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霧と共にイズルモノ

●霧中に消える
「全然前が見えねえなあ……」
 深い霧の中、一人の男が山道を歩いていた。
「人っ子一人いやしねえし……」
 この時期は霧が深くなるからと地元の人間は面倒でも遠回りをする道で、他に人通りはない。それなのに、先ほどからずっと誰かに見られているかのような感覚が付きまとう。
「あー、くそ……やなこと思い出した……」
 思い出したのは先ほどまで酒を飲んでいた地元の居酒屋で聞いた話だ。
 何でもこの辺りは神隠しが起きると。その犯人は山に棲む龍だと。昨晩も山に入っていった不良学生グループが戻ってきていないらしい。彼等は三人組で気に入らない学生を一人山の中でリンチしようとしていたらしいのだが、戻ってきたのは無我夢中で逃げ出したその学生一人だけだったと。
「大体そんなもんがいるわけ……」
 頭を振って、その話を忘れようとした男は今いる場所がどこなのか気付いた。先ほどまでは霧の中をどう歩いているのかも分からなかったというのに。
「……あ……あああ……」
 そして、男は龍に喰われた。

●夢中の敵
「神隠し事件が起きてるの」
 集まったリベリスタに真白イヴ(nBNE000001)はそう告げた。
「事件が起きるのはとある山道で、行方不明者は龍に食べられるみたい」
 分かっていることは事件が起きる山道と気候条件。条件というのは霧が出ているというだけのことだが、視界が悪くほんの少し先の人影すらまともに見えないほどだという。
「正体は分からない。けど、推測できることは幾つかある」
 霧が出ているときにしか現れないということは、霧の中に隠れることを好む何者か、或いは霧が出ている状況下のみ活動できる何かということになる。
 それと、姿を見せる際には何故か霧が晴れていること。これも分かっている。一人であれば意味はないが、仲間がいるのであれば、居場所を告げることで合流することも出来なくはないかもしれない。
 不良グループが戻ってこなかったことからすると相手は複数である可能性も高い。逃げる学生を追わなかったのは逃げる相手に興味がないのか、それとも単に頭数が足りなかったのか、両方なのか。何にしても数少ない敵情報である。
「孤立すると危険かもしれない。けど、孤立しないと現れないかもしれないから十分対策は立てて」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:草根胡丹  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2012年04月02日(月)22:52
 ども、草根胡丹です。
 というわけで神隠し事件です。

 孤立すると間違いなく現れます。複数名で行動しているときも現れているかもしれません。
 霧の出ていない時間帯に捜査を行った場合、遺留品や足跡などの痕跡は行方不明者のものくらいしか見つかりません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
花咲 冬芽(BNE000265)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)

アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)
インヤンマスター
高木・京一(BNE003179)
クリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
ダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
ダークナイト
高橋 禅次郎(BNE003527)
■サポート参加者 4人■
プロアデプト
老神・綾香(BNE000022)
ホーリーメイガス
アゼル ランカード(BNE001806)
覇界闘士
浅倉 貴志(BNE002656)
ホーリーメイガス
出合島 白山(BNE003613)

