●鬼の舞 洞窟の中で、少年とも少女ともつかない、美しい顔立ちの子供が舞っていた。 顔立ちは整って、愛らしい表情を浮かべている。しかし、額から生える1本の角は、この子供がただの人間では無いことを示している。 風鳴童子。 強大なアザーバイド、「鬼」の1人であり、その王である温羅直属の四天王である。 そして、風鳴童子が舞う一帯からは不可思議な歌が聞こえてきた。 また、楽士は見えないのに、美しい伴奏が流れ、童子の舞を一層引き立てる。 童子の身を包むように張られた薄く紅い幕は、幻想的な美しさを与えていた。 しかして、その美は血に彩られた醜悪なものであった。 歌を歌うのは人。それも童子に足蹴にされて上げた、苦悶の動きだ。 美しい伴奏の正体もまた、童子が適切に踏みにじる頭蓋の音。 紅い幕に至っては言うに及ばず、童子が吹かせた風に舞い上げられた人の血だ。 そして、この凄惨な光景を前にしても、人はまずその偽りの美しさに魅入られずにはいられない。 鬼達は素直に、この残虐な振る舞いに賞賛の声を上げるだろう。 人も鬼も惹き付ける、魔性の美の持ち主。 それが、風鳴童子という鬼なのだった。 ●『逆棘の矢』を探せ! ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を迎えたのは、ぐったりとした様子の『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)だった。最近、フォーチュナ達はばたばたと急がしそうにしていた。また、救護室でぐったりしている彼の姿も何度か見受けられている。フェイトを得たとは言え、そもそもの体力が弱い彼にとっては、かなりの激務だったのだろう。 「あぁ、大丈夫だ。問題無い。今回の説明は急務だからな」 守生の言葉でリベリスタ達は察する。「鬼」の事件に関することだ。 鬼の王、『温羅』は復活し、くわえて彼の復活につられて巨大な『鬼ノ城』が発生している。アークでも当然、彼等に対抗する手段を講じていたが、即時の総攻撃は余りにもリスクが大き過ぎる。しかし、今は向こうも力を蓄えている状態だ。長い間放置すればとんでもない事が起きるのは間違いない。 幸い、リベリスタ達の活躍で『温羅』の復活は不完全なものに留まったが、それでも強大な力は健在だ。加えて、識別名「四天王」とも呼ばれる、『大物の鬼』も3体確認されている。 「そこでここの所、アークのカレイドシステムをフルに使って、打開策を調べていたんだ。……まぁ、アシュレイの『21、The World』の力も借りている」 たしか、守生はアシュレイに対して良い感情を抱いていなかった。内心、忸怩たるものがあるのだろう。 しかし、広範囲遠未来視、過去視を得意とする『21、The World』と精密な予知観測を得手とする『万華鏡』の協力は、『温羅』に対抗するべく残された『吉備津彦』の『執念』を発見した。 「それが『吉備津彦』が保険に更に保険を重ねて用意していた『対温羅』用のアーティファクト『逆棘の矢』だ。まったく、『吉備津彦』はどんだけ用心深かったんだろうな。もっとも、そのお陰で俺達は助かったわけだが」 『逆棘の矢』は『温羅』と一緒に封印されていた。それが彼の封印が解けたことによって、再び姿を現わしたのだ。今度こそ、確実に彼を討ち取るために。 「矢の数は5本。それぞれ『矢喰の岩』、『吉備津神社』、『楯築神社』、『鯉喰神社』、『血吸川』付近に出現している。伝承では『吉備津彦』が『温羅』に射掛けたこの矢は『温羅』に特攻を持っているそうだ。5本の矢を揃えられれば『温羅』を討つ助けになるだろう」 確信を持って告げる守生の声にリベリスタ達も胸が高鳴るのを感じていた。 「今回あんた達にお願いしたいのは、『矢喰の岩』にある『逆棘の矢』の確保だ。ただまぁ……簡単に行く話でもないんだがな」 それはリベリスタにとっても当然予想されていた話だ。 『温羅』も本能的に自分を狩る為の存在、『吉備津彦』の遺したものの存在を嗅ぎ付けている。そこで強力な鬼達がこの『逆棘の矢』を奪取しようと動き始めたそうだ。 「出来れば多くの人員を差し向けたいところなんだが……崩界の影響で危険なエリューションの発生は増加しているし、イレギュラーのエリューションとか、主流7派も危険な動きを見せている。それに対処することを考えると、それ程人員を割ける訳にも行かないんだ。ただ……それでも、やるしかねぇ」 守生の言葉に頷くリベリスタ達。