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<六道>丑の刻に参る

●揺れる世界
「ふむ……また、世界が揺らいでおるな。中々に楽しいものよ」
 六道派に属するフィクサード、『哲人』悪道虚無(フィロソフィス・あくどう・きょむ)は己の書斎で、観測機を片手に嬉しそうに笑う。齢80を超える老人だが、その瞳は子供のように輝いている。もっとも、その子供のような探究心故に、彼は危険なフィクサードであるわけなのだが。
「旦那様、研究の報告書が届きました」
「うむ、そこに置いておけ」
 入って来たのは虚無の使用人であるメタルフレームの少女、リリアンナだ。たおやかな外見に合わぬ力の持ち主で、大量の本を抱えている。
 リリアンナが置いた本に、軽く目を通す虚無。
「やはり、強力なエリューション、アザーバイドが現れやすくなった現状、わしとしては比較対象が増えて助かるところじゃな。ふむ、『鬼』も中々に興味深い。紫杏殿の研究も順調なようじゃな。まぁ、あれを使っておるのだし、成果0では困るわけだが」
 紫杏という名前を出して、虚無の表情は不機嫌そうに曇る。この老魔術師が、『六道の兇姫』に抱く感情には微妙なものがあるようだ。
 しかし、適当に報告書を読んだ所で虚無の表情が変わる。どうやら、心に火が点いたようだ。
「やらなくてはならんことも多いが、そろそろ『牛』を試してみるかの。せっかくの機会を逃すのもつまらん。リリィ?」
「はい、旦那様。準備は既に出来ております」
「適当なわしの弟子も連れて行け。おそらくはアークも出て来るだろうが、それはそれで好都合というもの。リリィ、任せたぞ」
 顎鬚を撫でながら含み笑いする虚無に、リリアンナは一礼すると、戦いの場に向かうのだった。

●六道、進撃
 次第に暖かくなって来た3月の中頃、リベリスタ達はアーク本部のブリーフィングルームに集まっていた。そして、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は、メンバーが揃っていることを確認すると、依頼の説明を始めた。
「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、エリューション・ビーストの討伐だ」
 そう言って守生が端末を操作すると、全身から大砲を生やし、鋼の皮膚を持った巨大な牛の姿が現れる。
「現れたのはフェイズ3、将軍級のエリューション・ビーストだ。元は牛なんだろうが、ここまで来るとなんともはやだな」
 既に全長は10m近くあり、動物というよりもちょっとした巨大ロボットだ。
 動きこそ鈍重だが、硬い装甲を持ち、高い火力を有するエリューションだ。非常に危険な相手と言える。
 これがとある鉄工場を襲撃するらしい。時間は深夜であるが、少なからぬ被害が出ることは想像に難くない。
「これなんだが、どうも六道派のフィクサードが呼び出したものらしい。以前に姿を現わしたこともあるな。『哲人』悪道虚無って奴の部下が指揮をしている。前回の様子から見ても、別に工場を壊すことそのものが目的じゃない。エリューションを暴れさせて、その性能を見るのが目的なんだろう。相手してやる義理も無いんだが、放っておける事件じゃない」
 六道派は研究や鍛錬に命をかけるフィクサードが多い、個人主義者の集団だという。また、最近はなにやら陰謀を企んでいるらしく、よく聞く名前だ。
「エリューションを操る都合もあってか、フィクサードは近くにいるようだな。状況如何によっては介入してくるかも知れない。対処をどうするかはあんたらに任せる」
 先に排除できれば、不意の介入を避けることは出来るだろう。しかし、それによってエリューションを放置していては本末転倒である。逆に、リベリスタ達の動きによってはそもそも介入すらしてこない可能性もある。難しいところだ。
「説明はこんな所だ」
 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。
「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月04日(水)23:23
皆さん、こんばんは。
六道快進撃、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はエリューション・ビーストと戦っていただきます。

