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Nightmare High

●待
「動かないで!」
 突如部屋に入り込んできた三人組に、部屋にいた五人の男達は硬直した。
 三人組――男二人女一人――は、躊躇っている背広の男達を尻目に素早く動き出す。周辺を一望出来るガラス張りのワンルーム、その部屋の中には会議が出来るように巨大な十二人掛けの机と椅子、それから接待用のソファ、本棚などが品よく並べられている。
 一人の男が、今しがた会議を始めようとしていた背広の男達の前に近付くと、手にした銃器を向けて、穏やかな口調でこう言った。
「すいません。あなた方に恨みは無いのですが、少しだけ利用させて頂きます」
 言って、ようやく恐怖が湧き上がって来たらしき男達に当身を食らわせ、次々と気絶させていった。
 それを難なくこなした男は、背広の男達五人を部屋奥のバスルームに放り込む。そして部屋に戻り、ソファをひっくり返したり、本棚を横に倒したりと戦いの準備をしている仲間達に向けて親指を立てた。
「OK、こちらは準備万端です」
「了解。ユウスケはさすがに手際がいいな」
 ホワイトボードを蹴り倒していた男が、手際よく背広の男達を気絶させた青年――ユウスケと言うらしい――を賞賛し目元を緩ませる。
 が、すぐに振り返り、後ろでシャンデリアめいた照明を叩き壊している若い女性を振り向き、言った。
「カオル、予定通り、一時間ごとにバスルームに閉じ込めている男達を一人ずつ殺せ」
「了解、レイ」
 促された豊満な女性・カオルは頷くが、すぐに不愉快そうに眉根を寄せる。
「けど……こんなことで本当に来るのかしら? 『アーク』は」
「あいつらには『カレイド・システム』がある。俺たちがこういった活動をしていれば、すぐに嗅ぎ付けてくるさ」
 リーダーであるレイの力強い言葉に、カオルは少し戸惑いつつも頷いた。そしてバスルームに早足で向かいながら、小さく呟いた。
「早く来なさい、『アーク』。殺してやるから」

●Nightmare High
「フィクサードのテロリスト、三人。これを退治するか……もしくは説得して、アークに連れて来てくれるかして欲しいの」
『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)は、ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に向けて、単刀直入にそんな台詞を放った。
「フィクサードの、テロリスト……」
 一人のリベリスタがおうむ返しにそう言うと、イヴは頷く。
「場所は、ここから車で三時間くらいの場所にある、大きな町の中の、すごく高いビル。その最上階の三十階で、フィクサードが五人のサラリーマンを、一時間ごとに一人殺していくことにしたみたい」
「どうしてそんなことを」
 フィクサードは総じて目的意識が高い。が、リベリスタの一人が単純に疑問を思って尋ねると、イヴは少しだけ表情を曇らせた後、呟くように言った。
「……よく分からないけど、アークに恨みを持っているみたい。その事件自体、アークの人員を呼び寄せるために行ってるみたいで」
 しかし、すぐに引き締めた顔に戻ったイヴは、きっぱりと言った。
「けど、このままだと本当に人質のおじさんたちは殺される。だから、みんな……そこに行って、その人達を止めて」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:水境  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月16日(月)22:45
水境です。
ちょっとフィクサードづいています。


●任務達成条件
 フィクサード3人を止める
 ※止める方法は何でも構いません。討伐してもいいですし、説得して連れ帰ってもいいでしょう。ただし、彼らはアークに激しい恨みを持っているので、説得するのは『非常に難しい』と思って下さい。

●戦場
 高層ビル30階の最上階。
 五十畳ほどの広いワンルームで、全面ガラス張り。部屋の中に敷居や壁はありません。
 部屋の中央に下り階段があり、東奥にはバスルームがあります。
 到着した時は、既にソファや本棚がバリケード代わりに横倒しにされています。物陰からフィクサードの攻撃が飛んでくるかもしれません
 また、エレベーターは25階までしか到達しないので、残りの5フロアは階段で登ることになります。

 テロ行為が行われているビルの隣には、同じく30階建てのビルがあります。そこの屋上から、『飛行』でフィクサード達のいるビルに渡ることも出来ます(ただし飛行中に狙い撃ちされる可能性がありますが……)。