ここで負けたら、鬼という危険なアザーバイド達の跳梁を黙って見過ごすしか出来なくなるのだ。無理でもやるしかない。 「あんた達に向かってもらう『矢喰の岩』は、吉備津彦の放った矢と温羅の投げた大岩がぶつかり合い落下したと言われる場所だ。その伝承が伝わる場所には、現在矢喰神社っていう神社が建っている。その境内のどこかに『逆棘の矢』は現れたそうだ」 残念ながら強大な神秘の力にくらまされて、正確な場所の予知は出来なかったらしい。捜索に時間が取られるのは勿体無いが、仕方あるまい。あるいは、これも邪悪の手から『逆棘の矢』を護るためのものなのか。 ただし、『逆棘の矢』は矢喰神社の中にある「ふさわしい場所」に現れるそうだ。そこを突き止めれば、捜索は容易になる。『吉備津彦』に関する伝承が助けになるかも知れない。また、感知能力に優れたリベリスタであれば、すぐに見つけることも叶う可能性は高い。 幸い、『逆棘の矢』の姿は分かっている。鋼で作られた返しのついた鏃の矢だ。見ればはっきりと分かるほどに、強力な破魔の力を漂わせているらしい。 全員で重点的に捜索を行えば時間短縮にもなるだろう。しかし、場所の目測を誤れば大惨事だ。 場所を手分けすれば効率は良くなるだろう。しかし、鬼と接触するタイミング如何によっては危険だ。 「どちらにするのかの判断は任せる。ただ、この場所にやってくるのは、『四天王』の1人、風鳴童子だ」 その名前を聞いてリベリスタ達の背筋が冷える。 とある霊場に現れた「大物の鬼」の1人。 美しい子供のような容姿を持つが、その実は仲間を切り捨てる残虐性と、強大な力を内包した鬼である。 「風鳴童子の能力も、『強い』以上のことは良く分かっていない。現れた時の様子から風と雷を操ることが出来るんじゃないか、とかある程度の推測は出来るんだが、具体的なところになるとダメだった」 悔しそうな表情の守生。 「風鳴童子の他にも、10体程の鬼が来ている。それ程強くは無いが、いくつかタイプがいるみたいだな。風鳴童子含めてこいつら全員を倒せば、『逆棘の矢』を探す時間はいくらでも取れるんだろう。……あまりオススメ出来る手段じゃないが」 遭遇した場合、撤退も視野に入れるべきだろう。もっとも、こちらが『逆棘の矢』を入手していたら、そう簡単に見逃してくれるとも思えないが。 「ただ、風鳴童子にはまだ、現代のリベリスタを侮っている節もある。そこに付け入る隙があるかも知れない」 言うまでも無く危険な任務だ。しかし、ここに集まったリベリスタ達に拒否するつもりは無かった。 「出来る説明はこんな所だ。危険な任務だとは思う。だけど……」 説明を終えた少年は、リベリスタ達に精一杯の送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 ●悪しき風、動く ひとしきり舞を終えた風鳴童子の元へ、一匹の鬼がやって来る。手に携えているのは、漆塗りの小箱だ。 「良くやった。これに違いないや。はは、吉備津彦め。ボクがこいつを取り戻したって知ったら、どんな顔をするかな?」 童子は子供のように――いや、外見はまごう事なき子供なのだが――喜びの声を上げる。 ここはとある神社。この場にもやはり、鬼達を封じるための仕掛けが施されてあった。そして、封印を護るためのリベリスタもこの場にはいた。アークに所属こそしていないが、アークの精鋭に勝るとも劣らない実力者達だ。 しかし、彼らは風鳴童子によって殺され、封印を壊すまでの間、童子の暇つぶしの『音楽』のために供されたのだった。その無念は如何ばかりのものであろうか。 「さて、これを取り戻したことだし、温羅様の封印をどうにかしたい所だけど、そうは行かないんだっけ?」 童子の言葉に頷く鬼卒。 『温羅』が告げたのだ。自身の身を脅かす「何か」がこの世界に現れたことを。その事実を聞いた時のみ、風鳴童子は醜く顔を歪めたという。 「そう言えば、豪鬼は復活に失敗したとかいう話だったな。こういう時にいれば、数合わせ位の役には立ったってのにさ」 仲間が復活に失敗したというのに、悲しむ様子さえ見せない。むしろ、笑っている。この表情こそ、風鳴童子が鬼たる証だ。額の角も、操る力も、オマケに過ぎない。真に危険なのは、仲間すら平然と切り捨てる残虐性だ。 「豪鬼は所詮力だけの馬鹿。禍鬼や鳥ヶ御前だっていらない。ボクさえいれば、温羅様の御身を護るには十分だって知らしめてやるにはいい機会じゃないか、ハーッハッハ!」 笑い声を上げると、風鳴童子は宙に浮かび上がる。 「革醒者? リベリスタ? どっちでも良いや。