に来るであろう自分達の敵を。 「あら、来たみたいね」 黒鬼が城門から少し離れた場所から此方を見ているリベリスタ達を睨む。どうやら事前に戦闘準備を整える事は不可能の様だ。そう感じたリベリスタ達は敵と対峙する。 「ようこそ、と言っても貴方達の目的はアレなんでしょう?」 ちらりと後ろの城門に目をやる。 「そうだな、そこを通してくれると嬉しいぜ」 『』アルジェント・スパーダ(BNE003142)の言葉に蒼鬼が即座に返す。 「愚問だな……我らは此処から先に貴様達を通さぬことが使命だ」 「それなら、痛い目を見て貰うしかないね」 『最弱者』七院 凍(BNE003030)が血の様に紅い鎌をアクセスファンタズムから取り出す。それは明らかな敵対の意思の表れである。 「それはこっちの科白」 黒鬼が術符を取り出し、扇の様に広げる。同じように白鬼、蒼鬼もそれぞれ獲物を構える。 「コレは私達鬼と、貴方達箱舟の戦争……相まみえたからには戦うしかないのよ」 確かに黒鬼の言う通り、この戦いに鬼達が勝利すれば鬼達は更なる悪行の限りを尽くすだろう。アークがこの戦いに勝利すれば、鬼の王を打ち取り、鬼の古から続く栄華を断ち切るだろう。即ちこの場は正しい意味で戦争で戦場なのだ。 「そちらにも鬼なりの道理があると思う。でも、人の世の蹂躙を見過ごせる道理は此方には無くてね」 『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)が宣言と共にアクセスファンタズムのボタンを押しこむ。一瞬光の膜につつまれたのち、戦闘態勢へと移る彼の姿は正に鬼と戦う正義のヒーローだ。 「さぁ、行きましょう! この守りを貫き穿つわ!」 『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)が手を振り上げる。開戦の狼煙が上がった。 ●剣を持つ人 「さぁ、鬼退治でござるです!」 「ここは絶対ぶちぬくしかないのです!」 『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)と『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)が鬼の前に立つ。鬼とリベリスタがお互いに自らの力を高めるのに使った時間は一瞬。すぐさま二人は左右に別れ盾鬼2体を相手取る。 「いくですよ! はいぱー馬です号!」 イーリスが自らの持つ騎士槍にまで闘気を纏わせる。細身の彼女からは考えられないような速度で槍が動く。 「ガァッ!」 盾鬼は自らの持つ盾を斜めにすることで衝撃を逃がそうとするが、彼女の膂力はそれを上回った。 「飛んでくといいですっ!」 盾と槍がぶつかる鈍い音が響き、そのまま槍を勢いに任せて振り抜くイーリス。自らの力に、さらに遠心力を重ねた一撃は盾を持った鬼一体の総重量をものともせずに押し出す。 「盾鬼! そこを退くでござるです!」 姫乃は槍の重量を物ともせず筋肉を収縮させ引き絞る。限界まで捻られた体が解放された時、空気を貫く音を置き去りにして槍をもう一体の盾鬼に正面に叩きこむ。盾に当たった穂先が火花を散らすがお構いなしに押し込む。 二人の攻撃が終わって、微かな土煙が晴れると攻撃を叩き込まれた鬼はそれぞれ深い轍を作り、当初に立っていた場所から引きずられていた。 「此処からは私の仕事ですね」 『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)が飛び出して前へと詰める。 「よくやってくれたね、ありがとう。二人とも」 疾風とミュゼーヌもお互いに目線を交わし、それぞれ盾鬼へ張り付き、行動を制限する。 「あらあら、やってくれるわね」 だが思うように動けなくなった盾鬼達を見ても黒鬼は余裕を崩さない。怪訝に思った凍が敵を見渡してその理由に気付く。 「盾鬼の攻撃が来るよ!」 その言葉の通りだ。盾鬼達が自分達の持つ盾を掲げている。掲げられた盾が薄い燐光に包まれ、それがそのまま盾のほぼ中央に収束すると一本の光線となって放たれる。標的はそれぞれ自分の前に張り付く相手。 「きゃっ!」 