●毒滴 「もう消えてしまいたいの。世界は臭くて汚くてちっとも優しくない。大人はみんな卑怯で自分の事しか考えていない嘘つきばかり」 音量を控えたクラシックの流れる古びた喫茶店。 奥にあるボックス席で、鬱々とした調子で熱弁をふるう少女を、男は微笑みながら見つめていた。 「ああ、そうだね。君の言う通り。世界は欺瞞と偽善の甘い毒に満ち満ちている」 「あなただってきっとそうなんだわ」 「僕は君と同じだよ。どうせ死ぬなら、消えるなら、美しいままがいい」 どうだか、と少女は捻くれた笑みを浮かべて見せる。けれどこれがポーズであり、内心彼女が自分に依存しきっている事を男は見抜いていた。 ようするに彼女は、こんな陳腐な世界の事なんて自分はとうに分かり切っている、賢く鋭く特別な存在であると認めてもらいたいだけなのだ。 大人なんて、世界なんて、下らない。それはまだ「社会」をろくに体感した事のない子供特有の、上滑りな感覚でしかない。本当の絶望と自分の幸運を知らないからこそ、軽々に他を否定し拒絶するのだ。 「でも、いいの。もううんざりなの。だからなんでもいいわ、願いが叶うなら。永遠になれるのなら」 「君の仰せのままに、姫君」 男は薄く微笑んで、少女の青白く痩せた手を取った。 ――そして翌日未明、×県×市で少女の変死体が発見される。 苦悶に血涙溢れる目を見開き、悪鬼の如く裂けた口からは変色した舌を垂らした、彼女が望む「美しく安らかな死」とはかけ離れた姿で。 ●誘う男達 「自殺志願者に近づいて、偽りの安楽死を持ちかけるフィクサードがいるの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が告げた事件の概要は、以下のようなものだった。 問題のフィクサードはいずれも見目麗しい男性三名。彼らはインターネット上で見つくろった対象へ言葉巧みに近付き、ある時は心中の相手として、またある時は安らぎへの導き手として、上手い具合に被害者に取り入る。 無論、安らかな死が齎される事は決してない。彼らはターゲットが自分を心底信じ、依存しきった頃合いを見計らって殺害するのだ。様々な種類の毒と精神的凌辱を用いた、実に惨たらしい方法で。 「彼らは全員、心身ともに破壊されつくした末の死にこそ救いがある――真の安らぎは無の中にしか存在し得ない、という考えの持ち主みたい。アークはこれらの経緯から彼らを矯正も説得も不能、と判断した」 故に容赦は無用。 これ以上の被害を出す前に、迅速に撃滅せよ。 淡々と告げた少女は続いて目的地の情報を語る。 「彼らのアジトがあるオフィスビルは既に特定済み。今から行けば、丁度五階のオフィスに三人が揃うタイミングで襲撃をかけられる」 けれど、とイヴは静かなまなざしをリベリスタ達に向けた。 「三人とも慎重で狡猾な性質をしているから、連携は当然のようにしてくるだろうし、逃走阻止の策も必要になると思う」 どうか気をつけて。 少女は淡々とした声音に幾許かの心配と信頼を滲ませて、そう括った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:蜜蟲 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年04月06日(金)00:04 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●毒香を厭う 「拍子抜けしちゃうね~。ほぼ素通しって感じ?」 千里を見通す眼でビルを見上げていた『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)は、色気がないねと口の端を歪めた。 目的地である五階の広々としたガラス窓には、薄いシャッターとカーテン一枚が引かれているだけだった。何らかの防護策が講じられている様子もない。恐らく此処は本拠ではなく、単なる打ち合わせ場のひとつなのだろう。此処で逃がせば面倒な事にしかならない。 「自分より弱い相手をいたぶり殺して、それで救いだの安らぎだの……反吐が出る」 「全くだ。真に安らいだ死とはそんなにたやすく与えられる物ではないと言うのに」 作戦概要の確認と調整を終えた後、小さく零した『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)とアルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)は、互いに優れぬ表情で息を吐いた。緊張ではなく、強い不快感が彼らの顔を曇らせている。 