●Dream Land 夢を見ていた―― 沢山の妹達が俺を取り合って戦っていた。俺の為にごめんよ妹達。 ポニーテール、ツインテール、ボブカット、金髪、黒髪、メガネっ子、和装……様々なフェチ魂を揺さぶる少女達がアニメの様に大きな刀や銃を振りまわし、激しく炎や稲妻を撒き散らす。 しなやかな肢体が踊り、揺れる髪に飛び散る汗。 争いは好きではないが、この光景は悪くない。いや、むしろ非常にいい。 このまま永久に夢が覚めなければいいのに…… だが、現実という名の忌わしい敵は無情にも俺の願いを叩き壊した。 けたたましい目覚ましの音が響き渡る。 俺はせっかくのユートピアからこの糞下らない現実世界へ引き戻された事に呪いの言葉を吐きながら、目覚ましを止め、布団を捲り、のろのろと身を起こしたのだが…… ●Waste Days ここは間違いなく俺の部屋だ。 とある閑静な住宅街の片隅にある安アパート。 古くてあちこちガタがきているが、静かで立地条件も良く部屋は広い。 何かと物持ちな俺にとって部屋が広いのは大事な要素だ。 だが、何か違和感を感じる――そうだ。俺の部屋はいつももっと散らかっている。 アニメ雑誌が塔を作り、フィギュアやDVD、グッズが山の様に積み上がっている筈なのだが、妙に片付いている。 いや、そんな事より―― 布団を捲った筈の身体に重みを感じて目線を下げると、そこに少女がいた。 正確に言うと、まだ布団の中にある俺の腰に抱きついている。 薄手のパーカーにショートパンツのボーイッシュないでたち。すやすやと寝息を立てるその横顔は、まるで天使の様だ。ニーソな所もポイントが高い。 まだ夢は終わってなかったのか? いやいや、目は覚めている。しっかりしろ俺。 確かに夢の様なシチェーションだが、誰かに見られたら犯罪者の烙印を押される事は疑う余地もない。 しかし、この子はいつの間に俺の部屋へ? 昨日は(いつものことだが)一人で帰宅したはずだ。 付き合いの狭い俺の記憶のどこを辿っても、全く心当たりも見覚えもない子だ。 いや、どこかで見たことある様な……? 思い出そうと意識を集中させると、ふと部屋に良い匂いが漂っている事に気が付いた。 これは美味そうな……味噌汁の匂い? 「あらあら、お目覚めですかー? ちょうど朝御飯の支度ができる所ですよー」 のんびりした優しげな声が響く。ひょいと台所から顔を出したのは艶やかな黒髪ロングのおっとりした雰囲気の少女。フリルの付いたエプロンが何ともいえない可愛らしさを醸し出している。さしずめ幼な妻と言ったところか。 見とれているといきなり背後から布団を蹴りだされる。 「いつまでそうしてるのよ。掃除機かけたいから早くどいて頂戴」 そこに立っていたのは、これまた可愛いメガネっ子。クールな眼差しがいかにもな感じで、冷たくされながらもどこか喜びを感じてしまうのは気のせいか。 「んんー? うるせーな。もう朝かよ……」 腰に抱きついていた少女が目を覚まし、欠伸をしながら起きあがる…… 色々疑問はあるのだが、だんだんどうでもよくなってきた。可愛い押し掛け女房が3人もいる生活―― 悪くないじゃないか。今まで彼女なんかいた事など無かった俺にずいぶん遅咲きだが人生の春が来たらしい。そうとなれば、この状況、楽しまなければ損じゃないか。 俺は状況に流される覚悟を決め、最初のイベントである4人での朝飯を楽しむ事にした。 ●Take Off 「一般人がE・フォースに取り憑かれた。放って置くと、取り憑かれた青年は衰弱して死んでしまう」 アーク本部、ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を前に真白イヴはいつもの様に淡々とした調子で切り出した。 「敵は三体。元々このE・フォース達は、とあるアーティファクトの作りだした閉鎖空間の中でしか活動できなかったのだけど、被害者の青年の寿命を消費する事で現実世界に実体化できるようになったの。波長が合ったとでもいうのかしら? とにかくこのままでは青年の寿命が吸い尽くされてしまうのも時間の問題」 イヴは一呼吸置いて説明を続ける。 「今の所、E・フォース達は青年とそれなりに上手く付き合っているみたいだけど、タイムリミットはそう遠くない。青年の命が尽きればE・フォース達は次の獲物を求めて徘徊し、周辺に革醒現象を撒き散らしかねない。そうなる前に撃破して。E・フォース達は人間の少女の姿をとっていて、それぞれ近接格闘、遠距離魔法戦、回復支援に長けていて連携しながら向かってくるから充分に気を付けて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:柊いたる | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月19日(月)00:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「良いお天気ですねー。ほら、もうお花が咲き始めてますよ」 「おい、このジャングルジムすげー高いぜ!」 「全く……喜ぶのはいいけど、2人ともはしゃぎ過ぎよ……」 澄みきった青空の下、人影まばらな公園に少女達の声が響き渡る。 汚れを知らない天使の様な微笑み。それに囲まれる俺はなんて幸せなのだろう。 この夢の様な時間が、永遠に続くとその時まで俺は信じて疑わなかった…… ● 「可愛い少女が具現化とかなんて羨ま……危険な状況」 その様子を見ながら呟く『自堕落教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)は聖職者である。 