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ただ、安らかに眠る

●極聖病院
 極聖病院七階には一般には知られていない特別室が存在する。
 他の病室よりも豪華なこの部屋は主に地元の名士が入院する際に使用される。また、社会的に問題を抱えている者や世間に公表できない治療を行う際にも活用されていた。ただしこれは数年前までのことで、特別室内で死者が出てからは閉鎖を余儀なくされた。
 患者は死に至るような病気ではなく、またその死因も特定できなかった。こうした事例は一度ではない。ごくわずかな例外を除いて、特別室に入院した人間は残らず謎の死を迎えていた。病院関係者の間では悪魔が住み着いているとも噂されていた。
 根拠の無い話とはいえ特別室に泊まった患者が次々と息を引き取っているのは事実である。悪評を避けたい病院側は特別室の存在そのものを闇に葬った。だがとある条件が整った際には特例として利用することもあった。すなわち本人が望んでいてかつ先が長くないこと、そして少しのお金を病院に提供できる場合に限りである。
 これを執り行っているのは副院長以下数人の医者と看護師である。患者を運び入れる日に事情を知る者だけが集まれるようシフトを調整し、翌日の早朝に元の病室に戻す。すでに数十人の規模で実行され、残らず死を迎えていた。

 そして今日もまた一人、安らかなる死を求めて副院長に相談を持ちかける患者の姿があった。

●ブリーフィングルーム
「助かる見込みの無い患者を生かし続けること。苦しみから解放してあげること。本当に優しいのは、どっち?」
 だれに尋ねるでもなく『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が独り言つ。集まったリベリスタたち一人一人と目を合わせ、モニタに極聖病院を映し出した。
「この病院の副院長は、後者を選んだみたい」
 関係者のデータを表示しながらこの病院で行われている安楽死について説明する。実行の際には十分にカウンセリングを行い、可能な限り思い留まらせる努力を欠かさない。それでも考えが変わらなかった場合のみ患者に安らかな死が与えられる。
「それだけならアークで扱う案件にはならない。問題はその手段。七階の特別室に入院させ、そこで一晩を過ごさせるだけという極めて異質なもの」
 特別室に泊まった者は翌日の朝までに謎の死を遂げる。そのカラクリの答えはアーティファクトによるものだった。
「どうも、この部屋全体がアーティファクトみたい。副院長は事情を知らずに安楽死の手段として使ってる。中でどんなことが起きてるのかわからないけど、一晩を過ごせばたぶん、フェイトを持ってても死は免れない。それほど強力なアーティファクトよ」
 特別室に関してはアークでもまるで情報が得られていない。不確定な面が多すぎる以上、うかつに手を出すのは危険だとイヴは付け加える。当面はこの特別室をアークの管理下に置くことが最善の対策であった。
「この副院長は自分が地獄に落とされることはとうの昔に覚悟してる。お金も自分の懐には入れずに病院の運営費に回してる。この人を説得するのは簡単じゃないと思う」
 この件は病院の存続にも密接に関わる。赤字続きの極聖病院は何年も前から廃止の方向で話が進んでおり、それを行政と繋がりのある院長が各所に手を回して防いでいる。もし安楽死が明るみに出れば間違いなく病院は潰され、地域の人々は福祉の場を失うことになる。
「下手に潰せばアーティファクトがどんな悪影響を及ぼすかもわからない。この件は隠密に、関係者以外には知られずに解決して欲しいの」
 安楽死に関わっている人間の詳細なデータを受け取り、リベリスタたちは極聖病院に向かった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:霧ヶ峰  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月18日(水)22:43
目的は特別室をアークの管理下に置く許可を得ることです。
病院そのものが閉鎖されてしまえば失敗となります。
安楽死の継続については成否には関わりません。

接触できる病院関係者は以下の五名です。
安楽死が行われる当日の昼から接触することが可能です。

院長/極聖病院の責任者 安楽死が行われていることを知らない
副院長/安楽死を取り仕切るリーダー 医者としての使命感が強い
麻酔科医/副院長にお金を貰って協力している
看護師男/副院長を信望している
看護師女/安楽死に迷いを持っている

以上、ご参加をお待ちしています。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ソードミラージュ
富永・喜平(BNE000939)
プロアデプト
イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
ナイトクリーク
ニコラス・D・ワイスマン(BNE001666)
プロアデプト
銀咲 嶺(BNE002104)
プロアデプト
讀鳴・凛麗(BNE002155)