「真の安らぎ、ねえ。死んだこともないくせに、何を言っているのかしら。さっぱりだわ」 怜悧が過ぎていっそ穏やかにさえ聞こえる声音で、『作曲者ヴィルの寵愛』ポルカ・ポレチュカ(BNE003296)が「安楽死」の名を掲げる男たちを断じる。無は、なにもないから無なのだ。それも分からぬ馬鹿に好意など持てようはずもない。 誰もが程度や理由は異なれど、敵に対する嫌悪や不快を感じていた。 「安易に死に救いを求める馬鹿も嫌いだけど、他者に勝手な主義主張を押し付けてくる馬鹿も嫌い」 中でも『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)の態度は辛辣だった。エリス・トワイニング(BNE002382)もゆっくりと言葉を紡ぐ。死を安易な逃避手段として自殺する人、弱気心に付け入る人が多いと認めた上で、リベリスタとしての偽らざる思いを。 「自殺は……褒められた……ことでは……無いけれど……惨たらしい……死を……もたらす……人は……見過ごせない」 「だな。徹底的に苦しめといて、救うと来たもんだ。……ふざけやがって、絶対にここでぶっ潰す」 苦い顔をした『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)が呟けば、憤りを隠さない真っ直ぐな瞳をビルに向けて『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)は拳を握りしめる。 「他者をはめて悦に浸る、個人的に最も嫌いなタイプの相手ですね。外道にかける情けなんてありません」 速やかに殲滅しましょう。 彩の言葉を合図にしたかのように、一同は二手に分かれて行動を開始する。 片方はそのまま正面入り口へ、もう片方は非常口に待機して相手を挟撃する作戦だ。そうしてまず最初にオフィスへと突入したのは、入り口側を受け持つリベリスタ達だった。 こじ開けられた扉が派手に音を立て、室内にいた三人の人間が振り返る。全員が仕立てのよいスーツに身を包み、それぞれタイプは違うが整った容貌をしていた。そして、全員が恐ろしく無機質な瞳をしていた。 かくて演出された突撃はさながら、出来の良いB級アクション映画のように始まった。 「女の子いたぶって調子に乗ってるクズ共ってのはお前らだな?」 先陣切って放たれたエルヴィンの挑発は、言葉ではなく静かな笑い声で返される。男達は身構えはしたものの、落ち着き払ったものだった。物言いを聞けば問わずともわかる、と言わんばかり。 まさにフォーチュナによる評価と情報は正確だった。青年は獰猛に口の端を釣りあげる。 「……OKOK、イエスのお返事ご苦労さん。んじゃ、ぶちのめすから覚悟しやがれ」 「騒々しいね。俺達はもう少し品の良い口上の方が好みなのだけど」 肩をすくめつつ、金髪の男が拳を握るエルヴィンに笑み返した。男の手に銀の細剣が現れ、空気が次第に張り詰めていく。 「しかし惜しいな。君がハリウッド・ムービーの主役ならその台詞は満点だった、ヒーロー君」 次の瞬間、殺意が空間を揺るがした。 渦巻く力が空気の密度さえ書き換えてゆくような感覚。自らの力を高めたリベリスタ達は目標へと駆けていく。ポルカと彩は銀髪のプロアデプトへ、アルトリアは黒髪のナイトクリークへ、エルヴィンは金髪のクロスイージスへ。 鉄錆色に染まる事だけを宿命づけられた舞台に、次々と死のステップが刻まれていく。 刃で演じる演目は一つしかない。この世で最も原始的な、陰惨にして滑稽極まる即興劇。 ●扉 まずプロアデプトへ駆け寄ろうとした二人を遮ったのは、仲間を守るように進みでた黒髪のナイトクリークと金髪のクロスイージスだった。敵も当然、連携は意識している。 「正面から突撃とはヒーローらしいですね」 「っ……!」 怜悧な笑みと共に踊った刃が彩の肌を裂いていく。痛打を受けながら、咄嗟に彩はポルカを見た。抜きんでて高い速度を誇る彼女は抑えられていない。メンバー中でも彼女に優るのはエリスくらいのもの。 そう認識した瞬間、彩はナイトクリークへと目を向けた。役割、火力、その他諸々を含めて考えれば、まず自分よりもポルカの到達を優先すべきと判じた為だ。横目で見れば、意図を察したポルカが軽く手を振る様が見えた。 本来の抑えであるアルトリアより先に補足された自分は一手を潰すことになるが、それによって相手の攻撃は自分に向いた。アルトリアに迷惑はかからない。クロスイージスにはエルヴィンが当たる。 ならば現状は三対二。裏手へ回った仲間達も合流すれば、次に己の手番が来る頃合いで抜ける事は難しくない。 