●願いを買う 鬱蒼とした茂みに囲まれた山林地帯、安いだけのその土地とて、使いようはあるのだ。 たとえば、木々がないのに、木々があるように見せればどうだろうか? 森の中にポツンと存在する人工的な一角。 それはコンクリートの防壁に囲まれ、武器を手にした者達が目を鋭く光らせながら辺りを警戒する。 監視塔らしきノッポな建物には、対物ライフルを持った狙撃手がいる程の徹底振り。 迂闊に近づこうものならば、三途の川を一気に渡れるだろう。 「では、お願いしますよ?」 白いスーツに身を包んだ男が、傍にいた軍用装備に身を包んだ男へ告げる。 スーツの男は黒髪をオールバックで整えており、怜悧な物腰の青年だ。 「お任せください、お望み道理良い戦力に叩き上げます」 タクティカルベストにBDUと、何処かの兵士の様な格好をした男も、常に泰然自若といった雰囲気を感じる。 「結果次第では其方との長期契約や、戦力としての兵員補充も考えていますので……」 くいっと眼鏡を中指で押し上げるスーツ男、光の反射でレンズが白く映った。 「是非ともの所存です」 普通の人間には森にしか見えない場所で、着々と不穏な動きは大きくなろうとしているのだ。 ●見つからぬ事、悟られぬ事、生き残る事 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はリベリスタ達の前で渋い表情を浮かべていた。 その理由は、スクリーンに投射された。 「フィクサード集団の一つ恐山が、とあるフィクサードの集団と手を取り合ったの」 恐山に関しては七派といわれる集団の一つ。知らないリベリスタ達の方が少ないが、画面に映し出されたもう一つの集団は恐らく記憶にないだろう。 「彼らの正式名称は知らないけど、行動としてはPMCに近いわ。 PMCってのは天原さん曰く、民間軍事企業の略称らしいわ。」 流石ミリタリー好きといったところか。 感心しながらも、イヴの説明に耳を傾けるリベリスタ達。 「要するに、フィクサードの訓練をしたり、彼等の防衛拠点を守ったり、時には戦力として戦うこともある。 戦闘に携わるところを金で代行するわけね、恐山は七派の中では小さい方だしし、これで補強ってところかもしれないわね」 戦闘のプロに戦闘のイロハを習いつつ、時には戦力として一緒に前に立ってもらう。 金は掛かるが、一から全てをやるよりは断然マシだ。 謀略の恐山と言わしめるだけはある。 「最近恐山がアークの施設の奪取を行うって情報もあるの。 今回の結託を考えると可能性としてかなり高いわ、そこで妨害工作をお願いしたいの」 続けてイヴがスクリーンに映し出したのは、今回の作戦だ。 彼等は協力するとはいえど、客と企業だ。 それなりの成果を見込み、恐山は手付かずだった土地を報酬として与えており、結果を確かに欲しい。 教習に向かわせた構成員の成長がそれだ。 「倒さなくていいわ、訓練中のフィクサードを一人でもいいから怪我をさせてくること。 そして、この拠点に損害をもたらす事が作戦目標よ」 仲間が怪我をした挙句、与えた拠点すら守れなかったとなれば面目丸潰れ。 恐山もそのまま契約を続けるかどうか、悩むはずだ。 「PMCのフィクサード達は、それぞれかなりの経験値を積んでいるわ。 それが少なからず20~30はこの拠点に待機しているの、見つかったら……どうなるか分かるわね?」 圧倒的戦力差で合えなく全滅、浮かぶ結果にぞっと寒気がしそうだ。 「捕まったらどうなることやら……とにかく無理しないでね?」 あくまで妨害工作。失敗しても大きな事になるわけではないが、作戦で大きな被害が出ては本末転倒だ。 念押しするイヴの表情はいつもの仏頂面とは違い、どこか不安げに瞳が揺れていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月28日(水)23:12 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ズレ 早朝、まだ日も上がりきっていない時刻。 