●攻城戦 時が満ちた訳ではない。しかし今攻め込まねば、打倒してしまわねば、鬼の脅威を防ぐことはできなくなるかもしれない。凄惨な未来の到来が、刻一刻と近付いている。 「そうならない為の、決戦です」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は気丈に言う。そうだ、力あるものが臆して誰が未来への橋をを接ぐと言うのだ。出来る事を、出来る以上にやる。今それが求められている。 「我々が手にした『逆刺の矢』は、二本。十分ではありませんが、それでも『温羅』に対しての切り札を得たというのも、また事実。 鬼は人間を滅ぼすべく力を蓄えています。進撃が始まるのも時間の問題。万華鏡もそういった未来を予見しています。チャンスは今しかありません」 鬼の本拠地『鬼ノ城』の防御は堅牢だ。『温羅』の力は強大だが、そこに達するまでにまずは大きな労力を要する。道のりは危険極まりない。 鬼ノ城周辺に位置する『烏ヶ御前』。迎撃部隊はリベリスタの進撃を阻害する。 鬼ノ城城門に位置する『風鳴童子』。防衛部隊はリベリスタの城への侵入を拒む。 鬼ノ城御庭に位置する『鬼角』。精鋭部隊は疲弊したリベリスタを駆逐せんと待ち構える。 鬼ノ城本丸に位置する『禍鬼』。王に向かわんとするリベリスタの最後の砦となる。 攻略は簡単な事ではない。だが王の討伐には、彼らの打倒が欠かせない。絶大な力を持つ王に挑まんとするのだ。それまでに力を残しておかなければ歯が立つはずも無いのだから。 「さて、攻城戦において防御側は何を成さねばならないか。城内に敵を入れない事。一つにはそれがあります。当然鬼もリベリスタを城内に入れないよう全力を尽くします。侵入を試みる敵の迎撃、侵入に対する防衛。堅牢なそれを打ち破らなければならない我々に比べ、彼らは幾らか有利です。 今回皆さんには侵入をより困難にしている兵士を倒す事。すなわち、城内への侵入を拒むべく遠距離攻撃をこちらに浴びせる敵兵の打倒です」 鬼の軍勢が城壁の上でこちらの侵入を拒むべく待ち構えている。城門周辺にはただでさえ強力な敵が待ち構えている。この上遠距離から補助されたのではたまったものではない。 「攻撃方法は弓矢のみですが、これを放置しておくのは色々と厄介です。 作戦行動としてこちらから提示できる案は三つ。まずは城壁をよじ登っていく方法。ただあまりにも単純すぎますし、敵の妨害もあり困難を極めます。更に内側からで無いと満足に登る事は出来ないでしょうから、何か外側からでも登る事が出来る方法が無ければ難しいでしょう。 二つ目は、人員がいなければ話になりませんが、フライエンジェ、或いは『翼の加護』の付与による飛行能力を用いて城門の両脇にある櫓、城壁に飛び乗る方法。多少の被害は及ぶでしょうが、それでもよじ上るなんていう方法よりは幾らかまともです。飛行能力なしに辿り着けないのが難点ですが。 ここまでは鬼と接近して作戦を遂行する方法です。三つ目は城壁の下から鬼たちに遠距離攻撃を与える方法。城壁の上へ行く必要はありませんから、幾らか労力は少ないかもしれません。ただ敵が城の内側に隠れたら攻撃は出来ませんし、何より敵の大将が叩けない可能性が高いです。 この他にも皆さんの中に良案があれば是非とも実行してください。それがきっと作戦の成功に繋がります」 以上です、と言いかけて、和泉は言葉を切る。そして思い出したように言葉を継ぐ。 「城壁から攻撃する鬼の兵士の数はかなり多いです。加えて戦闘スペースは決して広くはありません。困難でしょうが、戦線に与える影響は少なくありません。どうか、お気をつけて」 ●防衛戦線 「何か、見えるのか」 城壁の屋根の影から覗くその鬼の背後から、別の鬼が話しかける。夜の闇にあっては鬼も人も一寸どころか目の前が闇だ。何かを見つけるのは容易い事ではない。 