温羅様の身を脅かすというのなら、それが如何に罪深いことか、その五体に、魂に刻んでやろう、アーッハッハッハ!!」 風鳴童子が飛び立つと、それに従うように鬼達も出陣する。 ここに、アークと鬼達の戦いも新たな局面を迎えようとしていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月24日(土)00:11 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●矢喰みの岩とリベリスタ 岡山県矢喰神社からそう遠くない、高速道路のサービスエリア。 そこでリベリスタ達は、突入前の最後の相談を行っていた。 強大なアザーバイド、温羅。それを倒すための切り札となり得る、先人の残したアーティファクト、『逆棘の矢』。 温羅との決戦に当たっては、無くてはならない存在だ。 そして、リベリスタ達は『逆棘の矢』を必ず手に入れるべく、周囲のロケーション、そして、現れるだろう『四天王』の1人、風鳴童子への対策の最終調整を行っているのだった。 「目的は、『逆棘の矢』の確保。そして、全員の生還です」 「うん、矢の奪取も大事だけど、忘れちゃいけないのは……みんな生きて帰ること……だね!」 地図を前に『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は強く目的を言い放つと、『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)が頷く。相手は強敵だ。だが、それを承知した上でも、やらなくてはいけないことがある。 作戦の目的を聞いて、『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(BNE000072)は、口元を歪めて笑う。 「困難な任務だけど、この身命にかけてでも、鬼の好きにはやらせはしないからね……!」 今でこそ、鬼による被害は鳴りを潜めてはいる。しかし、年の初めから鬼道の邁進に至るまで、出た被害は決して少なくない。しかも、現在鬼達による被害が出ていないのは、鬼達が力を蓄えているだけに過ぎないのだ。また、本格的な侵攻が始まったら、どれ程の被害が出ることか。 「あぁ、リベンジの機会は僥倖。いけすかねぇ風鳴の鼻をあかしてやる」 以前に風鳴童子と戦ったものにとって、今回の戦いに懸ける想いはひとしおだ。『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)もそうした1人だ。前の戦いでは胸に抱えた子供1人を救うことは出来た。しかし、奴が復活した際に、虫けらのように殺された人々のことを、彼は忘れていない。 「雪辱を注ぐ絶好の機会。必ず勝ちをもぎ取るッスよ!」 『守護者の剣』イーシェ・ルー(BNE002142)の戦意は高い。装備の確認も万端、今すぐにだって戦える準備が出来ている。二度と風鳴童子の好きになどさせてやるものか。 「鬼の四天王ですか。厄介ですね。出来ればここで討ち果たしたいと思いますが、矢の確保が最優先ですね。鬼の王を討つために必ず確保しなければ」 『斬人斬魔』蜂須賀・冴(BNE002536)はでてきた風鳴童子の名前に頷くと、淡々と言葉を紡ぐ。彼女は童子との面識は無い。しかし、恐ろしいアザーバイドだというのは、話に聞いている。そして、そうした世界を害するものを斬ることは、彼女が自身に課した生き方なのだ。 「鬼の王……再び……抑え込むために……エリスも……出来ることを……したい。エリスにも……少しでも……出来ることが……有るから」 メイド姿のエリス・トワイニング(BNE002382)はぼそぼそっと自分の意志を言葉にする。夜のサービスエリアには、あまりにも場違いな姿だ。しかし、その決意はこれから起こる戦いに際して、何よりもふさわしい。 「うん、前回の雪辱を果たすべくぶっ飛ばしたい所だけど、そういうお仕事じゃないんだよね。矢を持ち帰る事で鼻を明かしてやりたいね」 『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は少し残念そうだ。本音を言うと、あの時に復活を止められなかった風鳴童子を倒し、自分の手でケリをつけてしまいたい。しかし、今回はそれ以上に重要な使命があるのだ。この戦い、負ける訳には行かない。 「他に何かある人は?」 「ダブルフォックス」 その時、今までの会話とは打って変わって、気の抜けた言葉が聞こえた。