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【春の男児祭り】大人になりたがってた男の子

●ソニックサンダー、再び!
 三田音速(さんだ・じぇっと)、12歳。
 いよいよ明日、小学校の卒業式を迎えることになった。
 正直な話、「中学生になる」という事に関して実感は湧いていない。小学生男子なんて、そんなものだ。彼はまだ、人と別れるということの意味を理解していない。卒業式の後でも、その気になれば会える、そう思っているのだ。
 そして、夕方。まだ微妙に暗い時期だ。ちょっと買い物に出かけた音速がいつもの公園の近くを通ると、声を掛ける者があった。
「おーっす、音速じゃん」
「あ、こんにちはー」
 声を掛けてきたのは知り合いの中学生2人組だ。以前、とある事情で喧嘩をしていたが、それをきっかけとして妙に仲良くなった。存外、話してみればそう悪いものではなかった。
「そういや、お前そろそろ卒業だよな。俺達の学校に来るんだっけ?」
「ですね。同じクラスにも、あの学校行く奴結構多いですよ」
「へっへー。来たら俺達の『後輩』だからな。よろしく頼むぜー」
 中学生の1人がふざけて音速を小脇に抱えて首を絞める。もちろん、本気では無い。じゃれ合っているのだ。以前の音速は、彼らとこんな関係を築けるなどとは夢にも思わなかった。
 と、その時だった。爆音と共に妙な連中が現れた。
「そこまでだ、お前達!」
「あん? 何、お前達?」
 彼らに声を掛けるのは、まるでテレビの中から飛び出したかのようなヒーロー。
 それが3人。
 そして、謎のヒーロー3人組の姿を見た音速は思わず固まる。
「え……? なん……で……?」
 アレが存在するはずはない。アレはもう無くなったはず……。
「え? マジ? これコスプレ?」
「すげぇな。何の撮影?」
 中学生2人は素直に好奇心の目を向ける。あり得た可能性、防がれた事件、そこで彼らが取った反応と同じだ。そう、彼らは何も知らないのだ。
 そこで音速は気付く。目の前のヒーロー3人組の正体は分からないが、もし過去の自分と同じように動くのであれば……。
「や、やめて!」
「ソニックアッパー!」


●ソニックサンダーの活躍に乞うご期待!
「誰も待ってはいません!」
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は、力強くリベリスタ達に宣言した。
「コホン、今回皆さんにお願いしたいのはエリューション・フォースの討伐です」
 和泉が機器を操作すると、スクリーンに表示されたのはテレビのヒーロー番組にでも出てきそうなスーツに身を包んだエリューションだった。
「これが今回の標的、ソニックサンダーというエリューション・フォースです。フェイズ2、戦士級の実力があり、部下も引き連れています」
 ヒーローのような外見にふさわしく、必殺技を連想させる攻撃的なエリューションのようだ。人に害を与えるような行動を見ると、それを止めようとするらしい、徹底的に。
「これがとある街に住む少年達を殺害してしまいます。そして、実は彼らは過去に起こったアーティファクト事件の関係者です」
 今からおよそ3ヶ月ほど前の話だ。とあるアーティファクトを手に入れて、「正義」のために振るおうとした少年がいた。その際には、リベリスタの説得もあり、無事に事件は解決した。しかし、増殖性革醒現象の影響か、この場にエリューションが現れてしまったのだ。しかも、その時に防いだ悲劇を、再び引き起こそうとしている。
「エリューションは、その時にアーティファクトを持っていた三田君という少年が、思い描いたヒーローの姿に基づいて現れたようですね。連携も行うようで、それなりに強敵です」
 しかし、これから先に未来が広がる少年達の危機を見過ごすわけには行かない。
「それでは皆さん、気をつけて行ってきてください」





■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月25日(日)00:20
皆さん、こんばんは。
再生怪人祭、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はE・フォースと戦っていただきます。

●目的
 ・エリューションフォース3体の撃破
 ・少年3人の生存

●戦場
 人気の少ない一般道です。
 明かりや足場に不自由はありません。人が通りかかる可能性もあるでしょう。
 和泉の指示に従って、少年達とエリューションが接触したタイミングで戦うことになります。

