●幼女+重武器=? 赤いランドセルにひよこの髪ゴム。 白髪をツインに結わえた少女が煙草を咥えていた。 お菓子やフェイク品ではない。正真正銘のマルボロである。 「あー、セブンスが全滅? クソ使えねえなバラライカどもは」 「んっ」 その隣で、七五三のような飾り着物を纏ったおかっぱの少女が頷く。 一升瓶をラッパ飲みして、頬に流れた雫を手の甲で拭う。 「所詮は一般人の傭兵上がりだ。ポン刀一本で突撃してくるリベリスタとは相性が悪いぜ」 「死なないように頭ひっこめるのが仕事みたいな連中だもんな。鉄壁防御で追い詰められてオシマイだったんだろ、どうせ」 「ザコだよなあ、ギャッハハハ!」 ロングヘアとボブカットで同じワンピースを着た少女達が腹を抱えて寝転がった。 眼鏡をかけた少女が目を開ける。象牙色のフレームがつやつやと光った。 「でも、これで使いっパシリが居なくなったのも事実。反抗的な企業をビルごと皆殺しにする仕事は誰がやるの?」 「誰ってそりゃあ……」 少女達が振り返る。煙草を咥えた少女が片眉を上げた。 ごく一般的な小学生女子にしか見えない彼女が、煙草を指ではじいて捨てる。 そして、その姿に最も似つかわしくない、獰猛な笑顔を浮かべたのだった。 「オレらがヤるに決まってんだろ」 ランドセルを片手で開く。 中からベルト式に連なった弾丸が飛び出してくる。 それを体に巻きつけて、『それまで片手で持っていた』ガトリング砲を振り上げた。 GAU-8アヴェンジャー。かつてアメリカ軍の航空機などに備え付けられていた強力な機関銃であり、間違っても人間が、片手で、それも小学生のような少女が持っていてよいモノではなかった。 それに続いて、周囲の少女達も高射砲やミサイルランチャー、自動車のボンネットの如き大剣や1m程の幅をもつ古書を振り上げる。 「我等ちびっこヘビーアームズ団。世界に置き去られた化物共よ」 合計八人。 全員少女。 「今より暴虐を開始する」 ●ちびっこヘビーアームズ団 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、かつて行われた作戦をかいつまんで説明した後で、彼女達の話をした。 かつて、裏野部の傭兵部隊『セブンスガンナー』による企業をビルごと抹殺するという作戦途中で阻止、壊滅させた。 リーダーの潔さ故に特別な情報は得られなかったが、後の調査の結果上層チームの存在が明らかになった。 「ちびっこヘビーアームズ団」 それがチームの名前である。 裏野部に古くから存在するチームだとされている。 メンバーのだれもが小学生低学年の少女とされ、しかしその実年齢は50をゆうに超えていると言われている。 ろくに仕事をせずていの良い部下を動かしてばかりいるため確かな情報は不明。 名前に象徴されるように、全員が重武器を備えていることだけが分かっている。 「そんなチームだけど、前回セブンスガンナーを壊滅させたことで動きだしたの。今度も企業潰しだけど……彼女達がやったら周辺のビルを巻き込んでより甚大な破壊活動をするのが目に見えてるわ」 彼女達のたまり場である採石場の地図をデスクに置く。 「活動を始める前に先手を打って彼女達を食い止める。それが、今回の役目よ」 頼んだわね。 イヴはそう言って、地図を皆へと滑り渡した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月21日(水)23:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ちびっこヘビーアームズ団 砂と小石の戦場でのことである。 『剣華人形』リンシード・フラックス(BNE002684)は巨大な剣を鳥の羽のように振り回した。 同じく、ただの鉄塊と変わらないような巨大剣で受け止める少女。 二人の外見年齢はほぼ変わらず、違いと言えば服装のコンセプトとフェイトの有無くらいなものである。 「いいですよね、大きい武器。私も大好きです。今すぐにでも入団したいくらい」 「そうかい、一目見た時から気が合うと思ってたんだ――よっと!」 大剣の少女は歯を食いしばり全身の闘気を爆発、大剣を野球のバットのようにフルスイングしてきた。 自身を回転させながら身をかわすリンシード。 「ですが、ただ大振りしてるだけでは、まだまだ」 「スピードタイプかよ、ヴィジュアル詐欺だろ!」 「お互い様、ですよ」 若干の距離を離して向き合う二人。 