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蠢く【人型】

●闇夜を裂く一筋の紅
 その日は日中からひどく凍てついた日であった。
 仕事を終えて夜の街外れを歩いていた男がふと闇色の空を見上げると、何やら白いものが舞い落ちてきた。
「あちゃ……やっぱ降ってきやがったか」
 男は忌々しげに呟く。
 日中の寒さからある程度は予想していたものの、やはり実際に目の当たりにすると気持ちが萎えるものだ。
 早く帰ろう――男が胸中でそう決意したそのとき、視界の隅で何かが蠢くのを感じ取った。
 眼に映りこんだのは暗闇のショーウィンドウに展示された一体のマネキン。
 恐らくそこは街中にある店舗の一つなのだろう。綺麗な白いワンピースを身に纏った、どこにでもあるマネキン。
 それ以外には特に何も見当たらない。
 視界に映ったモノは何だったのか。
 訝しげに首を傾げる男。次の瞬間、男は目を見開くこととなる。

 パキ……パキャ……ゴキン。

 不快な音と共に目の前のマネキンがゆっくりとその四肢を動かしていく。
 その様はまるで壊れた機械のように不規則で、聞く者の心を不安にさせる音だ。
 言葉が出ない男を余所に、マネキンは自らを封じてあるショーウィンドウのガラスをその腕で叩き割る。
「あ……あぁ……」
 逃げなければ――そう思う心とは裏腹に身体に力が入らない。
 立ち竦む男が最後に視界に捕らえたのは、マネキンの頭の下部に走る一筋の真っ赤な亀裂であった。

●排除要請
「ま、そんなわけで街の中にあるクソったれなマネキンを見つけ出して排除して欲しいってわけだ」
 まるで大変さを感じない口調でそう告げたのはフォーチュナの一人である『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。
 いつものことではあるが、そんな伸暁の様子に集まったリベリスタたちも若干の諦めを含んだ息を吐いた。
「で?相変わらず具体的な場所ってのはわからないのか?」
「視えたのは断片的だったんでな。どっかの店のショーウィンドウってことしかわからない。未来のことが視えただけマシだ」
 そう言いながら肩を竦めた伸暁は、手元の端末を操作して正面のモニターに地図を表示させる。
「ただ俺が視た場所に酷似してる場所っつったら二箇所しかない。ここと――ここだ」
 伸暁が指差したのは地図上では西と東に位置する場所。それほど距離が離れているわけではないが、その間を移動するとなると少し時間がかかってしまうだろう。
「二箇所まで絞り込んでるから、後は任せる」
「肝心の敵の特徴は?」
「あぁ、忘れてたな」
 悪びれる様子もなく再度端末を操作する伸暁。
 そこは忘れるなよ――という言葉をぐっと飲み込んだリベリスタたちはモニターに情報が表示されるのを静かに待った。
「これだ。見たまんま、エリューション化したマネキンでフェイズは2。特徴は真っ赤な筋みたいなでかい口で、裂けてるみたいに見えるぐらいだ。まるで都市伝説に出てきそうなくらい、な。勿論そのまま口の役割をしてる」
 そこで言葉を切った伸暁は続けて画面を操作して別画面を表示させる。
「攻撃方法はこの口と、関節を気にしない手足。予想してない方向から飛んでくる腕や足は結構厄介だ」
 人間とは誰しも視覚に映る情報からある程度の行動予測をしてしまう生き物である。
 しかしその予測が通じないとなると少しの油断が命取りになる可能性も十分にある。
「初動は遅いが動き出したら結構素早いのも特徴だ。何人かで注意してりゃ見失うことはないだろうが……単独で挑むのはちと危険な相手だ」
 リベリスタたちは互いの顔を見合わせてこくりと頷きを返す。
「心配する必要はないと思うが……まぁ気を付けてな」
 伸暁の声と同時にリベリスタたちはその場を後にした。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:鳴海 鏡一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年04月17日(日)02:31
 皆様初めまして!
 今回よりこのBNEの世界で大暴れ……いや、違った。皆様と一緒に物語を作り上げることになった鳴海鏡一と申します。
 まずは私を知ってもらう意味でもお試し、ということでオーソドックスな敵退治となりました。
 相手はお人形。
 OPにもありますように少し厄介な相手なので、そこは気をつけてください。
 どんな物語になるのかは皆様のプレイング次第!
 というわけで心躍るプレイングをお待ちしております♪
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
覇界闘士
繁森 虎太郎(BNE000542)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ナイトクリーク
黒部 幸成(BNE002032)
スターサジタリー
秋映・一樹(BNE002066)
ソードミラージュ
桜田 国子(BNE002102)

