●赤紅赫 三つの赤い矢が駆け抜けていた。 笑い、武器を構えて、走る。 人間なんて殺してしまえ。人間なんて喰らってしまえ。 人間風情が我等に敵うものか。 笑い、笑い、牙を剥く。 ●ブッコワセ 「サテ」 事務椅子に座し、こちらに背を向けた『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)の視線はモニターへと向けられている。様々な映像。それらは全て――人間が鬼に蹂躙され殺戮されている信じ難い映像だった。 「まさに『鬼』畜、ですな。彼らを放っておいたら近い内に『御覧の有様』でしょうな」 事務椅子をくるんと回し振り返った予言師の言葉がブリーフィングルームに響いた。何時に無く真剣な声、眼差し。 「簡潔に言えば、やらねばやられます。やるっきゃないのです。現時点に於いて鬼勢力に対し優位とはとても言えない状況だとしても」 モニターが切り替わる。それは敵の牙城――禍々しい。あまりにも。 「作戦目標は鬼の本拠地、この鬼ノ城自然公園に出現した巨城『鬼ノ城』の制圧及び鬼ノ王『温羅』の撃破でございます。 皆々様には鬼ノ城の城外制圧に当たって頂きますぞ! 城外を押さえれば、こちらの後退回復支援が万全化する事でしょう。 『温羅』との決戦に臨む方々の余力を温存出来るかどうかは各戦場での勝敗にかかっていますぞ! ……って、言葉で言うのは簡単なんですけどね」 苦い表情。それだけ戦況は厳しく、こちらは苦戦を強いられるだろう。 だが、『やるしかない』『やらなきゃやられる』。覚悟を胸に説明を促す。 「この城外では四天王『烏ヶ御前』及びその配下部隊が皆々様を遊撃によって撹乱し、回復補給線を破壊しようとしてくるでしょう。生命線を守る戦いですな! そして皆々様に討伐して頂く鬼こそ、これら『速赤鬼』『速紅鬼』『速赫鬼』」 映し出されたのは、赤い三体の鬼。それぞれ姿は異なるが、城外の広い大地を砂煙を上げて疾走するその姿からかなりの機動性を持つ事が窺える。放っておいたらあっと言う間にこちらの補給線に辿り着いてしまうかもしれない。鬼は何れも禍々しく暴力的な身形をしていた。 「個々の詳細については資料に纏めてありますので、そちらを参照して下さいね。 そうですな、彼等は御覧の通り機動力自慢の鬼でしょう。コンビネーションもバッチリですぞ、速さに翻弄されないように!」 紙装甲って事もありませんしね、と言う。それから小さく息を吐く。心配げな色合いだった。 「激しい戦いになる事でしょう。熾烈を極める事でしょう。沢山傷付く事でしょう」 ですがと言う。せめてと笑む。笑う門には福が来る。そして、正義は勝つのが世の常なのだ。 「皆々様ならきっと大丈夫! 必ずご無事で――御武運を!!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月07日(土)23:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ダブル吶喊 正に戦闘の真っ只中、と言える状況であった。 あちらこちらで戦いの音が鳴り響き、呼吸も忘れそうな程の剣呑な気配で溢れ返っている。 戦場。そこを一直線に駆ける白と青。 (ここでくい止めなきゃ……力の無い人たちが大勢犠牲になる) 空を切る境界最終防衛機構の白い制服。『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)はOtto VeritaとNemophilaの二刀をその手に握り締めた。あどけなさの色濃い顔立ちではあるが、その表情には強い決意。