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絶対零度と氷点下――滅びろ!リアリズム充足主義者

●寒くてたまらん
「うわぁ~ん! あんちゃーーん!!」
「ぬぅッ!? 如何した、如何したと言うのだ弟よッ……こんなにも泣きじゃくって、真っ赤に泣き腫らして!」
「聴いてくれよあんちゃぁーん! うぅ、ぐすん……俺、何か無性に鯛焼きが食べたくなって……」
「買っと言うのかい弟よッ!?」
「うん……それでねそれでね……公園で食べてたんだけど、うぅぅぅぅうわぁぁーーーん」
「食べきったと言うのかい弟よッ!?」
「ぐすん……食べきったよカスタード味……でも公園が、右見ても左見てもアベックアベックアベックアベック……」
「アベックそれは即ちリア充だと言うのかい弟よッ!?」
「そうだよ! リア充ことリアリズム充足主義者どもがウヨウヨしてる上にどいつもこいつもチチクリあってやがったんだよぉぉ! うわーん! 悔しいよー憎らしいよー寒いよーリア充凍死しろぉ!! あんちゃーん何とかしてよー!」
「良しあんちゃんに任せておきなさい弟よッ」
「流石あんちゃん! そこに痺れて憧れるゥ!」
「ふふん、このしもやけジョニーの常軌を逸して卓越した魔力と『ツンドラで過ごす冬休み』があればお茶漬けサラサラ朝飯前さ!」
「やったねあんちゃんアベック滅ぶよ!」

●何だこの漫才
「……っていう」
 モニターに映した『視たモノ』からリベリスタへと視線を移した『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が何とも言えない表情でリベリスタを見遣った。
「フィクサード『しもやけジョニー』『かじかみテリー』……先日、賢者の石運送に携わった恐山フィクサードを強襲したフィクサードの一員でございます。彼らについてはそこの報告書を参照すると良いかと」
 メルクリィの視線の先には卓上に置かれた先日の任務報告書。後で目を通すとしよう――フォーチュナへ目を戻す。
「彼らが……ね、まぁ単刀直入に言えば『リア充爆発しろ』とE・エレメントを召還して公園を襲撃するんですよ。
 皆々様にはこの召還されたE・エレメントの討伐に当たって頂きますぞ!」
 モニターに映し出されたのは広い公園――が、カチコチに凍りついて吹雪いている映像。凄まじく寒そうだ……それに、凍った地面は足を滑らせるかもしれない。
 そして、その氷原を闊歩しているのは大きな氷人形。これが件のE・エレメントなのだろう。
「E・エレメントフェーズ2『さむさむキャシー』。しもやけジョニーがアーティファクト『ツンドラで過ごす冬休み』によって創り出したエリューションでございます。
 氷でできているその見た目通り、さむさむキャシーは氷系の状態異常に掛からない上に魔氷拳とか氷系攻撃も効き難いですぞ!
 ですが反面、火炎系状態異常やフレアバーストといった熱い攻撃は良く効くそうです。ヒャッハーですな!
 それからこの公園ですが、あちこちに一般人がいます。救出と避難と神秘秘匿も兼ねて人払いもお願い致しますぞ」
 急いで行けば負傷者は出ないだろう、と言う。フィクサードにとっては殺す事が目的では無く、嫌がらせがしたいだけなのだろう。
「当のフィクサード達は遠~くから高みの見物ってます。向こうから仕掛けてくる事ァ無いでしょう。
 で、現場についてもう少しあるのですが……しもやけジョニーの所持アーティファクト『ツンドラで過ごす冬休み』よってもんのすごーーーく寒いですぞ。皆々様の体力にも堪える位にね。
 そこで、こちらで防寒具を用意させて頂きました。着れば寒さはヘッチャラですが若干動きが阻害されるでしょう。
 逆に着なければ動きは阻害されませんが寒さに徐々に力を奪われていく事でしょう。
 どうなさるかは皆々様にお任せ致しますぞ!
 それから地面も凍ってツルツルなので、すっ転んで頭とか打っちゃ駄目ですぞー」
 ニッコリ笑って間を開ける。以上で説明はお終いですぞ、と。
「それでは皆々様、行ってらっしゃいませ! 私はリベリスタの皆々様をいつも応援しとりますぞ、フフフ」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月14日(土)20:19
●目標
 E・エレメントフェーズ2『さむさむキャシー』の討伐

