●来ぉい、ペンシィィィィィィィル!! 早速だが俺の名前は本郷・轟! 『熱血漫画』家にして熱血『漫画家』だ。いや、この二つは同じものと言って過言ではない!! その証拠に見よ、この魔剣Gペンを!!! これまで数々の荒々しい線を、熱いカットを、凄まじい表情を描いてきたこのペンは、今や熱く燃えているのだ!!!! その炎は人々の魂に火を灯し、燃やし、猛らせ、叫ばせるッ!!!!! 何故ならこのペンがこれまで、そうして人々の魂を燃やしてきたからだぁ!!!!!! さあ叫ぶぞ――ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!! ●今日の俺は一味違う……見よ、この顔を!! 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が遠くから走ってくる。 身体を斜めに傾け、土煙と熱気を吹き上げやってくる。 大きく態勢を屈めてブレーキ。土と煙と汗が散り、大きな動作で振り向いた。 「ようみんなっ、熱いバトルが――始まるぜ!」 あれ、コイツ……こんなヤツだったかな。 主流七派が一つ六道がアーティファクト研究等に特化した個人主義者の集まりだと言うのは最近周知の事実になってきて、中でも魔剣シリーズと呼ばれるヘンテコなアーティファクトの効果測定を続けている幹部がいると言うのも、割と知れてきた話である。 だが今日は、そう言う話は一切忘れて構わない。 そう、そうなのだ! 今日はそんな背景などどうでもいい。 一番大事なのは、このノリにどこまでついて行けるか……否、押し返す程の勢いが君にあるか、なのだ!! 「何故なら、今回相手にするアーティファクトは……魔剣Gペン!!」 「「魔剣Gペンッ!?」」 リベリスタ達の額に汗が浮かぶ。 歯を食いしばり、拳を握り、顔をぐっと引き締めた。 「こいつは周囲の世界を強制的に劇画調に変えてしまう。それだけではない、そのノリについて行けなければ圧倒的なパワーダウンは免れない!」 「そんな……!」 「だがな、それはチャンスでもあるんだぜ?」 ニヤリと笑う伸暁。 強く、そしてしっかりと親指を立てて見せた。 「自らが劇画調になれば……そう、魂を劇画調にすれば、魔剣のフィールドは逆に、こちらのエネルギーになる!」 「ばかなっ、魔剣の力を自らのものとするなんて……!?」 「そうさ、馬鹿さ。馬鹿の所業さ! だからこそ――強いッッ!」 獰猛に、そして強烈に高笑う。 「所有者は六道の白服構成員。そしてサポート戦力として6人の白服フィクサードが固めている。どうだ、苦しいか?」 「フ……ハハ、ハーッハッハッハッハ! 苦しいだって!? むしろ嬉しいさ、こんなチャンスが、あるなんてなあ!!」 扉を両腕を大きく広げて開け放ち、リベリスタ達が飛び出していく。 その向こうには、大きな夕日が霞んでいた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月17日(土)01:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●今からッ、叫びながら書くッッ!! 読んでいて叫びたくなったら、我慢することは無いッ、いつでも叫べッッ!!! 「っしゃああああくぁ! オラァァア! バァァァァニンンッ!!」 『国籍不明?』レイシア・アラッカルド(BNE003535)の叫びが突如として宇宙へ響いた。嘘や誇張ではない。土星付近で彼の声が魂の振動として観測されたのだ。 かくして地球、日本! その一角、昼間の熱いアスファルトの上である! 「劇画とか言われても全ッ然ッ、分からねえ!! けれど相手が燃えるって言うんなら、おれも全力燃焼で、往くのみだな! なあ!?」 「フッ……」 『(自称)正義の忍者』ジョニー・オートン(BNE003528)は片手でサングラスを展開。中指一つで装着。太陽の光を照り返して見せた。 「己が能力を独り占めせず敵にまで及ばせるとは誠にあっぱれ! ならばこちらも全力を出さねばなるまい! 魂を、燃やさざるをえまいっ!」 