「苦しんだ末の死が救いというのなら、ええ、その通りに救ってあげましょう」 明瞭な声音で放たれた彩の言葉に、黒髪の青年は眼を瞬いた。彼の顔に浮かんでいたのは、ただ、純粋な疑問。 「救い手たる僕らが、どうして救われる必要があるのですか――ぐッ!」 間近に聞いた声は淡い笑みを含んで柔く、不快な程に甘かった。卑しく甘い毒に塗れた声で紡がれるのは狂信者の言葉。もはや語るも聞くも無為だと悟った彩は、炎纏う拳を敵の横っ面に叩きこんだ。 「……ふん、勝手な事を言う」 アルトリアは仲間に向けて放たれた言葉を聞いて、苦い思いを強めた。突入前にも口にした言葉をもう一度、噛み潰すように呟く。 生の尊厳を全うし、輝き終えた先に安らかな死を迎える。それが彼女の理想だった。故に生を踏み躙るフィクサード達の行いは、彼女の掲げた正義にとっては認めがたい悪徳に他ならない。 彩の打撃でバランスを崩した男へ、アルトリアの振るうレイピアから魔力を帯びた閃光が飛び、血とともに弾けた。 不快と嫌悪は消し難い。未熟だな、と僅かな自嘲の思いさえ抱きながらも、それを表には決して出さぬまま朗々と言い放つ。 「死よりも苦しい生を苦しめ。苦しみぬいた先に死の救いを与えてやる。それが今まで奪ってきた命への償いと、貴様等の尊厳の救いとなる」 アルトリアにとって彼には死罪に値する者であると同時に、それにより「死」という尊厳を保障されるべき人間でもあった。そうであるからこそ彼女は彼女の望む、高潔な騎士たり得た。 響く剣戟と仲間の声を聞きながら、ポルカは一人プロアデプトの前に到達する。 「初めまして御機嫌よう。うつくしい死をくれるって、ほんとう?」 「無論。貴女のご期待に添えるかは分からないが」 直後、気糸による鋭い一撃がポルカを襲った。背後にいた仲間達からも呻き声が上がる。 少女は軽く眉を寄せて一瞬も迷わず男の腹へ神速の剣を突きこむ。潜り込んだ切っ先に押された皮膚が蕾のように膨らんで弾け、周囲に凄惨極まりない花を描いた。 「きみたちが思い描く、真の安らぎとか言う死を餞別として差し上げたいのだけれど、そういう胸クソ悪い趣味はないの」 唇についた血を鬱陶しそうに拭いとってから、でも、と少女は目を細める。 「きみたちが望む姿で、楽に死ねるだなんて、思わないで」 死の宣告に似た言葉が途切れた瞬間、後背から新たな気配が戦場に加わった。 ●裏 物音と、その意味に気付いた男達は流石に顔を強張らせた。最も年若いナイトクリークの顔にはあからさまな焦りさえ浮かんでいる。咄嗟に視線が窓に行くのを、室内に踏み入ったエリスと葬識は見逃さない。 「逃がす……つもりは……ない」 「やだー、逃げないでもう少しあそんでよぅ~。殺しの美学あるんでしょ?」 見せてよ、と笑いながら窓辺に回り込んだ青年と、瞬きもせず自分達を視界に捉え続ける少女に、黒髪の男は殺意に満ちた視線を向けた。しかしそれも、後背側に付いたクルトの長身に遮られる。冷ややかな怒りを湛えた紫瞳で敵を見据えながら、クルトはアークから下された指令を思い出していた。 容赦は無用? 言われるまでもない。 彼は元来ポジティブで貴族らしい鷹揚な気質だが、同時に何より自身の思いに正直な性分でもあった。その明快にして強烈な殺意に気圧された事を恥じてか、ナイトクリークが悔し紛れの強がりを口にする。 「……君達はよほど救いが欲しいようですね」 「とんだ誤解だな、御免こうむる。何に救いと安らぎを感じようが勝手だが、下らぬ価値観を他人に押し付けるな」 頑丈なレガースに包まれた長い脚が地を蹴り、敵の連携を断つべく立ち回る。 これ以上の連携などさせない。敵を挟んで向かいに立つアルトリアに微かな笑みを向けて後、クルトは獲物を狙い定める獣じみた目で敵を睨む。 クルトの背後からは奇妙な事に、途切れることなくキーを叩く音が続いていた。綺沙羅が手にした、彼女にとっては楽器であり相棒であるキーボードが立てる音だった。乾いた無機質な音を奏でつつ、少女は幼く端正な顔に不似合いな顔でクロスイージスに告げる。 「ねえ。戦いの後にもしもまだ息があるなら、あんた達の信仰に付き合ってやってもいい。心身破壊され尽くした末に迎える無にのみ救いがある……だっけ?」 含みのある声は、どこかネズミを甚振る猫に似ていた。式符で作られた鴉が飛び、男の腕を翼で抉って過ぎ去る。事前の集中で高められた力に抗えず、金髪の男は綺沙羅へと視線を向ける。湧き上がる怒りのまま進もうとした男の前に、すかさずエルヴィンが割り込んだ。 「させるかよッ!」 少女に向けて振り下ろされた一撃を、代わりに自身の体で受け止める。