この速度で護れる命があるならば。 「鬼たちよ、私たちを人間風情と侮るか」 青。フラクタルブルーを翻し『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)はルアに続く。視線の先にはあちらこちらで仲間が鬼と戦いを繰り広げているのであろう様子と、そして――三つの赤。 人間だ―― 殺せ、殺してしまえ―― 皆殺しだ―― 遠くからでもハッキリと分かる。首の後ろが疼く程、明確で濃密な殺意。 砂煙を巻き上げて、二人に劣らぬ機動力を以て突撃してくる。 「頑張ろうね」 「うむ、負けるわけにはゆかぬ」 呼吸の時間で詰まる距離。速赤鬼の真空刃を鋭い動作で回避すれば、刹那に二人の視界を赤く赤く染める速紅鬼が召喚した大規模な火柱――炎が肌を、咽を焼く痛み。容赦の無い一撃。 それに、『鬼』という存在に、ルアは僅かな畏怖を覚える。震えそうになって泣き出しそうになる。 (……怖い。でも、ここを突破されて力ない人たちが、フォーチュナである、メルクリィさんやエスターテちゃん、パパやママが死んでしまう方がもっと怖いの!) だから。 「ここが私たちの【境界線】――越えさせない、絶対に護ってみせる!!」 火柱を突っ切り、跳び出し、ルアは刃に花風を纏った。一気に間合いを詰めるのは速赤鬼との零の距離。 震えそうな手には最愛の人に名付けて貰った刃がある。大丈夫、彼が見守ってくれているなら。 「ここから先は一歩たりとも通さないの!」 魅せるは超速の澱み無き連撃。小癪なと牙を向く鬼が迎え撃つは似通った技、凄まじい速度の下に激しい攻撃がぶつかり合う。火花が、血潮が散る。 追いつくまでのほんの数秒――けれど体感する時間はとてつもなく長い。 それでも退けない。何時間だろうと食い止めてみせる。 「ケッ、貧弱な人間風情が」 速紅鬼の火炎の刃に背後から斬りつけられたアイリが一瞬バランスを崩した刹那。跳び上がった速赫鬼の重い脚が彼女の身体を無残にも踏み潰してしまった。実に下らんと口角を吊り上げる鬼の脚の下ではじわじわと赤が広がる、投げ出され拉げた白い腕が血に染まる――その腕の、指先が確かに動いた。 「確かに人間は弱い。寄り集まって組織を組まねば、生きてゆく事もできぬ」 「!?」 二体の鬼に狼狽が映る。何故だ、確かに踏み潰して殺した筈では。 「だが人間は、そうやって生きてきた。弱さを知っているから、そうしてきた。 寄り集まらねば、そなたらに立ち向かえぬ。私たちは、自分の弱さを知っている。だからこそ今まで戦ってこられた」 「くそ、もっかいぶっ殺して――」 速赫鬼が脚を退け槍を掲げたその瞬間、何十もの矢を番えるアイリの瞳と視線が搗ち合った。 「まだ舞台より降りる気はない。さあ、人間風情の力をみせてやろう!」 放つのは速度に任せた高速の矢。次々と放つ直速の連撃。怯んだその隙に跳び下がったのは、鮮烈な輝きを纏う砂蛇のナイフを掲げた『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が速赫鬼へ踏みこんだ為。 「俺達が来たからには、これ以上好き勝手に走り回れると思うなよ」 一点の曇りも許さぬ破邪の光を以て、矢の拘束に動けぬ速赫鬼を鋭く斬り付ける。 一方で『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)もルアに追い付き、速赤鬼のブロック役を引き継いでいた。 「ルアさん、代わるよ……ありがと。気をつけてね」 「えぇ、綾兎さんも!」 跳び下がるルアを見届け、二つのナイフImitation judgementと柊還を身構える。