●被害者
 彼らに関しては、拙作「大人になりたい子供たち(男の子編)」を参照して下さい。読んでいなくても問題無く楽しめます。
 ・三田音速(さんだ・じぇっと)
 12歳の小学6年生で翌日卒業式を迎える。
 ちょっと正義感の強い普通の男の子。
 いわゆるキラキラネームを与えられたが、自分の名前に関しては嫌いじゃないらしい。
 あまり深いことを考える性格では無いが、決して頭は悪くない。

 ・中学生2人組
 ちょっと不良っぽい雰囲気を持つが、「ぽい」だけの少年達。
 「ワル」に憧れるお年頃の中学2年生。

●E・フォース
 いずれも、過去にアーティファクトを手にした音速の妄想が形になったもの。
 ・『ソニックサンダー』 
  いわゆるヒーローのような姿をしている。設定上、主人公。
  フェイズ2のエリューション・フォースです。
  能力は下記。
  1.ソニックアッパー 物近単 連
  2.ソニックキック 物近範 必殺

 ・『ダークソニック』 
  いわゆるヒーローのような姿をしている。設定上、ライバル。
  フェイズ1のエリューション・フォースです。
  能力は下記。
  1.ソニックガトリング 物遠単 圧倒

 ・サポートメカ
  子供程の身長のロボットのような姿をしている。
  フェイズ
  フェイズ1のエリューション・フォースです。
  能力は下記。
  1.負けるな、ヒーロー! 神遠単 BS回復

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
クロスイージス
ヘクス・ピヨン(BNE002689)
インヤンマスター
高木・京一(BNE003179)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
インヤンマスター
風宮 紫月(BNE003411)
ダークナイト
蓬莱 惟(BNE003468)
ホーリーメイガス
弩島 太郎(BNE003470)
デュランダル
義桜 葛葉(BNE003637)
■サポート参加者 2人■
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)


「過去の依頼を見るに、過去に彼がアーティファクトにより変身したのがソニックサンダーと呼ばれた正義の味方……の筈ですが」
 『朔ノ月』風宮・紫月(BNE003411)は、アークを出発する前に読んだ過去の資料を思い返しつつ現地に進んでいた。以前、偶然この街に現れたアーティファクトが引き起こすはずだった事件は未然に防がれた。しかし、今また悲劇は起きようとしている。
「三田音速くんが夢見たヒーロー像そのままをE・フォースで再現ですか。子供から大人ヘリ道程においてはヒーロー像を忘れ置いてしまうものですが、三田君ははたしてどうでしょうね?」
「いやあ、子供の頃はよくヒーローに憧れたものですよ。それがやっぱり年頃の少年の願望でしょう」
「ふむ、正義の味方、か。これくらいの男子であれば憧れるのは当然か。多くの者は、いずれ現実を知り……そういった事はただの夢、話の中の想像物と決めてしまう。だが、俺としては確かにそういった物が想像物としてではなく……確かに存在するのだと、そう、信じていたいがな」
 少年というには年を取り過ぎた3人の男、『宵闇に紛れる狩人』仁科・孝平(BNE000933)と『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)、『閃拳』義桜・葛葉(BNE003637)は語る。過去に、「男の子」をやっていたものにとっては、強く共感を抱く所ではある。男というのは総じて、いつになっても心に少年を飼っているものだ。
 そんな男達を現役の「女の子」である『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)は楽しそうに見ていた。
「ヒーローか。ま、それ自体にはさして興味あるワケじゃねえけど、敵にも色々いるんだな。面白えじゃん?」
 女の子の感想としては意見に困るところである。そもそも、プレインフェザー自身が「女の子らしい振る舞い」を苦手にしているわけだが。しかし、これから起こる悲劇に立ち向かう準備は万端だ。戦闘用ブーメランSTEEL《STEAL》MOONを弄びながら、地味に戦いに向けての集中力を高めている。それに対して、『求道者』弩島・太郎(BNE003470)は肩を竦めて答える。
「世の中とは、自分の行動が予期せぬ切欠であらぬ結果を生み出してしまうことが往々だ」
 事件の発端ですら、そもそも運悪く子供の手に余るアーティファクトが、音速にもたらされてしまったことにあるのだ。ましてや、その件が解決した後で、遅れてエリューション・フォースが現れるようなことになるなど、誰が考えようか。
「今回の事に、彼には責任はありません。その事はきっちり教えてあげるべきですが──先ずは、邪魔な相手を倒させていただきましょうか」
「特段気取るつもりはないが。起きてしまったのであればそれを全力でケアする。それが”大人”ということだ。兎角、俺もただ俺が成すべきことを全力で成す。それだけだ」
 紫月の言葉に頷いた太郎が前方に注意を向けると、そろそろ公園が見えてきた。ここが事件の発端になった場所である。そして、やいのやいの言う声が聞こえてくる。それを確認するとプレインフェザーは強結界を展開する。これで余計な被害者は抑えられるし、口封じにかける手間も不要になった。彼女らが結界を張ったことを目配せで伝えると、リベリスタ達は少年達のいる場所へと駆けつける。そこではヒーローが、いや、エリューション・フォース達がポーズを取っていた。
「そこまでだ、お前達! 悪は許さんぞ!」
 そして、エリューションは結界の作用でぼーっとしている少年達に近寄ろうとする。音速のみは、以前アーティファクトに関わった影響なのか意識はハッキリしている。どっちみち、過去の自分の妄想が再び具現化したことに慄き、動けないわけだが。
 そこに闇のオーラを纏い、1つの影が現れる。『ナイトオブファンタズマ』蓬莱・惟(BNE003468)だ。
「これだ。ダークナイトをしている。いかにも悪っぽいだろう」
「そうか、お前が悪だな!?」
「正義の味方、か──義桜葛葉。これより、そちらと相対させて貰う」
 やや挑発気味に名乗りを上げる惟とガントレットを構える葛葉。エリューション、ソニックサンダーはあっさりと注意をそちらに向ける。生まれが生まれ、ということなのだろう。
「え? え?」
 突然目の前で始まった問答に混乱する音速。すると、そこにカンペを持って、『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)が姿を現わす。
「また会えるとは思ってませんでしたが……」
「あー、キミは!?」
 驚きの声を上げる音速。過去の事件において、ヘクスは彼を説得したものの1人だ。
「あの時はヘクスの絶対鉄壁を見せずじまいでしたからね。丁度いいのでそれをみせてあげましょう」
 すると、ヘクスはエリューション達に向き直り、名乗りを上げる。
「砕いて見せて下さい。ねじ伏せて見せて下さい。この絶対鉄壁を!」


