●おもいたったがきちぢつ 単刀直入に言うとおっさんと熟女をもふもふしたくてたまらんのでちょっとボトムチャンネル往ってきます。 ●どえりゃー 「悍ましい事件ですぞ! 多分!!」 と、事務椅子をくるんと回し『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が言う。何とも言えぬ表情で。 「アザーバイド『イプシロン』」 モニターに映し出される橙色の人型。人間サイズ。人間フォルム。見た限りはヘッポコそうだが。 「こいつが白昼の大通りに出没し、通行人に謎の光線で襲撃しております。 何と恐ろしい……しかし本当に恐ろしいのはここからですぞ。なんとこの光線を喰らってしまった者は――」 息を飲む。心音と一間。 「おっさんか熟女になりますぞ」 は? 「おっさんか熟女になりますぞ」 いや、そういうアレじゃなくって。 「えぇと、人間エリューション老若男女種族WPロリ御婆様ショタ御爺様邪悪幼女諸々など一切関係なく、おっさんか熟女になります。性格もそんな感じで。 唯一の幸いはこの光線の効果が半日程度って所と、光線を喰らった一般人の記憶は無いって所でしょうか」 モニターに映る橙色。妙に速い。わさわさ。「加齢臭が好きなんだッ」「ふくよかなぽんぽんにかおをうづめたいんだッ」「熟女に膝枕して貰いたいんだッ」「おっさんの背中にしがみ付きたいんだッ」とか、なんとか、うん。あぁ、うん。 「これを送還するのが皆々様の任務なのですが……結構、高階層の住人で個体値はそれ相応だそうで。力尽くは難しいでしょう。 うーん、もふもふさせてあげたり甘えさせてあげたりしたら、満足して帰るかと。空間を渡る能力を持ってますんで。 あ、一つ注意を述べておけば……このアザーバイド、かな~り豆腐メンタルです。 間違っても罵ったり冷たい言葉を浴びせたり苛めたりしないで下さいね、最悪泣きじゃくって大暴れしてトンデモ無い事になりますぞ!」 やさしさが大切ですぞとメルクリィは言う。 「気性としては博愛の穏健さんです。暴れない限りは無害ですので、それとな~く頼みますぞ。 まぁ……奇々怪々なアザーバイドですが、お気をつけて!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月23日(金)22:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●出来心だったんです 白昼堂々加齢臭。それでも結界で散ってゆく。 「車には気ぃつけや~!」 振る手はミミズク、『もみ婆』草臥 紅葉(BNE001702)は息を吐いた。長生きはするもんやわ。 「えらいけったいなアザーバイドも居たもんやねえ……! なんにせよ、戦わずに帰ってくれるんやったらそれに越したことはあらへん。ここは楽しんでもらって穏便に帰ってもらおかっ」 「ヒューッ♪」 口笛と共に『フロムウエスト・トゥイースト』キャロライン・レッドストーン(BNE003473)のブロンドヘアが靡いた。熟女好きのアザーバイド、ねえ。 「向こうの世界とこっちの世界じゃ色々と違うと思うんだけどォ、こっちの熟女で満足するのかしら?」 曰く、年齢はともかく肉体年齢は二十代(自称)なのだと。 「光線なんか受けちゃったら、アタシの美貌が衰えちゃうじゃない? ああ、恐ろしいわァ♪」 自らの豊満な肢体を抱いてくねくね。見遣る先には此方に気付いたイプシロン。ここじゃアレなので近くの公園へ移動しようよ、と呼びかければ頷いた。光線を放ちながら。 ●Oh、アメリケンジュクジョ 「ジャパニーズ・オモテナシの心ね。折角この階層までやってきたんだし、サービスサービスで行くわよォ! アタシのこのビッグサイズな胸に埋まりたいでしょォ? 膝枕もイイんでしょォ? うふふ。 コスプレ、シチュエーション、どんなオーダーも喜んで受けてあげるわァ。 エンターテインメントの本場アメリカ生まれのテクニック、見せてあげる!」 