速赤鬼が睨ね付けてくる。鬼か。厄介な相手だが、このままずるずる引き摺るのも気持ち悪い。 ここで綺麗さっぱり、カタをつけようか。 「さて、お待たせ。俺と遊ぼうか? ご自慢の機動力……見せてよね?」 「上等だ、その耳毟り取って畜生の餌にしてやるよ!」 矢の様なスピードで飛び掛かって来る速赤鬼。 本当は、ここで攻撃とか出来たら恰好良いんだろうけれど。 (……生憎、自分の力量は自分が一番知ってるし。二兎を追うもの一兎も得ず、っていうでしょ?) 高めた身体のギア。残像によって次々と繰り出される斬撃を跳ぶ様に躱してゆく。徹底的に回避専念。欲張らず、確実に、自分の役目を果たす。 「どうした、ブルっちまって手も足も出ねえってか? 漏らしてんじゃねーだろうなァ!」 「はいはい……臆病で悪かったね。なら、当ててみたら?」 どんな挑発だろうと受け流す。ぶつかり合った速赤鬼の刃と柊還がギリギリと音を立てる。 護る為、邪気を払い大切な人を守り無事に還すという誓い。仲間の為に持ち堪えて邪魔をするのが最重要。 一方、速紅鬼はその炎を以て快と綾兎を邪魔しようと試みたが――それは他のリベリスタ達が許さなかった。 迸る炎を放とうとした速紅鬼へ、青の翼を翻し一直線の弾丸が如く攻撃を仕掛けたのは『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)、Bad Eaterと名付けた蒼い刃で悉くを切り刻む。引き離す。 自分が守りたいのは皆の幸せとその笑顔。それを守れるだけで最高に幸せ。 最高値まで高めた身体のギア。素敵に不敵に爽快に笑み。 「人間風情と馬鹿にしなさい。人は弱くとも大切な人達の為なら幾らでも抗い立ち向かう。 幸せを笑顔を絶対に守る覚悟と共に、その角を牙を欲望を……全て断ち斬り喰らってやります!」 空中戦は負けられない、何より仲間の邪魔はさせない。追い遣る様に刃を翻し、距離を詰める。炎を切り裂く。 (……機動力自慢ね、何だかサーカスみたい) 目が回りそうだ――『fib or grief』坂本 ミカサ(BNE000314)は息を吐きつつ脳内の集中力を極限にまで高めてゆく。迸る電気信号、ニューロンの声を聞きながら速紅鬼を、その飛行能力の要であろう車輪を狙った。外したら洒落にならないし、足手纏いになる事だけはご勘弁。指先のdown and out // beatificから真っ直ぐに放った、気糸。的確に車輪の片方のど真ん中。が、流石に一発でいきなり壊せるような代物ではないか。構わない。壊す。機動力自慢なら削いでやれば良い。 速紅鬼と亘、ルアの刃が激しくぶつかり合っている――速赤鬼の素早い一撃をそれに劣らぬ迅速さで綾兎が防いでいる――速赫鬼の正面に立ちはだかった快は正に『守護神』の異名通り鉄壁のディフェンスを見せる。 それらを見渡しつつ『突撃だぜ子ちゃん』ラヴィアン・リファール(BNE002787)は冷静に立ち回っていた。できれば3体、最低2体以上を巻き込める位置に立つべく。 「ここで俺らが頑張ればそれだけ味方が生きて帰れる。だったら全力で頑張る以外の選択肢は無いぜ」 ベストポジション。マジックガントレットの拳を合わせ、複雑重厚な呪文を高速で紡いでゆく――組み上がるのは死へと誘う構築式、己が血を音楽へ変える黒き魔曲。 「人間風情とは言ってくれるじゃないか。だったら教えてやらなきゃな、人間の本当の力ってのを!!」 不気味な魔法陣が構築された次の瞬間、漆黒の濁流が鬼達へ襲い掛かる。敵の進路を予測しての一撃、鞭の様に撓る鎖が三体の鬼を纏めて強かに打ち据えた。その恐るべき威力を以て或いは怯ませ、或いは封じ。 