紺色の空が広がる頃、リベリスタ達は森にいた。 夜実行予定だったが、考えれば夜には訓練が終わってしまう。 そこで状況の近い、訓練の始まる早朝に狙いをつけたのだ。 『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)は全身暗色に包み、草地の伏せ、茂みの隙間からレンズの世界を覗く。 同じくして、来栖・小夜香(BNE000038)は、木の陰から壁の上を巡回する兵士を観察し、仲間へ伝達する。 少しの合間を縫ってリベリスタ達は影から影に移り、命がけの『達磨さんが転んだ』を味わう。 不意に双眼鏡へ、敵が基地内部の方に顔を向けるのが映る。 『今よ!』 合図に合わせ、一気に死角へと滑り込むリベリスタ達、準備は整った。 『準備整ったようです、では合わせていきましょう』 AF越しに届く劉の声に『重金属姫』雲野 杏が慣れない手つきでライフルを構えた。 彼女がいるのは南西、まったくといって別のポイントだ。 『じゃあいくわね? 3、2、1!』 響いた銃声は一つ、劉の銃には杏から渡された消音器が取り付けられていたからだ。 彼女の発砲は攻撃ではなく、ただのフェイク。けたたましい銃声の裏で押し殺された本命が目標を破壊すれば、欺ける筈。 それは間違いない、だが一つだけ見落としていた点に気付く頃には遅い。 劉の弾丸は外壁をけたたましい音と共に砕き、内側にあった送電ラインから電気が迸る。 『破壊した、次のポイントに移動する』 視線が来ていないのを一瞥して確かめると、劉は少ない動きながら素早く移動。 『皆さん、突入してください!』 『わかったわ、私も移動するね』 後は東側に待機している小夜香と合流し、陽動作戦に移るだけだ。 (「俺のコードネームは、ドラゴン。 アークの中でも俺の存在を知るやつは少ない、何故ならプロフェッショナルだからな。 今日はチームでの仕事か、やれやれ、足を引っ張らないでくれよ」) と、心の中でそれっぽく呟いていたのは『合縁奇縁』結城 竜一である。 実際は一介のリベリスタに過ぎないが……。 傍にいた『八咫烏』雑賀 龍治に何か感じ取られたか、訝しげな表情を見せられるも何でもないと笑顔で答える。 小夜香からの合図が届き、『告死の蝶』斬風 糾華が、ハンドシグナルで行動を促す。 (「まさか妾が間諜の真似事をすることになるとはな」) 『鋼鉄魔女』ゼルマ・フォン・ハルトマンは心の中で独りごちりつつ、静かに池の中へ滑り込んだ。 彼女の後に、『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)が続く。 ウェットスーツに足元がゴム底加工、武器も音を考えてボウガンという徹底具合。 何時もの執事を思わせる格好とはかけ離れていた。 全員が水の中へと潜った後、基地の中は慌しく動き始めていく。 破砕音を聞いた東側にいた兵士が壊れた出っ張り部分を確かめ、無線連絡を入れる。 流石に距離の離れた場所の銃声で、砕ける物音を誤魔化すのは無理があったのだろう。 これが落雷の音といった、広範囲に広がる音であれば違った筈だ。 勿論銃声のあった場所も慌しく、敵襲に備え兵士達が走り回っていた。 ●間一髪 水中に潜った侵入班は壁の下を潜り、ゆらゆらとした出口へと近づいていく。 先行したゼルマとジョンが水面へと近づこうとした瞬間、竜一が慌てて二人の足を掴む。 振り返った二人へ水面を指差すと、よく目を凝らせば人影があるのに気付く。 送電ラインを破壊された事に気付かれ、侵入阻止しようと3人の兵士が見張っていたのだ。 一秒一秒が長く感じ、刻々と肺の酸素が尽きていく。 このまま窒息か、敵の前に姿を晒すか? 最悪の選択を迫られていた。 「……嫌な感じがします」 超直感が劉に危機を伝えていた。 壁の向こうは特殊な力を遮る力が働いているので、殆ど勘に近いレベルでしか察せない。 けれど、既にざわついている基地の様子が裏付ける。 「なら、ちょっと小細工するわ」 杏は予め準備していた花火を取り出す。 