ホーリーメイガスという職から想像される儚さはそこにない。物理攻撃にも神秘攻撃にそれなりに耐えうる防御力を備え、更にはクロスイージスの技までも用いる彼は、仲間にとって実に頼もしい存在だった。 戦況が塗り替えられてゆくのを見ながら、葬識は楽しげに自分の獲物と向き合う。彼の言葉は声の軽さと裏腹の色を帯びていた。 「自殺も殺人も、究極的には殺すことには変わらないけどね。……死は永遠、そんなわけないよ。死はそこで終焉だよ」 彼らの成す心身の破壊は、結果として殺害に至るというだけのものだ。葬識が己の生き様と定めた殺人には程遠い。暗黒の魔力で敵を薙ぎながら、葬識は己の哲学を吟じる。 「破壊は殺人じゃない。美しくない。世界から命を切り離すことは厳粛なことだよ」 彼の言葉が終わるのを待って、銀髪の男は拍手を送った。血に汚れ青ざめた美貌からは生気が失せ始めている。けれども、合間に見えぬ糸を紡ぐ指先は動き続けていた。 「成程、成程。しかし君のそれが哲学ならば我らの行いは信仰なのだ、殺人哲学者君。君とは性質も目的も異なる。比較なぞ無粋なだけだよ」 故にただ愉しみたまえ、と笑って男は見えない糸を繰った。会話を楽しむように、殺し合いを味わうように。 それが末期の開き直りに似た何かであった事は、本人にすら分かり切っていたのだが。 ●ラスト・ノート 戦いはおおよそリベリスタ達の優位に進んだ。しかし圧倒していた、とまでは言い難い。 まず、プロアデプトが放った攻撃で彩が倒れた。エリスが徹底して回復と援護を行っていてなお押し切られたのは彼女の力不足ではなく、些かの不運と、追いつめられた者の悪あがきのせいだった。けれど間際に返した氷纏う一撃で、彩は敵の足を止めることに成功した。 「っ……逃げられると思ってるんですか? 馬鹿ですね」 運命自体はともかく、その加護は彩の意志に忠実だ。命運を削る復活は齎されず、少女は苦しげに膝をつく。幸いな事に追撃はなかった。敵にそんな余裕がなかったからだ。 八対二という圧倒的不利の最中、残る二人は幾度も逃げ道を求め視線を泳がせた。しかし隙などあろう筈もない。 「……そちらへ……逃がさないで」 逃走の素振りがある度に後方から戦場を見渡すエリスの指示によってリベリスタ達が攻撃を集中する為、却って痛打を受ける羽目になった。 「逃がしはしない。誰一人としてな」 アルトリアの宣告に最後のよすがを打ち砕かれたように、一瞬放心したナイトクリークの背を勢いよく歪な大鋏が貫いた。背骨を砕き肋骨を断って、己の心臓を先端に掲げたまま体外へ飛び出た刃を、男は茫然と見つめる。 「今回は俺様ちゃんの哲学が勝ったというわけだねぇ~。ごちそうさまだよっ★」 葬識は半ば宙に浮いた男の体を床に落とし、微笑みながら首に刃先を当てる。先ほど倒されたプロアデプト同様、愛しい人を扱うように丁重な手つきだった。 最後に残ったクロスイージスは、仲間二人を喪った事で却って落ち着いていた。喚く程の精神的余裕など残されていない。 「どれだけ硬かろうが、俺が壊す。これは救いなどではない。壊される側に回ってもまだ、救いなどと嘯いていられるか」 土砕掌で男の腹を衝いたクルトの手には、確かな手ごたえがあった。交差するように放たれた一撃はクルトを捉えていたが、それはすぐにエリスの齎す癒しでかき消される。 衝撃にダークスーツの生地が弾けて、白い骨と赤い肉と花色の臓腑が傷から覗く。けれども瀕死の男は嗤っていた。悪意と狂気と己が信仰を譲ることなく。 「あぁ、謡うとも。救い手が死す時に得るものは救いでなく、永久の栄誉だ」 一拍を置いて歪んだ笑みが血の色に染まる。目から、口から、とめどなく命運が流れて尽きる。 最後まで芝居がかった仕草のまま斃れた男を見て、エルヴィンがぼそりと問いかけた。 「……で、無になったお前らに救いはあったのか?」 答えは返らない。後衛に立つ綺沙羅は一瞬眉を寄せた。救いとやらを彼ら自身に味あわせる機会は永遠に失われたらしい、と悟ったからだ。 「ふうん、つまんない。ま、ある意味お似合いの最期だけど」 一瞥すれば興味は失せて、綺沙羅は子猫のように小さくあくびをした。いそいそと寄って来た葬識が嬉しそうに鋏を開閉するのを、誰も止めない。ただ一人アルトリアだけが、せめて死に際は安らかなれと祈りを捧げる。 甘言の毒に満ちていたオフィスは今や血臭に塗りつぶされて、首のない三つの骸だけがその名残を漂わせていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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