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<黄泉ヶ辻>集団一家非連続自殺害事件

●不自然連鎖
 48人の自殺害者が出た。
 知られている限り年に三万もの自殺者が居るとされる現代、乱暴に言えば、珍しい数字ではない。
 しかしそれが一つの地区で、一日の内に、全て自宅の中で、家族全員が自殺したとなった場合……その異常さが分かるだろうか。
 どの家庭も父と母そして子供三人の五人家族。どの家族も決まってだ。
 方法も特殊だった。
 何せ『自殺害』である。
 互いに包丁やナイフを持ち合い、食卓を囲み、円を描くようにして右隣の人間の首を一思いに切り裂くという、異常な死に様だったのだ。
 いただきますとでも、言うように。
 ……もう気づいただろうか?
 この事件によって出た死者は48人。
 2人だけ、少ないのだ。

●無名少女613番
「その一人が、彼女です」
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は顔写真のついた資料を手渡してきた。
 顔写真、である。予知によるスケッチではない。
「彼女は少し前、『子供リサイクルセンタア』にまつわる事件で一時保護された少女です。本人は名前は無いと言っており、持ち物を調べた時に……こんなものが」
 和泉はビニールパックを差し出してきた。
 中に入っているのは、プラスチック製の名札である。
 黄色い四角形のプレートに『613番』と掘られている。
「彼女を識別するためのネームはこれだけだ、と……」

 これが偶然だとは思えない。
 黄泉ヶ辻が絡んでいる可能性が高いとみて調査を行った結果、次のことが分かった。
 生存者のいる家庭。つまり集団一家非連続自殺害事件の生き残りである三十代男性のいる家庭が存在する。
 そこへ今現在、仮面の男が向かっていると言うのだ。
「『巡り目』模様の仮面です。これも、前回皆さんが調べたことの一つです」
 男の目的が回収なのか殺害なのかはわからない。
 しかし、良くないことが起ころうとしているのは確かだった。
「近隣に住民はいません。いないというよりは、今回の事件によって居なくなった、と言う方が正しいのですが」
 重々しく息を吐き、和泉は資料をデスクに置く。
「仮面の男が家へ到達する前に、彼を倒してください。必ず」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月17日(土)01:42
八重紅友禅でございます。
家族が家族である条件って、何だったのでしたっけ。
家族であるなら大丈夫な理由なんて、ありまったっけ。
父や母なら信頼できる理由なんて。

●仮面の男
『巡り目』と呼ばれる模様の仮面をつけた男性フィクサードです。
外套を羽織り、2~3体のエリューション・フォースを引きつれています。
彼を倒すことが、今回の成功条件となります。

追加要素。
今回一時保護されている『613番』を連れて行けます。
万一を備え、彼女のそばには何人か付けておく必要が出るでしょうし、そのメンバーは危険を避けるべく戦闘には参加できなくなります。
代りに近隣の家を調査することができます。どんな情報が出るかはわかりません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
ホーリーメイガス
ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)
インヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
デュランダル
ノエル・ファイニング(BNE003301)
プロアデプト
アルバート・ディーツェル(BNE003460)
クリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)

●調査記録1
 元々家の少ない土地だったのだろうと思う。
 見た目に新しい住宅が10棟、ごく普通に並んでいた。
 『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)は、一度瞬きをして視界を切り替えた。
「ざっと見て、何か発見はあったか?」
 今も尚稼働中の冷蔵庫から手を離し、こちらを振り返る『鋼鉄魔女』ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)。
「ざっととは言ったけど、十件全部に目を通すのは意外と疲れるもんだね」
「その割にはすぐに終わったようじゃが?」
 目頭を押さえる。
「博物館」
「うん?」
「博物館に展示されてるみたいだったよ。『一般のご家庭』っていうタイトルでさ。この家と一緒だ。普通に家具があって、普通に物が置いてある。割とよく片付いてた。でもそれが」
「まるで全ての家庭が同じ時間に同じように同じ掃除と片づけをしているようだった」
「……うん」
「サイレントメモリーの結果も大体そんな所じゃ。家具や何やらを調べたが、どれもごく普通に購入されて、ごく普通に置いてある。子供部屋など、野球のグローブを買って大事そうに引っ掻けておきながら、一度として使用されていない。一般的な家庭を、脅迫的なまでに演じていたんじゃろうな」
 今まで汚い物でも触っていたかのように、ゼルマは自分の手を見つめた。
 普通であることが、ここまで不気味だとは。
 彼女達は『613番』を屋外で保護したまま、彼女の家をは違う場所を探索していた。千里眼で調べたところ父親らしき男は生きていたが、まだ保護はしていない。
「その男は?」
「テーブルに座ってじっとしてるよ」
 周囲には彼の家族らしい人間が三人死んでいたが、気にするでもなくじっとしていた。
 とてもではないが、安易に近づきたくない。
 ゼルマはやはりなと言って俯いた。
「『子供リサイクルセンタア』のメカニズムに違和感があったが、これが仕組まれていたのなら合点がいく。その男が生きているのも、彼を殺す筈だった『613番』が不在だったからじゃ」
「バグ、ってことだよね」
「そうだが」
「どうしてそんなバグが起きたんだ? 一人減っていたなら、その分連鎖の輪っかを縮めたらよかっただけだろう?」
「……ああ」
 ここまで考えてから、二人はあることに気が付いた。
「何か外因的な理由でこの事件が起きた」
「起こした本人は、少なくとも起こす瞬間までは『613番』の不在っていうイレギュラーを知らなかった」
 イレギュラーの原因は間違いない。
「わたし等だ」
 呟く涼子。
 その時ふと、あるものに目を止めた。
 それは、使い古された絵本であった。

