●卒業式終了のお知らせ 「卒業――したくないな」 「……うん」 葉渡一と園谷巧は小学六年生の男子。二人は親友だった。家はお隣で、幼稚園に入る前から一緒にいた。 だけど。一の家は小学校の卒業と同時に引っ越すことが決まっていた。卒業式の日が、二人のお別れになる。 ずっと一緒にいると思っていた親友。けど、そうじゃなかった。 二人は沈黙する。気まずい思いが言葉を少なくさせ、どこか二人は他人行儀で―― 無言で帰路につく二人。その姿を見守る16の瞳に気づかずに。 そして――卒業式当日。 あれから二人は言葉を交わしていない。目もうまく合わせられない。 親友を裏切ったという気持ち。親友に言葉を伝えられない焦り。 卒業式は淡々と進行していく。 もうすぐ終わる。もうすぐ――お別れ。 大きな音が体育館に響いた。お話をしていた校長先生の演説が止まる。 入り口が大きく開き、そこに並ぶ見知らぬ8人の女性。 教師の制止も聞かず、保護者の中を掻き分け――校長先生を押しのけ壇上に立つ。 そして―― 「やっぱりショタが好きいいいぃー!」 キーンとマイクがハウリングして。 ――卒業式を静寂が包み込んだ。 ●ショタの8人 黄色い帽子が見たくて私はここに来た! 一番小さい子は私のもの! A美だァ-! 水遁の術はすでに私が完成している! 塩素が目にきついぞ! B澪ィー! 毛虫? 花粉症? 知ったことか! 最近腕の筋力がすごいことに! C奈だァッ! 色白文学少年美味しいです! 暇つぶしにもなって一石二鳥! D子ォー! どうしてここが気づかれない! 君の靴の匂いを嗅がせて! E江だァー! 美少年のベストアングルはここにある! 真剣な君の顔で私の白いキャンバスを染め上げて! F花ァー! 男の子が好みそうな楽器、その全てをすでに舐め尽くしました! 仲間もドンビキ! G絵ェー! 君の喜ぶ顔が見たくて腕を振るいます! 今日は半日同僚はいないぞ! H香ァー! 以上SPP団よりチームYSS8名でお送りいたします! ●とりあえずお仕置きの方向で 「吐息より熱いリーベをギルティと呼ぶにはセンチメンタルな幻想ブレイクだが」 すでにげんなりしているリベリスタ達に追い討ちをかけるNOBU節。『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は己の髪の毛をくるりといじり。 「ま、成人女性が小学生の男の子を追いかけるのは犯罪だね」 ですよねー。 「SPP団(Shota Peropero Princesses)は知ってるか? 今回はその中のチームの一つ、YSS……『やっぱり・ショタが・好き』の略だが、彼女達は近所の小学校の卒業式をぶっ壊すのが目的だ」 「なんで?」 ショタ好きと卒業式の妨害がどう繋がるのか。リベリスタの疑問はもっともだろう。 「卒業式をしなければ卒業できない。つまり小学生は永久に小学生。イコール天国……彼女達の思考だな」 「本物のアホですかこいつら」 卒業式が中止になろうと中学生にはなるものである。 「元々は子供達の卒業式を涙ながらに見物したくて、毎日学校関係者の振りをして潜り込んだり敷地内に潜んだりしていたんだが――」 ストーカー。超ストーカー。 「卒業を前に子供達もセンチメンタルになっていて、卒業したくないって言う子もいてな」 それを聞いて、オーケーぶっ壊してやる! って流れになったらしい。 「まぁ現状彼女達の行動は子供達へのトラウマにしかならないから阻止してくれ」 YSSメンバーは見つからないよう、学校の敷地内のどこかにばらばらに潜んでいるという。それぞれの嗜好から居場所を推理して探す必要があった。時間がくれば合流し、会場に突入するという。 時間が足りないのでリベリスタは一人一箇所を捜索し、そこでYSSメンバーと一騎打ちをすることになる。 「彼女達個人にはたいした強さはない。けれど彼女達にはショコタンパワーというものがあってな」 ショコタンって何。 「同じ魂……ショタソウルを持つ者が集まることにより互いの力を増幅させる、淑女達の特殊能力だ。だから合流される前に叩く必要がある」 いや、だからショコタンって何。 「メンバーの一人がショタコンの事を間違えてショコタンと覚えていてな? 