「俺の鎖から簡単に逃げられると思うなよ!」 呪いの鎖に苛まれた鬼、逃れようともがく者、又は直撃は免れ暴れ出す者。それらへ掌を翳し、体内魔力を活性化させた『野良魔女』エウヘニア・ファンハールレム(BNE003603)は一つ息を吐いた。 「やれやれ、落ち着きの無い奴等だね。いや、落ち着いている場合ではないのか」 あちらが撹乱を任とするなら、こちらの任はそれの阻止――『やるしかない』『やらなきゃやられる』。 「単純明快だな、気分が良い。さあ、そろそろやらせて貰おうか」 言葉の刹那、魔女が放ったのは視界を焼き潰す光の奔流。 黒き鎖、白き光、二つの魔法に徹底的に動きを封じられた速紅鬼が宙で蹌踉めく。 その隙。 「空を飛ぶ赤き鬼よ、お前ような存在では道教の少年神には程遠いであろうに」 引き絞った弦、アイリの正確な矢が速紅鬼の片輪へと放たれた。突き刺さる。ミカサと共に攻撃し続けた為にかなりの損傷を被っていた車輪が――砕けた。ガクンと大きく鬼の体勢が崩れる、その視界、最期の光景、目前。 迫るミカサの気糸が、的確に鬼の眉間を貫いた。 速紅鬼が倒れた――それを後目に、快は砂蛇のナイフで速赫鬼の一突を受け止めていた。力の拮抗。圧倒的な重圧。踏み締めた足がズズッと下がる。 「こんな所で……」 力を込める。下がった以上に足を出す。 「立ち止まるわけにも、足止めを食らうわけにも、いかない!」 強引に押し返し跳ね退けた。次の瞬間には守り刀へ退魔の力を込めて斬り付ける。 「チッ、舐めるなよ人間がァ!」 薙ぎ払われる槍は全力の防御。魔導盾と槍のぶつかる音が響く。 速赫鬼が他のリベリスタへ襲い掛かる様子を全く見せぬのは、快が攻撃と防御を適宜織り込む事で『自分を無視できない存在』と意識させる策にまんまと引っ掛かった故。 倒しに来たとしても問題は無い、『生き残る』事こそ自分の得意分野なのだから。 時間を稼ぐ。仲間の為に、一秒でも長く。立ち続けるのが自分の役目。 「……紅がやられたか。ハッ、赫の脳筋もまんまと乗せられやがって」 速赤鬼の刃がその名の通り赤く染まり滴っている。仲間の加勢に赴かんと走り出そうとしたそれへ綾兎は毒突く様に吐き捨てた。 「どこに行くの? 逃げる気?」 先を消費し、全身から真っ赤な血を垂らしながら綾兎は立ち上がる。意識が眩みそうな痛みが脳を焼く。けれど、刃を構えて。 「ったく革醒した奴ァ七面倒だな、殺しても生き返りやがる」 「ならもう一回殺してみたら? ……出来たら、の話だけど」 ハァ?と速赤鬼が綾兎へ身体を向けた、その瞬間――速紅鬼を倒したリベリスタに背を向けた瞬間。放たれたのはアイリのスターライトシュートとラヴィアンの魔曲であった。 「!」 鋭く回避する。更に立て続けて吹き上がるのはエウヘニアのフレアバースト、跳び下がらせて速赫鬼から更に引き離した。 「全く、奴等の素早さに目も身体もついていかないよ。もう少し年寄りに優しくして欲しいものだ、なんてね」 老女は冗談めいた笑みを口元に、そのまま再度呪文を唱え始めてゆく。抑え役の子の為にも、とっとと片付けてやらなきゃね。 「さて、次は君だね」 ミカサの言葉と同時、その指先から放たれた気糸の網が速赤鬼へと絡み付く。動きを封じる。藻掻くその目前へ、綾兎はImitation judgementを振り上げた。 「ようやく、本気になれるね。だからもっと……アンタの本気も、見せてよ?」 反撃開始。誰かにとっての正義。速度を乗せた紅い刃で切り刻む。切り裂く。直後の同時に横合いから挟む様にルアと亘の剣戟も閃いた。呻る鬼。真空刃を纏う蹴撃で薙ぎ払う。血潮が散る。 