 ソニックサンダーはどんな悪も見逃さない!
 ソニックキックで敵を蹴散らし、ソニックアッパーでどんな悪党も懲らしめるんだ!
 悪が汚い手を使ってきても、サポートメカ(名前はその内考える)がいるから大丈夫!
 ダークソニックは悪い奴。だけど、戦っている内に、ソニックサンダーと友情が芽生える。
 そして、ソニックサンダーとダークソニックは共に悪と戦うんだ!

 設定というには、あまりに稚拙な設定。
 しかし、三田音速という少年にとっては、自分がそうあることが出来ると信じた理想の姿。
 人間、いつかは現実の中で、子供を卒業し、大人にならなくてはいけないと言われる。
 ある意味でそれは正しい。
 だが、子供の心を捨てなくては大人になれないのだろうか?
 いや、違う。
 大人はいつだって、子供に戻ることが出来る。


「聞け、ヒーローたち! 俺たちは、悪で邪悪なアークの一員だ!! そんな子供たちよりも、よっぽど悪で邪悪だぞ!!!」
 太郎の声が公園の裏手に響く。エリューション、ソニックサンダー達の習性を考え、『悪』がいればそちらを優先的に狙ってくるだろうという読みからだ。もっとも、悪という表現をするには……「?」を付けたくなってしまう所だが。
「そうか、お前が悪だな! 正義の力、見せてやる!」
「オマエがソニックサンダーか。悪いけど邪魔なんだよ、ここで潰させてもらうぜ。ま、三流のオマエなんかにやられねえけどな。遠慮しないで本気で掛かって来いよ」
 プレインフェザーの言葉はどこか三下チックだ。
 しかし、2人の言葉に対して向かってくるエリューション達。思いの他に単純な思考回路をしているようだ。そして、猛然と向かってくるソニックサンダーの前に、孝平が立ち塞がる。
「正義?そんなものは人に対して振りかざすものではないですよ?」
 ソニックサンダーの拳を素早く受け流すと、返す刀で猛然と連続攻撃を開始する。
「正義とは心の内に秘めておくもの。そして、力は誇示するものに非ず。理念無き力は正義に非ず。ただの暴力です」
 言葉と共に繰り出される刃は、みるみる速度を増し、エリューションの身体をズタズタにして行く。エリューションはあまりのスピードに反撃の暇も見出せない。
 その2人の戦いを尻目に、紫月は防御の結界の中で術を紡ぐ。
「さあ、始めましょうか。ルールは簡単です、より、強い方が勝つ。それだけです」
 紫月が話しているのは単純な力だけの話では無い。
 力も心も強い方が勝つ。これは正義であろうと悪であろうと、共通の事実であるはずだ。だから、紫月は自分の力を信じ、強い心を持って魔力の雨を降らせる。冷たい雨はエリューション達をみるみる凍てつかせていった。
「アブナイ! アブナイ!」
 人間の腰ほどの大きさをした、ドラム缶のような物体が甲高い声を上げる。フォーチュナから話のあった、「サポートメカ」であろう。その声援は動きを封じられていたエリューション達を束縛から解放する。すると、エリューション達はリベリスタ達に対して、反撃に転じる。
 エリューションが放つ弾丸を防ぎながら、その場にいる少年達を追い払おうとするヘクス。
「何見ているんですか? ヘクスは見世物じゃないですよ」
「え……いや、でも」
 中学生達は微妙に状況を察することが出来ない。だが、そこで音速が動いた。彼の場合は、意識もはっきりしているし、誤解を重ねながらも神秘に関する理解はあるのだ。純粋に空気を読んだ、とも言う。
「僕達、邪魔だから離れた方が良いですよ。ほら、あの子も怪我無いし。危なくなんかないんで!」
 勢いで押し切る音速。ダークソニックの弾丸を受けながら、ヘクスに毛ほどの傷も無かったのが説得力を増したと言えるだろう。中学生達も勢いに流され、その場を離れる。