「それに敵の情報が分からないと来た、フフ、フハハハハ――」 腹を抱えて天を仰ぐ柿木園 二二(BNE003444)。 太陽すら温いとばかりに呵呵大笑した。 「ハァーッハッハッハ! こいつぁ燃えるぜ、熱い魂を持った俺達八人で、受けて立つぜェ!」 そんな彼らに背を向けて、『√3』一条・玄弥(BNE003422)はよれた煙草を噛み潰した。 たまった灰が零れ落ち、じわりとアスファルトを焼く。 「正義……正義でごぜえやすかぁ」 口の端から煙を漏らす。 先端の灯を指で消すと、携帯灰皿に詰め込んだ。 「あっしは所詮邪道の身。どうなりやすかねえ」 ここで一つ、紹介してもよいだろうか! いや、させて頂きたい! 「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!!」 右手の手刀が天を差し、左手の手刀が地を差した。 ゆるりと回る両腕。 「悪を倒せと俺を呼ぶ、俺は正義の宅配便――リベリスタ安西、GOゥッ!!」 「え、あの……え?」 『まごころ暴走便』安西 郷(BNE002360) の名乗りである。 『深紅の眷狼』災原・闇紅(BNE003436)は劇画と漫画の中間くらいの顔になって周囲をきょろきょろと見回した。 「何個の空気。別の世界なの? 何なのかしら?」 「辰巳先生によって提唱されもはや古典芸能となった漫画のジャンルですわ」 「ジャン……ル?」 『元漫画家志望』小松 知世(BNE003443)が闇紅の背後にゆらりと現れた。慌てて振り返る闇紅。 何故かパイプを手に持っており、軽く片腕で自分の身を抱くような、くねりとした独特のポーズをとっている。 「私、こうみえても一時期漫画家を志していた頃がございますの。そう、一時期ね」 昔の男を語るかのように遠くの空を見つめる知世。 闇紅は周囲『えー』という顔で固まっていた。 「げ、劇画って……」 「劇画劇画、劇画、かっ……」 頭を抱える闇紅。その背景の奥から、『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)が落ち武者のようにだらりとした姿勢で歩いてきた。 「これより先は死地なれば、騎士道にて立ち行くことあたわず……っ」 汗をびっしょりとかいて、顔を上げる。 片目が前髪に隠れて表情は伺いにくかったが、惟の目にはもう眼前の世界すらよく見えてはいないだろう。 ひととき、目に見えぬ携帯カセットテープレコーダーを幻視した。 再生ボタンがカチンッと上がる。 さあ裏返せとでも言いたいのか、押しても居ない取り出しボタンが降り、カセット口が開いた。 片手を近づける。指先が震えていた。 親指がカセットテープに当たり、一ミリだけ持ち上げる。かさりというプラスチックの摩擦音。カセットの影から、『ダブルキャスト』と油性マジックで書かれたB面が見える。 「…………ッッ!!」 惟は目を強く瞑り、カセット口を『そのまま』押し閉じた。 「ダブルキャストは、使わんっ! これから騎士道をとったら、何も残らないだろうが! 急増の人格ごときで、奴の魂に対抗できようものかっ!!」 巻き戻し、完了。再生ボタンがひとりでに降り、脳内の誰かが囁きかけた。 ――開幕のベルが鳴るわ。あなたの為に! ●苦難があったら立ち止まるな。逃げてもいい、立ち向かって壊れてもいい、悲しい結末もあるだろう、報われぬ努力も、叶わぬ願いもあるだろう、みじめに踏みにじられ、泣くことしか許されぬことだってあるかもしれない。だが、それですべてが終わるわけじゃない……人生の最後、振り返ったその時、お前は胸を張れるのか!? 生きていたと、云えるのか!? ここは街である。 人が活き、そしてどこかで死ぬ、この世界のどこにでもある、当たり前の街である。 そんな中に一人、一本のペンを握る男が居る。 世界を文字通り塗り替え、炎を背中に背負うのではなく、内から溢れだす男が居る。 本郷轟。 彼は今、八人のリベリスタと対峙していた。 「神妙に蹴り殺されろ……と言いたい所だが」 安西郷。 奇しくも同じ字と音を持つ彼は、飛び上がる直前の体勢で止まった。 「お前の言い分も聞かないわけじゃない。