●『なんでもないもの』
 戦闘が起きていた。
 そう、表現して差し支えないだろうか。
「黄泉ヶ辻の方ですね。消えて頂きましょう」
「『歓迎します』……嘘です」
 ぴくり、と『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)の眉が動いた。
 巡り目の仮面をつけた男である。
 以前同じようにな男と戦う時、同じ言葉を言って、同じ言葉を返されたのだ。
 ただのテンプレート的な台詞ならばともかく、こんな偶然があり得るのだろうか?
 まるで同じ人間をプリントしたかのような、この既視感は何だ。
 巡り目は手を軽く翳したまま、やはり動かない。
 戦闘員にはとても見えない。彼の代わりだろうか、三体のEフォースが襲い掛かってくる。
 多方向に口が付いた顔や、指が三十本ある手である。これもまた既視感だ。
 ギガクラッシュを叩き込むノエル。
 それに合わせて、『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)はバッドムーンフォークロアを放った。
「……」
 唇を噛む。
 以前の事件についての報告は聞いていた。
 あの、非常識で不可解な事件だ。こちらの価値観や、当たり前の概念が、悉く吐き捨てられていくような気持ちの悪さ。そしてドウシヨウモナサ。
 それは『宿曜師』九曜 計都(BNE003026)にとっても同じことだ。
 彼女達は一応の戦闘行為を続けている。どこか張り合いの無い、空気を殺しているような薄気味の悪さを感じる戦いだった。
 仮面の男を見やる。
「巡り目……」
 巡る目、つまり目が次の目を見ていて、その目がまた次の目を見ている状態である。
 古く中国で行われた奴隷監視のメカニズムだが……計都は少し違ったニュアンスを感じていた。
 複数の目。つまり複数の自己がお互いを否定し合う循環型嘘のループ。
 自己言及のループを続けなにかであることを許されなかった存在。
「それが、『なんでもないもの』」
「……」
 『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)が、目を大きく開けた彼独特の表情でEフォースの一つを切り裂いた。
 なんでもないもの、だって。
「私にとっちゃ断じて何でもなくねえんですよ」
 認めないし、許さない。
 意味と価値を、勝手に『認定させて』いただく。
「私が、私の為にだ」
「『ご自由にどうぞ』……嘘です」
「なら、自由にさせてもらいます」
 『忠義の瞳』アルバート・ディーツェル(BNE003460)がトラップネストを発動させた。
 簡単に動きを取られる巡り目。
 アルバートもまた、同じような男と戦ったことがある。
 当時はリーディングをかけ、吐き気と嫌悪感に頭をかき乱されそうになったものだ。目的も正体も解らなかった彼等だが……今回は、分かるかもしれない。
 少なくとも、彼らの出所だけでも。
「探り当てて、みせますよ」
 そうして、アルバートはエネミースキャンを始めた。

●『いらない子』
 並木が並ぶ道路に、少年少女が立っていた。
 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)と、『613番』である。
「おい、ムー」
「……」
「ムー」
「……」
 無表情で地面の影を見つめている『613番』の肩を叩く。
 呼ばれたからと言うより、肩に当たったのは何なのかを確かめる為という風に『613番』は振り向いた。
「何」
「お前の事だよ、ムー」
「……」
 無表情で黙る『613番』。
「なんだ、不満か?」
「別に」
 再び地面の影に視線を移す。
 福松は少しだけ何かを考えて、ジャケットの脇ポケットからキャンティーを取り出した。いつも咥えている棒付きキャンディーだ。
「やるよ」
「必要ないわ」
「……そうか」
 素直に引っ込めて、ポケットに入れる。
 そうして、ふとあることに気が付いた。
 『必要ない』?
 『いらない』じゃあ、なくてか?

