●ふともも! 尻ぃ! 「俺はうなじが好きだなぁ」 「胸も捨てがたいだろ。貧乳万歳!」 「二の腕だろ。あのぷにぷに感がいいんじゃねぇか」 そんな議論が街の至る所で、連日連夜行われる。 他にも勿論、胸、太腿、指といった部位への賛美が呟かれていた。 思念は街の路地裏に集まり、周囲に集まった妄想もとい思念もついでに取り込み革醒を果たす。 「ふとももと尻の黄金ラインはどこじゃー!」 女でも男でもいい! とでも言うような言葉は夜の闇に木霊する。 嗚呼、きっとその想念は確かな犠牲を産んでしまうのだろう……。 ●つまり愛 「という事」 身体をリベリスタたちへと向けて静かに語る『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の口が閉じられた。 集まったリベリスタたちは一拍置いて同時に声を上げた。 「どういう事だよ!?」 いや、わかる。わかるのだ。でもだから、なんだかわかりたくない。 しかし彼らの言葉は最もだとしてイブは再度口を開く。 「フェイズ2のE・フォースよ」 それはわかるというように周囲のリベリスタが悩ましい視線を投げる。 「ふとももとお尻への愛を叫びながらでなければ攻撃が通らないみたい」 「……」 やっぱりかーと項垂れながら真面目な者はそこに膝を付き、中には「俺鎖骨派なんだけど……」やら「俺はくるぶし派だわ……」という呻き声のようなものが聞こえてくる。 自身のこだわり以外への愛を叫ぶがそこまで辛いのだろうか。いや、辛いのだろう。 己の信奉する部位はやはり譲れないものだ。 「攻撃手段は、ここと、ここのあたりを舐めまわしたり、ここを触りながら攻撃してくるわ。戦闘場所は路地裏。人も来ない」 手近に居たリベリスタの一人を立たせてふとももと尻を指差しながら解説する。居るのかこの作業。 「それ程、強力な相手ではないと思うけど。気をつけてね?」 何に、とは言わずにイブはそう締めくくった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:文丸 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月02日(月)22:41 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●求道者たちの叫びⅠ 路地裏の前。人通りが少ない場所に八人の異様な熱気を持った集団が居た。もしも人が通ろうとしてもきっと少し視線を向けてから逸らして別の道を探すだろう。 「ふとももと尻! 愛だろ、まさしく愛だろ!」 「ああ。尻線美こそ至高だとも」 尻線美と書き、グランドラインと呼ぶ。そんな事を言い合いながら『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)とサングラスをかけた『合縁奇縁』結城・竜一(BNE000210)の熱い思いの一部が迸ってる。 何が二人をここまで熱くさせるのか。いや。だが待って欲しい。 熱くなっているのは何も二人だけではない。 「変態が増えてきているわね……。教師として嘆かわしいわ」 教師として全く正しい言葉を紡ぎながら『自堕落教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)は他の皆に気づかれないように手に持つビデオカメラを入念にチェックする。 何を撮るつもりなんて聞かれなくてもわかるだろう。だってここには三人も美少女がいるのだから。 そりゃ撮らないとソラ・ヴァイスハイトの名に恥じる。 「皆血気盛んって感じだねー」 「欲望駄々漏れってだけな気がすんねんですけど」 柿木園・二二(BNE003444)が笑いながら言い、御厨・麻奈(BNE003642)はテンションが急上昇していく全員を見て一歩引いた場所に居る。 隣の二二もまた「おっぱいもいいけど尻もやっぱ」と呟くのを聞いて更にもう一歩距離をとった。 どうすればいいのか、この状況。 いやどうもしなくてもいいし、どうにかできるわきゃない。 「ふふ。巨乳とか叫んでたら粉砕ものだったわ」 「敵もわかってる奴って事だろう」 ソラと同じく密かにビデオカメラを点検しながら『すもーる くらっしゃー』羽柴・壱也(BNE002639)が薄く笑い『錆天大聖』・狄龍(BNE002760)が紫煙を燻らせながら同意を示す。 