●登場
E・エレメントフェーズ2『さむさむキャシー』
 しもやけジョニーが造り出したエリューション。巨大な氷人形
 凍結、氷結、氷像無効。氷系スキルは効きにくいが、炎系スキル・BSはよく効く。
>主な戦法
 踏ん付ける:ショック
 氷点下息吹:近接範囲、凍結
 アイスラッシャー:遠2、貫、流血、氷結
 Exディープフリーズ:遠範、氷像、呪い
 など。攻撃にノックBを伴う場合あり

フィクサード『しもやけジョニー』
 エスキモーの様な防寒具で着膨れた長躯の男。かじかみテリーの兄。白熊の毛皮で顔を隠している。
 実はリア充とかどうでも良いんだけどちょっぴりブラコンなだけ。

アーティファクト『ツンドラで過ごす冬休み』
 魔法ステッキ状アーティファクト。冷気と氷を操る能力を持つ。リスクは『所持している限り永久に凍え続ける』

フィクサード『かじかみテリー』
 毛皮のコートを着込んだスリムな男。しもやけジョニーの弟。ガスマスクで顔を隠している
 リア充爆発しろ!ウォッカとタイ焼きが好き。

●場所
 広い自然公園。一般人があちこちに居る
 辺り一面凍り付いている。地面もカチカチツルツル(行動にペナルティが出ます/対策で減少・無効化)
 壮絶に寒い。
  →防寒具非着用:HPEPが毎ターン徐々に減少
  →防寒具着用:速度、回避に若干マイナス

●その他
 しもやけジョニー、かじかみテリーは遠くから高みの見物をしています。(自分達からリベリスタへ関わろうとはしません/満足したら帰ります)
 フィクサード二人に関しましては拙作『【共食い】絶対零度と氷点下――ゲレンデが凍り付く程の愛を込めて』を参照して下さい。
 さむさむキャシーは既に公園で暴れています。

●STより
 こんにちはガンマです。
 ジョニテリ第二弾。
 宜しくお願い致します。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
宮部乃宮 朱子(BNE000136)
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
クロスイージス
姫宮・心(BNE002595)
クロスイージス
神谷 要(BNE002861)
デュランダル
飛鳥 零児(BNE003014)
クリミナルスタア
腕押 暖簾(BNE003400)

●さむしんぐ
 正に氷点下、小春日和など何処へやら。
 吹き抜ける零度の風、氷原に暴れる巨躯の異形。
 リア充滅ぶべし、と恨み辛み嫉妬の氷が命ずるままに。

「恋人はいいものだよ」

 それに立ち向かうが一、『消えない火』鳳 朱子(BNE000136)はDIVA-Firewallを展開した。変換される無限機関の魔力、悪を焼く紅い炎でその身を包む。薄蒼い氷に紅刃剣の赫が映り込む。生体金属は凄く冷える――けれども。心はいつでも温かい。
「たとえ側にいないとしても心を温めてくれる。
 どんなに寒いときにだってその人のことを思えば耐えられる気がするんだ。
 そんなすばらしいものなのに……どうして恋人を作らないの?」
 振り上げられ、振り下ろされた巨大氷塊の重い一撃を炎の壁で受け止める。拮抗する。踏み締め、押し返す。
 これでもかと低い温度だった。吐く白い息すら凍って落ちてしまいそうな。
「リア充?」
 セファー・ラジエルを開き、張り巡らせるは強固な結界。エリス・トワイニング(BNE002382)は小首を傾げた。
「エリスには……よく……分からないけれど……そんなに……嫌いなものなの?」
 爆発しろ!とか、どうとか。体内魔力を活性化させて呟く。白い息と共に。
「メルクリィさんは……分かるのかな?」
 詠唱を始めるその視界の先には自分を護る『不屈』神谷 要(BNE002861)の姿、防寒具では無く黒いコートを抱き寄せて寒さに大きく息を吐いた。震える歯の根を噛み締める。この寒さ、あの時と変わらない――苦い敗北の記憶、零下の戦い。
 リベンジの機会を得れたのは幸い。負けっぱなしではいられない――のだが、例の二人は戦場に来ないとか。しかもこの度はアベックを助けろという任務。えぇと。帰っても良いでしょうか?
(まあ勿論冗談ですが)
 氷を踏み締め移動を始める。放つ十字の加護が仲間を包み、その戦意と闘気へ一層の鼓舞激励を施した。自分の役目は朱子と共にキャシーが自由に暴れぬようにする事。挟み込む。