●院長室での会談
 三高平からの来客を極聖病院院長の上野は仏頂面で迎え入れた。
 テーブルを挟んで向かい合わせに並んだ壁側のソファーに『Dr.Friedhof』ニコラス・D・ワイスマン(BNE001666)と『原罪の蛇』イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)が、入り口側に『穢翼の天女』銀咲 嶺(BNE002104)と『終極粉砕/レイジングギア』富永・喜平(BNE000939)、そして『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が座る。
 院長自身は自分の席に腰を下ろしたまま書き物をしている。事務の女性がお茶を並べて出て行ったところでペンを置き、銀縁のメガネを持ち上げた。
「わざわざお越しいただきありがとうございます。ですがご覧の通り今は多忙の身。あまりお構いはできないかと」
「地方の医療機関が置かれている現状は存じております。経営難に医師不足、さらにこの頃は患者遺族からの訴訟も散見するようになりました。まあ、これは地方には限りませんが。医師が人々の尊敬を集めていた時代など泡沫の夢のようなものですな」
 愛想笑いに対して睨み付けるような視線が返ってくる。ニコラスは少しも動じることなく医学部准教授としての医師観を語った。
「医療は常に命のやり取りを行う場。たとえ百万の患者を救おうともただ一度のミスですべてを失うこともあります。それでも医療に携わることを止めない、止められない我々は世界に名立たる愚か者なのかもしれませんね」
 他愛の無い雑談に院長は無言を貫く。話題を変えても手ごたえは無く、ニコラスはそれと気づかれないよう隣に座っているイスカリオテに目配せする。
さて、と前置きをし、助手の三人に声を掛けて立ち上がった。
「ご多忙のところ失礼しました。副院長ともお話させていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「彼も忙しい身だ。あまり時間を取らせないであげていただきたい」
「心得ております。どうもご馳走様でした」
 ニコラスが助手の三人を連れ立って退室する。
 ただ一人、イスカリオテだけはその場に留まり、ぬるくなったお茶を一口すすった。
「まだなにか?」
 初めて、院長がイスカリオテに声を掛ける。
 イスカリオテは湯飲みを置き、口元に笑みを浮かべた。
「こちらの七階に、閉鎖された特別室がありますね」
「なに」
「端的に申し上げます。極聖病院七階特別室の管理・運営権を当方に譲っていただきたい」
 座ったまま身体の向きを変え、院長と真正面に対峙する。
 院長が他所事を考える暇を与えずに次の言葉を畳み掛けた。

●安楽死に携わる者たち
 イスカリオテが院長と話をしている頃、『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)は処置室で男性看護師の栗山に包帯を取り替えて貰っていた。
 院内で呼び止められた栗山は重傷を負っているアウラールを診察に来た患者と勘違いして外科へと案内した。医師からの診察を受けた後、断る間もなく処置室に連れ込まれた。
「格闘技でもやられてるのですか。それにしてもこれは酷い。まるで猛獣とでも死闘を繰り広げたような」
「ある意味ではそうかもな。相手はもっと異質なものだが」
 栗山の胸ポケットからハサミを抜き取る。その鋭利な刃先を自分の手のひらに突き刺した。
「な、なにを!」
「まあ見ててくれ」
 血のにじみ出る手のひらを栗山に見せ付ける。ハサミを引き抜いていくらも経たないうちに傷口が元通りに塞がった。
「こ、これは、手品かなにかで」
「看護師を相手にこんな趣味の悪い手品をする気は無い。これはお前たちの常識からは外れた力だ。最も、この病院ではすでに前例があるようだがな」
 あえて血の付いたままでハサミを返す。栗山はしばしハサミの先と傷口のあった部分を交互に見つめていた。
「この病院では、安楽死が行われているな」
 栗山の身体がびくりと反応する。アウラールは両手を前に出し、落ち着いて話を聞くよう制した。
「誤解しないでもらいたいんだが、俺はその是非を問いに来たわけじゃない。問題はその手段だ。この病院の特別室には俺と同じ異質な力が働いている」
 安楽死が行われていることについて、栗山は肯定も否定もしなかった。考え込むようにうつむき、何事かをぶつぶつと呟き始める。
「じゃあ、本当に殺しては」
「なんの話だ」
「あ、いえ、なんでもありません」
 顔を上げた栗山は特別室のことは自分に一切の権限の無いことだと語った。
「そういった話は副院長にお願いします。それでは僕は仕事がありますので」
 片づけを済ませた栗山は駆け足に処置室を出て行く。
 反射的に立ち上がったアウラールだったが、すぐに座り直し、離れている仲間への連絡を行った。