●思考は霧の中
「霧の中の隠れん坊 隠し神は鬼となりて子を捜す」
「深い霧の中。現れ出るはなにものか」
「……なんて、ね」
「霧を使う敵なのか。そのものが敵なのか」
 花咲 冬芽(BNE000265)と熾喜多 葬識(BNE003492)の詠う歌を聞きながら曳馬野・涼子(BNE003471)は思案する。
「霧の中に潜みしものの正体を探り、撃破することが今回の依頼内容みたいですね」
「詳細も数も不明と余りにも情報が少ない」
 高木・京一(BNE003179)と高橋 禅次郎(BNE003527)は依頼内容に再度目を通すが、やはり正体に関する情報は少なかった。
「神隠し……かぁ。山は神域だし、この辺りの人が今も信仰を持っているならE・フォースって可能性もなくはないけど……」
「神隠しなんてそんなのこのご時世には流行らないよ~」
 冬芽の言葉を葬識とモニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は否定する。麓で神隠しの伝承について調べてみたものの、具体的な信仰を有するようなものでもなく、文献すら見つからなかった。
「だいたい神隠しなんてモノは都合の悪い事件に蓋するための言葉です」
「……まぁ、噂の内容的にそれはないかな。犯『人』は龍であるって、皆はそう思ってるわけだしね」
「事あるごとに自分の所為にされちゃ神様もいい迷惑でしょうね」
「霧だか何だか知らないけどねぇけったいな敵だよぅ」
 そんなモニカの言葉に冬芽は苦笑を浮かべ、遠野 御龍(BNE000865)は愚痴を零す。
「推測するに霧自体がEエレメントで、襲って来る際に実体化するとかではないかと思うのだが、推定ミストドラゴンってとこだな……一寸格好良いかも」
「んで、俺の見た感じ相手は霧を利用してるフィクサードじゃねーかな」
 思念体の可能性が低いのであれば残る可能性は大きく二つ。禅次郎とアッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)がそれぞれの考えでは一方は霧そのものが正体であるためで、もう一方は霧を用いた人為的な偽装工作。痕跡が残っていないことからすると前者の可能性が高いが、巧妙な手口で証拠を隠蔽していないとも限らない。
「……どっかの切り裂き魔みたいね。会ったことないけど」
 涼子はそう言いながら大きく息を吐く。最悪の可能性の場合、相手の得意とする戦場に飛び込む形になる。
「こういう怖い相手は苦手なんだよねぇ。わけわからないのとか気持ち悪くない?」
「まあ、なんでもいいけど。殴り飛ばせる敵ならいい。いらいらしなくてすむから」
「でもまあ、フィクサードなら、嬉しいところだよねぇ~」
 葬識と涼子はそう言って笑った。得体の知れないモノよりも実態がある分だけ人間の方がマシと思えるのは無知を恐れる人の性というものだ。
「詳細の解らない相手というのは厄介だな」
「んじゃまあ、霧が神秘じゃないことを祈るしかないよねぇ~」
 禅次郎にそう言って、葬識は目的地へと向かって歩き出した。

●見つからないのが証拠
「敵が出てこなけりゃぁ絶好の散歩日和なのにねぃ」
 日差しの眩しい朝。御龍の言うように今日は散歩にはもってこいの天気だ。
「五里霧中、だなんて言うけどよー。人間、目の前が開けてねーと不安になるもんだよなー」
 出合島 白山(BNE003613) は事前調査のため、山の中を歩いているがこの時期は迂回する人が多いという話の通り、人の足跡すらろくになかった。
 老神・綾香(BNE000022)は感覚を研ぎ澄ませ、周辺の気配を探るが……人の気配は感じない。
 アゼル ランカード(BNE001806)は集音装置で警戒しているが拾えるのは自分達の足跡ばかり。
 浅倉 貴志(BNE002656)は熱源や感情探査を行うが、やはりこちらも反応がない。
「早起きでお仕事、ほんとに大変だよねぇ~アークって」
 欠伸を噛み殺しながら葬識はそれに続く。山の中の痕跡探しはまともな成果が上がっていない。見つかった痕跡を辿っていっても、別の痕跡と交わることがなく、少し乱れを見せた後に消失していた。それは被害者が『人』とは争っていない証拠とも言える。
「人生12年も生きてっとよー、見えない方が良いモンだってある事位知ってんだぜ?」
 結局、人為的な関与の痕跡が見つからなかった調査をそう纏めた白山に見えてくれる相手のほうが良かったと数名の思考がシンクロしていた。