 これで安心してエリューション討伐に全力を注ぐことが出来る。惟は冥きオーラを纏う黒銀の片手剣をエリューションに向ける。惟の剣には死と力と再生の祈りが込められているという。そして、今振るうべきは暗黒の死の力だ。
「いいか、別に少年たちを守りに来たわけではない、人質にちょうど良さそうなので死なれると困るだけだ」
「いかにも悪が使いそうな手だな。だが、正義は負けないぞ!」
 惟の言葉にそれっぽいリボルバーを向けてくるエリューション。しかし、惟は臆さない。むしろ逆に、自らの生命力を代償とした暗黒の瘴気で、エリューション達の身体を蝕んでいった。
 そこに素早く切り込んでくるのが、『ビタースイート ビースト』五十嵐・真独楽(BNE000967)だ。
「自分の一方的な正義を振りかざすなんて、ヒーローじゃないぞっ!」
 真独楽の素早い連続攻撃の前に、ダークソニックの動きが止まる。そこにプレインフェザーの気糸が打ち込まれた
「あたしは正義でもヒーローでもねえけど、気が向いた時にコッソリ人を守る位なら代わりにやってやるよ、だから……」
 プレインフェザーは思う。たしかに「正義のヒーロー」がいるというのは悪くない。そうすれば、悪の脅威に誰も傷つかずに済む。だが、それよりも「正義のヒーロー」がいなくてすむ世界であれば、そもそも誰も、悪の脅威などに怯えずに済む。だから、自分はヒーローなどでなくていい。傷つく人がいなければ、それで十分だ。
「安心して逝きな」
 そして、ダークソニックに刺された気糸を自分の手へと引き戻す。エリューションは、その勢いに引きずられるように倒れた。
「アァ、だーくそにっくガ!?」
「すまんが、そういうことを言っている場合か?」
 防御の手数が無くなった「サポートメカ」の前に、葛葉が立つ。本来は正々堂々と正面から戦う事を好んでいるが、エリューションとの戦いにあっては、そのような好悪を突き通せない場合も少なくない。であれば、自分はするべきことをするまでだ。
「俺に、立ち止まる事は許されぬ。……無様であろうと、進まねばならん。貴様達に俺が止められるのであれば、止めて見せるが良い。倒れる前に、貴様らは倒されるだろうがな」
 そして、振り下ろされる拳。
 傷ついていた「サポートメカ」は動きを止める。
「残るはソニックサンダーだけです。皆さん、よろしくお願いしますよ」
 京一が発する破邪の光。それはまがい物の正義など以上に、仲間達に勇気を与える。皆が心に抱いていた、怯えは吹き飛んでしまう。
「最近のヒーローってのは目が腐ってるの? まぁ腐り具合は人の事言えないけど」
 『すもーる くらっしゃー』羽柴・壱也(BNE002639)ははしばぶれーどにエネルギーを込めると、ソニックサンダーに近寄り、一気に叩き付ける。
「でも、物事を判断する目は腐ってないよ」
「なんだとぉッ!?」
 激昂するソニックサンダー。
 しかし、既に孝平との戦いで出来た怪我は大きかった。
 そして、ここで奇跡の大逆転を放つには、彼の正義はあまりに稚拙だった。
「はぁっ!!」
 太郎の癒しの声は、リベリスタ達の怪我を癒し、万全の状態に戻る。最初の状況と違い、傷ついた1体のエリューションがいるだけだ。そして、ナイトオブファンタズマがエリューションの前に立ち塞がる。
「これは騎士だが別に正義の味方ではない」
 告死の呪いを剣が帯びる。
「これには善悪というものはよく分からない。分からないが、このエリューションが正義の味方などというものでは無いのは分かる」
「何だと、貴様ぁッ!」
 惟は少々残念なところもあれ、信心もあれば、弱者を護る意志もある。それでも、自分は正義とは言えない。だが、目の前のエリューションは自身を正義と勘違いしたまがい物だ。だから、倒すことを躊躇いはしない。
 そして、惟の剣が振り抜かれた。