 要が動き出したのは何も気紛れでエリスを庇っていたからでは決してない。要である回復手の守り手の引き継ぎ――代わりにエリスを護るべく立ちはだかったのは『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)だった。パーフェクトガード。全てを防御の為だけに。この為の時間を要に稼いで貰ったのだ。
 重く堅牢な鎧、その上から着込んだ防寒具。鎧の上から着るのは中々に大変だったが、大きいサイズで解決した。もこもこモル状態で一寸怪しい物体状態。これで、背から生えたたった二枚の翼でぱたぱた飛べているのだから摩訶不思議である。

 なるほど、何名かは因縁のあるお相手のようで。強敵さんですね?気合を入れていきましょう。

 そう思っていた時代が心にもありました。
 残念極まりないフィクサード達の残念なアレによって生まれたエリューション。兎角、これを倒さねばならぬのだ。
 呻りくる氷の刃を構えた大楯で打ち砕く。迸る冷気もなんのその。効きませんので、悪しからず。

「境界最終防衛機構、鎧ガールズが一角! 姫宮心! いざ参ります!」

 響き始めるのは絶零に包まれた戦闘の音楽。

●さぶす
 零下の中を一般人救助に当たっているリベリスタ達、その内の一つ。
「私より充実してる連中は滅びても何の問題もないと思うの」
 防寒具のもこもこした襟元に顎を埋める『自堕落教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)の顔は、無表情。寒いの嫌だし。寒いの大嫌い。それにリア充?春?ピンクの季節?ピンクは淫乱。
「爆ぜろ。消滅せよ。滅べ」
 無表情のまま言い放つ、直後に「冗談よ。冗談」と付け加えた真意はさて置き。リア充は妬ましいけどそれはそれこれはこれ。フィクサードやE・エレメントを放っておくわけにはいかないわね。

 あの兄弟フィクサードがまた現れたじゃと!?今度は一体どんな略奪行為を……

 そう思っていた時代が『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)にもありました。曰く、リア充凍死しろ――いかん、一瞬同意しかけたわい。
「えええE・エレメントを止めたらつつ次はお主らじゃからな、かかか覚悟しておけい!」
 寒さに回らぬ舌、ぶえっくしッとくしゃみがセット。防寒具は着ていない、ゴシックドレスから覗く素肌に容赦なく寒風が吹きつける。さむひ。しかし回避の為、致し方なし。
 サテじっとしている暇は無い、そもそも動かずにいると凍死しかねない。自分も、一般人も。
「一般人避難誘導って実は苦手なのよね……子ども扱いされるから。それじゃ行きましょおばーちゃ……おっと。おねーちゃーん」
「にゃぎゃー!」
 寒さに悴む尻尾でぺちーん。
 兎角、一般人の救助だ。寒さに震えるアベック達が右往左往。遠くから聞こえてくるキャシーの足音が彼らの心をパニックに付き落とす。一刻も早く彼らを公園の外へ避難させねば。こんな時でも手を繋いだりしてる様に舌打ちしたい気持ちが込み上げてくるが、ぐっと飲み込んで。レイラインが寒さに震えつつもこっちだと誘導する。手を貸す、肩を貸す、あるいは背負ってでも。その実年齢とは異なる外見について指摘されても。
「誰がお子様じゃ! ええからとっとと避難せんかい!!」
 体温上昇ヒートアップ。強引に引っ張って、とっとと安全圏へ――まあ、彼女自身寒さで鼻水だらだらなんだけども。