間違えに気づいても気恥ずかしさからショコタンと言い張り、仲間も優しくうんショコタンだねって――」 そんなの優しさじゃねぇよ。 詳しいことは資料を見てくれといい、伸暁はリベリスタを送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月25日(日)22:57 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●君に送る言葉を 先生との答辞の打ち合わせが終わり、ボクは職員室を出た。卒業式がもうすぐ始まる……もうすぐ、お別れ。 まだ何も伝えていない。かける言葉が見つからない。このままお別れになって――もう会えないのかな。 「会えるさ」 振り返った先には見たことのない男の子。誰と問う間もなく、その男の子――『鉄腕ガキ大将』鯨塚 モヨタ(BNE000872)は口を開いた。 「気持ちがつながってりゃ、ずっと友達でいられると思うぜ」 「気持ち……」 ボクの気持ち。はじめ君の気持ち。ずっと一緒にいた友達、離れていく友達…… ボクはどうしたいのだろう。このまま何も言わなかったらはじめ君はどう思うだろう。 男の子がボクの肩を叩く。人懐っこい笑顔が暖かく、ボクの不安を溶かすようで。 「頑張れよ」 ――声が背中を押す。走り去っていく男の子を見送りながら、ボクは心の奥の物を引っ張り出してもらえた気がした。 頑張らなきゃ。どうしたいかはわからなくても、このままお別れは嫌だから。 教室に先生の声が響き、皆が教室を出て会場へとぞろぞろ動く。 オレはどうしても参加する気になれず、少し離れた場所でそれを見ていた。卒業式なんか出たくない。オレが裏切った親友に、会わせる顔なんてないから。 ――どうせもう会えないなら、このまま―― 「駄目ですぅ! 逃げたら一生後悔するのですぅ!」 大声に驚いて後ろを振り向くと、オレより少し年上くらいの女の子――『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)が手を取り言う。 「親友は離れていてもずぅっと仲良しなのですぅ。だから、これはお別れじゃないのですよぉ」 「……お別れじゃない?」 不思議に思ったオレに、女の子は満面の笑みを浮かべた。 「はい、再会のための旅立ちなのです!」 そう言って女の子は手を振って去っていく。誰だったんだろう。いや、それよりもオレは―― もう一度どこかで先生の声が聞こえて――オレは会場へと歩き出した。 「まったく、愛ってやつを勘違いしてるな。本当に好きだってんならこんなことしてんじゃねぇよ」 会場へと向かう子供達を見送って、『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)がため息と共に言葉を漏らすと。 「未来に踏み出すための目出度い門出。それを邪魔立てしようとは許せません」 子供達の晴れ舞台、卒業式を壊そうとする者達に対して『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)が怒りをあらわにする。 「大人しくしないのであれば覚悟してもらいましょう」 「じゃあ行くとするか。幸運を祈ってるぜ」 リベリスタ達は各々の担当の場所へと散る。この先は一人で相手と対峙し、説得に応じなければ戦うことになるのだ。 向かう方角が変わるたびに数を減らしていき――今校舎の別館に向かっているのは二人。 「神聖な図書室でお下品な行為をするなんて許せないですぅ」 呟くロッテに、同行者である『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)は柔和な笑みを浮かべ口をゆっくり開いた。 「――全く、愚かなものね。確かにショタの魅力は素晴らしいわ……天使のような微笑、半ズボンとシャツに包まれた発展途上の瑞々しい肢体、変声期を迎えていない可憐な声……それらは一過性のものであり過ぎ行く時は惜しい。けれど、だからこそその一瞬を楽しむべきであり、己が私欲の為に歪められて良い物ではないわ。過ぎ行く時を見送り、そしてまた新しい花を探せばいいのよ。つまり何が言いたいかというとショタ最高よね。ねえ同志ロッテ。貴女もそう思うでしょう?」 ……さすがSPP団の団員証を持つ乙女であった。 ●僕らは仲間だ 【給食室】 「みーっけ!」 地域によって差はあるかもしれないが、小学校特有の設備と言える給食室。その奥で律儀に白衣を着ている女性がH香だろう。平日であれば給食のおばさんに紛れるだろうが、今日は一人なので目立つ目立つ。 「え、え、なんでショタが? 天使? 天使なの?」 突如現れたモヨタにとろけんばかりに顔を緩ませるH香。さすがはYSS(やっぱりショタが好き)メンバーである。 「姉ちゃん、まずはこっち来て話そっぜ」 モヨタが椅子に座るとその前にひざまづくH香。ショタ様と対等の位置に座るなどおこがましいという徹底振り。 「お願いだからこんなことやめてくれよ! 卒業式ぶち壊されたらみんな嫌な思い残しちまうんだ」 熱のこもった視線を向けられているが、モヨタは気にせず素直な想いをぶつけた。純真な子供ゆえのまっすぐな言葉だ。 「卒業式なくなってもずっと子供じゃいられねぇんだよ。できれば姉ちゃんと戦いたくねぇからさ、お願いだよ」 だが相手も仲間と共に卒業式をぶち壊す為に集まった者の一人だ。簡単に説得に応じることは―― 「あ、はい。やめます」 ――即応じた。 ホントかと顔を綻ばせるモヨタに、H香は幸せそうに微笑み口を開いた。 「ショタのお願いを聞かないショタコンなんているわけないじゃないですかー」 ……まぁ、元々卒業したくないってショタが言ったから壊しに来たような人達ですし。 【一年の教室】 「かくれんぼ? 懐かしいなぁ」 誰もいない一年生の教室に入り、『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)は耳をすませる。どのような小さな音も残さず拾い集めるその力が、わずかな呼吸を感じ取った。 「ありがちだよねぇ教壇の下」 ガタンと音がし、観念したのか黒スーツの女性――A美が出てくる。普段見つかったらどんな言い訳するつもりだったんだ。 「一体何者か知らないけど私達の崇高な使命の邪魔は――ぁあああっ!」 後半から金切り声。彼女の目線は都斗の頭に釘付けである。 それもそのはず、都斗はYSSの中でも特に小さい子好きであるA美に合わせ、背中にランドセルを背負いその頭には一年生特有の黄色い帽子をかぶっていた。見た目が小学校低学年の都斗だからこその衣装であろう。 (また別の意味で危険なフィクサード達だねぇ) 息を荒げ目を血走らせるA美に内心で思いつつ、都斗は演技かかった口調で喋りだす。 「おねーさん。本当に小学生のことを思うなら中止にさせないで」 ――別れは悲しい記憶として残るわけじゃない。卒業式の別れは良い記憶として残っていく。 それをぶち壊すだなんてとんでもないことだよと、言い含めるように伝えていく。 「で、でもショタが……」 「おねーさんたちの思いはボクが受け止めてあげるから」 ――有料でね。内心で付け足す。 「ボクならなにをやっても怒らないよ?」 ごくりと。二人だけの教室に生唾を飲み込む音が響き渡り―― 「なんでも?」 「なんでも」 にっこりと笑顔で答える。後でお金の請求は当然するけどね。 腕を震わせながらA美がゆっくりと近づく。息は荒く表情は真剣みを帯びて。都斗の目の前に立つと大きく息を吸い込み……突如体勢を低くして自身の手をそっと床に押し付けた。 「――見下した視線で頭を強く踏みつけて、酷く罵って下さい」 「うん、キモい」 演技だったやら率直な言葉だったやら。 【下駄箱】 校舎の入り口、下駄箱――の隙間。子供達は上から順に靴を埋めていき、一番下の誰も靴を入れない列にそれはいた。 ずるりと。ナメクジのように這い出てきた女性はそろそろかと呟き―― 「こんにちわ!」 投げかけられた言葉に身を震わす。 声の主は『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)、小さな身体に大きな笑顔で元気いっぱいに挨拶。 「わたし羽柴壱也って言います。お話しましょ」 対し、立ち上がった女性――E江は警戒し、距離を取りながら後ろ手に気糸を構成させていくが―― 「半ズボン」 ぴくぅ。 「膝のばんそーこー。泥まみれの靴」 ぴくぴくぅ。 「無邪気な笑顔、どれも満点!」 E江の反応に満足げに頷き、壱也は右手でおっけーポーズ。 ――でも、卒業はさせてあげてほしい。一転して少し寂しげな壱也の声音に、やはり妨害者かとE江は構えるが―― 「今まで見てきた可愛い子達が卒業するのは寂しい。でもこの子達が卒業しなければ、次に入ってくる可愛い子達が入学できないんだよ」 ――その子達を見守ってあげるのもSPP団の役目でしょ? 気糸が解ける。雷に打たれたような表情は自身の過ちを認めたため。 「卒業式は寂しいよね。でも、ここでしか見れない1度きりの涙を、一緒に見届けようよ!」 「一度きりの……涙」 見たいです――力なく漏れた呟きに、力強く差し出された壱也の手。E江はその手をそっと掴み――そして涙した。 【美術室】 「なぁ、本当に好きだったらこんなことやめておけよ」 床に山積みになったキャンバスの前で吹雪は言葉を紡ぐ。 ――卒業したくねぇって奴のためだけに行動を起こすならまだ許容出来る。でもな―― 「自分達の為ならそれはもう愛じゃなくてエゴだ」 本当はわかっているはずだ、こんなこと誰も望んではいないことに。ショタの為という言葉は免罪符、自分の欲を満たす為の――エゴ。 「このままじゃアイツらの最後の思い出をぶち壊すことになっちまう、そんなことになったらアイツらが悲しむだけだ」 吹雪は言葉を一旦区切りそっと待つ。だが白いキャンバスは何も言わず――いや、心なしか震えているように見えた。 そっと近づき、積み重ねられたキャンバスの一番上を持ち上げる。どかされたキャンバスの下は、中央に大きな穴が開いたキャンバスが連なって。 「アイツらの巣立ちをしっかりと見届けてやるのが本当の愛ってもんじゃねぇのか?」 言葉は穴に深く沈み、女の――F花の嗚咽が代わりに漏れ出る。 「行こうぜ。見届けにな」 言葉は優しく響き渡り。穴に向かって差し出された手は、穴からそっと出された手で握り返された。 【図書室】 「みつけたぁ! 仲間なのですぅ!」 静寂を破る大声はロッテのもの。カウンターを乗り越え、かつてSPP団と交流し手に入れた団員証を突きつける! 「ああ、ロッテ様!」 知り合いかよ。 「暴れちゃダメ! 暴れたら子供たちが学校来なくなっちゃいますよぉ?」 今いるショタも、これから入ってくるショタも、みーんな。 「で、でも……」 「ショタ、ぺろれなくなりますよ?」 沈黙。一般人が聞いたらドンビクような発言が聞こえた気がしたが、D子の身体の震えの原因はわからない。 「……ぺろりたいでしょ?」 ゆっくりと――ゆっくりと頷く。顔を上げたD子の目の端には涙が溜まり、噛み締めた唇が必死に言葉を紡ごうとする。 嗚咽を交えた音が少しずつ声となり……ロッテの耳に届けられた。 「ロッテ様……ぺろぺろ……したいです」 二人は抱き合った。ショタを想い号泣した。少女達の涙は、想いはきらきらと輝いて――絆となるのだ。 ……イイハナシダナー。 全ての説得がうまくいったわけではない。 パターン変わって―― 【プール】 ――子供達は夢を抱き、瑞々しく成長する時があるからこそ、魅力ある光を放つのではないでしょうか? ――己が欲望にて、成長を、未来を、あまつさえ瑞々しい魅力すら奪うは愚の骨頂。 ――真に子供達を愛するのであれば、その成長を、門出を祝うことはできませんか? 大和は対峙する女性――B澪に真摯に想いを連ねた。言葉には力があり、まともな精神の持ち主ならば考えも改めようというもの。 まともであれば。 B澪は身体を振るわせる。何か恐ろしいものを見聞きしたとでも言うように、自身の顔や髪をかき乱すとわなわなと声を震わせ叫んだ! 「ショタっ子が成長するとか、なんて恐ろしい発想を――! この……この、悪魔めぇ!」 「あ、悪魔?」 こちらの方が驚きの発想である。 「ショタは成長しませんー! 天使は生まれた時から一生天使に決まってるでしょ常識的に考えて!」 どうやら成長はNGワードであったらしい。 ため息一つ。悪魔許すまじと短剣を構えるB澪に、大和もまた止水を構える。 「……是非もなし、全力でお相手致します」 【桜の木の上】 桜は多いが未だ咲き誇ってはいない、故に隠れれる場所は限られる。『閃拳』義桜 葛葉(BNE003637)が当たりをつけて木の下から見上げると、木の枝にしがみつく女性が見えた。 「リベリスタ、義桜葛葉だ。