導火線も延長してあるので、逃げる時間は十分だ。 (「うまくやるのよ、皆」) 二人から離れ、花火を固定すると願いを込めて着火。 花火へ駆け上がる火花を見送り、二人のところへ戻る。 ヒューーンッ……パパンッ!! 花火は緑の天井を貫き、上空へ躍り出ると、派手なホイッスル音を響かせていき、炸裂。 音に驚き、水面を見張る兵士たちは思わず上空へと視線を向けてしまう。 その好機を逃さず、強襲班は一斉に水面から飛び出した。 ジョンのオーラの糸が敵兵達の体を貫き、ゼルマの魔法の矢と竜一の二刀流の連撃が追い討ちをかけ、1体目を黙らせる。 3人へ得物を構える敵兵2人、だが糾華の放ったエネルギーの糸が敵兵を雁字搦めに捉え、地面に引き倒す。 更に龍冶の糸は罠となり広がって敵を痺れさせ、毒に侵し、馬乗りになって拘束してしまう。 糾華の糸を喰らっても意識があった敵兵ではあったが、喋る暇もなく気絶させられ、寸でのところで発見の危機を回避した。 だが既に基地内はざわついており、この敵兵が見つかるのも時間の問題だろう。 しっかりと縛り上げた後、物陰に葬ると、侵入班は分かれて行動を開始した。 糾華、ゼルマ、ジョンの3人は兵舎へと忍び込むと、慌しく移動する兵士達の足音に注意しながら内部を進む。 ゼルマが先導し、角からゆっくりと顔を覗かせ人がいないのを確かめると、手合図を見せる。 足音を立てぬ様に慎重に進めば、人気のない部屋を見つけた。 壁に張り付く3人。ゼルマが静かにドアを片手で開くと、ジョンがヘビーボウガンを構え、音を立てず突入。誰もいないことを確かめれば二人も部屋の中に入り、戸を閉ざす。 「ちょうどいいものを見つけましたよ」 ジョンが開いたクローゼットの中には整備士のツナギがあった。 男性用とあってか、糾華とゼルマにはサイズが合わないだろうけれど、ないよりはマシだ。 「わたくしめが先に歩哨を勤めてきます、糾華様とゼルマ様は先にお着替えを」 頷く2人を見れば、再び静かに戸を開き、廊下へ。 「終わったぞ、次はドーの番じゃ」 ささやくように聞こえたゼルマの声に扉の方へと振り返ると、がらりと変わった姿の二人が目に飛び込む。 糾華はツナギの裾を折り返し、どうにかサイズを合わせた状態。 ゼルマに関しては……身長等は問題なかったが、如何せん魅力溢れる起伏をよく押し込めたものだという状態である。 だが見た目道理の紳士な彼が特に何を言うこともなく、部屋へと入っていった。 着替えも終わり、再び静かに突き進むも避けては通れないところもある。 外に通じる玄関でうろうろとする兵士が一人、迂回しようにもここ以外のルートはない。 声を出さず、ハンドシグナルだけで意思疎通を行い、まずは糾華がコツコツとリノリウムの床を叩き、物音を響かせる。 「……」 ライフルを構えた兵士が引き締まった面構えで構えながら音の発生源へと近づく。 射程内まで捉えたところで、まずはジョンが足元に展開させた糸を敵兵へとは知らせた。 絡み付く糸は一気に体を痺れさせ、毒を注入してしまう。 動きが鈍ったところで糾華の糸が全身を縛り、骨が軋む音を兵士に聞かせ、ゼルマの光の矢が追い討ちをかけ、大ダメージを与える。 「て……っ!」 意識は落ちない。叫ばれると思った矢先、毒素に負け、膝から崩れ落ちた。 ホッと胸を撫で下ろす3人だが、まだ到着したわけではないのだ。 縛り上げた敵兵をロッカーの中に押し込むと、再び移動を開始した。 ●嵐の中で 「喋るな、動くな、逆らえば殺すぜ?」 狙撃ポイントに潜んでいた二人だが、龍冶がトラップネストで動きを封じ、竜一が刃で脅す。 無駄死には御免と頷く敵兵をワイヤーで縛ると、コンテナの陰に隠す。 だが、来客はまだいる様だ。先程の兵士を探しているのか、誰かの名を呼びながら近づく影が迫る。 作戦は同じ、再び罠を仕掛け、龍冶がタイミングを計った。 気付いていない、問題なく仕留められる。 だが時に運は悪戯だ。射程に入った瞬間、敵兵は何かに蹴躓き、偶然にも罠を避けてしまう。 (「「マズイ!」」) 