●目的
 E・ビーストの撃破

●戦場
 工場に至る道路。
 守生の指示に従って、深夜にエリューションが工場に向かう所を迎え撃ちます。
 明かりや足場に不自由はありません。

●E・ビースト
 ・機械牛
 牛のエリューション・ビースト。フェイズは3。
 鋼の皮膚に身を包んだ、10m近い牛で、極めて高い火力を持つ。頭・胴体・前足×2・後足×2に武装が仕込まれ、それぞれの部位が同時に攻撃を仕掛けてきます。各部位は通常の接近攻撃も可能です。また、各部位にHPが設定されており、同じ場所にいる別のユニットとして処理します。
 胴体が破壊されると動かなくなりますが、胴体への攻撃は、他の部位を3つ以上破壊していないと不可能です。
 巨大であるため、ブロックには5人必要です。
  1.角 物近複 ノックバック 「頭」による攻撃です。
  2.角からの放電 神遠範 感電、ショック 「頭」による攻撃です。
  3.ミサイル 物遠単 ノックバック 「胴体」「前足」「後足」による攻撃です。
  4.踏み付け 物近複 「前足」による攻撃です。
  5.熱線 物遠単 業炎 「後足」による攻撃です。
  6.修復機能 神近単 HP回復、BS回復 「胴体」による行動です。胴体以外の部位1つの負傷回復を行うことが出来ます。
  Ex.全砲門発射 物遠全 ノックバック、感電、ショック、業炎、溜1 この行動が発動すると、全ての部位が行動終了となります。また、威力が高すぎるため、近接状態に敵がいると自分も巻き込みます。残っている部位数に応じて、威力は下がります。

●フィクサード
 ・リリアンナ
  六道派に属するメタルフレームのクロスイージスです。
  少なくとも中級スキルまでは使えるようです。
  アークのリベリスタと比べて、実力は若干勝ります。

 ・マグメイガス
  六道派に属するヴァンパイアのマグメイガスで、4人います。
  アークのリベリスタと同じ位の実力を持ちます。
  マグメッシスとチェインライトニングを得意とします。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ナイトクリーク
★MVP
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
プロアデプト
ウルザ・イース(BNE002218)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
ソードミラージュ
武蔵・吾郎(BNE002461)
クロスイージス
姫宮・心(BNE002595)
■サポート参加者 2人■
ソードミラージュ
絢堂・霧香(BNE000618)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)


 ズシィン!
  ズシィン!
   ズシィン!
 夜の道路を巨大な牛が進んでいる。
 もし、これがテレビの中であったのなら、怪獣映画と見紛う光景だ。
 しかし、これは現実。
 これこそ、主流7派の1つ、六道に属するフィクサードが作り出したエリューションなのである。
「鼠の次は丑、この次は寅かぇ?」
 巨大な牛を前に『陰陽狂』宵咲・瑠琵(BNE000129)は呟く。
「虚無の作品は干支シリーズのようじゃが、最近流行のイレギュラーでは無いのじゃな」
 瑠琵は以前、このエリューションを作ったフィクサード出会ったことがあり、知識もある。それから察するに、最近現れる、六道が関わるイレギュラーとは別物だと判断出来る。
「あんなに大きければ何人も善光寺まで引いていけるね……」
 牛の姿に驚きを隠せない『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)。もっとも、善光寺へ引く牛は老婆の布を持って行ってしまっただけで、大きさはあまり重要でないわけだが。
「今回も……色々と……手の込んだ……物を……用意……している。なんか……性能評価試験に……つき合わされている……感じ」
「性能試験ってか。その相手をさせられるなら、バイト代ぐらい欲しいもんだ」
 六道派フィクサードの起こす事件は、往々にして犯罪そのものを目的としたものではない。彼らはあくまでも自分達の研究を進めようとしているだけだ。それゆえに、事件に関わって、エリス・トワイニング(BNE002382)や『合縁奇縁』結城・竜一(BNE000210)のように思うのも当然であろう。
 しかし、起きる事件の規模は決して小さくない。
 六道派の実験のために流れる涙は決して少なくない。
 リベリスタ達はそれを知っている、だから。
「でも……やることは……1つ」
「別にバレてこまる手の内なんてもってねえし、全力で潰してやるぜ!」
 自分に出来る精一杯のことで、その事件に立ち向かう。
 迎撃のために陣形を構えるリベリスタ達。
 その中で、『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)が拡声器を片手に大声を上げる。
「あーあー、ゴキゲン麗しゅう! アークでーっす! 交渉しようぜ! リリアンナちゃん!」
 スピーカーから響く声とハウリング音。その時、牛は歩みを緩めた。
 瑠琵とエリスは目敏く、近くの倉庫で動く人影があったのを捉える。それを確認すると、今度は『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が夏栖斗から拡声器を受け取って、人影に向かって声を出した。
「良いかお前ら、こっちから手は出さないからデータ取るなり好きにしろ! ただし、こっちに手ぇ出して来たら、解ってるだろうな?」
 狼の姿を持つ巨漢から出る言葉は、それだけで恫喝のようなものである。一般人であれば、既に戦意を奪われてしまうだろう。
 吾郎の言葉からわずかばかりの時間が流れると、再び牛は歩みを元に戻す。そして、フィクサード達が姿を現わす気配は無い。こちらの要求が伝わったということだろうか? 何にせよ、ここまで来たら戦うだけだ。
 『鷹の眼光』ウルザ・イース(BNE002218)は翼をはためかせると、自身に気合を入れる。
「もし、フィクサードが来たら戦うだけだね。おっけ、やればできる!」
 一方、『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)の顔は固い。以前、フェイズ3になりかけているものと戦ったことはある。しかし、実際にフェイズ3と相対すると、確かに強力な相手なのが伝わってくるものだ。
 正直、不安は拭えない。
 しかし、何かを「守る」ことに全力を注ぐ少女は、覚悟を決める。
 それが自分のやるべきことだから。
「負けるわけにはいきません。いざ!!」