「おにーさん……あの人苦しそうなの。公園の外まで運ぶの手伝って。おねがい」
 うるうる瞳で見上げておねだり泣き落とし。ソラは純粋無垢なお子様を演じ、元気な一般人へ手伝って貰うよう媚を売るように接していた。一般人に肩を貸すくらいは一般人だってできるでしょ。一般人の前でバイクや車乗るわけにいかない、搬送が色々難しい。故に人の手を借りる。その人も出て行けて一石二鳥。迅速に効率よく救助誘導を終わらせて仲間と合流する為なら、恥もプライドもかなぐり捨てる。
 そうして思惑通りに一般人等に無理の無い範囲で救助誘導を手伝わせ、一先ずは順調に。回路や毛布も渡してゆきながら。

 一方で、もう片方の救助班。
「いいじゃねェか兄弟愛。弟の為に全力になれる兄貴、理想だぜ」
 まァ人様に迷惑掛けちまったらアレだがな、と『ステガノグラフィ』腕押 暖簾(BNE003400)は角を隠す為の雨合羽のフードを深く被り直す。因みに尻尾は身体に巻き巻き。に、しても寒い。角が冷えて頭がキンキンするし、腰の然り。思わず溜息。でも寒さだけが原因ではない。救助中のリア充達。感情探査でぴんくのきもち。
(畜生アベックめ幸せオーラ出しやがって末永くお幸せになァ!)
 心の中で吐き捨てて、動けない者をバイクに乗せて、エンジン全開。涙がキラリ。

「前もって言っておく」
 『紅炎の瞳』飛鳥 零児(BNE003014)は虚空を仰ぎ目を閉じる。

 俺は任務や自己研鑽に必死で、恋愛してる場合じゃないんだ。そこんとこ勘違いしないでほしい。

「今日も依頼忙しいなー」
 暖簾と共に救助すべく動き出す。男女比2;6で男と組むとか、いかに気を使ってるか分かってくれ。苦い思いを飲み込んで、余った防寒具を一般人に渡しつつ。

 の、一方だった。

「……『お前の無念は 俺が晴らす』『満足したら もうするなよ』?」
 客観の位置、鷹の如く活性化させた視力に映った文字にかじかみテリーは首を傾げた。それは掲げられた紙に書かれた文字。零児が用意したメッセージ。
「リベリスタめ……なんのつもりだ?」
「まぁまぁあんちゃん、あのアスカが何をやってくれるか見てみようぜ」
 そうしてフィクサードの視線の先に、零児の姿――

「オットテガスベッテシマッター」
 転んだ振りしてカップル彼氏のズボンを脱がせ、油性マジックで額に『肉』と落書きし、洗濯バサミで決めたヘアーを台無しに。それは下らない嫌がらせ。いや、違うんだ。これは作戦なんだ。順調に助けるだけではテリーは満足しないだろう、再び強硬を起こされても困る、と。
(ここは平和のために心を鬼にしなくては!)
 そして予め双眼鏡で発見しておいたテリーの方へ振り返り、

 サムズアップb

「うぉぉおーー! でかしたアスカー! お前ェマジCOOOOOLだよ!!」
 返事は喝采、サムズアップb
 リベリスタ。フィクサード。それは、本来交わる事の無い二つの心が通じ合った奇跡の瞬間であった……
 が。
「ぬぉおーアスカ後ろ後ろー!」
「え」
 テリーの声で振り返ってみれば、さむさむキャシーのアイスラッシャーが頬を掠めた。血がつっと流れ、零児の拳に力が籠る。ぷるぷる震え、氷の人形へ逆ギレ一喝。
「俺が普段のクールなキャラ捨ててまで頑張ってんだよ! それなのにお前はなんだ!
 邪魔してる暇あんなら目の前のリア充殴れよ!」
 指さす方には炎を纏う朱子の姿(リア充)。絶対者(リア充)を狙わせる高度な戦略であり、他意は、ない。うん。

「この程度の冷気で……私は止まらない。
 決して凍らない炎が……あの人のことを思うだけで胸の奥に燃える炎が私の体を動かすんだ。
 火車くん……ふふふ……えへへ……」