竜一がカバーに入るが、奇襲を仕掛けたとて一撃で気絶させるのは難しい。 派手な技はバレてしまう。選択はメガクラッシュだった。 更に破壊力があるデッドオアアライブは流石に音が激しい、メガクラッシュとて場合によってはバレてしまう。 (「一か八か!!」) 直撃した兵士は派手に吹き飛ぶも、何かにぶつかる事は避けれた、が。 「くそぉっ!! 敵だ!敵がいたぞぉっ!!」 無線へ、そして周りの敵へ伝わる発見報告。 地獄の釜が開いてしまった。 『すまない、見つかった! そっちはどうだ!?』 竜一が先程の敵を黙らせ、警報が鳴り響く中龍冶は火縄銃を構える。 『今終わったわ!! 離れたら爆破するわね、そっちは!?』 『狙いは合わせたぜ、でも早くしてくれ! 長くは居られない!』 既にフィクサードは建物へ避難を開始し、おまけに四方八方から攻撃が飛び交い、得物を持った敵が飛び掛ろうと走ってきていた。 竜一がどうにか攻撃を庇い、ポジションの維持をしてくれているが、それも時間の問題だ。 『いくわよ! せーの……っ!』 それを遮らんと監視塔の狙撃手が龍冶を狙う。 正確無比な狙いが、彼の肩を貫き、銃口がガクリと崩れる。 劉が狙撃手を始末する予定ではあったが、外からは狙えない距離にいた為、それは適わなかった。 あの狙撃手は内部の敵を始末するのと同時に、外から来る敵の早期警戒役。 もともと外の敵を始末する予定はなかったのだろう。 だが、そんなことは関係ない。雑賀衆の末裔としての意地が照準を立て直した。 爆発と銃声、倉庫は派手に吹き飛ばされ、龍冶の弾丸は逆境の中、見事フィクサードの腹部を貫く。 「逃げるぞ!」 既に血みどろとなった竜一に肩を貸し、牽制射撃を放ちながら東の撤退ポイントへ急ぐのだった。 ●決死の脱出 爆発と警報、門番の兵士たちも高まる緊張の中、脅威を探り続ける。 敵は何者か? 何の目的か? そんな事を囁きあう二人の前へ杏が姿を現す。 「そんな事より一曲どうかしら?」 ライフルをギター代わりに奏でる雷のメロディは壁の上にいた兵士を巻き込み、鋭い痛みを味わわせる。 更に射程ギリギリから劉の狙撃が敵兵の胸部を貫く。 弾丸の破壊力に流され、敵は壁へと叩きつけられると滑りながら地面に沈む。 「正面から敵だっ! 増援を頼む!」 残った2人からの魔力の矢と弾丸が杏へと向けられ、交代する彼女の二の腕や太股を抉ってしまう。 ガクリと、膝が沈んだ瞬間。追い討ちの矢が肩を貫いた。 土の上を転がりながらも、必死に木の陰へと身を隠す。 「杏さんっ!?」 木の陰に隠れた小夜香が叫ぶ。 肩を抑え、大丈夫といわんばかりに苦笑いを浮かべる杏。 伏せたままライフルを構える劉の目には、ゾロゾロと姿を表す敵の姿が映っていた。 数人で一つのチームを組みながら、じりじりと距離を詰めるPMCフィクサード達。 『私が牽制をするので、その間に治療を』 2人のほうへ迫る敵へ牽制射撃を撃ち込み、引き付けると木の陰へ隠れた。 何が起きているのか観るのも恐ろしい破裂音が背後で鳴り響く。 その隙にと杏の元へ走る小夜香だが、気付いた敵兵が素早く弓を構える。 『来栖さん、左ッ!』 直ぐに気付いた杏が彼女へ回避を促す。 方向を確かめ、ワンテンポ遅れた回避は致命傷を避けるのが精一杯だった。 「くぅ……っ!」 太股に矢が直撃し、頭から杏のところへと滑り込み、どうにか陰に隠れた。 そこかといわんばかりに敵の攻撃が集中していく。 回復役だと長年の経験から分かるのか、狙いは彼女を潰す事へ集中してしまう。 「そうきますか」 補給、もとい回復役を断てば後は追い込むだけでいい。 渋い表情を浮かべながらも、劉は木の幹へライフルを押し付け反動を殺し、素早く連射を叩き込む。 被弾した敵が下がり、代わりの兵士が前に動き、厚い壁を崩さず飛び道具の嵐が襲い掛かった。 「くっ!」 身を縮ませ、死の嵐を耐え凌ぐ。 最早一方的な狐狩りだ。 「今、回復しますね」 彼の命懸けで稼ぐ数秒間、小夜香は清らかな詠唱を紡ぎ、福音の音色を響かせる。 