 爆音が響き渡る。
 六道のエリューションが攻撃を開始したのだ。
 以前現れた、完全に機械化されたネズミと違い、この「牛」は重火力を有した装甲を纏っているようだ。そして、そこから雨霰とミサイルを放ってくるのだ。まさしく、ちょっとした移動砲台である。
 そこに臆する事無く、剣を片手に吾郎は飛び掛っていく。
「そういや、フェーズ3と戦うのは久しぶりだな」
 臆していない所か、むしろ楽しんでいるようにすら見える。全身のギアを加速させると、その動きで相手を翻弄し、そのまま「牛」の頭に向かって切りかかる。刃は重装甲の隙間から深々と突き刺さる。
 そこで余裕が生まれた隙に、エリスは詠唱で魔力を活性させ、仲間に癒しの調べを届ける。その間にも、フィクサード達への警戒を怠ることは無い。
(データ収集が……メインだと思う……。だけど……油断は……禁物)
 今の所、動く様子は無い。むしろ、観察に注心している気配が見受けられる。リベリスタ達から敵意を向けられなければ、問題無いということなのだろう。
 そして、警戒を払うリベリスタがいる一方で、およそ警戒が無い、と言うか自重の無いリベリスタもいた。
「いえええええええい! リリィたんみてるううう!」
「撮影OK! なんならポーズもとるぜ! かっこよくとってね!」
 おそらく存在するだろうカメラに向かってピースを見せる竜一と夏栖斗。激戦を繰り広げて来た戦士なりの余裕……と言っても良いのだろうか? 2人してモテ顔ダブルピースで「牛」に向かって、それぞれ頭と足に刃と拳を叩き込む。
『BMOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』
 たまらず悲鳴を上げる「牛」。こう見えてもアーク屈指のリベリスタの攻撃は伊達でない。
 そして、派手な動きを取る2人の影で、人知れず「牛」の体を地面とし、虎視眈々と狙うものがいた。
 アンジェリカだ。
「ドロワーズを穿いてきたので胴の上でスカートがまくれても大丈夫かな……?」
 やはり何処か場違いな感想を呟きつつ、赤い月を背にしたアンジェリカの足元から影が伸び上がる。そして、その黒いオーラが「牛」に吸い込まれると、「牛」は大きくその身を震わせる。
 しかし、「牛」もやられてばかりではなかった。バチバチッと角から火花が飛び散ったかと思うと、そこから距離を取っている後衛陣に向かって雷が落ちる。
 光が落ち着くとエリスを庇っていた竜一とアルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)が姿を見せる。比較的攻撃力の低い攻撃はあるが、やらせるわけには行かない。
「君は、俺が必ず守る……この身にかえても……!」
「エリスは作戦の要だからな、攻撃を通しはしない」
 そして、お返しとばかりに、アルトリアは暗黒の瘴気で「牛」全体を包み込む。その瘴気に惑わされたのか、ミサイルの1発はあらぬ方向へと飛んでいってしまう。
「しびれろー!」
「私は! 守る! 人なのデス!!」
 戦場を見渡し余裕があるのを確認すると、ウルザは強い意志を秘めた眼差しで「牛」を睨み、聖なる光で焼き払おうとする。エリューションの身を包む装甲も、光の前では意味を為さない。
 同じ光ではあるが、心が見せるのは勇気の光。仲間達の戦いを阻むエリューションの悪意を打ち砕く、強い光だ。そして、その光は戦場の炎を打ち消し、仲間を勇気付ける。
 その時、戦場に雨が降り出す。
 空は黒く雲1つ無い。
 そう、これは瑠琵の魔力が呼び出した呪力の雨。降りしきる雨がエリューションの体の力を奪っていく。
 「牛」の胴体にある修復機能が、頭部を癒そうとするがそれも間に合わない。
「まずは、これで1つじゃな」
 瑠琵は愛用の術具を片手に微笑を浮かべた。