下半身を示す黄金ラインもといグランドライン。 そこには情熱を燃やすための何かがあるのだろう……。 「乳神よ! 高校生になるのでお尻からふくろはぎまでのラインで男の子をメロキュン☆ しちゃうのをお許しください」 謎の祈りを捧げながら『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が空に向かって祈りを捧げ終わる。 全員開戦前の準備は万端なようだった。 装備とかの話ではなく、心意気が。 余談だが水着を着ている者は四人いる。それがこの仕事への熱意を表しているとも言える。 「行こうぜ皆。求道者たるオレらの熱い叫びを敵へとぶつけてやろう」 竜一がいい笑顔で率先して路地裏へと駆けていき、七人もそれぞれの思いを燃やしながら突撃していった。 ●最初からクライマックス 路地裏へ入った瞬間、全員の想いを受けた『愛の伝道師』――もとい、E・フォースが声を大きく叫ぶ。 「お前らぁ、どこが好きだ!! 乳か、腰か、足かぁぁぁぁ!?」 「わたしのこの曲線美を見ればわかるでしょ!」 太刀を連続で叩き込む舞姫の姿を見れば、理解せずとも感じられた。 水着だからこそ、くっきりと見える尻のラインから始まり、引き締まりながらも触れればぷるんと揺れそうなふともも。 これこそ、まさに、愛の体現者!! 「くっ、合格ぅ!! 素晴らしい尻! 最高のふともも! この黄金ライン! 完璧だぁ!」 「いいわ、いいわよ舞姫ちゃん。もっとお尻を振って、ふとももをこう、見せ付けるように動いて」 お尻とふとももを重点的に解像度抜群のカメラで撮影しながら、ソラが妙な注文をつける。 何を撫で回したいか? 勿論、女の子の柔らかいお尻とかに決まっている! 「スパッツとジーンズに包まれたお尻最高!」 夏栖斗はと言えば、体現者たる舞姫が現在着ていない衣服に言及した愛を土砕掌に乗せながら叫んだ。 もちろん、絶対領域への言及も忘れていない。 素晴らしきかな愛、永遠はここにあるんだね。 「ソラ先生の普段着は白衣! 普段は隠れてるがふとした時に見えるミラージュライン、どうだ! どうよ? 想像してみろ!」 竜一の問いに対しての答えだというようにE・フォースは避ける事もできず堂々と二刀の攻撃を受け頷く。 想像してみてほしい、小さなお尻からふともものラインを。そして、しゃがんだ時に白衣の隙間から見える瞬間を。 そんなん想像したら、もう、もう辛抱堪りませんよ! 「然り、眩惑! 舐めまわしたくなる光景が目に浮かぶ! だが、お前ら男の水着も悪くないぞォォォォ!」 舌を長く伸ばし残像すら見える舌が複数人のふとももを舐め回す。 効果音的にはぺろーんかぺろりんか悩ましく思えるような舐め方である。 具体的に言うなら。 舞姫には滲んだ汗を舐めとるかのように丁寧に、狄龍はラインを堪能するように念入りに。 二二へは、服の下にあるふとももの男らしく筋ばった硬さを確かめるようにねっとりと。それでショックを受けてしまっのだが、男が舐められる状況なんてそうないため仕方ないね。 「うおお! 舐めるなら女子か他の野郎に!」 「かかったな、誘い受け美脚に!」 余裕の笑みを浮かべながら狄龍は舌を耐え、拳を振りかぶりながら声を上げる。 「無理して履いたスリムタイプのジーンズがぴちぴちになってるお尻のラインを愛でたいぱーんち!」 わかる。とてもよくわかる、とE・フォースが言葉にならないくらいの良い笑顔で親指を立てた。 ギリギリに挑戦するかのような、そんな誘惑のラインが堪らない。 張り裂けそうなのは、ジーンズじゃなくてこっちの欲望だっての! 「ふ、太ももとおしりの隙間に! 俺を挟んでくれェー!!」 顔にふとももの柔らかさを堪能でき、ほのかに汗の匂いが漂う中で、お尻の感触を味わえる隙間。 そんなの誰だって挟んでほしいさ! 「あ、そこ、二人で舐められたんだからもっと絡んで!」 何故かビデオカメラを二人に向けながら壱也はリミットオフで色々な限界を投げ捨てる。 色々って何かって? 撮ってるものを見てわかるように体面とか理性とかですよ。 「うわー。