「見えたら、撃ってるよ」 鬼は苦々しく言う。彼の横にも、敵を探す鬼はずらりと並んでいる。もし何かがいるならば、伝言ゲームでこちらに伝わってくる。まして人なら、なおさらだ。 「しつこいんだよ、上官。一日にここを何周してやがる。加えて何度も同じ事聞いて。そんなに聞いたって来ねぇもんは来ねぇんだよ」 「そう苛立つな」 悪態をつく彼をたしなめるように上官と呼ばれた鬼は言う。この類の事を何度も言われて、既に慣れっこなのだろう。 「防衛は気にしすぎな位が丁度いい。準備をしすぎて悪い事は何も無い」 「そうかい」 ため息を吐く事も忘れて、彼は闇の向こうを覗く。深い深い闇の中。遠く遠くに敵の影がいないか気を張った。鬼が牙を研ぎ終えるその時まで、鬼が世にまた君臨するその日まで、人にここを明け渡す事があってはならない。いくら矮小な人間とて、侮ればかつての二の舞になりかねぬのだから。 「期待しているよ、諸君」 鬼の上官は声をかけつつ、彼の後ろの狭い隙間を通り抜ける。 彼は闇の隙間にキラリと光る何かを見つける。どうせまた見間違いだろうと思いながらも、彼は凝視する。そこにいるであろう、何かを。 それは鬼と人との戦争が始まる、少しだけ前の事。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月11日(水)00:33 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 鬼の居城『鬼ノ城』。その形やそれの運用の仕方、戦法から使用する武器に至るまで、人間のそれとよく似ていると、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)は感じている。かつてこの日本をかけて、争っていた二つの種族。人間。鬼。二つの種族が築いた文明は、共に日本の文明の礎となっているのだろう。 城の城壁に構える敵の数はリベリスタの実に八倍。なんとも無茶な話だと『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)は苦く笑う。されとて決戦、道理を引っ込めてでも無理を通さなければ人間の敗北だ。ここで躓く訳にはいくまい。温羅への道を切り開くしかない。 『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)は月を見て思う。崩界をとめる。それだけを信念に行動してきた。しかし。かつての歪夜、今宵の鬼。それらの影響もあって、崩界へ導く穴は広がり収束の目処すら立っていない。自分は、大事を成せていない。嗚呼だからこそ、今目の前に立ちはだかる懸念を徹底的に排除しようと彼は決意する。それは明日の勝利の礎となる。 「各班、最高のパフォーマンスに期待する」 掛けた声が作戦開始の合図となる。 決戦の火蓋が切って落とされる。あちこちで行われる戦闘。それを補助しようと並ぶ鬼の弓兵が、城壁でその時を待って弓を構えた。 突如、闇を掻き分けて、二つの影が現れる。ヌッと浮き出た二つは、鬼の目を引きつけるに十分な存在感を放っていた。 「はあい、こんにちは糞鬼ども。いや、こんばんわかしら?ファッキンゴーストども」 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)の声が響く。彼女らを視認していなかった鬼も、彼女へと視線を向けた。 「今からね、このアタシ、雲野杏と姫宮心が貴方達を倒します。たった二人で! いやー、こんな大役をたった二人で任された時は正直面食らったけど、内容聞いてみると、あれ?いいんですか?二人で全滅させちゃいますよ? こんなの。ってなもんよ」 闇夜に浮かぶ彼女は腕を組み、挑発するように言葉を吐く。