 どうっと、「牛」が大きくバランスを崩す。度重なるリベリスタの攻撃の中、アンジェリカの攻撃で、いよいよ頭部に続いて前の脚部の一方が砕かれたのだ。
 しかし、当然リベリスタ側の怪我も決して浅くは無い。文字通り、嵐のような攻撃に晒され、まだ倒れていないのは奇跡のようなものだ。話に聞いていた一斉射撃の猛火があったのなら、とっくに瓦解しているだろう。
「こんな巨大な敵は、あのドラゴン以来かな……って、そう考えるとあまり久しぶりでも無い気がするけど」
 抱えている怪我に臆する事無く、つい先日戦ったアザーバイドのことを思い出す『禍を斬る剣の道』絢堂・霧香(BNE000618)。そして、その心身を奮い立たせると、無数の幻影を生み出し、「牛」に切りかかる。
「まだいけるよね?」
「うん、大丈夫……」
 ウルザがアンジェリカと精神を同調させると、アンジェリカの精神力が回復していく。これでまだ戦える。
 すると、アンジェリカは全身のエネルギーを解き放ち、擬似的な赤い月を作り上げる。それによって、再び「牛」の姿が鈍る。そこで、今までは後衛のカバーに徹していた竜一が前に立つ。エリューションの攻撃力は落ちている。ならば、今しかない。
「性能知りたいなら、俺が試してやるよ! 耐久力をなァ!」
 気合の言葉と共に、竜一の持つ2振りの剣が交差する。全身の闘気を爆発させた、破滅的な一撃だ。既に幾度も攻撃を受けていた脚部の損傷は激しく、ちょうど隙を突く形になり、その一撃で動きを止める。
「これで胴部に集中するのみじゃな……む? 様子がおかしい? まさか、自分ごとやる気か?」
 「牛」の全身にある砲門が一斉に開いていく。もちろん、頭部と前脚のものは使い物にならない。それでも、それなりに高い攻撃力を秘めているのだ。
 その姿を見て心の顔に不安が浮かぶ。如何に相手の攻撃力が落ちているとは言え、こちらの怪我も大きい。逆に自分ごと吹き飛ばされてしまうかも知れない。
(ちょっと私では守りきれないかもデス……でも!)
 一斉攻撃の前に胴部を止めてしまおうと攻撃を開始するリベリスタ達。しかし、今までの戦いで無傷だった分、そう簡単にエリューションも倒れはしない。
 そして、溜めたエネルギーを込め、「牛」は自身を巻き込むように、ミサイルをいっせいに解き放つ。

 世界が真っ白になる。
 並みの人間であれば、聴覚も麻痺するだろう。
 まさしく、世界の終わりとでも言うべき威力だ。
 そして、煙が晴れた。

「私は、守るのデス!」
「観客の前で、かっこわるい所……見せられないだろ……!」
 その中からリベリスタ達は立ち上がる。さすがの火力の前に、運命の加護を受けた者達も少なくは無い。
 それでも、この程度で倒れるようなものは、この場にはいなかった。
 そして、そんな仲間達を庇われたために怪我の少ないエリスが癒す。
 仲間達に少し気が引けない訳でもない。だが、今の自分の役目は、仲間達が戦えるよう、少しでも戦場に立っていることだ。
「エリスは……皆の……回復を……行う……だけ」
 高位存在の力が顕現する。それは回復の息吹となって、優しくリベリスタ達を癒していく。
 しかし、エリューションもそうそう見逃しはしない。再び全砲門発射の構えを取る。もう一度放てば、自分自身を巻き添えにして、傷ついたリベリスタ全員をなぎ払うことが出来るはずだ。
「エリスの役割が回復なら、僕の役割はアタッカーだ。その役割をきっちり果たす!」
 集中と共に、凍て付く冷気を纏った夏栖斗の拳が「牛」の胴体に吸い込まれる。すると、みるみる胴体が凍り付き、エリューションの動きが封じられていく。
「さすがだな、フェイズ3だけのことはある。全く気が抜けない相手だぜ」
 吾郎は手に持った剣を握り直す。ここで外したら、またあの猛攻がやって来るのだ。
 だが、恐怖は無い。
 ここで、決めれば終わる。それだけの話だ。
「でりゃああぁぁ!」
 狼の咆哮が戦場に響き渡った。