ふとももさいこー」 残念な兄をちらちらと見ながら、ついでにというように杖から放たれた光が軽く打撃を与える。 「その程度では、少ししか効かないぞ! もっと、もっと心からの情熱を!」 自分が倒される事よりも熱意の方が重要なのか。なのだろう。そういう存在だしね。 お前それでいいのか、と言う者はここにはいない。 居てもこの状況でツッコミなんか放棄するしかない。 そんなこんなで戦いは第二局面へ続くのである。 ●最後までクライマックス 「いい尻だ。鍛えられており、かつ柔軟性も兼ね揃えている……」 目にも留まらぬ速さで移動したE・フォースは、夏栖斗の背後へ回り込み水着で強調された尻を撫で回す。 一瞬とは言え高速の愛でられ方をされてしまった夏栖斗は残念ながら。 「くっ、な、なんだここは! 尻とふとももの楽園じゃないか」 混乱にかかったのかかかってないのか。 一見してわからい難い事を言いながら夏栖斗の手が前に居る竜一へと向けられた。 それに気づいた竜一が回避は間に合わないと知り土砕掌を武器で受けとめた。 「竜ちゃんもげろ!」 本当に混乱してんのかこれ。 「お前こそもげろ! ついでに男全員もだ!」 不毛な争いが始まった。 攻撃を回避しながら竜一は内蔵されているビデオカメラで周囲の女の子の尻やふとももを撮るのを忘れないナイスガイ。 何人かへは目と目が会った時に「後でそれ渡して?」「コピーして皆で鑑賞しよう」という密約が交わされたとかないとか。 それはともかく、唐突に始まった男二人の殴り合い。混乱、なんて恐ろしいバットステータスなんだ。 「掛け算きたわぁ!」 叫ぶ壱也。殴り合いもとい溢れる友情の確認を己の全力でブレないように撮りながら、ハシバブレードに込めたエネルギーを片手間に全力で開放する。 攻撃は通る。通ったのだが、E・フォースの表情は微妙に納得がいかないような顔だった。 皆とはベクトルが違うが、しかしこれもまた、愛。 「和服美人が腰を……え? 掛け算? マジで?」 恐怖か何かで煙草を狄龍が落とす。おまけに叫ぶのも忘れたので、攻撃は残念ながら通らなかった。 驚きで叫び忘れたせいだろう。でも流石にそんな声が聞こえたら性別不肖だろうと気が散るのは仕方ない。 対象にされるのは何となく怖いんだ。 「ソニックエッジ! あ、間違ちゃった♪」 混乱している夏栖斗と、その相手をしている竜一。二人の友情確認の儀式が行われている最中に舞姫がその中に突撃していく。 なんでかって? 放っておくと被害を撒き散らしそうな感じで竜一が近寄ったからです。 現在E・フォースの相手をするのは五人。 後ろで「ソラ先生と舞姫といっちーと麻奈の尻線美はオレのだ!」「フランケンシュタイナーを喰らうのは僕だ!」「わたしの美しさが悪かったんだね……ッ」と色々な意味で白熱したバトルが繰り広げられているが見なかった。我々は何も見ていない。 三人を文字通り尻目にしながら真面目に、真面目に? いや真面目に二二の赤く染まったチェーンソーが牙を剥く。 「ダブルお尻に挟まれたい!」 二つのお尻が顔の横に、もしくは前と後ろに。 会心の一撃でE・フォースが鼻血っぽいものを出した。攻撃のせいです。色々辛抱堪らなくなったわけじゃないです。 更にソラの幾度目かとなるマジックミサイルが命中し、肉食獣のような色になっている眼を周囲へと向けた。 「EPがそろそろ厳しいわね。麻奈ちゃーん」 「パワースタッフがこめかみを打ち抜くで?」 手をわきわきさせながら麻奈に近づこうとしてきたソラへと釘が刺される。 麻奈が危険を感じたのは決して気のせいではあるまい。目が本気だった。男たちが争っている最中のチャンスを狙っていたのは明白だ。 この戦場、一瞬でも気を抜けば誰が誰にナニをされるのか、よくわかっている。 よくわからないままに大混戦である。 「っと、オレに当てるには甘いぜ? 麻奈のホープラインが見える以上はな!」 舌が死闘を繰り広げていた三人へと向かう。だがその舌を、ニヤリと笑みを浮かべ、トン、と飛び上がる事で竜一は避けた。更に地面に降りた瞬間に攻撃を叩き込む。 ホープライン。希望と夢が沢山つまった少女へ送られるライン名である。 十五歳ですよ? 現在の未成熟なお尻とふともも、それだけでも素晴らしいのに、これから先には大きな夢が待っている! あ、舞姫は美の女神だから避けなかったようです。 