 テレテレ。つい思考が声にダダ漏れ。半身が凍りついて居るけど気にしない。
「嫉妬って心地いいなあ……みんなリア充になーれ」
 愛の炎(ブレイクフィアー)で色々溶かしちゃう。
「うぉおおおここからは真剣だァア!」
 もう避難誘導は完了した。零児の瞳に真っ赤な炎が血涙の如く、燃え盛るは色々と凄まじい気迫!
 制限を外した身体で剣と思しき鉄塊を振り上げ轟然と吶喊する。破壊そのものと化した必殺の刃を叩きつける。ちょっと異様なまでの威力を誇るそれが氷の異形に結構な傷跡を抉り付けた。嫉妬じゃない。断じて嫉妬の力じゃない。今回は攻撃役が少ないから防御を考えず普段以上に攻撃へ意識を傾けているだけだ。それだけだ。

 堅牢な守備を見せる抑え班の内、倒れた者は一人も居ない。傷はエリスの呪文が癒し、氷も朱子・心・要がブレイクフィアーで直ちに消し去る。堅実な連携も一役買っていただろう。
「戻ったぜェ、ありがとなァ!」
 暖簾を始め、そこへ続々と合流してくるリベリスタ達。寒さはどうも出来無ェが、せめて体力だけでもとオートキュアーを防寒具を着ていない要へ施しブラックマリアを構えた。その身に引き寄せるは運命、序でに充足も引き寄せらンねェかね……なんて、雑念を振り払って。
「爆発しろ! 頭部内容物的な意味でなァ! 熱い一撃叩き込んでやンぜ!」
 ばら撒く弾丸は殺意のそれ、着弾と同刻に煌めくのは要が放ったクロスジハード。堅牢。刃を構えた。曇り無き炫耀。視線の先では朱子が紅の刃を構え吶喊している姿がある。息を合わせ、要も飛び出した。オーラを纏う紅い連撃、魔を切り裂く聖なる刃で挟撃する。
「ぬおぉぉぉ! 動いて無いと凍りつくわー!!」
 いくら暖簾のオートキュアーやエリスの歌があるとは言え。吹き荒ぶ氷点下の息吹を突っ切って、身体のギアを高めたレイラインがキャシーに躍り掛かる。最大出力。ここからが本番。速度を乗せた澱み無き連撃でガンガン追い詰める。攻撃と回避に全力全開。
「何度も言うようだけど寒いのは嫌なの」
 そこへ着弾したのはソラの魔導砲。地面はつるつるだわ動き難いわで七面倒極まりない、とっとと終わらせたい。
 身を刺す冷気、身を裂く冷気。氷人形は堅いけれど、しかし罅は小さくなく少なくもない。
 怒涛の猛攻、おそらくパーティ内で最も火力を誇る零児のデッドオアアライブが真っ正面からキャシーに叩き付けられる、割れた氷の破片が飛ぶ。叩き潰すが如く。
 が、キャシーとて負けてはいない。冷気を纏った腕を零児へ思い切り叩きつける。ぶっ飛ばす。激突した木がへし折れる程に。
「ぐッ……!」
 揺らぐ意識、だが倒れてもフェイトを燃やして……起き上がる必要あるのか?これ。

 いやないな。

「グフッ」
 反語と共に戦闘不能。後悔はしていない。
「アスカァァアアアア」
「待て弟よ行くな行ってはならん危ないぞッ」
 なんて駆け付けようとしたテリーをジョニーが抑えてたり、それにしても零児のその高火力からぶちまけた破壊力は凄まじかった――彼が造った傷口へソラのマジックミサイルが、暖簾の弾丸が突き刺さる。腕が砕けた。蹌踉めく異形。
「……!」
 エリスのあほ毛がピコンと揺れた。朱子も察知する。これまでにない動き、間違い無い。
「……ディープフリーズ」
 エリスのその声に仲間が身構えた直後。
 地面に浮かび上がった蒼白い魔法陣から吹き上がったのは、氷柱かと見紛う程の凄まじい冷気だった。絶対零度に身体の深くまで凍り付かせる脅威の魔法。呪いの氷。