「お疲れ様でした、アークの皆様。先程のお話に相違は無いでしょうか?」
「あぁ、僕らも無駄に戦わなくていい、君等もデータを持ち帰れる。悪い取引じゃないはずだ」
「今わたしたちと戦うのは、あなた方任務にも支障をきたす可能性がありませんか? だったら、これで終わりにするデス」
 戦いが終わると姿を見せる、メタルフレームの少女リリアンナ。六道派のフィクサード達も一緒だ。夏栖斗は一睨みして、頷く。心はやはり内心、割り切れないものがあるらしく、悔しそうにしている。
 一方、竜一は気楽そうに騒いでいた。
「よかったら今度、写真撮らせて! 文通しようぜ!」
「前者であれば、機会があれば。後者については申し訳ありません」
 無表情に頭を下げるリリアンナ。はしゃぐ竜一。今の姿は小学生ではあるが、本来は10代後半なのだ。それ程おかしな振る舞いでもない。まぁ、そのはしゃぎっぷりは外見年齢相応であるが。
「さて、良ければこいつの残骸位もらえると嬉しいんだがね」
「申し訳ありません。それは旦那様から止められております。どうしても、というのであればいくつか相談に乗らせていただきますが」
 リリアンナの言葉に身構えるフィクサード達。代価を払うか、戦って奪うか、ということなのだろう。その様子を見て吾郎は肩を竦める。
「だったら構わねぇ。無理してまで手に入れようとは思わねぇからな」
 そこで、吾郎はそっと仲間に目配せをする。
「今回の“丑”も態々回収せねばならぬ代物のようじゃが、お主らの一門は賢者の石を使わせて貰えんようじゃのぅ?」
 その言葉には後ろに控えていたフィクサード達が反応した。ウルザも万が一に備え、構える。しかし、瑠琵は続ける。
「石の有無は大きいようじゃが――お主ら何か知らぬかぇ? このままでは石無しでアレだけのモノを創れる優れた師より格下の連中の方が優れている等と誤解されかねんじゃろう?」
「貴様! 先生のことを!」
 フィクサードから伝わってくるのは、「六道紫杏」という名前への憤り。おそらくは師に対する尊敬の念から来るものだろう。そして、それをリリアンナが制する。
「旦那様の目指すところは、紫杏様の目指すところとは別にあります。あのようなマッドサイエンティストと一緒にしないで下さい」
 普段の無表情とは打って変わって、リリアンナの声には勢いがある。その様子を見て、瑠琵はころころ楽しそうに笑う。
 そして、フィクサード達を怒らせた狙いは2つ。
 情報を引き出すためと、時間を稼ぐためだ。
(情報取られるだけじゃ癪だし、何か解ればいいんだけど……)
 アンジェリカはエリューションの傍に行くと、そっと触れる。エリューションに宿る記憶を読み取るためだ。そうそう向こうの思い通りにさせてやる義理は無い。
 すると、断片的なイメージが浮かび上がってくる。
 様々な動物の姿がある。そして、それらは機械化しているものだけでなく、似合わぬ翼を持つもの、妙に蒼白な肌を持つものなどがいた。
 そして、もう1つ感じられたのは、生命に対する強い探究心だった。
「それでは、失礼します」
 しばらくして落ち着いたリリアンナが魔法陣を描くと、そこに巨大な牛の死骸が吸い込まれていく。おそらくはそういうアーティファクトなのだろう。
 魔法陣が光を放つと、既にその場には巨大なエリューションなど存在しなかったかのように消え失せた。
 それを確認するとフィクサード達は引き上げの姿勢に入った。
 そして、立ち去るフィクサード達に、エリスが問い掛ける。
「今回も……アークを……わざわざ……呼んで……エリューションの……強さを……調べるより……アークの……リベリスタを…調べたいの?」
 すると、リリアンナは足を止める。
「旦那様が言うには、あなた方アークは、バロックナイツに一矢穿つなど、大きな可能性を秘めております。だからこそ、あなた方を知ることも旦那様の目的に近付く近道なのだろうと考えております。生憎、私共もその目的については詳しくありませんが」
 そこまで話すと、再び向きを変え、歩を進める。
「あなた方には期待しております、良い戦いを」


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『<六道>丑の刻に参る』にご参加いただきありがとうございました。
強敵との激戦、フィクサードとの交渉、如何だったでしょうか?

MVPはアンジェリカ・ミスティオラ様に贈らせて頂きます。
敵との不要な戦いを避け、その上でより多くの情報を手にする手際は見事です。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!