いえーい! そんなこんなでキャロラインへ光線が発射されて。 「……」 己の身体を確かめ――ポカーン。変わっていない、何一つ。 「なによォ、全然変化ないじゃないの! ちょっとイプシロンちゃんどうなってるのよもっと頑張りなさいよォ!」 襟首掴んでゆっさゆさ。やー、アメリケン熟女マジごちそうさまですほくほく。 「アタシは二十代のピチピチボディなのよォ!もっとこう、色々と変わるはずじゃ……み、認めないわよ! アタシは若いんだからァーーーーー!」 若さに拘泥する熟女メンタル。頭を抱えて嘆く彼女。大丈夫です問題は若さじゃないんです。可愛いなァなでなでぎゅっぎゅ。 「……なによォ。慰めなくてもいいわよ?」 キュンと来た。隣にお山座りして、彼女の肩を抱いて、なでなでなで。ふわふわのブロンドヘアー心地良いです。もふもふ。そんなアザーバイドにキャロラインはされるがまま。何処か気の抜けた感じ、遠い目で、 「やだァ……老けるのは嫌だわァ……」 ふるふる。やっべぇこのじゅくじょ萌え。大丈夫今の君もこれからの君も素敵だよ!かわいいよ! 「あぁ、ウン、ありがとう……フフ」 まさかこの豆腐メンタル野郎に慰められるとは。横から優しく抱きしめられなでなでされながらキャロラインは複雑な気持ちを心に抱く。 ヤツの心が折れないよう会話でフォローを心掛けるつもりだったのだが……先に折れたのは彼女の心だったようだ。 ●おっ、さん! 『ところで名古屋、お前さんオーバー三十路だったな。よし、何も言わずにお前さんの枕を貸してくれ……頼むぜ、おっさん少ねェンだよ……!』 という三高平の遣り取りを思い出しつつ『ステガノグラフィ』腕押 暖簾(BNE003400)は仲間達の変化に感心の声を漏らしていた――彼自身は既に見た目アラフォー中身アラカン、変わった箇所は無い。 「凄ェな欲の力半端じゃねェな。 ……さてお前さん、んな見境無ェ事すンじゃねェ。さァ来い俺達が目一杯甘やかしてやンぜェ!」 誇りを胸に仁義上等。シュッとしたオッサン。シュッとしたオッサンや! 「こんな日は、他所でのんびり過ごす方が得策ですぜ」 ですな。さぁノンビリしませう。 「お、どうした? 来るか?」 謎の構えでジリジリジリ。 どっこいイプシロンは無駄に速い。無駄にダブルアクション、まふーんと暖簾のシュッとしたぽんぽんに抱き付くやもっふもっふぽんぽんもっふ。芝生にごろごろふるもっふスーハー。うーんかぐわしい加齢臭。たまらん。メタボリィもGOOODだけどシュッとしてるのもGOOOD。 当の暖簾はへらへらしたままアザーバイドと一緒にごろんごろんじゃれ合っている。ちょっとひっついてくるのを邪魔してみたり、もふもふしたり。どれだけ引っ付こうが乗っ掛かろうが腹触ろうが構わない、自分自身も楽しいから。 「まァ俺の腹なンて触って楽しいか分かンねェが……」 楽しいですとも。えぇ、はい。かぐわしい。 「あ、角も尻尾も引っ張ンねェでくれよ、痛ェからな」 フリですねわかります。尻尾引っ張ります。掃除機みたいにビャーって戻らないんですか? 「イデデデデ! ったく引っ張ンなーって言ったろ! そんな奴には問答無用でこうだぜェ!」 のれんの おひげじょりじょり こうげき! こうかは グンバツだ! なんて、ごろごろぐだぐだ。 「ほら」 のんびりするのも良いだろう。暖簾が手渡したのは三高平にて機械フォーチュナから貸して貰った彼の枕、それから彼自身の上着であった。うひょほーかぐわしいーこりゃたまらん! 「俺もやっぱすンのかね、お前さん『は』好きなニオイ」 うん。 「……くっ……」 実にGOOOD。 ●日本の熟女は、美しい 「……この年で若返れるとは思うてへんかったわ、懐かしい姿やわぁ」 仲間に年齢に合った化粧を教えてあげる為と持って来た鏡――そこに映る紅葉の顔はいつものミミズク顔ではなかった。和服の似合う薫り立つ熟女、凛とした黒のひっつめ髪に穏やかな灰色の目。