●西へ向かいし者たち
 エリューション化したマネキンが出没するであろう東西の二箇所の店に均等に人数を分けて調査することにしたリベリスタたち。
 西側に向かったリベリスタ四人は、早速問題となっている店の近くまで来ていた。
 店の近くには同じように店頭にマネキンが置かれており、薄闇がそれを一層不気味なものに見せていた。
「動くマネキン……か。まるで学校の怪談だな」
「怪談か。自分は別のを思い浮かべたけどな。ほら、私キレイ? とか聞いてくるあの……」
 辺りを見回しながら呟いた『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)の言葉に、『凱旋への光弾』秋映・一樹(BNE002066)が答える。
 確かに一般的に見れば怪談であったり都市伝説であったり、とにかく不可思議な物として見られる事象ではあるだろう。
 最も、リベリスタたちにとっては日常茶飯事となりえる――
「もう、やめてよね! ただでさえ、まんまホラー映画じゃんって思って嫌気さしてるんだからさぁ……」
 そう言いながら思わず身震いするのは『さくらさくら』桜田 国子(BNE002102)。
 日常茶飯事であっても苦手なものは苦手なようである。
「何だ、ダメなのか?」
「……何よその意外そうな顔は」
 一樹の言葉に国子は恨めしげな視線を送る。
 それがまるで獲物を見るような視線だったために、一樹は若干たじろきながら「いや、何でもない」とごまかすように手持ちのタバコに火をつけた。
「ホラーや噂話なら気にする必要もなかったんだがな。犠牲者が出るというのならその未来、訪れさせる訳にはいかない」
 拓真は自分の決意を口に出しながら携帯電話に手を乗せた。
 二班に分かれて行動する段階で携帯電話が重要な連絡手段となる。
 そして四人の中で連絡役をかってでたのが拓真なのだ。
「鳴るのが早いか鳴らすのが早いか」
「勿論鳴らす方が早いぜ!」
 誰ともなしに呟いた拓真の言葉に、勢い良く答えたのは『飄飄踉踉』繁森 虎太郎(BNE000542)。
 煙管を咥えながら不敵な笑みを浮かべる虎太郎。その顔は自信に満ち溢れている。
「え、何? キミもう居場所わかったの!?」
 言いながら慌てて辺りを見回す国子に、虎太郎はゆっくりと首を横に振りながら、しかしやはり自信満々に言い放つ。
「いや、勘だ!」
 一瞬の沈黙。
 次の瞬間、国子の蹴りが虎太郎の脛に命中。虎太郎は若干の涙を浮かべて沈黙した。
 と、そのとき。

 パキャ……ゴキ……。

 不気味なラップ音のような音と共に、四人の視界の隅で何かが蠢いた。
「どうやら勘ってのも満更じゃなさそうだ」
 苦笑しながら言う一樹の言葉と共に、一行はすぐさま臨戦態勢へと突入した。