その場のリベリスタ達は思わずずっこけてしまう。 声の主は『光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)。『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ・ミ-ノ(BNE000011)の耳を引っ張りながら、いつものように無表情にしている。これが空気を読まずにふざけているだけなのか、周りの緊張をほぐそうとしているのかは永遠の謎である。 実際、テテロはさっきから悔しそうにしていた。子供っぽい彼女であるが、風鳴童子の復活を阻止出来なかったことは、大きな心残りなのだ。だが、そこでへこまないのは彼女の良い所でもある。 「ぜんかいまけたあいてだからこんかいはがんばるっ! いっぱいいっぱいがんばるのっ! ぜったいせいこーさせてみせるのっ!!」 大きな声を出して誓うテテロ。それを聞いてヴィンセントは笑うと、出していた地図を仕舞う。そろそろ休憩は終わりだ。すると、そこに彼女がぎっしりと詰まったお菓子の山を差し出す。 「これだったら、あるきながらでもたべられるの。これでみんな、いっちだんけつ! がんばるのっ!」 ●風は絶望と共に 「おい、お前達。これがどんなに重要な仕事だか分かっているのか?」 「ギギ……」 宙に浮かぶ風鳴童子へ必死で頭を下げる鬼卒。 鬼卒達が怒られている理由は、「歩く速度が遅い」というもの。彼らだって必死に走っているのだが、空を自由に飛べる風鳴童子と比べるのは、いささか酷というものだろう。童子にしてみれば、「温羅様を脅かすものを一秒でも放置出来るか」ということになる。そして、こういう時に上位者に対して言い訳が出来ないのは、人も鬼も変わらない。 ひとしきり風鳴童子は鬼卒を叱った所で、そんな場合では無いことを思い出す。そして、『逆棘の矢』を探す間に人間共に来られるのも困ることに思い至った。いつものように人を殺せば済む話ではなく、探す人手が大事なのだ。 「仕方が無いな。良いだろう、『これ』も見つかって、ボクは機嫌が良い」 風鳴童子は片手で印を作ると、鬼卒達に向ける。すると、一陣の風が舞い、鬼卒達の身体が宙に浮かび上がる。 「ギギ!?」 「そんなに慌てるな。すぐに慣れないと殺すよ?」 「ギィ……」 「分かれば良いんだ、分かれば。それじゃあ、急ぐぞ。ハハッ!」 風を操る術で部下が飛べるようにすると、風鳴童子は今までよりも速度を上げて、矢喰みの岩に向かっていく。 「ギギ?」 「ギィ」 鬼卒達は釈然としない雰囲気ではあったが、風鳴童子を追って、矢喰みの岩へと急ぐのだった。 ●『逆棘の矢』は何処に? 矢喰みの岩は矢喰神社の境内に存在し、今では吉備津彦の放った矢と温羅の投げた大岩がぶつかり合い、落下した場所と伝えられている。ここを訪れた観光客でそれを真に受けるものはほとんどおるまい。しかし、その戦いは過去に確かに行われていたのだ。神秘界隈にあっても流れた時間は短くなく、正確に何があったかは伝わっていない。しかし、この場所は、過去にリベリスタとアザーバイドがぶつかり合った場所なのだ。 「気合入れて探すぞー!」 斬乃はガッツポーズを取ると、地図を片手に捜索を始めた。矢喰の岩から鬼の城を結ぶ線、この何処かに『逆棘の矢』はあるのだろうか? 「……ッ。こっちは……違う……みたい」 「伝説によれば矢は岩と絡み合い落ちたとのこと。であれば岩の近くにある可能性が高いでしょう」 エリスは自分の感覚を最大限に研ぎ澄ますと、現れる神秘の力に対して目を凝らす。しかし、中々に見つからない。こういう時は、吉備津彦の執念を疎ましく思う。冴も伝承を元に、矢が現れていそうな場所について、いくつか推測を立てていた。それを元にしての捜索だ。 「エリスさん、みんな、頑張ってね」 アーリィは仲間に一声掛けると、境内から出て、外にいる仲間と合流した。『逆棘の矢』を探す一方で、リベリスタ達は鬼への警戒も怠らなかった。風鳴童子に一撃を入れてやりたいという想いが無いでは無い。しかし、ここでもしも矢を奪われたら状況は悪化してしまうだろう。それだけは絶対に避けなくてはいけない。 外ではテテロとリュミエールが、鬼の城の方を見張っていた。 リュミエールがたふたふとテテロの耳を弄っているために、なんとなく遊んでいるようにも見えるが、当人達は至って真面目だ。見張りにおける集中力を途切れさせない工夫……ということにしておこう。 実際、ただ待つというのは苦痛だ。