卒業式をただ見守るというのであればこちらも譲らなくはない」 目が合ったが降りてこない相手に対し構わず言葉を投げかけていく。 「永遠など存在しない。咲き誇る桜とてやがて枯れ果てゆく。それは人とて同じ事」 思い直せと。初めはただ見守る心算で此処に来たのなら。 別れは辛いもの。けれどそれは生きていく上で絶対の課題。子供達の為というのなら―― 「俺達大人は子供達が出す答えを見届け、導く者でなければならん。庇護するだけではいかんのだ、頼む」 ――ふふふ、と。木の上から笑い声が漏れ出す。女性――C奈のそれはどこか狂気じみて。 「ふふふ……枯れ。枯れ、枯れえええ! 何言ってるんですか! ショタは、ショタは永遠ですぅううう!」 NGワード2。 「ショタの輝きは永遠! ショタの微笑みが私にきらめいてきゃっきゃうふふああああ!」 やだ怖い。 仕方なしと小さく呟き、葛葉は拳を前に突き出した。 「決裂か……義桜葛葉、これより相対させて貰う!」 戦闘となった組もある。その結末は―― 「……あの、大丈夫ですか?」 大和は構えた刀をすぐに降ろす。戦うはずだった相手は一歩踏み出してすぐにプールサイドに寝そべった。その身ががたがたと震えている。 大和が覗き込むとその顔色は血の気がなく唇は真っ青。全身の震えは止まらず歯ががちがちと音を立てていた。 ……この季節である。何時間入っていたのかは不明だが、私服で水の中に延々と浸かっていたのだ、当然の結果であろう。 もはや何も喋れなくなったB澪を背負い、大和は会場へと歩いて行った。 べちゃん。 枝が大きく揺れ、C奈が地面に叩きつけられる。葛葉はまだ何もしていない。 葛葉が覗き込むと、両腕をだらしなく伸ばしてC奈が息も絶え絶えに言う。 「……腕、もう、限界」 腕はぱんぱんにはれていた。 葛葉が背負って会場に戻ったことは言うまでもない。 ラストにこんなパターン。 【音楽室】 音楽室を飛び出して。わき目もふらず走る走る。息を切らして。扉に膝を打ちつけても構わず。 逃げなくては、ああ速く逃げなくては! 廊下を駆け抜けるG絵の目線が窓に走り―― 「ひ、ひいいいい!」 窓から伸びる腕に顔を押さえつけられた。 「ふふ、ごきげんショタ。今日もいいショタ日和ね同志」 その胸元には燦然と輝くSPP団団員証。 「残念ながらSPPの理念も忘れショタを歪めようとしたYSSを断罪しに来たわ」 「あ、あああ、ごめ、なさい、ごめんなさい」 がくがくと膝を震わせながら、懸命に許しを請うG絵。 「うふふふ」 微笑みは柔和で深く、故に――恐ろしい。 「ダメ」 ずるりとG絵の身体が窓の外に引きずりこまれ―― ……あー! なお、この作品はホラーではありません。 ●また会う日まで 「ふふ、皆いい大人になりなさい」 ティアリアの目は慈愛に満ちて子供達に向けられる。 戦いを終え、リベリスタ達はYSSメンバーと共に卒業式を見学していた。 光景を見守り、涙を流すメンバーの横で。 (小学生でいんのもあと1年か……) 来年に迫った卒業を思い、現役小学生のモヨタは日常を振り返る。 離れてしまった友達はいる。けど、気持ちは繋がっている。 「うん、きっと大丈夫さ」 たくみもはじめも、自分も大丈夫。 (卒業生ならよいけど、そうじゃないと退屈で眠いだけだよね) 都斗が欠伸を噛み殺す。 「そういえば――ショコタンと言い間違えたのはどなたなのでしょう」 大和のふと沸いた疑問に。 振り返ればF花が目線を逸らしていた。 「答辞か。アイツらは大丈夫かな」 壇上に向かう巧の姿に吹雪が声を上げれば。 「あの子達は大丈夫ですぅ!」 決まっているとばかりにロッテが答える。 緊張と――決意。巧の表情を見やりロッテは笑顔を零した。 ――次あった時はもっと仲良しになれる。それまでの辛抱だよぉ! 「……桜は散るが次の春には再び咲く。出会いと別れも同じ事。いつか彼らもまた会える」 葛葉の言葉に頷いた拍子に、窓から漏れる日差しが壱也の顔を染める。見上げれば太陽が空高く。 「んー。今日は絶好の卒業式日和だね!」 子供達の門出を祝福するように日差しが降り注いでいた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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