その横で。 「ここはオレに任せて先に行けキィィィィックッ!」 「ええいやっかましいい!!」 『まごころ暴走便』安西 郷(BNE002360)のフライングキックと少女のロケットランチャーが激突。相殺した。 ムーンサルト回転で着地する郷。 ランチャーの少女は唾を吐き捨てて武器を構え直す。 ……といった所でお分かり頂けるだろうか。『ちびっこヘビーアームズ団』は現在、まさかの前衛7後衛1のほぼ前のめりモードで攻めてきているのである。 と言う訳で郷の相手は全身に鎖やドクロのアクセサリーを付けたパンクロックな少女である。 「さあお嬢ちゃんここで行きどまりだ。泣いても上目使いで見ても駄目だぜ、俺は見た目適齢期の女子が好きなんだからな!」 「そりゃあ困ったな、アタシやサリーは圏外じゃねえの」 「サリー?」 「大切断の鎖ちゃんな。どーせアンタは知らんだろーけど、昔のリーダーだよ」 「えっ、それ詳しく」 「やかましいっ!」 少女はロケットランチャーを水平に構えるとハニーコムガトリングをぶっ放した。 思わず顔を腕で覆う郷……だが、次の瞬間目を丸くする。 パンク少女だけではない、高射砲を構えたワンピースの双子やアームストロング砲を構えた和装の少女、火炎放射器を担いだ少女、そしてリーダーであるランドセルの少女。合計五名による圧倒的爆撃である。 「こちとら破壊と暴虐でおなじみの、リリカルラジカル魔暴少女ちゃんなんだよ。一分以内に終わらせて仕事すんぞ野郎ども!」 初手は自己強化にと務めていた半数以上の味方メンバーはこうしてイニシアチブを握られた。巻き返せなければ死ぬだけである。 元より回避性能の高いリンシードは巧みに爆撃を凌いで見せたが、味方全体での損害は免れなかった。 剣を銃のように構える『リベリスタの国のアリス』アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)。 「流石に名うての方々ですね……なら私なりに、封じさせてもらいます!」 魔曲・四重奏、発射。一度拡散した四色魔光はリーダーのランドセル少女へと襲い掛かる。 回避が下手なのか、モロに食らうランドセル少女。片膝をついて地面を叩いた。 「ちっ、トップの人間は把握済みってわけか。やっぱアークだなあいつら、畜生!」 「どの道、旧大戦の生き残りを見受けますが」 『原罪の蛇』イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)が分厚いカバーの本を片手で開く。 「あの地獄を掻い潜った者同士、言葉は要らないでしょう。これは戦争です、勝者に生を、敗者に死を――ジークハイル・ヴィクトリーア!」 神気閃光を発動。超頭脳演算で狙っているだけあって相当な命中率だった。 半数を一時的なショック状態に陥らせた。 強く歯ぎしりする少女に、『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)はマスケット銃の銃口を向けた。 「戦争屋なら話は早いわ。ここから生きて帰れると思わないことね」 「ちぃ!」 身をかわそうとする少女。しかしミュゼーヌはそんなことなどお構いなしにハニーコムガトリングをぶっ放した。 「私、貴女達みたいなフィクサードが大嫌いなの」 少女達に襲い掛かる弾幕。そこへ上乗せするかのように『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)がインドラの矢を放出した。 「武器に拘るか否か、ポリシーの正否なんて要りません。強い方が勝つ、それだけでしょう」 回避行動を試みる少女達だが、ショック状態の少女は勿論の事、元々命中性能の高い星龍の攻撃からそうそう逃れることはできなかった。戦場がたちまち火の海に変わる。 「勝てそう、ですかね?」 「いや、油断は禁物じゃ」 『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)が腕の機構を展開。ランドセル少女をよく狙ってアーリースナイプを叩き込んだ。 やはり回避は下手なのか、どうしようもないくらいに良く当たる。 「『あの』セブンスガンナーを雑魚呼ばわりできる連中じゃ、油断したらあっという間じゃろうな」 「大丈夫ですよ~。それより回復しときますね~」 来栖 奏音(BNE002598)がるんるんとした調子で天使の歌を発動した。ダメージに対して五割程度のカバーと言った所だろうか。 