刻一刻と時間が過ぎる中で、見張りのリベリスタ達はそれを実感していた。大分探しているだろう、と思って時計を見てみると、まだ5分と経っていなかったりする。何かを待っている時は、往々にして時の流れを遅く感じるものだ。 そして、どれ程の時が経ったろうか。 「吉備津彦の鬼に対する備えの厚さには、見習いたいものがあるッスね……」 イーシェが誰にともなく呟く。ただ過ぎていく時間に苦痛を覚えたのだろう。 「それとして『逆棘の矢』、必ず手に入れて、鬼へと対抗するッスよ!」 「えぇ、そうですね。……おや、アレは?」 気を取り直すべく、剣を振り上げるイーシェに相槌を打った時、ヴィンセントはその瞳に奇妙な影を捉える。 最初は鳥かとも思った。しかし、それにしてはシルエットが変だ。あのシルエットは人のものだ。 そうして、影に向かって視点を合わせる。 すると、そこに映るのは1人の鬼。 間違い無い、前に秘されし霊場で出会った、あの鬼だ! 「マズイですね、奴が近付いて来ています。あの速度だと、着くまでにそう時間はかからないでしょう」 「分かった、僕が伝えてくる」 夏栖斗は風鳴童子襲来の報を告げるべく、神社の境内へと走る。 中に入ると、矢喰みの岩の近くで必死に『逆棘の矢』の気配を探る虎美がいた。 「アイツが来たの?」 夏栖斗が来たことで状況を察した虎美。 夏栖斗も無言で頷く。 「色々と探しているんだけど、中々見つからないんだよね」 困ったような表情を浮かべる斬乃。実際、色々やったらしく、岩には微妙に掘り起こされたような土の跡が残っている。 「ん? ちょっとタンマ」 その時、斬乃の目の隅で何かが光ったような気がした。岩の傍にある竹の生えた茂みの辺りだ。 斬乃の様子を見て、冴が自分の口を押さえる。 「そう言えば、吉備津彦の投げた矢が根付いて竹になった、という話もありました。もしかして……」 斬乃が茂みをかき分けると、はたしてそこから真新しい1本の矢が現れた。 それはこの上なく清冽に、この上なく凛然と。 1000年以上の時を経た代物のはずだ。しかし、そこから発せられる破魔の力には欠片も陰りは無い。 その場にいるリベリスタ達は、暗がりの中にあって、それが強烈な光を放ったような気がした。 そして、確信を抱く。 「間違い無い、これが『逆棘の矢』……」 この確信に対して疑問を抱くものはいなかった。そして、リベリスタ達の行動は迅速だった。 すぐさま、その場を離れるべく、見張りメンバーと連絡を取る。 そして、全員で境内を離れた時だった。 「ご苦労だったね、リベリスタ。さぁ、それを渡してもらうよ」 再び、風が吹く。 リベリスタ達の希望を掻き消すべく、風鳴童子が姿を現わしたのだ。 ●悪しき風、再び アーリィの背に嫌な汗がつたう。彼女が風鳴童子に出会うのは初めてだ。映像など、資料の中でしかその存在を知らない。だが、見ただけで分かった。確かに強大な力を持つアザーバイドだ。 「来ちゃったんだね……」 「この間見かけた顔が何人かいるね。だったら、戦うだけ無駄だって分かるだろ? さぁ、早くそれを渡してよ」 催促をするように手を差し出す風鳴童子。だが、この場にいるリベリスタ達には、微塵もそんなつもりはない。 「誰がアンタなんかに!」 オッドアイで強気に睨む虎美。たしかに、この間は力を使い果たしていた。しかし、万全の状態であれば話は別だ。今度こそは倒してやるとばかりに、目に力を込める。 そんな虎美の言葉に、楽しそうに笑い出す風鳴童子。 「何がおかしいの!?」 「ハッハッハ、アッハッハッハ! 渡してくれないの? 渡してくれないんだ? 仕方ないなぁ。あぁ、仕方ない。これじゃあ、殺して奪うしかないじゃない。残念だなぁ。渡してくれたら、命を奪うのだけは勘弁してあげようと思っていたのに。アーッハッハッハッハ!!」 「ドーセ、渡しても殺すツモリダッタンダロ」 「むぐぐぐ……むぐぐぐぐ……こんどこそ、かんぺきなしきでたおしてあげるの!」 皮肉を飛ばすと油断無くナイフを抜き放つリュミエール。 テテロも尻尾を一振りして戦いの準備に入る。 そんな2人を風鳴童子は楽しそうに眺めている。 「本当さ。そりゃあ、吉備津彦が妙なもの残しているって聞いた時はムカついたさ。ただ……」 「ごきげんうるわしゅう、新しい武器手にしてご機嫌?」 風鳴童子の言葉を引き継ぐように、夏栖斗が挨拶をする。童子の顔にうっすら怒りが浮かぶ。 「やっぱり殺すよ、お前達。さっきのリベリスタ達みたいにさ」 「そうですね、そう来てくれた方が分かりやすい」 仲間と風鳴童子の会話をエリスはじっと観察していた。