鬼たちは一斉に、獲物を探していたその弓を、杏に向けた。彼女はそれをものともしないような態度で、仁王立ちになっている。 大人しくするはずも無く、弓矢が杏に向けて一斉に発射される。しかしその全ては彼女に届く事は無い。完全なる防護に身を固めた『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)が杏の前に立ちふさがる。 「境界最終防衛機構、鎧ガールズが 一角! 姫宮心! いざ参ります!」 「というわけで今からお仕事するから、ちょっと痛いけど大人しくしてもらえるかしら?」 杏が手にした楽器を奏でると、途端眩い光が掃射される。拡散し、荒れ狂った光は城壁に意鬼を一直線に貫いた。体中に流れる電流が、鬼を蝕んだ。 「さて、通させていただきます。守るべきもののために!!」 弓矢と雷撃が舞い踊る嵐の中を、心と杏は駆けていく。 ● 『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)の張った結界が囮となった二人を守っている。それが効いているうちに、次へと行動を移す。 鬼は雷を撒き散らす杏と彼女を守る心に主な勢力を傾けている。彼らを率いる上官は、少なくとも彼女ら以外のリベリスタに気がついてはいないのだろう。好都合だ。 『ガンスリンガー』望月 嵐子(BNE002377)とユーディスが片桐 水奈(BNE003244)に与えてもらった翼で高々と飛んでいる。上空60メートル程。暗闇に紛れた二人に、囮に意識を奪われている鬼は気付かない。 杏の放った雷が弓矢の嵐を貫いた時、二人は鬼たちの真上から一気に降下する。急転直下、隕石のような鋭い急降下に、誰も気付かない。気付かないまま、彼女らは城壁へと降り立った。 「あらもう来たの?もっとゆっくりでもよかったのに!」 杏の言葉に続いてやっと、意識が彼女らの方に向いた。しかし彼らの意識をかき消すように銃弾が乱射される。 「嵐を呼ぶガンスリンガー、嵐子参上!」 突然の敵襲に、決められたポーズに、鬼は目を奪われる。けれども戦場、心を失えばすなわち死。鬼はハッとして弓を構え直す。嵐子の前に立ちはだかるはユーディス。 「篭城戦のセオリーは、敵が飛べたら崩れるのですよ」 嵐は、一層強まっていく。 囮によって引きつけられた鬼。奇襲により目を眩ませられた鬼。しかしそれでもまだ数は少ない。それに気付いている鬼は、重なる襲撃の最中ほとんどいなかった。恐らくこの分では上官ですらその考えに至っていないのだろう。大部分の鬼の矛先が、囮と奇襲に回った四人に向けられているのが、その証明だ。 雷慈慟の飛ばした梟が帰ってくる。それを通して見た右の櫓には、目的のそれらしい気配はなかった。浅倉 貴志(BNE002656)が熱や感情を探査しても、全く同じ。代わりに左の櫓には周囲の鬼とは違う姿や感情が、確認されたという。それならば、上官のいる場所は、わかったようなものだ。本隊が動き出す。 雷慈慟を先頭にして飛行し、左方の櫓の横腹から突入する。目標の鬼は他の鬼より体が大きく、その周囲を十体の鬼が取り囲んでいた。 「あれが、上官とやらか」 雷慈慟の合図と共に、着地し、攻撃を一斉に放つ。氷の雨に襲撃によるかまいたち、一条の雷。加えて現れた赤い月がそこにいる鬼たちに不運を与える。上官と周囲の鬼が気付いた時、それら全てが鬼の周りに渦巻いていた。 「貴様ら、そういうことか……! お前ら、やれ!」 矢が掃射される。それを撃ち落とすかのごとく放たれたのは『自堕落教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)の放った雷撃だ。その手に開いた出席簿は、彼女が今まさにそこで授業を行っているようにも見せる。告げた言葉は生徒を諭すようにも聞こえる。 「とっとと退却してもらいたいの。