鬼はそのまま飛び下がり、快の防御の前に悪戦苦闘する仲間へ声を張り上げた。 「オイ速赫鬼ィ! いつまでもグズグズしてねぇで手伝――」 「鬼ともあろうものが一人じゃ何もできないんだね。 ……それに、補給を絶たなきゃ俺達に負けると思ってるんだよね? 何で? 自分達の弱さを自覚してるから?」 遮る様に、キッパリと。ミカサの温度の無い視線が速赤鬼に突き刺さる。連携はさせない――その為の挑発。 「喧しいわ糞がァア!」 思惑通りに物凄い速度で突っ込んでくる。 そう、思惑通りに。 「俺のターン!」 掌を向けたのはラヴィアンだった。放たれる葬送の鎖が鬼に迫る――無謀に突っ込むなら呪縛の完成、躊躇えば隙が出来て味方が仕留めてくれる。 チェックメイト。 「!」 真正面から、黒の濁流が速赤鬼を飲み込んで雁字搦め。ラヴィアンの得意気な笑み。 「速度が自慢のようだけど、ソイツは諸刃の剣……お前の速度も、こうして縛っちゃえば問題無いぜ!」 呪縛に動けぬ鬼へ指先を突き付け、高らかに声を張り上げた。 「今だ、やれ!」 「任せておくれ」 エウヘニアの焔の式が完成する。鬼の足元より凄まじい火柱が噴き上がる。アイリの矢が飛ぶ――それに並走する様に、綾兎は速赤鬼へと。 「これで、終わり……いい加減、さっさと眠りなよ? 永遠に」 切り裂く、一閃。 残すは速赫鬼のみ、となればもう余力を考える必要もない。 防御を捨て、全力攻勢。快がリーガルブレードを放つ。鬼はそれを槍で受け止め――異変に、変化に気付いた。残すは既に自分のみ。嵌められた。舌打ち、素早く跳び下がるやそのまま高速で走り出した。攻撃の為ではない、自分達の役目は人間達の補給線の撃破。 「お待たせ……大丈夫?」 「あぁ。だが」 駆け付けた綾兎へ快の視線。逃走を始めた鬼。エウヘニアとラヴィアンが魔法で、アイリが弓で足止めを試すも。 だが――そんな鬼へ追い付いた者が居た。ルアが、鬼の脚にしがみついて引き摺られながらもそこへナイフを突き立てる。絶対に離さない。 「退けェ!」 「きゃあっ!」 槍で突き、薙ぎ払った。白い身体が鮮血を奔らせながら宙に投げ出される。それでも運命を代価に宙で一回転するや地に降り立った。刹那には駆け出す。その傍には亘が。 そしてルアが足止めを行ったその時間は、ミカサが速赫鬼を射程内に入れるまでに十分な時間となった。 「君に逃げられると困るんだよね、色々と」 だから止まれと放つ糸。動きを縫い縛る。ルアと亘が迫る。 「ふふ、背中は仲間が守ってくれます。だから自分は目の前の事に全力を尽くします! 仲間の活路を拓いてみせる。ルアへ目配せ、頷いた彼女は亘の肩へ跳躍するやそこを足場に一気に飛び上がった! 「白く速く高みへ。二つの風の螺旋で、貴方を倒すわ」 L'area bianca――白の領域 Il piu veloce a spirale――最速の螺旋 降り立つのは速赫鬼の真正面。 ルアは前面から、亘は後方から。 息を合わせて繰り出す超速の一撃は荒れ狂う嵐の如く、煌めく閃光の如く。 百閃に切り刻むその猛攻から逃れる術など無い。 肉の一片すら生き残る事を許さない。 剣の風が止んだそこに、鬼の立つ姿は無し。 ●道の先へ この戦いにこそ勝利したが、『戦い』自体は終わっていない。寧ろこれから。 「行こう、次の為に」 快の声に誰もが頷き、味方の元へと踵を返す。 行軍する彼らを見下ろすは――禍き鬼の城。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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