●嘘殺し
 味の無いウェハースをかじり続けるような。
 甘くない砂糖を舐め続けるような。
 まるで手ごたえの無い戦いは、思ったより早く決着がついた。
「どうせわたくしを覗き込んでも、殺意しか出てきませんよっ」
 巡り目にオーララッシュを仕掛けて圧倒するノエル。
 他のメンバーも手早くEフォースを全て消失させ、極めつけにとうさぎは巡り目にギャロップレイを仕掛けた。
「あなたは貴重な情報源だ。重要な存在だ。絶対に生かして連れ帰ります」
 転倒した巡り目に素早く駆け寄り、拘束具を無理矢理嵌めて物理的に動きを封じた。
 これが並のフィクサードやエリューションであれば、拘束を試みた時点で打ち払われるか、拘束具自体を破壊されるかのどちらかだったが……しかし、うさぎの目論見は上手くいった。
 異常なまでに、上手くいった。
「……」
 ギャロップレイの効果が何秒後に切れるかもわからない以上(あくまで戦闘行為に及べないだけであって完全な拘束状態ではないとも言う)、予想外の抵抗を受けるかもしれない。
 ノエルは巡り目をうつ伏せに押し倒し、体重をかけて全力で拘束にかかった。
 無理矢理顔を上げさせる。
「調べさせてもらいますよ、今ここで……九曜さん」
「んっ」
 計都は幻想殺しのパッシブをしっかり確認した後、巡り目の仮面に手を近づけた。
 ちらりとアルバートを見やる。
「わたくしめが調べた時、彼の思考は嘘で染められていた。フォースの思考が支離滅裂なのはよくあることとして、彼の思考は異常です」
「視覚的に、客観的に思考を読めるハイリーディングなら、あるいは……スね」
「くれぐれも油断なされぬよう」
 計都は強く頷いて。
 仮面に触れた。

 思考を読むという行為そのものに万能性を感じてはいないだろうことを前提に述べるが。
 古い記憶や殻の内側にある深層心理、何気なく接していた微細な情報までは読み取ることはできない。
 完全なマインドハックが深海の調査艇とするなら、リーディングは水面の浮遊物をさらっての調査に過ぎない。
 だがそれだけの調査でも、分かることは多い。
 今回がその例だった。

 ハイリーディングによって得た視覚的思考情報。
 第一、計都たちの映像。
 ライブカメラのように、巡り目の視界の情報がそのまま流れている。
 それ以外は白いのか黒いのか判別しない不思議な色で染められていた。
 一見してただの無思考状態かと思ったが、それにしては色合いがおかしい。
 全ての色相をいっぺんに表示しそして消去するということを途轍もない速度で連続させれば、こんなふうになるだろうか。
 そんな中で、クリスの試みは始まった。
「モニタリングをしていてくれ。今から実験をする」
 計都の耳元で囁くクリス。
 彼女は巡り目の正面に屈むと、子供にものを言い聞かせるように、こう語った。
「よく聞け、今からお前の名前は『めぐる』だ」
 思考。
 計都の視覚的思考情報が激しく明滅した。
「『私はめぐるではありません』……嘘です」
 明滅が激しくなる。
「嘘ではな……嘘、嘘では、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘だっ、う、あああああっ!」
 激しい抵抗を見せる巡り目。
 拘束具を引き千切るが、ノエルが力ずくで抑え込む。
「お前はもうなんでもない男ではない。めぐるという一つの存在だ」
「いや、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだ、やめ、やめて、くださ」
「お前は何を考え何のために生きていた!」
「嫌だああああああああああっ、嫌だアアアアアアアアア!」
 懐から取り出そうとした銃をアルバートが蹴飛ばす。
「お前に、何があった!」
「イイィ……!」
 仮面が、ずるりと剥がれ落ちた。
 パーツの無い、のっぺりとした顔が現れる。
 それを引き破るようにして、大きく大きく顎が開いた。
「知りたくない、知りたく、な――」
 言葉を成していたのはそこまでだった。
 獣のように大口を開け。
 彼は叫んだ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ギッ!?」
 一瞬のうちに流れ込んできた大量の資格情報を受け、計都は身をのけぞらせた。
 脳の処理がパンクしかけ、筋肉への指示情報にバグを起こし、それを五感の誤動作であると勘違いした脳が連鎖的に異常をきたした。
 要するに。激しい痙攣の後、血を吹いて気絶した。
「計都さんっ!」
 慌てて抱え起こすアルバート。
 そんな中うさぎは、巡り目の方を見る。
 彼は、額から血を噴出して死んでいた。