その様子を横目に、与市はどこか不気味な、それでいてとても嫌な予感がしていた。 今回の戦いとは直接関係ないが、かつて戦ったセブンスガンナーは潔さと仲間への信頼があった連中だ。リーダーにはそれなりに尊敬できる所があった。 しかし今回の連中にはどこか……何と言えばよいのだろう。言葉にできないような、とても捻じ曲がったイメージを感じるのだ。 「もしかしたらこの戦い、危ういかもしれんのう」 ●戦争に生かされる者ども インターバルと言う訳ではないが、戦況を掻い摘んで述べておく。 リベリスタ八名、敵フィクサード八名、全員戦闘続行可能。 敵は序盤の大火力に任せた全体爆撃を続け、殆どのメンバーは大打撃を受けた。平気で居られたのは回避性能の高いリンシードくらいなものだった。ダメージのリカバーができるのは奏音の回復だけだったが、どうしても削り負けを起こしていた。 イスカリオテの行動阻害系の攻撃は火力重視型の少女達にいい命中率を叩き出せていたが、ウィルパワーの関係で最終的な成功率は五割以下と言った所だ。全体が蒙る被害は割合軽減できていた。 だがもう一つ厄介だったのは、敵の回復役の存在である。 「『NACOTO-CCC』、全章同時実行」 1m近い古本を持った眼鏡の少女だった。元々データにあった少女だが、彼女は本を両手で開くと、聖神の息吹を発動させた。 彼女はこうして序盤から連続で高威力回復スキルを連発してた。そのうちスタミナ切れする筈だが、それまであと数十秒は固い。 それまではイスカリオテの全体ダメージは半分以上相殺されると考えていいだろう。 それでも、絶えず灼熱の砂嵐を展開するイスカリオテ。 「重火器の火力は確かにすばらしい、だがそれだけでは勝てないと証明してあげましょう」 「なら何で勝てると言うの。フェイトかしら、リベリスタお得意の運命的なラッキーパンチ?」 「いいえ」 砂嵐の勢いを強めるイスカリオテ。宣教師のように、査問官のように、本を片手に早口で述べる。 「一人ですべてを賄えるわけではない。戦場を支配するならばまず個を最大限生かしなさい。貴方の敗因は時代に浸り過ぎたこと。鍛え忘れた猫が窮鼠の群に勝てる道理はない」 イスカリオテ目がけ、高射砲を片手で担いだ双子が飛び掛ってくる。 全力のギガクラッシュが炸裂。意識が一瞬で飛ぶ。 「「それは窮鼠になってから言うことだな、『小僧』!」」 「書は叡智の結晶、戦いで失われることなどあってはならないんですよ、『お嬢さん』」 フェイトを使って持ちこたえるイスカリオテ。しかし次の瞬間に二人目のギガクラッシュが炸裂。防御を試みたイスカリオテだが強制的に沈められてしまった。 「……つっ!」 「素早いのと固いのは後回しにしろ。双子、勝手に動くな! 相手は単体回復だけっぽい、爆撃かけて全体的に潰せ!」 ランドセル少女がガトリング砲でハニーコムガトリングをばらまきながら言った。 弾幕の中を突っ切っていくアリス。 「私だって、リベリスタの一人です。立派に……戦えます!」 剣を両手で握りしめると、双子に向かってフレアバースト。 炎に包まれる双子。 「よそ見してんなよ。ワタシを見てくれなきゃ嫌、つってな!」 パンク少女がハニーコムガトリングを発動。完全に退路を失ったアリスはその場に倒れ伏す。フェイトは使わなかった。 「アリスさん!? あうっ~!」 同じように爆撃に巻き込まれた奏音も一度は力尽きるが、フェイトで持ちこたえる。 「癒し手が倒れたらみんなピンチになってしまうのです。おねむするのはあとなのですよ~♪」 そう言って奏音は味方に天使の歌をかける。が、その直後に大剣の少女がデッドオアアライブを叩き込んできた。 「わ、わ……!」 「防御固める暇はやらねえよ!」 力任せの攻撃である。奏音は強引に殴り倒れて力尽きる。 大剣を振り上げる少女。 「リベリスタはこれだから手ごわい……っとおお!!」 側面から重い一撃が加えられる。 何かと思って見てみれば、ミュゼーヌの強引な蹴りだった。 防御した筈なのにガードごと押し込まれる。 「跪きなさい、地獄に叩き落としてあげるから!」 「誰が……!」 「強制的にやらせてもらいますがね」 次の瞬間星龍のアーリースナイプが少女の膝を貫いた。 膝をつかされ、そのまま頭を叩き潰される。 更に一人撃破。だが休む暇はない。和装少女のハニーコムガトリングが襲い掛かり、ミュゼーヌと星龍は根こそぎ体力を奪われる。 