強力な神秘隠匿能力を持っているのか、風鳴童子の能力は大半が不明だ。だから、今の内に少しでも情報を掴まなくてはいけない。 (風鳴童子……は……子供染みている……感じ。他の……四天王に……比べ……稚拙な……プライドだけで……実際は……どうなの? 禍鬼あたりは……一笑に……付そうな……気が……する) エリスの予想はそう外れてはいなかった。風鳴童子の性格を極限まで突き詰めると、「子供」である。深いことは考えず、思ったままに振舞う。禍鬼に言わせれば「いくら力のある鬼でも所詮本質はガキ」だ。その一方で、力があるのもまた事実。力を得て図に乗っている子供ほど始末に終えないものは無い。 そうやってエリスが分析を進める中、戦いのために風鳴童子はふわりと空中に浮かび上がる。 「ハハハッ、後悔させてやるよ。自分の内臓で縛られたら、さすがに四の五の言う元気は無くなるんじゃないかな?」 「飛行する射手として、空で貴方に遅れをとるつもりはありません」 Angel Bulletを構えると翼をはためかせるヴィンセント。その瞳に油断は無い。 「逃げる気で当たって、どうにかなる相手じゃないよね」 斬乃もチェーンソーを取り出すと、エンジンを起動させる。すると、手の中の得物は「あの鬼を切り裂け!」と唸り声を上げる。 「鬼だろうが何だろうが!斬ってみせる!」 それに続いて、冴はスラリと刀を抜き放つ。悪鬼を切り裂いた銘刀の名を取った、彼女の愛刀だ。この刀に誓って、目の前の鬼に負けるわけには行かない。 「蜂須賀示現流、蜂須賀冴。参ります!」 「怖い怖い、随分やる気だね。それじゃ、お前達も降りて来い」 風鳴童子が合図をすると、周囲にいる鬼卒達は、リベリスタを囲むように降り立つ。中には飛行して酔ったものもいたらしく、仲間が祈りを捧げていた。 「一応、聞いておくッスけど、これだけッスか?」 仲間達が己を奮い立たせる中、イーシェは冷静だった。 いや、違う。溜めているのだ。その力を爆発させるために。怒りを、あの鬼に叩き付けてやるために。 「これで全員さ。って言うか、正直ボクだけでも十分過ぎるほどなんだけどね。まぁ、念には念を、って奴さ。既に勝ち目が無いのは分かるだろ?」 「なら構わないッス。でも……風鳴童子、アンタの好きには絶対させねぇッスから」 溜めた闘気が爆発する。 そして、それが戦いの合図となった。 ●鬼神楽 戦いが始まった瞬間、リュミエールの姿が消えた。 いや、違う。 目にも見えない速さで動いただけだ。 最早、常人の目では捉えることも出来ない超高速で、目の前にいた鬼卒に切りかかる。血が宙に舞ってから、相手は自分が切り裂かれたことに気が付く。 「今回は大事なモン背負ってるカラガチデイクゼ」 「ギギッ!?」 「ほらほら、よそ見している場合じゃないよ!」 横で起きた刹那の出来事に目を奪われた鬼卒に対して、斬乃は容赦無くエネルギーを込めたチェーンソーを叩き付ける。相手はたまらず吹っ飛んだ。 「みんなっ、ばんぜんのたいせーでいくのっ!」 テテロの声と共に守護の結界が張られ、リベリスタ達へ空を翔ける翼が与えられた。見れば鬼達は風の力を操り、高度を利用した戦いを行っている。これで不利は消えた。 「この間みたく行くと思うな!」 好戦的な態度で戦場に弾丸をばら撒く虎美。だが、その実、瞳は冷静に戦場を観察していた。先程、彼女に預けられた『逆棘の矢』。これをアーク本部まで持って行くことが彼女の使命なのだ。今はこうやって、『風鳴童子を倒す気でいる』ように思わせてやれば良い。 「ははっ、そう来なくっちゃ。足掻いてくれないと、殺す楽しみが減るってもんだよ。それじゃあ、特別だ。お前達に『鬼神楽』の力を見せてやるよ」 風鳴童子は笑いながら宙に浮かぶと、漆塗りの小箱を懐から取り出す。そして、縛っていた紐が解かれた。すると、どうだろう。そこから妖しい瘴気が吹き出したような錯覚をリベリスタ達は受ける。先程、『逆棘の矢』を見つけた時とは真逆。邪悪な力を秘めたものが眠っているのだ。 「それが……『鬼神楽』……!?」 出て来たのは小ぶりの横笛だった。デザインはシンプルで、鬼の持つような禍々しいイメージとは大違いだ。いや、違う。だからこそ、風鳴童子が愛用しているのだろう。見た目と裏腹に力を秘めている童子は、自分に似たものを武器として選んだということだ。 「油断なく行くッスよ。少なくとも風鳴はかなりの使い手ッスから」 「この『鬼神楽』は、ボクの呪力を増してくれる。