悪には悪の考えがあるんだろうからな。ほら、三つ数えるうちに言ってみろ!」 後ろの踵をじりりと鳴らす。 「ひとつ」 「悪は世に認めらぬものこそを言う!」 体勢をゆっくりと低くする。 「ふたつ」 「魂が理屈を凌駕した時、世界はしばしばそれを認めない!」 歯を強く強く食いしばる。 「みっつ」 「俺達は、悪だ。だが――」 二人は同時に跳び、当時に唸り、同時に蹴りを放った。 「「そんなこと知るかぁぁぁぁぁ!!」」 燃え上がる炎! 渦巻く上昇気流! 七人のリベリスタと七人のフィクサードは今、魂からの声を共に、ぶつかり合ったのだ! 「詰まる所、喧嘩は気合だ。気合があれば何でもできる……っ」 剣は魔鞘に収めたまま、AFの中にしまいこんである。惟は顔の前で両腕を交え、全身から暗黒を撃ち放った。 ある筋は直線に。ある筋は稲妻状に、ある筋は阿弥陀線を描いて飛んでいく。 その中を六人の白服達はジグザグの高速移動で回避して突撃してきた。 「何、こいつら……動きが半端無いっ」 ソニックエッジを繰り出す闇紅。しかし大量の効果線に彼女の攻撃はブレ、敵に一発とて当たらない。 「おとなしく当たりなさいよ……この!」 元々表情の薄い闇紅である。焦りはあれど顔には出ない。しかし汗には現れていた。圧倒的な熱気。殺気も情熱も混じり合った、溶鉱炉のような空間なのだ。未だ三月とは思えぬ熱さに、脂汗が自然と浮かんだ。 「「そこだぁぁぁぁぁ!!!」」 白服達が三方向から一斉にフライングキックを仕掛けてくる。 闇紅危うし。心ある者ならば目を覆うであろうその時。 「メェェェェェガックラアアアアシュ!」 レイシアの剣が。否、全身が白服へとぶち当たった。 はっきりと言おう! 彼はレベルは1。装備は初期状態から一切変わらず、スキルと言えば最大HPを百増やした程度のものであった。アークにて最も弱いランクのリベリスタであり、最も無能なリベリスタと言ってもいい。 無論命中率など微々たるものだ。当たるわけがない。 彼の魂が、もしくはプレイングが、ただごくごく普通の者であれば、そうだったろう。 だが彼は、普通ではなかった! 「何ッイ!?」 「お前らの魂が燃え尽きるか、オレの魂が燃え尽きるか――勝負ゥ!!」 たった1ポイントすら入らないと言うような攻撃で、白服は派手に吹き飛んでいく。 はっとして顔を上げる闇紅。 左右からはまた別々の白服が飛び掛っていたが。 「拙者の手が真っ赤に燃える、お前を倒せと轟き叫ぶ。拙者に迎撃の用意あり――」 その熱さを知る者なれば、誰でも知っているような文句を述べて、彼は同じ熱さへと自らを奮い立たせた。 偉人の言葉を述べ、同じく魂を震わせるように。 アニメや漫画で見たあのセリフは今、同じ魂を震わせるに足りていた。 「正義忍者ジョニー・オートン。一心不乱の業炎撃でゴザルッ!」 彼の実力も大したことは無い。普通ならば軽く避けられ、万一当たってもかすり傷さえ作らなかったかもしれない。 だが彼は、彼の魂は違う。白服の蹴りを自らの腹に受けつつ、拳を相手の顔面に叩き込んで見せたのだ。 その対極では鉄爪をカシャリとすり合わせた玄弥が、静かに背中を丸めていた。 風を切り飛び掛る白服の姿が。 地面を踏みしめる玄弥の姿が。 ほんの数秒だけ白一色に塗りつぶされた。薄く、そして時として荒々しい線のみを残した彼らは、目まぐるしく交差する。 「熱さなんてありゃあしやせん」 黒墨一閃。 「手段を選ばぬちんぴらでさあ」 交差二閃。 「悪徳塗れの邪道者、あっしはただの」 乱れ連続十五閃! 彩を取り戻した世界に立って、玄弥は煙草を一本取り出した。 「人殺しでごぜえやす」 白服が放ってであろう業炎撃で、彼の煙草には火がついていた。 一方その頃 「きゃあ!」 知世が白服のダブルパンチを受けて地面を転がった。 肩の破れたチャイナドレス。 乱れた髪が顔にかかる。 そんな彼女の前に、一人の男が立ち塞がった。 「二二君っ!」 「……ああ」 顔の前に翳した手で、大きく横一文字を切る。 途端、彼の全身から黒いオーラが噴き出した。 「見える蚊、このオーラが。腹の底から湧き上がるこのオーラ(闘志)が!」 