「上等よ、あなた達がその気なら、最後まで付き合ってあげる」 「私はあくまで生きる事、そして勝つことを優先します」 二人はフェイトで持ち応えて見せるが次の爆撃まで持つ気はしなかった。 「大丈夫かよ、今助ける!」 ならば相手の数だけでも減らすべきだと、双子に向けて攻撃を開始する郷と与市。 「お嬢さんとか言ってスンマセンでしたお姉さん! 完全に俺の範囲外だキィィィック!!」 「そんな事情で死んでたまるかよ!」 双子の内、ロングヘアの少女が郷の蹴りを受け止めた。 拮抗する力。郷はフェイトをけうってまで蹴り続ける。と、そこへ。 「その高火力、味方に向けたらどうなるでしょうね」 リンシードの多重残幻剣が放たれた。 味方を避けるように撃ったので双子だけにしか当てられなかったが、しかし効果はあったようだ。 ロングヘアの少女は高射砲を味方の、ボブカットの少女へと突きつけた。 そうして、どうなったのかと言えば。 「あ……」 「姉さん邪魔」 ボブカット少女はロングヘアもろともハニーコムガトリングでぶち抜いた。 零距離からの射撃である。ロングへアの少女は一瞬で血煙と化した。 「てめぇ何して――ガッ!?」 それは近くにいた郷とて例外ではない。辛うじて血煙は避けられたものの、酷いダメージを抱えて戦闘不能に陥った。 そうして、メガネの少女が聖神の息吹を発動。 「これが最後よ。後は適当に頑張って。弾切れにして能無しの私はさっさと退かせてもらうわ」 メガネの少女は本をバタンと閉じると、一目散にその場を撤退。 「あっ、テメェ。逃げんな!」 振り返って叫ぶランドセル少女。 その時、彼女の髪飾りがはじけ飛んだ。 ヒヨコの飾りがついた髪ゴムである。当然結んでいた髪はぶわりと広がった。 はっとして、銃撃の元を睨むランドセル少女。 そこには、展開した腕を構えた与市が居た。 「少なくとも、お主だけはやらせてもらう」 「……殺す」 GAU-8アヴェンジャー、全力射撃。 蜂羽堕、全力射撃。 ――かくして。 戦闘続行可能なリベリスタ、四名。 ミュゼーヌ、星龍、与市、リンシード。 戦闘可能な敵フィクサード、三名。 リーダーのランドセル少女、ボブカットの高射砲少女、アームストロング砲の和装少女、ミサイルランチャーのパンク少女。 四対四。削り合いに持ち込んだとして、全滅する可能性は五分五分と言った所だった。 荒い息をして、血を吐き捨てるランドセル少女。 「これ以上やり合うメリットはなさそうだな。悪いが逃げさせてもらうぜ」 味方の回復役が撤退したからというのもあるのか。『ちびっこヘビーアームズ団』は残り四名と言う所で撤退を始めた。 去っていく少女達の背中に向けて、ライフルの照準を合わせる星龍。 「どうします?」 「深追いして全滅したら、命の保証はないわ。こっちも引きましょう」 「……不本意ですね」 星龍やミュゼーヌ達は、倒れた仲間を抱えてその場から手早く撤退したのだった。 目を細める与市。 「次に会った時は、必ず」 ●破壊までのカウントダウン 一方、戦場から逃げ切った少女達は。 「……あーあ、全身血塗れでぎっとぎと」 ランドセルの少女はぼうっと空を見つめていた。 ヒヨコの飾りがついた髪ゴムは一個だけ残っていて、とてもアンバランスな髪型になっていた。 「ツインテールやめようかな。ポニーでいいや」 「おい、髪型のことなんて気にしてる場合かよ。アークに目ぇ付けられたんだぞ」 パンク風の少女が小声でヤベエヤベエと呟きながら歩いてくる。 「今回はまあ生き残ったけどよ、正直次も生きてられる自信ねえぞ」 「だったらバラバラに逃げて引きこもっていればよかろう。その間に妾は仕事をさせてもらう」 首をごきごきと鳴らす和装の少女。お主はどうする、と背後の少女へ振った。 「私は、姉さんと一緒に行くわ。団は抜けさせてもらう」 ワンピースを着た、ボブカットの少女である。しかし小脇にはロングヘアの少女……の首が抱えられていた。 重くため息をつくランドセルの少女。 「ナコトはさっさと逃げやがったし……ほんと、恐るべきはアークのリベリスタだな。ちびっこヘビーアームズ団は解散だ。各々好きにやれ。俺は……まあ、仕事片付けるわ」 懐を漁って、よれた煙草を取り出す。 これも血塗れだった。 少女は重く重くため息をついた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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