その力があれば……」 風鳴童子がそっと横笛に口を添える。そこだけ切り出すと、1枚の絵のようだ。しかし、その景色はすぐに消え去った。 ポー 風に乗って『鬼神楽』の音が戦場に響き渡る。その瞬間、誰もが戦いを忘れるような美しい音色だった。 そして、その後で風が吹き始めた。 風は次々と勢いを増し、吹き荒ぶ。さらには、雷鳴が荒れ狂う。風鳴童子の攻撃が始まったのだ。 「皆は……やらせ……ない……」 吹き荒れる嵐の中、エリスは癒しのために詠唱を紡ぐ。嵐の中にあっても、現れた癒しの息吹は負ける事無く、仲間の怪我を癒していく。しかし、こうも風が強くては動きが阻害されてしまう。ちょっとした虚脱状態だ。こればかりは癒しの力でも如何ともしがたい。 加えて、風鳴童子に仕える鬼達も決して弱くは無い。不思議と彼らにはこの暴風も影響を与えていないようだ。童子の指示の元、力強い金棒で、鋭い牙で、リベリスタ達を傷付けてくる。 「だけど、この程度で負けられないんだよ! あいつからだ!」 夏栖斗の蹴りはカマイタチを生み出し、嵐の中を裂いて、弓を持っている鬼を狙う。虚を付かれて、弓を落としてしまう鬼。 「一矢、報いるッス!」 さらに風の中を物ともせずに、イーシェが駆け抜ける。最初っから、選択肢は生か死か、2つに1つ。だったら、気合で生を掴み取るまでだ。 イーシェの裂帛の気合から放たれた一撃は、見事に弓鬼を切り伏せる。 「みんな、頑張って!」 アーリィの紡ぐ詠唱から与えられるのは、癒しの福音。それはリベリスタ達に嵐へ立ち向かう力を与えた。その勇気を胸に、ヴィンセントは愛用の銃を構える。 「悪しき風にこれ以上愛しき空を汚されるのは阻止します」 身体を責め否む痛苦を押さえつけ、引き金を絞る。すると、放たれた弾丸は鬼達の身体を貫いていく。風鳴童子にも浅くない傷が当たったのが、視界の端に映る。テテロの指揮のお陰だ。 「おとぎの鬼! 今や貴様らの居場所はこの地上にはない!」 鬼丸を抜き放ち、戦場を駆け抜ける冴。身体から血は流れ、決して傷は浅くない。しかし、そのようなこと、彼女が歩みを止める理由にはならない。 「おとぎ話? それはお前等人間がそう思っていただけだろ? これからは、鬼の世界を作るんだ。おとぎ話の住人になるのは、お前達だよ」 「ならその望みごと私が両断する!」 冴が刀が一閃すると、弓を構えていた鬼がまた倒れる。 そして、弓を構えていた鬼達がいなくなる時こそ、リベリスタ達が待っていた瞬間だ。 「とらみちゃん、いまなのっ!」 「ごめん、任せた!」 テテロが合図する。 虎美が飛び立つ。 『逆棘の矢』は虎美と共にある。 そして、アークに勝利と希望をもたらすため、虎美は飛び立った。 ●1つの勝利のために 「なるほど、そういうことか。ただ、ちょっとボクのことを分かっていないんじゃないかな?」 『逆棘の矢』を持ったものが戦場から離れようというのに、不敵な笑いを浮かべる風鳴童子。 「どういう意味だ?」 「こういうことだよ!」 笑い声と共に、風鳴童子は自分の周囲に再び小さな風の渦を作り、速度を増す。この勢いではたしかにこの人数でブロックし切れるものでは無い。事前に得られた情報には無い能力だ。これも『鬼神楽』で力を増したが故なのだろうか? 「逃げるんスか? 大したことねぇんスね」 小さな声で、だがしっかりと風鳴童子の耳に届くよう、イーシェが呟いた。 そして、その言葉が耳に入った時、風鳴童子の動きが止まる。 「安い挑発だね。でも、良いや。もう少し遊んでやるよ」 「エラそーに言って、結局乗ってルンじゃネーか」 今までの戦いは言うなれば、前哨戦。リベリスタ達の全てを投げ打ってのものではなかった。だが、ここからは違う。命を賭けた本気の戦いだ。ここでどれだけの時間を稼げるかによって、『逆棘の矢』を入手できるかが変わってくるのだ。 そして、真正面から戦うと、確かに風鳴童子は強かった。防御力は低く、素早い身のこなしこそあれ、 リベリスタ達の攻撃により、着実に傷ついてはいる。その反面、極めて攻撃的な性格を象徴するかのように、非常に高い制圧力を持っていた。その攻撃力を前に、リベリスタ達の運命も擦り切れるかのように失われていったのだ。 「必ず支え切ってみせるんだから……!」 「エリスは……癒し手。エリスが……倒れたら……皆が……全力を……出し切れない。だから……立ち上がる」 チェーンソーを杖代わりに立ち上がる斬乃。エリスも必死に、上体を起こして、仲間に回復の息吹を吹かせる。