●霧の中の龍
 昼を過ぎ、夕方頃になって気温が下がってくるのと同時に山には霧が出始めた。
「どうしても受身がちなのが癪だな」
 禅次郎はそう言いながら山を覆っていく霧を見つめる。相手はほぼ間違いなくエリューションのエレメントだろう。相手が相手だけに姿を見せるまで何も出来ないもどかしさが募っていた。
「囮役の人たちのサポートをしっかりと行い、無事に終えるようにしたいものです」
「ほうれんそうは大事ですっ!」
「まぁ龍って言うくらいだから少しはやるのかねぃ。……外道龍たるこの我が倒してやる。この三高平の龍がなぁ!」
 心配性な京一に冬芽はそう言って頷き、御龍は頼もしく声を張り上げる。その御龍の宣戦布告とも言える声は山全体に響き渡った。
「さて、私は霧の外で待機してるよっ」
 結界を張り、他の一般人が立ち入らないように準備した冬芽に見送られ、一行は霧の中へ。
 昼間に下調べをしたので迷う可能性は低い。だが、それでも手を伸ばせば自身の手すらまともに見えなくなるような深い霧の中では気を抜けば自分達がどこにいるのか分からなくなりそうだった。
「霧の中でどの程度有効かよく分かりませんが……」
「そうそう。普通の光源だと大気中の水分が光を屈折させてしまうので役に立ちませんよ。懐中電灯等をお使いの方はフォグランプの使用をお勧めします」
「霧の中では先が見難いことですから不意打ちされる可能性も無きにしも非ず。気をつけませんと」
 京一はモニカの助言を受け、慎重に周囲を警戒する。昼間同様に人の気配はないことからすると、やはり人の仕業というわけではなさそうだが、油断は出来ない。
 冬芽は上空から霧の様子を伺い。他の面々も可能な限り異常を早期に発見できるように監視体制を整えている。相手が霧そのものであるというのなら、その範囲が拡大する前……霧の発生直後に早期決着をつける方が被害を抑えて戦えるという判断だった。
 囮として行動しているのは御龍とアッシュの二人。他は霧の外にいるものを除けば、全員纏まって行動している。異変を察知すればすぐに駆けつけられる距離を維持しながら、様々な手段での探査を継続。敵がいつどこで現れるのか分からない緊張感は、長引けばそれだけで疲弊してしまいそうだったが、単独行動している二人が龍と遭遇するのにそれほど時間は掛からなかった。
「……来たか。さぁて我を楽しませてくれよ?」
「畳み掛けは宜しく頼むぜ」
 姿を見せた龍に御龍は目の前の龍に向けて月龍丸を突きつけ、アッシュは痛みの王と迅雷を手に構える。揺らめく影を前に二人はほとんど同時に駆け出し、互いの獲物を振るった。交差したのは一瞬。
「かはは、やっぱ俺様ってばサイキョーだぜ!」
 その一瞬で確かな感触を得て、アッシュは笑い……直後に巨大な刀に弾き飛ばされた。