楽に落とせるならそれに越したことはないものね」 「戯けた事を!」 上官の放つ衝撃波がリベリスタを襲う。威勢良く、叫んだ言葉には些かの傲慢さが混じっているようにも思えた。 「我らが貴様ら人になど屈するものか!」 ● 杏は自分を庇い続けている心の様子を見る。相応に消耗はしているようだが、まだまだ倒れそうにも見えない。その目に光る信念は、未だ退却など望んではいないだろう。 「城壁までいくわよ、姫宮さん。大丈夫?」 「もちろんデス! 行きましょう!」 心が盾になりながら、二人は一気に城壁へと飛び、着地する。先んじて城壁で攻撃を開始していた嵐子とユーディスに加勢した。 「やっほ。どうよ、こいつら」 杏が声をかけると、ユーディスは心なしか疲弊しているような顔をして、答える。 「流石に……数が多いですね。確実に倒していかないと」 振るった破邪の力を帯びた剣が、鬼を切り裂いた。一体、一体と確実に斬っていっても、これを後何度繰り返せばいいだろう。 「そうね、じゃあ二人じゃキツいし、四人で何とかしましょ」 そう言うと、杏は再び雷撃を放つ。 「危ないデス! 望月さん!」 銃撃の反動で怯んだ嵐子を、数多の矢が襲う。心は彼女を庇って、その全てを身に受けた。 「大丈夫ですか?」 「こっちのセリフよ、キミは?」 「平気です、頑丈が取り柄ですから!」 そう、と呟いて、嵐子は銃撃を再開する。 「ヒーローが倒れたらカッコ悪いもんね」 庇ってもらってばかりだけど、とは口が裂けても言えない。けれども嵐子は、心の行動に敬意を表し、倒れず、倒しきると誓った。 「本隊の方へ行きましょう。あちらの櫓です」 攻撃しつつ、攻撃を守り、かわしつつ、ユーディスが合流を促した。三人はそれに応じる。 挟み撃ちで、敵を殲滅すべく。 上官は少しも逃げる気配がない。この戦場を任されているという自負か、人になど倒される訳が無いという驕りか。或いは、必ず人に勝つという決意の表れだろうか。そのどれだとしても、上官は今この場に立ち、指揮を続けている。簡単に城壁への侵入を許し、戦力を減退させ続けながら。 「無能な指揮官だからこその体たらく、早く上に報告し、対応して貰ったらどうだ?」 雷慈慟の言葉は上官へと突き刺さる。 「我はこの場を任せて頂いているのだ。戦況も見ずに撤退するなど、鬼の名折れよ」 「貴様等の貴重な戦力が 無駄に消耗するだけだと思うがな」 放った気糸は上官を貫く。避ける様子もなくそれを受け止め、なおも弓兵の後ろで戦況を伺うようにしている。 絶え間なく襲い来る矢の荒らしの中、受ける矢を何とか最小限にとどめ、ソラは雷を放つ。雷の音が耳をも劈き、衝撃を与える。敵に攻撃が届きにくくなった大和も城壁へと登り、放った気糸で鬼を締め付ける。 弓兵の与えるダメージも、手数の多さから流石にリベリスタを消耗させたものの、水奈の絶え間ない回復により、それほど大きな被害とはなっていない。上官を補佐している鬼は一匹、また一匹と倒れていく。遂には上官も自ら武器を振るい、前線を張るようになった。 「通すものか、貴様らなど、絶対に!」 「通してもらわねば、困るのですよ」 水奈の呟きの横を、銃弾が駆け抜ける。鬼もリベリスタも驚いて見ると、そこには四つの人影があった。 「到着しました! 本命さんズに加勢するのデス!」 心の元気のいい叫びと共に、囮と奇襲に向かった四人が合流する。 鬼の数はまだ多いとはいえ、現状どうにもリベリスタの勢いが強いことは、上官も理解していた。彼の仕事は、城門を守る事。しかし守るのに執心しすぎて、突破された時に防衛の戦力が残っていないのでは、元も子もない。だからこそ命じられたのは、最低限の戦力は維持する事。 戦況を見る。流石は鬼に楯突く者たちと言った所だろうか、相当な鬼が既に倒れ伏している。