(あれ なんか とっても ねむ ぃ)

 凍り付いたレイラインの、その意識が冷たく眠く――しかし視界を柔らかく染めた光がその氷を拭い去った。
「にゃぎゃーぁ! 寝たら死ぬー!」
 死ぬかと思った。跳び下がる、その視線の先には堅固に盾を構えた傷一つない心の姿――彼女のブレイクフィアーこそ、レイラインや仲間達を救ったのである。冷気など無効。その背に護るは回復手のエリス。何度も戦地を潜り抜けた間柄。
 構えた盾の奥からキッと異形を睨み据える。ブロードソードを突き付ける。

「はっきり言いますが! 私そうそう倒れませんよ!!」

 直後に戦場へ満ちたのはエリスの呪文が紡ぎ出した清らなる存在の優しき寵愛、顕現した彼の者の吐息がリベリスタを一撫ですれば、傷は立ち所に消えてしまう。
「回復自慢のエリスさん。硬さ自慢の私。1人ではしょっぱいかもですが、あわせたときの強さを思い知るのデス!!」
 私達は1人で戦ってるわけではないので――視線の先、仲間の一斉攻撃に砕け散った氷の粒が太陽の光に輝いた。消えた。辺りを包む極低温と氷原ごと。

●ほれたはれたしんだ
「人の恋路を邪魔する人は! 馬に蹴られてなんとやら! ……ふう。虚しい戦いでした」
 すっかり平穏を取り戻した公園、心は何とも言えぬ表情で息を吐く。
「ジョニーテリー? どうでもいいわ。帰って風呂入ってビール飲む!」
 ソラは誰よりも速くその場から立ち去った。
 最中に要が振り見るのはフィクサード兄弟の方向。突き付ける剣先、『次は前のようには負けない』という意思表示――の真横、矢の如くドヒュンと駆けたレイライン。巻き起こった風に要の銀髪がぶわぁと舞った。
「こーの大馬鹿者が! そんな冷気垂れ流してて女性が寄って来る訳無かろうが、そんな事も分からんで妬んどるのか、このたわけー!!」
 飛び蹴り御免。グハッと仰け反るテリー。驚くジョニー。
「な、何だよ折角気が晴れたからこのまま引いてやろうって思ったのにレイラインの馬鹿ー!」
「誰が馬鹿じゃー! この間のリベンジじゃこの阿呆兄弟めー!!」
 ボカスカ始めるテリーとレイライン。ほのぼの~っとジョニーは微笑みながら、
「いやぁ良かったじゃないか弟よ。ソドミラ同士だし、エレアニックは中々に器量良しだし、(見た目は)若いし、天真爛漫だし、ネコミミだし、丁度いんでないか? ホラ最近よく話してくれるじゃないあんちゃんに、『ネコミミでソドミラで明るい女の子と付き合いたい』って。YOU付き合っちゃいなYOあんちゃん許します」
「え あ ハァ!? べべべ別にレイラインの事なんか何とも思ってねーし! ばーかばーーか!」
 ダヒュンと飛び去るあっというま。トップスピードの無駄遣い。
「うちの弟を宜しく頼むぞッ でもちょっとジェラシー!!」
 なんて言い残してジョニーも弟を追って飛び去って行く。残されたのは、ポカーンとしたレイラインと吹き抜ける風。無音。

「……。あの…… ただの残念な人達にみえるんですが……」
 呟いた心の肩に暖簾は黙ってぽんと手を乗せる。満足したのか感情探査で彼らの心を感じてみようと思ったが、必要なさそうだ。
「さて、たい焼きでも買って帰ろうかね……」
 あったかくて、甘いヤツ。




『了』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「お疲れ様です皆々様、ご無事で何よりですぞ!
 一つ言っておきますがリア充とは決して『リアリズム充足主義者』という意味ではなく、『実際の現実の生活(リアル生活)が充実している人』を指しますぞ!
 ではでは、風邪などひかれぬ様ゆっくり休んで体の疲れを取って下さいね」

 だそうです。お疲れ様でした。
 如何だったでしょうか。
 お疲れ様でした、ご参加ありがとうございました!