熟成した大和撫子、麗しの奥様。純日本熟女。ふつくしい……おくゆかしい……奥様ェ……ぎゅっと抱きついてもふもふ。和服の奥ゆかしい香りが堪らない。日本家屋のかおりがする……畳みの香り。もふもふ。もみばあもふもふ。いえもみ奥様もふもふ。奥様もふもふ。たまらんち。 「おやまぁ、よかったら膝枕でもどうやろう?」 良いんですか。 「えぇんよ」 それは和服の上からの柔くそれでいてしなやかな肢体の感触。柔らかい包容力。正に小宇宙(コスモ)。 「死んだ旦那が好きやったんよ、こうやって頭乗せて縁側で夕涼みとかするんが……」 しみじみと語る艶な声。その橙頭を撫でながら呟く「イプシロンちゃんの耳がどこにあるのか分かれば、このまま耳掻きも出来たんやけれどねえ」と。 「ん、さすがにしゃあないから、これで我慢したってや?」 撫でる掌は優しく温かい。奥様……私では旦那様にとても及びませんが、今ぐらいは、せめて。腰に手を回して抱きすくめる。肺腑に香りを送り込む。 「好きなもんのためにここまで出来るやなんて、ほんま凄いなあ思うたよ。 帰っても元気にやるんやで、病気とかあるんか分からへんけど身体には気ぃつけてな」 奥様マジ奥様。キュン。 ●スナックあけみ ここは『スナックあけみ』…… 安い酒と安い人情が売りの、場末の店。 うらぶれた店内には、紫煙と退廃的な空気が立ちこめる。 「ママ、お客さんですよー!」 踏み込んだ橙色を出迎えたのは『アイソレイティッド』斑鳩・洋子(BNE001987)、褐色肌に黒髪が良く似合うぴっちぴちのおねーさん。曰く、場末な水商売の店なら三十路なんてぴっちぴち。 「あら、めずらしい。新顔のお客さんね」 『宿曜師』九曜 計都(BNE003026)が酒焼けした声を投げかける。こってこてな化粧で、幸薄い疲れたオンナ。曰く、場末な水商売の店なら三十路なんてぴっちぴち。何だか、自分の十数年後を垣間見るみたいでアレだけれども。 「ヨーコちゃん、おしぼりお出しして……」 艶な目線で指示すれば「はい、おしぼりどうぞー」と洋子がおしぼりをイプシロンへと手渡した。退廃系スナックのママ熟女。元気溌剌褐色熟女。グレェト! 「ご注文は何にしますー?」 一番良い奴を頼む。 「……お客さん、水割りでいいかしら?」 頂きます。 「ふふ、いい飲みっぷりね」 「ですー」 ありがとうと答える。実は下戸なんだけど、不思議とそのアルコールは苦にならなかった。気怠げなジャズが聞こえてくる。「アタシが昔、惚れてたオトコに、なんか似てるわ」と。ママの声に顔をやれば麗しの横顔。 「ねぇ、アタシも一杯貰って良いかしら?」 勿論ですとも。 「お名前は……、」 横から顔を覗き込ませて訊ねる洋子に応えて曰く、イプシロンです。 「カッコイイなまえですねぇー。私はヨーコです、よろしくおねがいしますー」 「それじゃ、イーさんね。アタシは、ケイトよ」 グラスを置くケイト。ふ、と物憂げな息を吐いた。 「オトコはみんなどこかへ行っちゃう。オンナは待ってばかり……哀しいわね」 切なげな表情、紅く彩られた唇から吹かれる煙草の煙。グラスの氷がカラリと鳴った。哀しげな笑み。 「ヨーコちゃんも、早く良いヒトを見つけなさいよ。アタシみたいにくすぶってばかりになっちゃうわよ」 「ママはくすぶってなんかないですよー? ほらほらもっと笑って、せっかくイプシロンさんがいるんですし」 そうねと笑む。アイシャドーの伏せがちな瞳――搗ち合う視線。 「イーさんも、またいらしてよね。アタシのこと忘れちゃイヤよ? 辛いことがあったら、いつでもアタシの膝で泣けばいいからサ……」 夜の蝶。届かないからこそ、何処までも麗しい―― ここは『スナックあけみ』…… 安い酒と安い人情が売りの、どこにでもある場末の酒場…… ●『黄昏の魔女・フレイヤ』田中 良子(BNE003555)改め『黄昏の三十路・振伊矢』田中 良雄さん いやさすがに奇々怪々過ぎるだろう。