半数にまでは至っていないだろうが、このまま防衛を続ければ、運がよくて相打ち、最悪残ったとして戦力は一割も残らないに違いない。それではいけない。 ならば。戦隊を指揮する者として、今下さなければならない判断は。命を賭するという事は、死に向かう事とは等価ではないのだから。 向かってくる鬼たちに向け、上官は号令をかける。 「守護隊は私と共に直ちに退け! 残りは何としてでも食い止めろ!」 鬼たちは一旦躊躇したが、命令に従って行動し始める。三割程度の鬼が城壁を降り、城の本丸へと退去していく。後の鬼は、相変わらずリベリスタへと歩を進めていた。 ふと違和感を感じて、上官はリベリスタを見る。退去を命じた途端、彼らの攻撃の気配が、止まった為だ。 「無能な上に現場放棄……ヤレヤレだな」 雷慈慟の言葉にも眉一つ動かさず、上官は納得したように言った。 「成る程、貴様らこれが狙いか」 全てを察し、上官はしんみりとする。彼らの目的は城門の突破。ともすれば、鬼を率いている自分に、戦力を撤退させるのが好都合だ。予知をも可能な彼らは、それを見越していたのだろう。 「今は手負いだ。この次は……必ず!」 無念とばかりの言葉を吐いて、上官は戦場を後にする。その言葉は、リベリスタには遠吠えにしか聞こえるまい。 ● 「さあ、後は残党を片付けるのみよ」 仲間を鼓舞するように水奈は言い、辺りに福音を響かせる。雷慈慟に力を分け与えてもらったことで、回復は十分に行う事ができる。 「無事みんなで帰れるよう頑張りましょう」 それでもソラは仲間を心配するように言う。一つの山を超えたからこそ、次の山を用心していた。 「動く者が無くなるまで、撃ちまくるわよ!」 次から次へとやってくる敵に、杏は雷撃を放ち続ける。今は十人で、敵を殲滅する。 大和の伸ばした気糸は、鬼をその場に縛り付ける。仲間の攻撃で、その場で息絶える事もしばしばだ。大和の攻撃は確実に、仲間が鬼を食い荒らす手助けとなっている。 「ちょ、ちょっと! 今すごいなんかきましたよ!?」 今更ながら、心は攻撃を見て素で驚いた。守る事に精神を燃やし続けていた。多くの矢から仲間を守る事で精一杯だった。やっと、攻撃を見る余裕が出てきたという事だろう。心は運命に逆らって、仲間を襲う攻撃に耐える。 「うわ、何だこれ!」 鬼の叫びが聞こえる。その視界を煙幕が覆っていた。彼らの時代には、こんなものがあったのだろうか。鬼はこれを知っているのだろうか。少なくとも彼らは怯んでいる。それでよしと嵐子はTempestを構え、撃つ。守ってもらったのだから、自分はそれに応えなければならない。彼女はとにかく銃弾を散撒いた。 武器を振り下ろすと鬼の命が散る。城壁の制圧は目前だ。ここで倒れてはいけない。ユーディスは気持ちを入れ直す。駆逐するのだ。殲滅するのだ。少しでも気持ちを途切れさせれば、倒れてしまうかも知れない。運命に逆らってでも、立ち続ける。 鬼も負けじと矢を放つ。飛び交う攻撃は嵐のように。しかしその勢いは、徐々に鎮まっていく。 見渡す限りに鬼の死体が散見される。視認できる最後の鬼が、その場に膝をついて、倒れた。弓が手からはなれ、城壁から落ちていく。彼が取り落としたのは武器ではなく、きっと命だ。 上がった息を懸命に抑えつつ、水奈は座り込む。一つの戦が終焉を迎えた。しかし未だ最後の目的は遠い。けれどもここで一つ休憩だ。 「このご時勢に城攻めを経験させて貰えるとは思わなかったわね……」 冗談とも取れぬ言葉を漏らしつつ。現代で一度と味わうはずの無かった経験を、水奈は噛み締めていた。 月が頭の上にポッカリと浮かんでいるのが見える。嗚呼、まだまだ夜は長そうだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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