●フィクサード
 サラリーマン5人を人質に取っていますが、彼らを傷つけることはフィクサード達の主旨ではないので、リベリスタが到着すれば、彼らはもう傷つけられることはないと思ってください。
 3人は総じて能力が高いです。

 リーダー・レイ:メタルフレームのクロスイージス
 カオル:紅一点。ヴァンパイアのマグメイガス
 ユウスケ:ジーニアスのソードミラージュ
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
四鏡 ケイ(BNE000068)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
プロアデプト
ラキ・レヴィナス(BNE000216)
ソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
ソードミラージュ
早瀬 莉那(BNE000598)
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
インヤンマスター
門真 螢衣(BNE001036)
ナイトクリーク
黒部 幸成(BNE002032)
■サポート参加者 4人■
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
スターサジタリー
望月 嵐子(BNE002377)

●前
「ぶっちゃけ面倒くさい……」
 29階地点。
 ショットガンの安全装置が解除されている事を確かめながら、『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)はぼそりと呟いた。その彼女の隣で深呼吸し、自身の身体能力を高めていたラキ・レヴィナス(BNE000216)は、肩をすくめた。
「奴らの動機ってのがイマイチ分からねぇんだよな。けど、アークに恨み持つんなら直接こっち狙ってきやがれってんだ」
「同感。アークに恨みがあるなら直接攻撃してきなさいよ、本部に」
 ラキの言葉に軽く頷くこじり。だが、天井を睨みつけていた『Gimmick Knife』霧島 俊介(BNE000082)は、にべもない二人の言葉に振り向き、こじりとラキの瞳を見据える。
「……たかが三人でアークに楯突いたって、何が出来るってんだよ」
「何も出来ずに死ぬでしょうね。死ぬ覚悟すらない程度の恨みなら、吐き捨ててしまえばいいのに」
 容赦の無いこじりの言葉。俊介はわずかに沈黙した後、苦虫を噛み潰したような表情で俯き、こぶしを握る。
(このままじゃ、フィクサードは三人とも死ぬ……。けど、まだ引き返せる道があるはずだ。何としてでも、俺がこんな馬鹿な事を止めさせてやる……!)
 殺すために来た仲間、救うために来た自分。その仲間同士の食い違いは、あるいは戦場において決定的な隙となるのかもしれない。それでも彼は、同じフェイトに愛された者同士として見捨てる事は出来なかった。
 そんな彼の肩を優しく叩く者がいた。天井の向こうの敵方を探っていた『ニューエイジニンジャ』黒部 幸成(BNE002032)だ。
「アークとは恨みを買ってしかるべき組織でござるからな。しかしまだ未熟者の身なれど、その恨みを受け止ねた上で彼らを止めたいと、自分も思うでござるよ」
 気遣うその言葉に、俊介は思わず重く詰まっていた息を吐き出した。その様子を見、忍者はサングラスの下の瞳を細めて元気付けるように闊達に笑った。
「ちょっと。それより敵の居場所は分かったの?」
 その時、不意に割り込んできたのは『不良?女子高生』早瀬 莉那(BNE000598)だ。頭上の音を探ってフィクサード達の居場所を調査していた彼女だったが、相手はまるで動いていないらしく、物音一つしない。
 促された幸成は急いで結果を口にした。
「おっと、すまないでござるな……、フィクサードは部屋の北西方向にいるようでござるよ」
「私の方でも確認出来ました。北西奥、ソファの影に隠れて女性が一人。そこから三メートル離れた左手には銃器を手にした男性、右手にはナイフを手にした男性が一人ずつ」
 千里眼を用いて様子を探っていた『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)は、もう少し詳細な情報を把握出来たようだ。
 それだけ詳しい情報が得られれば充分だろう。『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)は、頷き、自身の集中力を高める。同じくラキもまた。守護結界にしてもコンセントレーションにしても、維持できるのはほんの12合――つまり120秒だけだ。階段を登り、フィクサード達の元に到着するまでの時間を考えると、実際戦闘中に力を維持出来るのはほんの数十秒に満たないだろうが、何もしないよりはいい。
 仲間達が準備をするのを見つめ、『コドモドラゴン』四鏡 ケイ(BNE000068)は気弱げに唇をきゅっと引き締めた。
「じ、じゃあ……行きましょう、か。誰かに悪意を向けられるのは凄く怖いけど……が、頑張らないと、ですね……」
「もちろんだ。フィクサードに容赦はしない」
 すっぱりと断言する莉那に、「フィクサードと友達になろう」と考えていたケイは眉尻を下げた。が、すぐに『魔眼』門真 螢衣(BNE001036)の、
「では、これから突入しましょう。アークへの恨みに関しては思い当たる事は多いですが、このまま放っておく事も出来ませんから」
 凛とした声に頷き、駆け出す仲間達の背を追って走り出した。