●東へ向かいし者たち
 一方東に向かった四人もまた、目的の店の前にその姿を現していた。
「夜になると動き出す人形、か……いかにもって感じよね」
 やれやれと言わんばかりに溜息をついた『春招鬼』東雲 未明(BNE000340)は、ゆくりと目線の先を懐中電灯で照らしていく。
 並ぶのは数体のマネキン。流石にどれを見ても同じような姿をしている。
「問題のマネキンは何処にいますかね?」
 言いながら同じように視線の先を懐中電灯で照らしていくのは『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)。
 しかしじっくり見たところでわかるものではないようだ。
「確か目標のマネキンは白いワンピースを着ていると言っていたな」
『鉄心の救済者』不動峰 杏樹(BNE000062)は、ブリーフィングルームでのやり取りを思い出してマネキンの服装に注目していく。
 店頭に並ぶマネキンは、どれも綺麗にドレスアップされている。
 その姿に杏樹は思わず自分の衣服に目を落とす。
 見えるのは変わり映えのない、いつものシスター服。
「ワンピース……ちょっと羨ましいな」
「どうしたでござるか杏樹殿」
 杏樹の小さな呟きと『ニューエイジニンジャ』黒部 幸成(BNE002032)が杏樹の後ろから放った問い掛けはほぼ同時だった。
 幸成にしてみれば敵に簡単に悟られぬようにと、暗闇に紛れるような服装をして気配を可能な限り殺していたつもりであった。
 しかし杏樹にとってはその気配に気付かなかったことが、自分の余り聞かれたくない呟きをこっそり聞かれたかもしれないという非常事態に思えてしまった。
 結果――
「……っ!? 後ろに、立つなっ!」
 めきゃっという音と共に杏樹の手におさまっていた聖書が幸成の顔面にめり込んだ。
「ぐはっ……な、何故でござる……」
 幸成にしてみれば全く訳の分からない酷い八つ当たり以外の何物でもなかった。
「杏樹さん、それは味方ですよ……?」
 苦笑を浮かべつつ冷静に突っ込みを入れる疾風。
 一方の杏樹は「わ、わかっているっ」とぷいと顔を背けた。その顔が若干赤かったのはきっと闇を照らすライトのせいだろう。きっとそうに違いない。
「皆、こっちに来て」
 と、そこで未明が何かを発見して三人を呼び寄せる。
 声のしたほうへと駆けつけると、未明が一体のマネキンの前で立ち止まっていた。
 そのマネキンの身体には白いワンピースが着せられていた。
「白いワンピース……」
「白ワンピはあたしも好きだけど、人形相手じゃ趣味一緒でも喜べないわね」
 杏樹の呟きに答えるように未明は苦笑を零す。
「問題はこれが件のマネキンかどうか、ござるが……」
 言いながら一歩前に躍り出て身構える幸成。
 こちらの四人で唯一超反射神経を持つ幸成には不意打ちは通用しない。
 緊張感が空気を支配し、四人の時間感覚を狂わせる。
 その緊張を破ったのは、疾風の持つ携帯電話だった。
「どうやらこちらは外れのようですね」
 疾風の言葉と同時に、四人は一斉に移動を開始した。