「くっ……!」 歯を食いしばる白服達。 痛みにではない。 戦慄にだ。 「二二君、逃げちゃ駄目よ!」 「分かってる!」 「二二君、決して走らず急いで歩いて来て、そして早く助けて(略してフジケテ)!」 「うわ、今そっち方面の空気を出しちゃぐあああああああ!?」 空中で前に三回転後ろに二回転そして最後にきりもみ回転を加えた白服のキックが二二に命中した。 大量の効果線と共に吹き飛んでいく二二。 「ふ、二二くーん!」 「次は劇画のノリでぇぇぇぇぇぇぇぇっっ」 ●娯楽に熱くなることは無駄なことだ。馬鹿なことだ。かけなくてもいい金をかけ、使わなくていい時間を削り、限りある人生を消費してまでやるべきことかと人は言うだろう。だが君が苦しい時、元気になりたい時、勝たねばならない時、君の力は何処から沸く。胸の熱さは何処から来る。君が今やっていることは、本当に無駄なことか!? 数人いた白服は次々と倒れた。 しかしリベリスタ達とて無傷ではない。 どころか、既にふらふらで、もう倒れかけている者さえいた。 血塗れの片腕をだらんと下げ、よれた煙草を咥えていた。 「あっしは、劇画を知らねえわけじゃあない。ただそんなに若さがねえだけでさあ」 白服の拳が頬に炸裂し、思わず顔を反らす。 血の混じった唾と煙草を吐き捨てて、玄弥は首を鳴らした。 「叫びもしねえ、どかどかと音を立てて走りもしねえ。向こう見ずな博打もしなけりゃあ、酒だ女だと遊び明かしもしねえ。枯れた男と言われりゃあそれまでよ」 フェイトは既に使っていた。故にもう後は無い。 こんな自分にドラマチックな復活劇があろうなどと期待もしていない。 「しかしあっしは――『真剣』ですぜ」 相手の胸に拳を叩き込む。爪が背中から貫通し、血が噴き出る。 仰向けに倒れる白服。しかしまた別の白服が玄弥を狙っていた。 こりゃあいかんなあと呟く玄弥。 しかし、白服を横合いから殴りつける者がいた。 「劇画調になるためにはどうすればいいか」 蓬莱惟。 色白。 性別不詳。 脳内不明。 奇人変人。 しかして惟は、惟のままである。 「理屈なぞ小賢しく考える必要はなかったのだ。熱い魂と炎の心、その為に必要なものなど、いつもこれは持っていた。命を燃やし時には地に伏せ泥にまみれそれでも立ち上がって挑んできた。これの経験! これの記憶! 騎士であるがために生きてきたこれまでが――」 拳を握る。 今この瞬間、この時に限り、惟の拳は宇宙の中心にあった。 「これの全てだ、呪刻拳ッ!!」 歯を食いしばり、白服を殴り飛ばす。 そして振り返った。 残る一人。 魔剣Gペンの所有者にしてフィクサード。 本郷轟へと。 二二の拳と本郷轟の拳が激突した。 血が吹き出し周囲に飛び散る。 「お前らの白服を、真っ黒な俺色に染め上げてやるぜ!」 「いいぜ、その頃にはテメェの心は真っ白な俺色になってるだろうけどな!」 左拳の業炎撃で殴り倒される二二。 「二二君っ!」 知世が駆け寄り、倒れた二二を揺すった。 「大丈夫、なんとも……うぐっ!」 「二二君、これ以上は」 血を吐く二二に、知世は首を振ろうとした。その頬を片手でそっと止められる。 「ここで辞めるわけには行かねえ。勝って……勝ってアイツと握手をしてやるまで、辞めるわけにはいかねえ!」 「……分かったわ」 頷く知世。二二と共に立ち上がると、動きづらいチャイナドレスの裾を自ら引き裂いた。 「行きなさい! 我々の敵を叩くのです!」 「おう!」 ペインキラー発動。 知世の援護を受けて二二は全力で呪刻剣を叩き込んだ。 思わずのけぞる本郷轟。 「辞められないのは俺も一緒だ。任務の為、仕事の為、生活の為、世からはじき出されちまった俺達という弱者の為……ではッ、なくッ!」 Gペンを握った拳に力が宿り、二二を強烈なパワーで殴り飛ばした。 「今俺は、ただただ戦いを辞めたくねえぇ!」 歯が欠け飛び、彼自身も飛んでいく。知世がキャッチするものの、二人纏めてその場に転がった。 「ならば見よ、拙者の魂!」 背後から猛烈に突撃するジョニー。 勢いよく振り返った本郷轟は拳を突出し、そしてジョニーも拳を突き出した。 業炎撃爆裂交差!! 