 一方、エントランスホールでは『市役所の人』須賀 義衛郎(BNE000465)と『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155)が女性看護師の気田と接触していた。
 一方は黒いスーツを着たオールバックの男性、その横に並ぶのはフリルの付いたドレスを着込んだ幼い少女。一見すれば親子とも思える二人に、気田は初めの頃こそ他の患者と同じように接していた。
 しかし話題が副院長のことに移ると、途端に表情を曇らせて二人から一歩引き下がった。
「私は一介の看護師ですから。副院長先生とはあまり」
「プライベートな面はご存じないでしょうね。オレちゃんが知りたいのは医師としての副院長の人となりです」
 周りに聞こえないよう声を潜める。午後とはいえ院内にはまだ人の姿も多く、そこかしこから好奇心に満ちた視線が集まっている。
「よろしければ場所を変えませんか。貴方にとっても他人事ではない話になると思います」
 言葉と共に背を向ける。そのままゆっくりとした歩調で、気田がついてくることを確認してからは通常の歩みでカフェテリアに移動した。
 三人は通路から離れた席に腰を下ろす。全員分の飲み物と、凛麗と気田にはケーキを義衛郎の自費で注文した。
「話というのは他でもありません。こちらで行われている安楽死のことです」
 人気が無いことを確認して話を切り出す。ウッドチェアーに腰を下ろした気田はうつむいたままでコーヒーのカップに口をつけた。
「安楽死という選択。それそのものを否定するつもりはありません。オレちゃんに言わせれば助からない命に対して苦しんででも生きろと言う方がよっぽど残酷だ。もちろんこちらの副院長が安易な考えではなく十分に熟慮して行っていることも理解しています」
「いったい、なんのことを言ってるのか」
「貴方が思い描いた、七階にある特別室のことですわ」
 大きく見開かれた目に対し、凛麗は小さく頭を下げてみせる。
「たいへん不躾で申し訳ないのですが、貴方の考えていることを読ませていただきました」
「そんなこと」
「できるはずがない、ですか。どうして私の考えていることが。驚かれるのも無理はありませんわ。この子の前に置いてある時計はいったい……こちらはお気になさらずに。わたくしの私物ですわ」
 アクセス・ファンタズムの受話器を持ち上げ、受話口を自分の耳に当てる。
 幼い少女に対して気田は過剰とも言えるほどに怯えを見せ、奥歯を打ち鳴らした。
「貴方が抱かれている今のお気持ちを、件の特別室にも当てはめていただけると幸いに思いますわ」
 受話器をフックに戻し、凛麗は穏やかな微笑を浮かべた。

●副院長室での会談
 副院長の江藤は始めの頃こそ安楽死の話を取り合わなかった。
 嶺が天使の羽を広げると、わずかに口を開いて羽ばたく白い翼を見上げた。
「私を迎えに来るのは地獄の死神だと思っていましたが」
「貴方に不利益をもたらすという点では同じかもしれませんね」
 嶺の隣では喜平が機械化された右目と右腕を顕にしている。異質な存在に対しても副院長は冷静な態度を崩さなかった。
「ワイスマン准教授でしたか。貴方の助手はなかなかの変り種揃いのようですね」
「まったく頼もしい限りです。しかしこちらの病院にも興味深い事例があると噂で聞きましたが」
「それはそれは。参考までにお伺いしましょう」
「あなたが便利に使っている道具のことです」
 ニコラスに代わり、舞姫が身を乗り出す。
「安楽死という行為に当たって、あなたは七階の特別室を使用しています」
「特別室をご存知なのですね。あの部屋は今は使われていません」
「その理由も調べがついています。特別室で朝を迎えた者はごくわずかな例外を除いて死を迎える。ですがそれが安楽な死だなんて、どうして言えるんですか。あなたが安易な手段に逃げているからこそ、そう思い込んでいるだけではないんですか」
「我々の力が及ばず失われる命があることは事実です。しかしそれを部屋が奪ったなどとは非現実的な話ですね」
「まったくその通りだ。だがその非現実が現実に起きている以上、認めざるを得ない。そうじゃありませんか」
 喜平は機械化された右腕を持ち上げ、握りこぶしをつくる。
「この腕は俺の意のままに動きます。医者の貴方ならここまで精巧な義手が存在してないことは知ってるはずです」
「私は貴方がたの先生とは違います。地方の医師をあまり買いかぶらないでいただきたい」
「特別室がこのまま安定し続けるかは未知数です。最悪の場合、世界を崩壊させる一端になりかねない。俺たちにその管理を任せていただけませんか。どちらにしろ閉鎖されてるなら、無下に断ることも無いでしょう」
 同じ話はこれまでに何度も繰り返されている。副院長はあくまで安楽死を認めず、無関係の話で煙に巻く。リベリスタたちにしても証拠を提示できるわけでは無く、攻めの一手に欠けていた。
「タダで要求を受け入れてくれと言ってるわけではありません。こちらにも相応の用意はあります」
 すかさず嶺が机の上にファイルを置く。事前に用意した財務諸表は極聖病院の経営が困窮していることを如実に表していた。
「かなり厳しい状態にあるようですね。行政側からも幾度と無く経営改善を求められているとか」
「福祉と利益は相反するものです。命と金を天秤にかけるなど、安楽死以上に人道に外れた行為だとは思いませんか」
「資金は有限です。医療器具も医療スタッフも無償では手に入りません。貴方が一人で慈善事業を行うとおっしゃられるのなら止めはしませんが、その考えが浸透するまでにこの病院は残っていないでしょう。世の中は綺麗事だけで動いているのではないのですから」
「ここを潰したところで財政難が病院不足に切り替わるだけです。問題は一つも片付きはしない」
「だれもが二歩三歩先のことまで考えられるわけではありません。目先の一歩のために犠牲となった例は枚挙に暇が無い。この病院もその一例に加わることになりかねませんよ」
「ではそうならないよう行政を説得していただきたい。根治できるのであればそれに越したことは」
 室内に耳を覆いたくなるような衝撃音が響く。つい先ほどまで互いを分けていた分厚いガラスの机が嶺のか細い腕によって真ん中から砕かれていた。
「あくまで此方と意を違えるとおっしゃるのでしたら」
 無言で散らばったガラスの破片を見つめる。
 残骸の中から舞姫がファイルを拾い上げ、表面の細かいガラスを払いのけた。
「つらつらと福祉について語っていただきましたが、わたしたちの目的はあくまでアーティファクトの管理です。結果が伴うのであれば廃院させてからでも一向に構わないんですよ」
 冷酷な瞳に副院長は無言になる。推し量るような視線に舞姫は気を強く保って耐え続けた。
先に根負けした副院長がソファーから立ち上がり、無礼な客人から背を向けた。
「貴方がたを信用するに足る証拠は何一つありません。ですがこの極聖病院を追い込むだけの力があることは事実のようです」
「無用な揉め事はこちらとしても望むところではありません。わたしたちのお願いを聞いていただけるなら相応の見返りを用意するつもりです」
「それはお断りします。援助を受ければそれこそ付け入る隙を与えることになりかねませんからね」
 白衣のポケットに手を入れる。舞姫も呼応するように自らの携帯に触れた。
「お互い、形として残るものはすべて消去しましょう」
「そうしろとおっしゃるのであれば。極聖病院の存続を切に願う私は常に弱者の立場です」
 お互いに録音データを消去する。安楽死については最後まで認めさせられなかったが、そちらの件に関してはだれも問題視しなかった。
「こんな形になって申し訳ない。できれば院長にも口添えしていただきたいんですが」
「結構。病院の存続のためであれば、院長も断りはしないでしょう」
 喜平の控えめな要求を聞き入れ、一足先に副院長室を出て行った。