●戦闘開始
 不気味な音と共に動き出した一体のマネキン。
 何もない一般人相手であれば不意打ちも出来たのかもしれない。
 しかし索敵に優れたリベリスタがこちらに揃っていたことは、マネキンにとって不運であったかもしれない。
「ふふっ、そんな速さじゃ私には勝てないよっ!」
 瞬時に反応したのは国子。
 ハイスピードを発動した国子の速さは他の追随を許さない。その姿は服装と相俟って桃色の風のようである。
 ただでさえ初動の遅いマネキン。ショーウィンドウから出た瞬間、応戦体制に入る前に国子の牽制を兼ねた一撃がヒットする。
「お、速さじゃ俺が一番だと思ってたんだがなっ!」
 次に反応したのは虎太郎。口元の牙をギラつかせながら、得意の速さで一気に目標との距離を縮める。
 マネキンも迫る虎太郎の存在には気付いたようではあるが、その時には既に虎太郎の足が振り上げられていた。
「遅ぇっ!」
 叫ぶと同時に虎太郎の蹴りから一陣の風の斬撃が生まれ、マネキンの足を薙ぎ払う。上体が揺らぐマネキン。
 だが次の瞬間、マネキンは体制を崩した状態のまま上空へ飛び上がる。その光景は異様としか言い様のないものだった。
「うえぇ、気持ち悪いぃ~」
 ホラーが苦手な国子はぶるっと身震い。
 それが気に食わなかったのか、マネキンはぐるりと首を向け国子に狙いを定めると、近くの建物を蹴って一気に飛び掛る。
 口こそは開いてはいなかったが、落下の勢いを利用したその体当たりの速さは国子の予想を上回るものだった。
 だが元々防御に徹するつもりだった国子は正面からこれを受け止める。
 衝突。
 腕に鈍い衝撃が走り思わず顔をしかめる国子。
 それを見越したか、マネキンはその大きな口をくぱぁっと開いた。
「桜田!」
 自分を呼ぶ声に国子は瞬時にその身を捻り、マネキンとの位置を入れ替える。
 力を流されたマネキンはたたらを踏むようにバランスを崩す。
 その視線の先には銃を構えた一樹。
 一樹が銃弾を放つのとマネキンが右手を伸ばすのはほぼ同時だった。
 バギン、と鈍い音がしてマネキンの右手に銃弾が食い込む。だがマネキンは構わず体制を整えて一樹の方へと突進。
 そのマネキンの右方に今度は回り込んでいた虎太郎の姿。
「あんたの相手は俺だぜっ!」
 掛け声と共に虎太郎は足を振り上げる。
 しかしそこでマネキンは自分の右手を左手で掴むと、バキンと折ってそれを虎太郎目掛けて放り投げた。
 流石にこれは予想していなかった虎太郎は、振り上げた足でこれを薙ぎ払う。
 同時にマネキンの体が一樹にぶつかる。
 マネキンの口から生えた牙が、防御のために掲げていた一樹の腕にあたる翼に食い込む。
 その腕を食いちぎろうとマネキンが顎に力を入れようとした瞬間、二陣の銀閃がマネキンを襲う。
 思わず口を離して後方へと身を飛ばすマネキン。
 二陣を放ったのは両の手にブロードソードを握った拓真。
「助かった」
 礼の言葉を口にする一樹にチラリと視線を送った拓真は、ただゆっくりと頷いた。
 その二人の傍に虎太郎と国子も駆けつける。
「厄介だねぇ」
 国子の顔に苦い笑みが浮かぶ。
「けどダメージがないってわけじゃなさそうだ」
 虎太郎の言う通りマネキンの足の動きにも若干のズレが見受けられる。
 先生攻撃で仕掛けた分は功を奏しているようだ。
「連絡は既に終わっている。もう少しのはずだ」
 言いながら拓真は静かに二刀を構える。対するマネキンは片腕となった上体をゆらりと揺らす。
 張り詰めた空気が流れる。
 瞬刻――
 緊張感がピークに達したところで、微かな機械音が一同の耳に飛び込んでくる。それはそう、まるでエンジン音のような。
 それを聞いた一樹がにやりと口元に笑みを浮かべた。
「さぁ、ここからが本番だ」

●総力戦
 一樹の言葉が終わるや否や、マネキンが地を蹴ってその身を宙へと放り出す。
「変身!」
 響き渡る声と同時に一台のスクーターが姿を現し、そこから一つの影がマネキン目掛けて飛来する。
 ガギィンと鈍い音を立てて交錯。
 着地したのは左腕をくの字に折って防御姿勢をとったマネキンとメイス二振りを構えた疾風。
「遅くなってすみません」
「遅くはないよー。思ってたより早かったぐらい」
 疾風の謝罪の言葉にひらひらと手を振って笑みを返す国子。
 一方相手が増えたことに不利を感じ取ったのか、マネキンは攻撃を止めて様子を伺うようにゆらゆらと上体だけを揺らしている。
「アレでも一応警戒ぐらいはすんのかねぇ」
「そんなこと言ってたら逃げるんじゃないか?」
 小馬鹿にしたような虎太郎の言葉に一樹が苦笑して答える。
 聞いていたのか、マネキンはくるりと身を翻して逃走を試みる。
 しかし――
「残念、こっちは行き止まりなの」
 声と同時に躍り出た未明。既に振り上げられ力が最大限に込められたグレートソードが、勢いのままに振り下ろされる。
 強烈な一撃と共に吹き飛ばされるマネキン。
 だがそれでも無理矢理体制を整えて別方向へとその身を翻す。
 その足に正確無比な一撃が炸裂する。
 再びバランスを崩すマネキン。
「そう簡単には逃がさない」
 冷たく言い放つのは杏樹。
 倒れたマネキンは地につけた左腕に最大限の力を込めて、一番近くにいた未明の方へと一気にその身を躍らせる。
 有り得ない方向転換に若干反応が遅れた未明の腕に、マネキンの口が食い込んだ。
 食い付かれた未明は――冷静だった。
「噛みつくしか能の無い口なら、この位しっかりやらなきゃダメよ?」
 言いながら未明は己が口を開け、マネキンに噛み付いた。
 まさか噛み返されると思っていなかったのだろう、マネキンは慌てて未明を振り払い距離を取る。
 その足で別の対象へと攻撃を移そうとした瞬間、マネキンは足が動かないことに気が付く。
 動きを封じているのは光を放つ糸。
「捕らえたで御座るよ……皆、今が好機で御座る!」
 叫ぶは幸成。
 彼はマネキンの注意が反れる瞬間を待って、その厄介な機動力を奪うことだけを狙っていた。
 そしてその目論見は見事に成功。
 幸成の言葉を合図に全員が動き出す。
 国子の放つ幻に紛れた刃が切り裂き、虎太郎の放つ燃え上がる拳がその身を穿つ。
 疾風の二振りのメイスがその身を砕き、拓真の二閃がその身を断つ。
 思わずその身を伏せるマネキンは最後の力でその大口を大きく開く。
 そのすぐ後ろには場違いなシスター。
「その大口も、頭がなければ意味がないな」
 言いながら後頭部目掛けて銃弾を放つ杏樹。
 ビクンと痙攣のようなものを起こすマネキン。
 そしてその正面には――
「即ち、これでジ・エンドだ」
 同時に放たれた一樹の銃声が、戦闘終了の合図となった。