「ふむ。これが俺が思いつく限りの悪だったが……難しいな、悪とは」
 仏頂面で首を傾げる太郎。悪というには優し過ぎる姿だ。
 そして、事後処理のために、音速に話しかけるリベリスタ達。
「さて、三田は事情を知ってんのか?」
「あ、あぁ……」
 茫然自失気味に答える音速。多少の知識があるだけに、目の前で起こったことに対するショックがぬけないのだろう。それを見かねて、惟と紫月は優しく声を掛ける。
「少年が描いた正義の味方というのはこんなものだったか? こんな、ただの抜け殻ではないだろう。だから、こいつらと、少年は、全くの無関係だ」
「今回の件は、あなたには責任はありません。……それに被害もないまま終わったのですし」
 無論、エリューション・フォースを生み出したきっかけは音速にある。もし、前回の事件で彼がアーティファクトを手放さなかったのなら、エリューションと共に、誤った「正義」を執行し続けたのは想像に難くない。しかし、彼はそれを手放した。ならば、それを責め続けるのは違うだろう。
「以前と同様、今回のことも君の胸の中に秘めておいてくれませんか? 僕達は決して表に出てはいけないもの。でも君の記憶を操作してまでしたくないのです」
「え……そんなこともするんだ……」
 アークは大のために小を殺せる組織だ。孝平の言う手段は妥当である。しかし、音速にとっては受け入れ難いものだ。
 だから、孝平は言葉を紡ぐ。本当の望みを伝えるために。
「君が今後も正義を志すなら決して忘れないで欲しいから。正義とは一義的なものではない。でも、自分の中にしっかりと刻む必要が有ります。だから君の協力が必要なのです」
「……うん、分かった。話さない」
 少年にはいささか重たい話だったのかも知れない。しかし、孝平は音速を信じた。だから、あえて語ったのだ。
 そして、ヘクスを始めとして、後片付けをしていたメンバーが戻ってくる。そろそろこの場に残る必要も無いだろう。その時、葛葉は音速の方を振り向く。
「一つ確認しても良いだろうか」
「え、何?」
「君は、本当に……正義の味方を信じているのか?」
 葛葉は自分の中に凝っていた疑問を吐き出す。自分の戦う意味を確認するために。
 音速も言葉に詰まった。既に彼の中で「正義」とは無条件に言える言葉ではなくなった。
 しかし、自分を止めてくれた人、そして今また助けてくれた人を思い返す。
 彼らが「正義の味方」でなくて、何だと言うのだ?
「うん、当たり前だよ!」
「いや、結構。その答えだけでも、満足だ」
 微笑む葛葉。一人でもそう信じる者が居るのであれば、正義を貫く者達も報われようものだ。
「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか」
 京一の言葉に頷き、帰途につくリベリスタ達。
 それを見送る音速。
 音速が大人になって、どのような道を選ぶかなど分からない。
 しかし、この日のリベリスタ達の姿は、きっと残っているはずだ。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『【春の男児祭り】大人になりたがってた男の子』にご参加いただきありがとうございました。
正義を夢見る少年との交流、如何だったでしょうか?

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!