●めぐりめぐりめ
 この世の全部に意味が無い。
 この世の全部に必要が無い。
 乱暴に纏めれば、そんな内容の絵本だった。
 どんなことをしても結果は同じであり、幸福や不幸を定義できても、それらの波に意味は無く、あらゆる感情を抱く必要はない。
 思春期の子供が通る精神の成長過程に『どうでもいい』のブームがある。
 ある程度知識を得ていくうちに、波の概念を覚えるのだ。
 それは大抵言葉に現れることはなく、他人に説明できるような簡単な概念ではない。
 この世のすべては波であり、バランスであり、そして結局は同じところを通るのだと言う、一旦の解釈である。
「これを精神が構築される前段階。つまり二歳半の頃から教育し、刷り込み、世界中のあらゆるものに『どうでもいい』と言う感情を植え付けた子供が育ったとする」
「なんだいそりゃあ、ヒネたガキじゃないか」
「まあ、第一印象はそうじゃろうな」
 涼子とゼルマは、大量にストックされた絵本を一通り調べてからぱたんと閉じた。
 顔を上げるゼルマ。
「だがこの場合、本来そうなるべき時に、反転した反応を示すようになる」
「……うん?」
 難しいことを言うのか、という風に顔をしかめる涼子。
「『全てどうでもいいと言う発想こそが、どうでもいい』」
 達観、などという段階ではない。
「禅道の境地っスね……」
 がちゃりと音を立てて、計都達が部屋へ入ってきた。
 計都は顔色も悪く、アルバートとノエルに肩を借りていたが。
「人間の頭から全部の執着を捨てるんス。こうすることで、人は真の解放を得る……そういう話だったと、思うスよ」
「また曖昧な言い方しますね」
「仕方ないッスよ、そんな人間見たことないし、理屈だけのものッスから」
 うさぎが、テーブルの上の絵本を摘み上げる。
「じゃあ、あの『なんでもないもの』って言うのはこの偏った教育によって生まれた人格だと?」
「それは、違うな」
 壁に背をもたれさせ、クリスが口を開いた。
「奴等の思考は全部嘘で固められていた。そうだな?」
「……はい。わたくしめが読んだ時も、計都さんが読んだ時も」
 頷くアルバート
「これまでの調査結果をまとめるに、そうした教育を受けた後で、最終段階の改造を行ったんじゃないのか?」
「改造って、そんな大げさな」
「大げささ」
 具体的にはこうだ、と言って福松が部屋に入ってきた。
 後ろに『613番』が立っている。
「こいつにその胸糞悪い教育を施しきった後、あの『こどもリサイクルセンタア』とかいうふざけた施設に放り込んだ……そこでこいつに、神秘の技術を使ってこう植えつけるんだろう」
 がりり、とキャンディーを噛み砕く。
「『今まで教えたことは全部嘘だ』」

 無の反転は有だが。
 無限の無の反転は、無限の有である。
 一人の人間に世界の全てを一瞬で受け入れるだけの許容量は無い。強固な自己防衛を始め、出来上がるのは嘘と虚無の要塞である。
 計都は『何重にも同時起動する自己言及』と述べ、ゼルマは『実験結果』と述べた。どちらも間違いではないのだろうと思う。
 うさぎはそこまで考えて、思考がループしかけていることに気づいた。
 一旦停止する。
 そして、テーブルの上に絵本を投げた。
「この家にあるものの殆どは普通に集められただけの一般家庭を演じるためのフェイクだとしても、コレだけは違うんでしょう?」
「まあ、そうだろうね」
 涼子は頷いて、ゼルマの顔を見た。
「千里眼で調べて貰ったが、他の家にも同様の絵本が置いてあった。これだけは毎日のように使われ、見ての通り使い古されている」
 故に。
「こんなことをしでかした連中の首根っこを掴める。そのとっかかりが、コレじゃ」
 そうして、ゼルマはサイレントメモリーを絵本にかけ始めた。

●失敗作『613番』
「血のつながってるだけの他人を家族とは呼べん。そんな連中のせいでこうなったんなら、何も感じなくなった方が幸せなんだろうよ。そういう風にしか生きられない奴だっている」
 ポケットからもう一度キャンディーを取り出して、手の上で弄ぶ。
「ま、そのまましばらく生きてみろ」
 そう言って、福松は肩越しにキャンディーを放った。
 『613番』の手に落ちる。
「必要ないわ」
 そう言って飴を突き返そうとするが、福松は黙って背中を向けていた。
 暫くキャンディーを見つめる。
「必要ない」

 少女は、飴を口に含んだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
blank children

――not end...not! not!