おっさんと熟女を愛するとかさすがの我もびっくりだよ。これもうツッコミ待ちだろう。誰かツッコんでやれよ。可愛そうだから口には出さんが立派な変態さんだな! だがしかし! 「我は黄昏の魔女である! 魔女とは人を幸せにするものである! それが例えアザーバイドであろうとも! 故に! 我は! 貴様を! 幸せにしてしんぜよう! 刮目せよイプシロン! 貴様におっさんとはどういうものか刻み付けてくれるわ!! ブワッハッハッハッハ!」 そんな雄々しい声と共に建物の上に現れたのは――筋骨隆々、上半身裸、腹筋ムキムキィ!感情と共にミョインミョインするカイゼル髭は鋭く凛々しく、眼光鋭くウサギも裸足で逃げ出すレベル。 我は、おっさんに、なる!! ブワッハッハッハッハ――ふとましい高笑いが高所より響く。登場する時は誰よりも高い所から飛び降りて登場してしまうのである。すげええええマジ恰好良いマジジェントル腹筋もふもふしたい!と思っていたら「ソイヤッサァ」と一回転加えて跳び下りてくれた。マジイケメン。やべぇ惚れる。抱かれていい。 そんなアザーバイドの目の前で、良雄さんがこれ見よがしに吹き鳴らすのは法螺貝の重低音、サムズアップにジェントルスマイル。惚れざるを得ない。思わず腰に抱き付いて腹筋もふもふもふもふ。 ソイヤソイヤ!それから一緒に捻り鉢巻きをして和太鼓を叩きまくり踊りまくり。ソイヤソイヤ! (フフ、なんと素敵なおっさんだろうか) 腰にイプシロンをしがみ付かせたまま良雄さんはドヤァと薄笑む。 (我も男ならばこのような姿を目指すのだが……如何せん我は女。逆立ちしたって男にはなれん) イプシロンに腹筋をもふもふなでなでされながら思う。女は嫌だ。ひょろひょろして強そうに見えん。何故我は男に生まれなかったのだ。 男ならば他人にバカにされる事もなかっただろうに…… (えぇい! 今そんな事はどうでも良いのだ! 目先の事に集中するの!) ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ! ●【純度100%の団地妻がお相手させて頂きますね】←やったね! 昼下がりの木漏れ日が柔らかく降り注ぐ。 芝生の上に敷いたレジャーシート。微風に緩い波の掛かった髪を靡かせ、掻き上げて――レジャーシートに座った『サイバー団地妻』深町・由利子(BNE000103)は目を細めて柔らかく笑んだ。 “おいでおいで” 片手は手招き、片手は自分の膝をぽんぽん叩き。 いいんですか。膝枕。細いのも良いがムッチリ派である。柔らかい感触の上、真っ白なエプロンに顔を埋めてみれば優しい香りがする……お家のにおい。目を閉じれば「ただいま!」と家に帰って来た時のあのにおいがする。「母さん、今日の御飯何?」ってとこまで見えた。 そんな中、ふと片方の耳から聞こえてきたのはどこかレトロでシックな音楽。片方の耳にイヤホン、もう片方のイヤホンは彼女の耳に。携帯ミュージックプレイヤーから流れる半分このBGM。 「イタリア映画には年上の女性に憧れる少年の甘酸っぱい……みたいなのが多いのよね」 見上げた彼女の優しい笑み。嗚呼、此処は伊太利亜。燦々とした午後、シエスタの甘い白昼夢。最中、音楽に混ざって鼓膜を撫でたのは、 「ねぇ……膝枕だけで……いいの?」 優しく耳に馴染むその声音にあるのは妖艶な。膝枕姿勢のまま思わず目を開けて見れば、服の上からでもその存在を隠せない、木の枝よりも日差しを遮る大きな胸が――更にその奥には、一瞬だけ『女』の顔を魅せた蟲惑的な挑発の表情が。 テンプテーション。効果は無くとも……っていうか既にベタ惚れ状態。光線をするまでも無く熟女、団地妻、ドストライク。良いのですね!と曰くイプシロン、徐に彼女をぎゅっと抱きしめるやレジャーシートの上にごろんと横になった。その母性を象徴するかの様な豊満な胸に顔を擦り寄せる。 「うん……あまえんぼさんしていいわよ」 由利子は少し困り顔、しかしアザーバイドを抱き寄せて好きなようにさせてやる。