互いの頬に炸裂した拳は炎を生む。 ジョニーの僅かな体力などすぐに底をつく。 「拙者は諦めぬでゴザル、この命ある限り!」 フェイトが削れる音を幻聴する。そしてジョニーは二発目の拳を叩き込んだ。 次の瞬間蹴り飛ばされるジョニー。 入れ替わるようにして闇紅がソニックエッジを仕掛けるが。 「甘ぇ!」 カウンターによって叩き倒される……と思われたその時! 「ふふふ、ふふははは、あっはははははははは!!」 闇紅は耐えた。正確にはフェイトを犠牲にした踏みとどまったのだ。 「やってくれた、やってくれやがったわ!」 本郷轟の手首を掴み、素早くその場に押し倒す。 「あたしにここまで恥をかかせてくれてまさか生きて帰れると思ってないでしょうねここからが本番よ魂だの劇画調だのそんなの知ったこっちゃないわあんたらはあたしを怒らせたってだけで充分よ情けなんて微塵も入る余地が無いくらいバラバラにしてくれるわああっ!」 マウントポジションから連続で攻撃を叩き込む。 本郷轟はしこたま食らったが、死ぬ気で闇紅を蹴り転がし、その場から飛び退いた。 しかし本郷轟は休む暇などない。頭上から炎を上げて飛び蹴りを繰り出してくる郷が見えたからだ。 「安西ィ!」 「本郷ォ!」 身体全体を使ったジャンプアッパーとフライングキックが激突。 炎が弾け火花が飛び散った。 しかし二人はその場から少しも動かない。力が拮抗し、物理法則すら無視し始めたのだ。 嘘ではない。本当に今、彼等は重力を無視していた! 「俺だって忙しいんだよ! フラグが立ってるかどうかわからないリプレイを常に見返し以前関わった子が同情する依頼が出ないか毎日チェックし今日の依頼には新しい女の子が居ないかなとか思いながら暮らしている俺! そんな俺に!」 「うるせえ、謎の上司に命令されて副作用不明のアーティファクトなんぞ持たされアークが出れば丁度いいから戦って死ねと意味の解らん捨て駒宣告をされている俺! そんな俺の!」 「迷惑をかけるなああああああ!」 「邪魔をすんなあああああああ!」 爆発! 二人は激しくきりもみしながら付近の外壁へ激突した。 ボロボロのリベリスタ達。 死にぞこないのフィクサード。 本郷轟は立ち上がり、最後は誰だと拳を構える。 そんな時彼の前に立ちはだかったのは。 なんとレベル1のリベリスタだった! 「行くぜ、本郷轟ッ!」 レイシア突撃。しかし圧倒的実力差によるカウンターが入った。 乏しい体力など一発で底をついた。迷わずフェイトを消費。 「当たれぇ、メガクラァァァァッシュ!!」 渾身のパンチ。それも当たらない! 「なっ!」 「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」 腹に、メガクラッシュが叩き込まれた。 天高く飛び上がる。 意識がブラックアウトする――寸前! レイシアは、叫んだ。 「う、おおおおおおおおおおお!!!!!」 宇宙の端まで彼の声は届いただろう。 彼の魂は、世界を越えてでも届いたことだろう。 そして今。 ドラマ率7パーセントのダイスロールが、世界を越え次元を超えたどこかで行われた。 誰もが目を覆い、誰もが諦め、誰もが呆れ、誰もが捨てるその一瞬、だがレイシアだけは捨てていなかった。 彼は今、今、今この瞬間においてのみ。 「FINAL」 7%の確率で拳を握り。 「MEGA」 7%の確率で片目を開け。 「クラァァァァァァァッァァァァァァアァアアアアアアアシュッッッ!!」 7%の確率で本郷轟の顔面へ拳を叩き込んだ。 それは奇跡だった。 しかしこの場においてのみ、奇跡は魂の輝きによって引き寄せられる。 それが、今だった。 「ぐあっ!?」 地面に殴り倒され、転がる。 そうして本郷轟は、ついに気を失ったのだった。 戦いの終わりが、訪れたのだ。 ●エンドロール 魔剣Gペンは回収された。 それが、今日起こった全ての結果である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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