「彼ら、どうやら僕たちの位置を把握しているようですね」
 倒した本棚の影に隠れ、集音装置にて階下のリベリスタ達の会話を探っていたユウスケがぼそりと口にする。カオルは唇を尖らせた。
「隠れていても無駄ってワケね」
「仕方ない、奴らが姿を現したらすぐに攻撃に移ろう」
 レイの言葉に二人は頷き、ゆっくりと立ち上がった。

●遭
 三十階の階段を上った後、先頭を走っていた鷲祐は、すぐにフィクサード達のいる方角へ向かうために倒れたソファを乗り越え――た所で、その両肩を何かに打ち抜かれた。銀の目を見開き、前方へと視線を向けた彼の視界に映ったのはフィクサード・ユウスケの姿。その後ろにはナイフを構えた男・レイと身構える女性・カオルの姿も見える。
(これはソードエアリアル……)
 傷を見下ろし心中で毒づく。先手を打たれたのだ。素早さを自負していた鷲祐は舌打ちをしつつナイフを構える。眼前でこちらを見据えてくるユウスケを睨みつけ、駆け出す。
 飛び上がり、繰り出すのは残影剣だ。周囲の机やソファを叩き割ると同時、その中の一つの攻撃がユウスケを打ち抜く。恨みの篭った眼差しを向けられるも、鷲祐は舞い上がる瓦礫の中、疑問を口にする。
「なぜアークに執着する?」
 答えは無い。そのままユウスケの背後を取ろうと考えていた鷲祐は、その後ろにカオルがいることを把握して動きを止める。
「早く。もう戦闘が始まった」
「は、はいっ……!」
 階段脇に到着した莉那が、ユウスケと鷲祐が鍔競り合わせているのを見、階段を駆け上がってくる仲間に顎をしゃくる。ケイは慌てて頷くと、周囲に視線を走らせユウスケの肩越しに見えるカオルを見つける。
(……よし)
 小さく頷くと、バリケード代わりにされた机の影に隠れると移動を開始する。
 その背後から階段を登ってきたラキ、こじりは正面からカオルを見据えると、そのまま得物を手にして走り出す。
「こじり、相手にトドメ刺しちまう攻撃は厳禁だからな!」
「……本当に面倒臭いわね……」
 だが、二人の前に立ち塞がる影がいた。軽やかにラキとこじりの前に移動したレイは、ナイフをぴたりと二人に向ける。
「カオルの所に行きたければ、俺を倒してからにするんだな」
「おっと。あんたの相手はアタシがするよ」
 だが、ハイスピードで回り込んだ莉那が割り込んだ。ナイフとナイフの切っ先が閃き、視線がぶつかる。その隙にラキとこじりはカオルの元へ。
 しかし、不意に莉那と視線を交錯させていたレイがあらぬ方向へ向けてナイフを振るった。強く輝く十字の光。それはすぐ傍らの本棚に命中する。と、その影から飛び出したのは幸成だった。
「行くでござるよ!」
 地面を蹴った彼の身体から黒いエネルギーが伸び、レイに襲い掛かる。それは敵リーダーの頬をかすめた後、傍らの壁に命中しガラスの破片を打ち上げた。
 そのままやって来た俊介の前に舞い降りた幸成は、肩越しに振り向き視線で彼を促した。俊介は頷き、拡声器に唇を当てる。
「あー、テステス……。――おい、お前!」
 拡声器から発せられる声にレイが視線を向けてくる。俊介は続けた。
「どうしてアークに敵対してんだよ? 大きな組織にケンカ売ってんだ、相当なんかあったんだろ!?」
 わずかに間が開く。しかし返事はない。手をかざし、攻撃を行おうとするレイに向かって螢衣が呪印を放つ。
「ちょっと動かないでいて下さい」
 だが、ソファの影から放たれたそれは、あっさりとレイに弾かれた。レイからの反撃を防ぐため、莉那が螢衣の前に移動し、庇うように立ち塞がる。