少しくすぐったい、頭を撫でてやりながら。 「ふふ……おっきな赤ちゃんね……」 貴女の前では誰しも無力な赤ん坊ですよ。母は強しなのです。そんな返答は咽の奥に呑み込んで、柔らかさと温かさに包まれながらその何処までも優しい香りを深く吸い込んだ。 ぽんぽんと柔く頭を撫でる掌の、嗚呼その素晴らしき哉。だがその中で、そっと頭に張られたのは可愛いモル柄の絆創膏だった。空間を渡ってここまで来る中で、どうやら小さな小さな掠り傷が出来ていたらしい。由利子さん、貴方って女性(ひと)は……あなたってひとは!もふもふ。すりすり。ぎゅっぎゅ。団地妻萌え……由利子さんのエプロンになりたい ●やさしさにつつまれたなら 『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)の柔らかい印象を受ける外見は、熟女ともおじさまとも呼べる中性的なそれであった。 「……そう、おいたをしちゃったの。たまにはいいよね、おいたも」 辛い事でもあった?穏やかな声で、隣に座ってもふもふしてくる異形に問う。えぇ、世間ではやっぱりロリや男の娘やイケメンじゃないっすか。いや好きなんですよ?でも一番は熟女やオッサンなのでして……マイナーなのでして…… 「そう、大変だね。――天気もいいし。お弁当作ってきたから、良かったら一緒にいかがです?」 差し出すお弁当。鶏そぼろと卵、中央にきぬさやの三色に紅生姜を添えたもの。お茶はほうじ茶 「春らしいかなと思って……口に合うといいのだけど」 めっちゃ美味しいです。 「はい、あーん」 あーん。びゃぁぁうまひぃいぃ。口元まで拭ってくれる優しい手。思わず膝枕ダイブ。シュッとしたしなやかな足。もふもふ。 「誰かに無性に甘えたくなる時ってあるよね」 はい。なので甘えさせて下さい。じっとしてますんで。 キリエはゆるりと橙頭を撫でる。静かな風が吹き抜けたそのしばし後、徐に口を開いた。 「気が済んだなら、お帰りなさい。貴方の存在は、貴方が思う以上に周りの人にとって、かけがえのないものなのだから」 例えすれ違っていたとしても、きっと貴方を想う気持ちには変わりはないはずだから。 「私もしばらく実家に帰らずにいたら、母にお前はもう私の事なんてどうでもいいんだって泣かれちゃった……もう、私なしでもやっていけるだろうと思ったんだけどな」 お互いまだ、頑張らなきゃね。 その声にイプシロンは――ギュッとキリエに抱きついた後に立ち上がる。うん、そうですね。私は私のあるべき場所に帰らないと。 「お元気で」 キリエさんこそ。 ●さよなら 時間とは過ぎ去ってしまうもの。分かれとはやってきてしまうもの。 良雄さんは涙を流し熱い抱擁をイプシロンと交わし、それを和やかな表情で見守っていた暖簾は試しに感情探査を行ってみる。『幸せ幸せ』あらま。こちらまで心がほこほこ。ちょいと名残惜しくなってしまう。 「この瞬間を……綺麗なまま、貴方の心の宝石箱にしまっておいて。 辛くなったり……寂しくなったら……この音を聴きながら今日の事を思い出してね」 由利子がそっと手渡したのは先程の音楽機。年上の女性との思い出はいつだって優しいけれど少し哀しいモノですよね――ありがとう由利子さん、ありがとう皆様。 「土産にコレでも持ってけ、気ィ付けて帰れよ」 暖簾も758の枕を手渡して、ひらりと手を振る。さようなら。さようなら皆さん、どうかお元気で。 アイツが去って、日も暮れて。 「ちょ、ちょっとサービスしすぎちゃったかしら……」 由利子は自分のした事を思い出してやや赤面、 「ん? 枕……、しまった……!」 暖簾は枕の件で蒼褪め。 兎角、今日も平和な一日だったのである。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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