●任務終了
「ふえぇ~、もうホラーちっくなのはゴメンだよぉ」
 手を払いながら言うのは国子。
「そういう割には喜んで斬りつけていたようにも見えたが……」
「ん? 何か言った?」
 思わず口に出してしまった一樹の腕を、にこやかな笑みと共に掴んだ国子。
 一瞬の間の後、一樹の「即ち、これ理不尽なり……っ!!」という苦悶の叫び声が響き渡った。
 そんな二人を横目に苦笑を零す疾風は、ふぅと息を吐いて武装を解除した。
「終わりましたね」
 答えたのは拓真。
「あぁ、犠牲者も出ずに済んだ。一般人の乱入もなかったしな」
「皆心配して結界を使いましたからね。それが功を奏したのかもしれません」
 一般人が戦闘に混じるだけで、難易度が跳ね上がるのは周知の事実。
 皆がそれを心配して準備をした成果でもある。
「そういえば……応援に来たときに変身、と聞こえた気がしたが……」
 沈黙。
「……癖みたいなものです。忘れてください」
 再び数瞬の沈黙の後、拓真は短く「そうか」とだけ呟いた。
「さて、人が来て面倒になる前に帰りましょうか」
 未明の言葉に、既に動かなくなったマネキンに手を合わせていた虎太郎が怪訝な表情をする。
「おいおい、このままでいいのかい?」
 辺りには若干の戦闘の後と、何よりボロボロになったマネキンの姿。
 だが未明は何を今更と言わんばかりに肩を竦める。
「夜になると動く人形だなんて、ありきたりすぎて今更誰も本気にしないわよ」
 未明の余りな理論に、そんなもんかねぇと呟いた虎太郎。結局は面倒臭さが勝ってしまったようだ。
 皆厄介事になるのは御免だとその場を後にする。
 その中に名残惜しそうに振り返った者が一人――
「ワンピースか……」
「どうしたで御座るか杏樹殿?」
「……っ!?」
 呟いた杏樹の背後にまたしてもタイミング悪く現れた幸成。
 当然その顔面には再び聖書の洗礼が浴びせられたのは言うまでもない。

~Fin~

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加者の皆様お疲れ様でした!
さて最初の依頼はいかがだったでしょうか?

皆さんのプレイング、そして相談がとても良く連携されていて、読みながらとても嬉しかったものです(笑)

まだまだBNEの世界も始まったばかり。
皆さんのキャラクターを大暴れさせれると思うと楽しみで仕方ありません♪
なのでこれからも宜しくお願いいたします!

今回は本当に有り難う御座いました♪