『暴走爆走ハリケーン』望月・嵐子(BNE002377)の1$シュートによる援護を得つつ、カオルへと接近するラキとこじり。相手は嘲笑を浮かべて身構えた。
「女一人に二人がかり?」
「うるせぇ、関係ねぇ奴を巻き込むんじゃねぇよ!」
 ラキの鉄槌が閃き、カオルのがら空きの胴を打ち抜く。思わず息を吐き出し後退った彼女だったが、こじりは逃げを許さない。
「容赦はしないわ」
 メガクラッシュ。それはカオルの胸を的確に命中し、彼女の身体をさらに後退させた。その背が乱暴に背後にガラスに打ち付けられ、その場に蹲る。
 ラキはそれを見つめた後、ゆっくりとカオルに近付いた。
「お前らがこんな事をしている動機がイマイチ分からねぇんだ」
 カオルが憎しみの篭った視線をラキへと向ける。それを正面から受け止め、ラキは肩を竦める。
「例えば、仲の良かった奴がエリューションになっちまって、アークに狩られた……とかか?」
 カオルの目が見開かれる。その反応で、ラキは自分の言葉が的を射た台詞だったことに気付く。が、カオルはすぐに立ち上がると、憎しみで粘った瞳で二人を見据えた。
「殺す……殺す!」
 次の瞬間、閃光のような雷が室内に巻き起こった。チェインライトニングはリベリスタ達を容赦無く打ち抜き、痺れさせた。

●着
『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)のハニーコムガトリングによる援護を受け、『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)が人質を救出している間、鷲祐はユウスケと熾烈な戦いを繰り広げていた。
 鷲祐がナイフを切り上げればユウスケはそれを避け、下がる鷲祐を追って駆け出す。ユウスケからのソニックエッジを鷲祐は防御用短剣で何とか連続攻撃を打ち破る。
 だが、全体的な能力の差はユウスケの方が上らしい。そして時折前方から届くチェインライトニングも加わり、鷲祐の身体は確実に消耗していった。散発的に俊介の癒しの歌が響いて来るが、消耗の早さには追いついていない。
 それでも、彼は話しかける。
「……なぜこんな事をする。……なぜこんな事を、した」
 銃身で鷲祐のナイフを受け止めたユウスケは、その言葉に不意に口を開いた。
「アークは正義を為すのでしょう? 危機にある誰かを守るのでしょう? なら、こうなるのは分かっていた事じゃないですか」
 言って銃を振ってナイフを跳ね除けたユウスケは、そのまま澱みない動作でトリガーを引いた。
「なぜこんな事をするのか? 答えて差し上げましょう、私達は革醒したと言うだけのただの人間。大きな組織に立ち向かう力などない――だからこうしてアークに属する貴方達を誘き寄せて殺す事でしか、復讐する術が無いんです……!」
「……ッ!?」
 続けざま、鷲祐の身体は弾丸に打ち抜かれた。思わずその場にくず折れる。その彼の額に銃口を押し当てたユウスケは、そのままトリガーを、
「すいません。死んで頂きますね」
 引いた。