●院長室での会談 再び
「特別室の管理だと。いったいなにを考えている」
「なに、ほんの道楽ですよ。こちらの病院は表に出すには都合が悪い、しかし当方にとっては興味深い噂が流れているようですからね」
「なんだと!」
 院長は両手で事務机を叩き、今にもカミツ間ばかりの勢いで食って掛かる。イスカリオテはただそれに微笑を返すばかりだった。
「貴方もこれだけの病院の院長まで上り詰めた御方だ。ここですべてを失って本当に宜しいのですか。道のりは決して楽なものではなかったと推測しますが」
「貴様如きに何ができると言うのだ!」
 怒鳴り声を上げて威嚇するが、虚勢の殻は徐々に剥がれ落ちていく。特別室に関する何かを知っているというイスカリオテの言葉に強い恐れを抱いているのは明らかだった。
「ご安心ください。当方は特別室の存在そのものにしか興味はありません。管理を任せていただけるのでしたらこのような話は二度と耳にすることもない。お互いにとってよいお話だと思いますが、いかがでしょうか」
 院長が反論しかけたところで室内にノックの音が響く。現れた副院長を一喝しながらも、続くニコラスたちを見て、乱暴に椅子を蹴り付けた。
「全員、グルだったのか」
「申し訳ありませんな。存続と廃止、何れが救いの道であるか、貴方の賢明な判断を期待致します」
 ニコラスの言葉が後押しとなり、立ち入りの際は院長が必ず付き添うことを条件に特別室の管理権を得た。特別室の前には常時監視用カメラが取り付けられ、時村家と病院側で二十四時間記録を撮ることが決まった。
「しかし、院長は安楽死が行われていることを知らないはず。いったいなにを恐れていたのでしょうか」
 病院を出たところでニコラスが独り言つ。それにイスカリオテが嘲笑を漏らしながら答えた。
「上に立つということは弱みを抱えることでもあります。今の立場になるまでに、様々なことがあったのでしょう」
 院長の過去についてリベリスタたちが知る必要は無い。少なくとも、アーティファクトの管理が正常に行われている限りは――

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ご参加ありがとうございました。
またご縁がありましたらよろしくお願いいたします。