「僕はいままで何を……。何で竜ちゃんとかのもげられなかったんだ」 ぼそりと言葉にされた、感情の篭った後悔を聞いた者は誰もいなかった事にしたい。 混乱が混乱を呼んだ片方の戦場もいつの間にか収束した。 けれどすでに半数は満身創痍。早く決めなければいつ誰かが倒れてもおかしくはない状況となっている。 こんな状況になったのは仲間割れが原因なんですけどね……。 「色々堪能も出来たしそろそろ終わりにしようか?」 男子勢を撮っていた壱也がカメラをきちんと保管し、きちんと戦闘態勢に以降する。 今まで? うん。真面目にやってましたよ。味方との戦いをね! E・フォースもまた自分の限界が近い事を悟っているのだろう、頷きながら、両者は叫ぶ。 「ふとももと尻への情熱、どちらが上か見せてやろう!」 「俺らの愛を見ろや!」 狄龍の言葉と共に、リベリスタ達の猛攻と雄叫びが始まった。 「神よ……わたしは美しい!」 自身の肉体への愛を叫ぶ舞姫。 他者を魅了させかねない肢体による攻撃。それ自体が、すでに情熱と呼ぶに相応しいのだろう。 「ハイニーソが太ももに食い込んでちょい余ったところの肉が最高だ!」 ぷりんぷりんと言うべきか、パッツンパッツンと言うべきか迷う。 言葉にする以上に想像力を働かせて尻まで幻視すれば無限の可能性が見えてくる。 ふとももの肉が余るならきっとお尻もバインバインでうへへへ、なんだろうという感じで。 「FUTOMOMO万歳!」 夏栖斗の端的な一言はそれだけで全てを表しているといえる。 素晴らしいふともも。ふとももお尻教があったら誰だってそこの神を信仰せざるをえない。 叫びの後を引き継ぐのは。 「尻を愛でろ! だが、更に先を見据えるのが求道者だ!」 単体でも美しい。けれど、その魅力を更に引き出す方法を考えなければ求道者ならず。 全員の叫びと共に繰り出された、幾つもの猛攻を耐える術はE・フォースにはない。 例えあったとしても全ての叫びを叩きつけられたのならば、受けるのが真の漢だと思ったのかもしれない。性別なんてないんだろうけど。 だからその身が倒れるのは当然の帰結だったのだろう。 「お前らの愛、ナイスだぜ」 「お前がわかってた。それだけだ」 狄龍の言葉に笑みを浮かべて、E・フォースは静かに消えていったのであった。 ●求道者たちの叫びⅡ 「あ、そうや」 倒し終わり感情に浸ってる所で麻奈が声を上げた。なんだ、と思い振りかえった瞬間。 「その撮った物、大人しくさしだしてくれへんかな?」 ニコリとした笑顔の後ろに鬼を見た、と竜一は後に語る。 戦闘中に破壊する余裕がなかったのだろう。 あったのならばすでにサングラスは粉砕され顔には青タンが残っていたかもしれない。 「ソラさんもやで。そのビデオ没収!」 「そ、そんな私の努力の結晶が」 嘆きの叫びと共に膝を付く男女二名。壱也のが没収されなかったのは撮っていたものがものだからだろう。 撮られた事をもう忘れたのか頭の中でなかった事にしたのか二二が笑顔で皆へと問う。 「俺格好良かったな。んじゃこの後どうする? 遊びにいかない? 特に女の子たちどう?」 軽いノリで誘う二二の言葉に、女性陣は首を横に振る。 それに少しへこむ二二の肩に手をかけるのは、男性陣。 「今夜は夜通し語り明かそうぜ?」 「オレもいるからさ。ふとももと尻について、存分に語り合おう」 それはそれでとても楽し気な雰囲気があるし絶対に楽しいだろう。 三人集まればなんとやら、とも言う。やや楽しげなそれに参加しようと手をあげようとした最後の一人はというと。 「あ、じゃあ僕も」 「はいはい、兄さん帰ろうや」 上げようとした夏栖斗の手を兄妹らしく、だが気恥ずかしそうに麻奈がつなぐ。 三人は仕方がないなぁ、さっさと行けというように手を振り夜の街へと繰り出していく。 女性陣の舞姫は今以上に全てを高めようと心を強く決意し、ソラは涙を流しながら、壱也は足取りも軽くその場を後にする。 皆はそれぞれ帰路に着く。 だが心にあるのはたった一つの事柄だろう。 お尻最高! ふとももラブ! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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