●龍の正体
「犯人がナニか何かなんてわからないけど……」
「何にせよ、1体ずつ倒す」
 交戦開始を察し、冬芽と涼子は囮の二人の元へとそれぞれに急ぐ。
 その前に立ちはだかったのはやはり龍の影。
「くたばれ糞野郎ッ!」
 涼子の拳が龍の影へと突き刺さる。冬芽も問答無用で攻撃を仕掛けた。感触はあった。しかし……それと同時に聞こえてきたのは囮二人の苦悶の声。
「オレサマは回復に専念するぜ」
 それを耳にした白山は負傷した二人に下がるように指示を送る。すると、龍もまた敵の増加による不利を悟ったのか後退する。
 その間に治療を行いながら、各々の感知や探知能力を駆使して居場所を探った。逃がせば被害者を増やしてしまうことになる。連携を取りながら散発的な攻撃を互いに繰り返し続けていた。あちらこちらで目撃される龍の姿は明らかに一つではない。少なくとも二つ……交戦している声から察するに、それ以上いるのは間違いないだろう。
「神秘の霧の陰に隠れた者を引き摺り出して、ケツの毛まで毟り取って差し上げましょう」
 そんな中、モニカは正体を探るため、単独で戦場を監視する。暗視は霧の中ではほぼ無意味。熱感知による反応は自分達のもの以外は見当たらない。
「……妙ですね」
 その反応と被害報告や目撃報告を照らし合わせ、思案すること数瞬。その思考が終わるのと目の前に龍の影が姿を現したのはほとんど同時だった。
「今夜は観たいドスケベ番組があるので、さっさと終わらせます」
 モニカは九七式自動砲・改式「虎殺し」を構えると、それを地面に向けて撃ち放った。砲撃の威力が地面を抉り、周辺一帯に砕けた石や砂の破片を吐き散らす。
「本命はこちらですね」
 目の前に実体化した龍。それを即座には撃たず、回り込む形で移動してから再度砲撃。手応えは……あった。空気を裂くような龍の咆哮が聞こえ、それに伴って霧が徐々に晴れていく。それに伴い他の龍も実体化した。その数は合計、三。
 三匹全てが実体化すると同時に霧は晴れ、視界が戻る。リベリスタ達は互いに対峙し、獲物を向け合っていた。先ほどから攻撃を仕掛けていたのは向かい合っている仲間に対してだったのだ。
 実体化と霧散化を繰り返すことで味方同士の同士討ちをさせ、弱った獲物を喰らっていたのだろう。
 砲撃の巻き上げた土煙が収まり始めると、三匹の龍の姿が溶けて霧のように変じ始めた。
「また霧にまぎれられるたらまずい」
 涼子はそのうちの一体に狙いを絞り、狙撃する。実体化した龍の身体の一部が弾け飛び、周辺に僅かに残る……もはや靄のような霧を取り込みながら飛散した部位を補完し始めた。
「あの子、からやっつける感じがいいかもだねぇ~」
 葬識の言葉に禅次郎頷き、二人は龍目掛けて黒いオーラを収束して放つ。黒白が混ざり合い、その苦痛からか龍はその身を震わせた。
 他の一体が再び霧に変じる中、実体化したままの二匹を二手に分かれて追撃。同士討ちを避けるため、仲間同士で背中合わせとなるような布陣を敷く。
「神域と現世を謀るならば、私がその世界を線引いてあげる。注連縄……とまではいかないけれど、この見えざる糸が貴方の境界線だよ」
 冬芽がその境を線引きし、完全に二分すれば、もはや龍を恐れる必要はない。
「売られた喧嘩は倍値で買い叩くッ!」
「さぁて、暴れさせてもらうとするかぁ」
 先ほどやられた分のお返しとばかりにアッシュと御龍は猛攻を仕掛けた。タネさえ分かれば、同士討ちを防ぐ手段は幾らでもある。
「細かい位置関係は分からずとも、大体の位置が把握できると思います」
「声を出し合い位置を確認だね」
 貴志は互いの感情変化を読み取り、それぞれの居場所を確認し、同士討ちをしそうな状況を防ぎさえすればいい。アゼルの言うように互いに声を出し合えば、少なくとも攻撃を仕掛けようとしている先に人がいるかどうかは分かるのだから。
 この辺りの地形は禅次郎が把握している。それを踏まえて互いの射線が交わらないように京一は情報を元に布陣を調整し、戦闘指揮を取る。
「近づきすぎないように堅実にいくのがいいよねぇ」
 葬識達の堅実な戦いは騙まし討ちのような戦いを得意とする龍を確実に追い込んでいった。霧へと変じようとすれば涼子が張り付きそれを妨害する。先ほどまでの仕返しとばかりに御龍が斬撃を刻み続ければ、徐々にその姿は小さくなって最後には霧になることもなく消滅した。
 弱った一匹が消滅すれば、残るは実体化した一匹と霧に変じたままの一匹のみ。牙を剥いて威嚇する龍ではあるが、その攻撃自体は大したことはない。周囲に被害のあった痕跡がなかったのも単純にそれだけの影響力を持つ攻撃手段を有していなかったからなのだろう。
 実体化した相手に対しては全員が纏まっていれば同士討ちをすることもないし、霧に変じている方が実体化すれば霧自体がなくなり、やはり同士討ちの心配はなくなる。
「鬼が出るか蛇がでるか~って俺様ちゃんが鬼だったよねぇ~★」
 最終的に一方的な攻撃の果てに、葬識達は龍を消滅させた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
というわけで今回の敵は霧のエレメントでした。モデルはミストドラゴンとオオナズチ。混ぜる途中でオオナズチ成分の大半が消えた気もしますが。