「ぐっ」 3人のうち疾風は飛んで来た光線を咄嗟に身を捻ることで避けたがイスタルテとミュゼーヌの体を光線が焼く。 「大丈夫でござるですか!?」 姫乃が焦燥の声を投げる。攻撃を受けた二人は一撃で倒れるようなことはなく、その場に立っていた。それを見てそこまで威力の高い技では無かったことに胸を撫でおろしたのも一瞬。 二人の目が赤く血走っているのに気付くまでだ。おそらく今の彼女達には盾持ちの鬼しか映っていないのだろう。 「ふふふ、庇うことができないなら標的を自分に向けさせるだけよ」 黒鬼の手から白い札が放たれる。それは空中で放電現象に変わり、その場にいたリベリスタ全員に雷が降り注ぐ。 「さぁ、どっちが先に倒れるか。勝負しましょうか」 どこか楽しそうに、黒鬼の声が鳴る。 ●盾持つ鬼 「誰かを守るって言うなら、それは今この瞬間だよね!」 『愛に生きる乙女』御厨・忌避(BNE003590)の決意の声が響く。それは祝詞の様に広がり味方のダメージを吸い上げる。 それに続いてアルジェントが苦無を両手一杯に取り出して雨の様に鬼側へ投げる。盾鬼達はそれを庇うことができないため、後衛達にもその攻撃は届くが2撃目が続かない。 運悪くバッドステータス回復スキルを持っているイスタルテのバッドステータスが解けず、盾鬼の行動毎に光線が飛び交っている今。白鬼をまともに狙えるものは少なくなってしまっていた為だ。 「食らうです!」 イーリスもまた、先程光線を受けてしまっていたため、本来白鬼に接近するはずだったがそれも行えていない。盾鬼の一体に突っ込んで全力の攻撃を放っている。そして攻撃の対象になった盾鬼はイーリスの攻撃を望むところだとばかりに盾できっちりと受ける。翳した盾を突きぬけて衝撃が体を打つが未だ盾鬼は健在でだった。 こうして攻撃対象が分散されてしまっているせいで火力が集中せず、後衛の鬼達は自由にその力を振るい始める。 「さぁ、次は私の番だな」 蒼鬼が先程のアルジェントに対する意趣返しとでも言うように術符を大量に取り出す。複雑な軌道を描いて飛ぶそれは先程の雷とは違い、途中で術符1枚1枚が高速で飛翔する矢に換わり、リベリスタを襲う。 「ぐっ……まだまだでござるです!」 姫乃が白鬼へ向かって走る。この鬼さえ落とせれば流れは引き戻せるはずだ、と。 だが、黒鬼が寒気が走るほど冷たい笑みを浮かべる。 「立入り禁止よ、お嬢ちゃん」 4枚の術符が同時に飛ぶ。1枚1枚に刻まれた術式が起動して4つの術それぞれが姫乃を叩く。その威力の大きさに一度は膝をついたがもう一度立ちあがる姫乃 「此処で倒れるわけにはいかないでござるですよ!!」 裂帛の気合と共に愛槍を振るう姫乃。白鬼に槍が突き立つが彼女もまだ倒れない。即座に手に持っていた杖を一振りして自らを癒す。姫乃から受けた大きなダメージ全てを回復するとまでは言わないが、盾鬼が攻撃を引き受けている現状ではこの1回の回復が大きな意味を持った。 だが、回復手段を持つのは鬼達だけではない。 「すいませんでした、今なおしますよう」 「回復行くよー!」 正気に戻ることに成功したイスタルテの聖なる光と忌避の歌が周りを包む夜の闇を一瞬退ける。こうして体勢を立て直そうとするが鬼ただそれを黙って見ているわけではない。 「ルルオォ!」 ブロックされて前に進めない盾鬼が苛立ちの声を上げながら盾で疾風を殴りつける。元は防御の為である盾も鬼の力で振りまわされればそれはもはや凶器となる。疾風は唸りを上げて近づく盾を受け流し続けていたが、何度目かにとうとう避けきれない一撃が訪れる。咄嗟に両腕をクロスさせて衝撃を軽減しようとするが鬼の人外の力と全身の重さが十二分に乗った盾は疾風の体にめり込む。 「ゲホッ……骨が行ったかな」 肺の中の空気が押し出されて呼吸が荒くなる。体が重く感じるが自らの運命を熱く燃やして立ちあがる。 「まだまだ倒れるわけには行かないんでね」 しっかりと地面につま先を立てて体を持ち上げる疾風に盾鬼は追撃をかけようとするが、 「よくもやってくれたわね! 風穴開けてやるわ!」 怒りを振りきったミュゼーヌが眼前にいる敵を全てロックオンする。引き金が引かれるたびにシリンダーが周り、装填されていた弾丸を全て撃ち尽くす。 