一方、風鳴童子もかなりの傷を負いながら、それを意に介さず立っている。 「ふぅ、大したもんだよ。ただ、遊びの時間はここまでだ。そろそろ追わないと、本当に逃げられちゃうからね。また今度、お前たちの所へ遊びに行くから、その時に相手してやるよ」 「させないっ!」 アーリィが気糸で風鳴童子を縛り上げる。一瞬、童子の動きが止まる。 「これで満足かな?」 「そんな……決まったはずなのに……」 たしかに、風鳴童子の身は縛られていた。しかし、身を縛る気糸をものともせず引きちぎる童子。 さすがに焦れてきたのか、立ち去ろうとする風鳴童子。と、そこに笑い声がした。 「フフ、フフフ、『遊びはここまで』、ですか」 「何がおかしい?」 傷だらけの身体で笑うのはヴィンセント。だが、目は笑っていない。アレは覚悟ある者の瞳だ。 「随分と忙しいようだ。そうやって貴方方が走り回っているということは、やはり温羅は期待外れだったようですね。ご愁傷様です」 「今……何て、言った?」 「やはり温羅は期待外れだったようですね、ですよ。クソガキ」 「人間が……人間風情が……温羅様のことを……!!」 周囲の風が一段と勢いを増す。 風鳴童子の怒りに呼応して、その力を増しているのだ。 だが、これが最後のチャンスだ。今、たしかに風鳴童子の足は止められている。 「つれないこと言わずに、もうちょっと僕たちと遊んでもらうぜ。この程度で終わるような覚悟じゃないんだ」 夏栖斗が風鳴童子の前に立ち塞がる。あくまでも軽い口調で。 「温羅を打倒する可能性を少しでも上げることが出来るなら、この身一つ投げ打つことのなんと容易いことでしょう」 運命すら切り伏せる、その覚悟を持って冴は刀と鞘を構える。まだ技の全てを出し尽くしてはいない。まだ、自分達には残されたものがあるのだ。 「私の命、私の運命は偏に正義を通すためだけに存在します!」 「あのやは…あのやはみんなのきぼうなのっ! ぜったいぜったいもってかえるのっ!!」 リベリスタ達の魂の炎が燃える。そして、目の前の荒れ狂う鬼神を討つべく、一斉に踊りかかった。 ●『逆棘の矢』の行方 「『逆棘の矢』を……よこせよ……」 「随分と、余裕が無くなってる、じゃない。さっきの余裕は、何処へ、行ったのかな?」 必死に自分の勇気を奮い起こして、虎美は風鳴童子の前に立っていた。目の前にいる風鳴童子の怪我はひどい。リベリスタの猛攻の前では、さすがの童子と言えども無事ではいられなかったのだ。 しかし、ヴィンセントを倒して溜飲を下げた童子は、冷静さを取り戻すと、『逆棘の矢』を奪うべく虎美に追いついたのだ。そして、リベリスタ達は風鳴童子の部下によって、追跡を阻まれ、まだ追いつけていない。 そして、虎美が動くよりも速く、風鳴童子が動く。 バシッ 「キャッ」 風鳴童子にの手に生えた爪で切り掛かられ、虎美は倒れる。その拍子に『逆棘の矢』を落としてしまう。童子は急いで矢を拾いに行く。すると、今度は童子の身体に痛みが走った。 「お前……」 虎美のスタンガンが火花を放つ。怪我そのものは大した問題では無い。この小娘は、こんなもので自分を傷付けようとしたのだ。風鳴童子は怒りに震え、再び切り伏せようとする。今度は『逆棘の矢』のことを慮る必要は無い。 その時だった。 「大丈夫か!?」 仲間の声が聞こえてくる。鬼卒達を打ち破り、仲間が追いついてきたのだ。 「チッ」 さすがに分が悪いことを悟って、風鳴童子は宙に浮かび上がる。しかし、その手にはしかと『逆棘の矢』が握られていた。 「運が良かったな、人間共。ただ、こいつはいただいて行くよ?」 「待てッ!」 リベリスタが呼び止めようとするが、さすがに今度は風鳴童子も引き返さない。自分の感情と温羅の無事、それを秤にかけ、後者が勝ったのだ。もちろん、自身の怪我のこともある。 「これで温羅様を脅かすものは無い……。呪われろ、人間共。次に会う時がお前達の最後だ! ハッハッハッハッハ! ゴプ。ガハッ、ハーッハッハ!」 いつものように高笑いを上げる途中、風鳴童子は血を吐く。さすがに怪我がひどいのだ。だが、笑うことは止めない。鬼の勝利を確信したからだ。もう温羅を止めることは出来ないと、童子は信じているからだ。 しかし、『逆棘の矢』は、風鳴童子の手に握られ、鬼の血に塗れながらも、破魔の光を放ち続けるのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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