「殺すと言ったわね?」
 こじりは口腔に残った血を吐き出し、ショットガンを構える。幾度かチェインライトニングを受けてはいるが、消耗は俊介の歌によってある程度治癒されている。
「ちまちまと末端を相手にするしか出来ないのにデカい口を叩かないで」
 そして引かれた引き金は、容赦なく女の肩口、腹、脚部を打ち抜いて行く。
「世の中、どうしようもねぇ事は確かにある……受け入れられるかっつったら別の話だけど、けどよ」
 ラキは必死で言葉を紡ぐ。先ほどカオルが反応を見せた事で、言葉がするすると彼の口から飛び出して行く。
「それだったら、関係ねぇ奴を巻き込むな! 直接アーク狙って来いよ!」
 返事はない。ラキの隙を突いた攻撃を受け止めたカオルは、そのまま片手を振った。またチェインライトニングかとラキが眉を潜めるが、
「う……動かないで下さいっ……!」
 突然、背後から声が割り込んできた。気配を絶って回り込んでいたケイだ。その両手から発される気糸は、狙い違わずカオルを拘束している。
「!? あんた……」
 驚愕に目を見開くカオル。その彼女に向かい、ケイは必死に言葉を紡ぐ。
「な、なんでこんなことしたんです……か? アークが何かしたんです、か?」
 その視線を受け止めるケイは必死に語りかける。
「ボクはアークに来て、沢山友だちが出来たんです……あ、貴方がただって、ボクが友だちになります、だから……!」
 その言葉に俯くカオル。分かってくれたのか、とケイは顔を輝かせ、気糸をほどいてカオルに近付く。――だが。
「甘いわね!」
 カオルは突然顔を上げて腕を振りかざした。目を見開くケイ、しかしその眼前でこじりがショットガンを流れるような動作でカオルのこめかみに押し当て、今にも術を使おうとしたカオルの頭部を打ち砕いた。
 はじけ飛ぶカオル。彼女はそのまま立ち上がる事は無かった。唖然とする仲間達の前で踵を返したこじりは、ショットガンのグリップを握り直し、再度弾丸を放つ。
 鈍い音がして放たれた弾丸は、鷲祐に止めを刺そうとしていたユウスケの首を打ち抜く。血が噴き、ユウスケの銃から放たれた弾丸は鷲祐に命中することなくあさっての方に飛んで行く。
 こじりは硝煙を上げるショットガンに息を吹きかけた。

「一人も殺さないでいいなら、その道を選びたいんだ! 武器を収めてくれ!」
 幸成の援護を受けながら、俊介は先ほどからあらんばかりの声を張り上げていた。拡声器から声が上がる傍らで呪縛の呪印を刻んでいた螢衣は、手を止め二度目の守護結界の印を刻む。同時にレイに語りかけた。
「……私達は、大を生かし小を殺す事を幾度も行ってきました。ですが、それ以外にどうすれば良かったのか――」
 その言葉にレイは眉を動かす。そしてナイフを螢衣に叩きつけようとするが、その前に立ち塞がった莉那に阻まれる。ますます眉根を寄せたレイは、ため息を共に言葉を吐き出した。
「どうすれば良かったか、だと? 殺さなければ良かったじゃないか、その命を……」
 すぐに俊介が反応する。
「あ、アークは誰か……あんた達の親しい人を殺しちまった、のか?」
 言葉の断片から真実を手繰り寄せ、言葉を紡ぐ俊介に対し、レイは頷く。
「俺とカオルの子供を、お前達は……。ケイスケも恋人を――」
 言いつつ、再度怒りが煮えたぎってきたのだろうか。レイは顔を上げ、再度ナイフを振りかざした。
「下がるでござる!」
 俊介を突き飛ばし、幸成が小太刀でレイの一撃を受け止める。態勢を崩したレイを蹴飛ばし、そのまま尻餅を着いた彼の額にぴたりと得物を当てた。
 俊介はその様子を見、唇をかみ締めてから、幸成の肩越しにレイに話しかけた。
「……勝負は決まった。投降してくれ」
「それは出来ない」
 しかし、レイはあっさりとその提案を跳ね除ける。死角で再度ナイフを握るのを確認し、幸成は目を眇めた。
「アークに一矢報いなければ、俺達は前に進めないんだよ!」
 言って、襲い掛かってきたレイを――
 幸成が小太刀を一閃させ、その首を掻き切った。
 血を噴き出し、唖然とする俊介と螢衣の前で得物を振るい、血を落とした幸成はぼそりと呟いた。
「……恨みを買うのは自分のような者だけで充分でござるからな」

 かくして事件は終わった。フィクサード達の懊悩は、リベリスタ達に何を残したのか――
 それは誰も知らない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした、6000文字ぴったりで喜んでいる水境です。
Nightmare Highをお届けします。

説得に関しては「非常に難しい」設定にしておきましたので、三人が死亡した事を後悔なさらず、皆さんが前に進んで下さる事を祈ります。