「ルオオオオオオ!」 ミュゼーヌの銃が弾丸を吐きだし終え、薄く煙が流れる。この一撃で途中イーリスの攻撃を受けた盾鬼と、ダメージを蓄積され続けた白鬼が倒れた。穴だらけに罅割れだらけで地面に落ちた盾を見て満足にミュゼーヌがマスケット銃を肩に担ぐ。 「あら、あの子やられたのね……箱舟の連中もなかなかやるじゃない」 余裕の笑みを引っ込めて、黒鬼が真白の札を取り出す。親指の先を噛みちぎり、自らの血で符に術式を刻み、朗々と呪歌が響く。 黒鬼の詠唱の隙間を埋めるために盾鬼は再度イスタルテに怒りを発生させる光線を放つ。 「ボクの後ろに!」 「か、かたじけないでござるです」 フェイトで復活してギリギリの淵で戦っている姫乃の前に凍が立つ。詠唱をして放たれる術の危険性を考えた結果の行動を見て黒鬼が笑う。 「その位で防げるかしらね」 術符から黒い呪の濁流が溢れ出しまるで津波に様に襲う。黒の大蛇が世界を穢した後には全身からぶすぶすと煙を上げて立つ凍がいた。後ろに立つ姫乃も無論無事である。 「まだキミ達の泣きっ面を見てないからね だからキミ達が不利になることなら何でもするよ。立ちあがってやるさ」 フェイトで復活しつつ辛くも笑顔を作る凍。だが黒の波はその場にいたリベリスタ達に等しく襲いかかっている。 「後は……任せたよ」 疾風が相次ぐ攻撃に耐えきれず倒れる。 「まだ、まだこんな所で倒れてらんないんだから!!!」 「負けないです!」 忌避と、イーリス、アルジェントは穢れの波からフェイトの力で生還する。 「しつこいわね、貴方達」 術の反動か。ふらりと体を揺らす黒鬼にミュゼーヌが銃口を突き付ける。 「残念ね、弾丸はまだ残ってるわ!」 目を見開く黒鬼を尻目に引き金を引く。微かな反動と共に銃身が持ち上がると同時に、黒鬼は膝から崩れ落ちた。 「まだ私達が残っているぞ!」 黒鬼が倒れても躊躇なく戦闘を続行する蒼鬼、飛んだ一枚の札が矢に変換され、正確に狙撃する。この一射を受けてイスタルテもまた、フェイトを使用しての復活を余儀なくされる。 「負けないんですよう」 戦闘意欲指揮官は倒れたが、鬼達は風鳴童子に、温羅に忠誠を誓っている。彼らは最期の一人になろうとリベリスタ達に牙をむくことをやめはしない。溢れる闘争本能を露にして戦いを継続しようとしていた。 ●再び交わる時に 疾風が倒れたことでブロックのいなくなった盾鬼1体が蒼鬼の前に立つ。 蒼鬼に向かう攻撃を全てその盾で受け止め、蒼鬼が攻撃する時間を稼ぐ。そうして蒼鬼が矢の雨を降らせるたび、リベリスタ達の側は誰か一人が倒れて行くと言う状態が出来ていた。 「無念でござるです……」 姫乃とアルジェントが体中に矢を受け、そのまま倒れる。 「ルオオオオオア!」 剛力によって振りまわされる盾の嵐をかいくぐり続けたミュゼーヌもとうとう一撃を受けて倒れるが 「うるさいわね、さっきから!」 フェイトを消費して立ちあがった瞬間に零距離で盾を挟む暇も与えず盾鬼の頭を吹き飛ばすという荒技を成功させる。しかし、もうリベリスタ側は満身創痍だ。全員がフェイトを使用して立ちあがっている。 「……悔しいけど、引き際を見誤って死んだら元も子も無い」 「そうですね……」 凍とイスタルテが周囲の状況を見渡して言う。確かに敵の数も減らしているが此方も戦闘不能で立ちあがれないものが半数になっている。このまま誰かもう一人倒れれば撤退すらままならなくなってしまう。 こうしてリベリスタ達は撤退の結論を出した。鬼達も与えられた任務はこの場の守護だ。わざわざ藪を突くような真似はしなかった。 「負けちゃいけなかったのに……!」 アークの救護部隊に仲間を引き渡した後、忌避の目には涙が浮かんでいた。落ち込むその肩をミュゼーヌが軽く叩く。 「大丈夫だ、私達は私達だけで戦っていたのではないよ……だから、今は待とう」 ミュゼーヌが今は遠のいた城門を振り返りながら、仲間達の勝利の報を信じた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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