活性化される治癒力が2人の傷を塞いでいき、応急処置を施していく。 完全に塞がったわけではないが、動くにはどうにかなる。 「ほら、こっちも忘れないでほしいわっ!!」 再び電撃のメロディを響かせ、飛び散った雷が無数の敵の体を焼き焦がす。 数が多い分、複数に効果を及ぼす攻撃は被害が大きい。相手の足を止めるには十分だ。 小夜香が手合図で劉へ移動を促すと、再び後退を開始。 だがそこへ、4つの魔法の光が集中し、破壊となって移動先を吹き飛ばす。 「っ!?」 声すら出せぬまま、小夜香の小さな体が宙に放りだされ地面を弾む。 聞こえる音全てにエコーが掛かり、映像に残像が掛かる。 そして頭の中に何かが砕けるような音が聞こえると、瞬時にそれは終息する。 運命の力を削った証拠だ。 彼女の方へと駆け寄る劉と杏、そこを狙って今度は木の上から奇襲を仕掛ける敵兵が命を狙う。 庇い手が間に合わず、杏の胸元が斜めに切り裂かれ、命の飛沫が舞う。 白く濁り、沈む行く景色。そして彼女もまた、運命の力を砕く。 「おかえしよっ!!」 至近距離の電撃を喰らい、痙攣する敵は劉に襲い掛かった敵もろとも吹き飛ばし、迫った敵にぶつかりよろめく。 今のうちにと、満身創痍の二人を援護しながら劉達は後退を繰り返していった。 「ぐはぁ……っ!」 開けた中央からは建物から飛び出した敵達の飛び道具が容赦なく襲い掛かり、竜一に駄目押しの流れ弾がぶつかる。 脈動の音が煩く頭に響き渡り、視野が黒く狭まっていく。 やられてなるものか、その意地が運命の力を砕きながらもダンッ!と踏みとどまらせた。 「やられるわけには、いかないんだよ!」 肉体の限界を凌駕し、龍冶の助けも借りず自力で走る。 建物の裏を回り、池への一本道へ到着すると、妨害に駆けつけた兵士と爆破班の3人が取っ組み合っている最中だ。 既にゼルマが回復役だと知られているらしく、彼女を庇いながらの戦いとなっている。 「えぇい、そこを退かん……っ!」 憤りを込めた魔法の矢をゼルマが放ち、敵を壁に貼り付ける、が。 その攻撃の隙を狙い、物陰から息を殺していた兵士が一気に詰め寄り、ナイフを彼女の腹部へと突き立てたのだ。 「貴様ぁっ!」 執念が痛みを凌駕し、大切な力を燃やしながらも敵の頭部を掴んで投げ捨てる。 転がった敵にジョンの矢がトドメを刺し、黙らせ、続けて2体目を撃破。 糾華もオーラの糸で応戦し、同じ力同士での勝負の最中だ。 同じギャロッププレイ、締め付けあう力もほぼ互角。後はどちらが意識を手放すかの勝負、負けるものかと全力で締め上げれば、負けじと敵も彼女を締め上げる。 (「負け……ないわ!」) 首元まで締め上げられ、意識が遠のく物理現象を運命の力でねじ伏せる。 砕ける音を聞きつつも、渾身の力で相手を引き寄せれば、勢い任せに壁に叩きつけ、追い討ちに膝蹴りを叩き込む。 締め付ける糸が解け、荒い息を吐きながら糾華達は到着した狙撃班に気付く。 「わたくしめが先導します」 一番ダメージが低いジョンが水へと飛び込む。 出口に敵が居座っていたら弱っている仲間で不利だ、露払いという奴である。 『敵は居ません、皆様早くこちらへ』 AF越しの声に反応し、直ぐに飛び込むリベリスタ達。 最後に龍冶が飛び込もうとしたところで、追いかけていたフィクサードが追いつく。 飛び込もうとする彼の背中へ無慈悲な弾丸が走り、腹部を命の雫と共に弾が突き抜けた……。 水中へ墜落した体からはドクドクと血が零れ、混濁した意識のまま水底へ沈む。 竜一が必死に手を伸ばす、そして……彼の手が動いた。 運命に抗い、強力な力を削りながらも意識を取り戻し、痛みに顔をゆがめた龍冶の意識はしっかりと取り戻っている。 基地の外へ抜けると、ジョンからの知らせが陽動班へ。満身創痍ながらも、誰一人欠けずに帰路に着くのは彼等の素晴らしい連携の賜物だろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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