「まさにそれなんてエロゲ」 その横で身も蓋もないツッコミを入れるのは『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)だ。 「二次元特有のありえないくらい純粋無垢で無償の愛を向けてくれる素敵な妹が私もほし……私が、私たちが退治して現実というものを突きつけてあげないといけない」 力強く拳を握りしめるソラ先生。そう、リベリスタは人間の自由と平和のために、今日も敵性エリューションと闘うのだ!(SE:ばばーん) 「少女も良いけど、私なら少年や青年が実体化するパターンでもうれし……」 「確かに可愛い子達だなあ。彼にとってはさぞかし楽しい生活なんだろうね? しかし、僕も頑張ればあそこまでいけると思うけどな」 と妙な闘争心を燃やすリィンとソラ先生の目が合う。実年齢はともかく10歳程の外見を保ったままのリィン。整えられた髪に、幼いながらも凛とした東欧系の顔立ち、見るからに仕立ての良い服など、ぱっと見は良家の坊ちゃんである。(アーク調べ) 「……どうかしたかい?」 「……なんでもないわ」 (またですか……まぁ、闘士子とはまた戦いたかったから丁度良かったですよ) 『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)は、以前にこのE・フォース達と戦った事があり、再戦の機会に静かに闘志を燃やしていた。 (このE・フォースたちは、波長が合ってて大好きなにーのことをいつか殺してしまうこと、 わかっていて動いてるのですかね……) そんな2人のやり取りの横で『マザーシスター』御厨・妹(BNE003592)が結界を展開し、公園を散策したりランニング等をする一般通行人を戦いに巻き込まない様に遠ざけた。 ● 最初に異変に気が付いたのはマグメ子。 「あら……この感じは……また邪魔者が来た様ね……」 「なんだと!?」 「あらあらまぁまぁ……」 その言葉に闘士子とホリメ子も表情を硬くする。 周辺に一般人の姿が無いのを確認したリベリスタ達は、E・フォース達の前に姿を表す。 「現実に疲れ、空想に救いを求めるか。その気持ちは解る。だが、所詮は空想。現実を侵食する様な空想を見過ごす訳にはいかん。兄ちゃんよ、あんたには悪いが偽の妹3人、始末させて貰う」 とても10歳児には見えない風格を漂わせ、『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)が啖呵を切り、 『無音リグレット』柳・梨音(BNE003551)もまたそれに続く。 「こんにちは、ニセモノさん達……夢の時間は終わりよ……くすくす……」 「お兄様! その子たちと居たら、今季アニメの最終回を軒並み見逃してしまいますよ。それだけは絶対だめです! わたしと一緒に見るのですから!」 おにーちゃん大好き妹キャラと化した『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)がワールドイズマインで青年の視線を釘付けにして呼びかける。 「あ、ああ、そ、そうだね。フィネたん! は……早く帰って一緒に観よう!」 青年は混乱して状況を把握できないが、何はともあれ、目の前のドストライクなフィネたんの言う事には逆らえず、ドタバタと彼女の方へ駆け寄る。 「こ、この泥棒猫!」 「お兄様に相応しいのはどちらか、勝負です!」 両者の間に激しく火花が飛び散った。 「香夏子はロリではなく狼なのです……! 香夏子が狼だと言う事を証明する良い機会ですね。狼でワイルドな魅力を見せ付けるのです!」 具体的には何も考えてない香夏子たんがキリッと決めた。 ● 「私はロリじゃないから説得に向かないわ。間違いない。私って大人の魅力に満ちた女教師だし。体は小さいけれどもあふれ出る大人の色気が。異論は認めない」 分かった様な分からない様な自論を呟きながら、距離を取った『自称大人の色香溢れる』ソラ先生がチェインライトニングを放ち、その一条の雷は拡散し激しく荒れ狂い、E・フォース達に襲いかかる。 続いてフィネと香夏子がマグメ子の抑えに向かい、フィネはギャロッププレイの気糸でマグメ子の自由を奪い、香夏子はハイスピードで全身の反応速度を高め、身体能力のギアを上げて戦いに備える。 「お兄さん、こちらの方が人数多いのできっと楽しいです! さらに今なら三食カレー付で香夏子も喜んで小躍りしそうですよ?」 青年は香夏子の誘いにコクコクと頷き、リベリスタ達の方へと這って行く。 「相変らずやってくれるわね、この泥棒猫達が……」 顔を歪め、悔しそうに歯軋りするマグメ子。 リィンは青年をその背に庇いながら、ヘビーボウからカースブリットをホリメ子目掛けて放ち、ホリメ子は目を白黒させながらそれを紙一重でかわした。 「またお前か! 今度こそ粉々にしてやんぜ、この絶壁野郎!」 そう雄叫びを上げながら闘士子が突撃する相手は因縁の宿敵であるヘクス。 轟音と共に闘士子の拳を受け止めたヘクスの盾に激しい衝撃が走り、表面から煙が上がる。 「絶壁ではなく絶対鉄壁なのですが……まぁ、アナタとはまた戦いたかったから丁度良かったですよ……会いたかったですよ?」 盾から顔を覗かせてそう言うヘクスの言葉に、何故か闘士子は顔を赤くする。 「な、何言ってんだよ馬鹿野郎!」 「お前等がその様な姿を取り、男に媚びているからといって、オレは惑わされんよ……何故ならオレもガキだからな」 福松が仁義上等の見得を切り、運命の加護を引き寄せれば、 「あらあらまぁまぁ……怖い事は止めるのですよー」 ホリメ子はマグメ子達の状態異常を癒し、再び両者は戦いの体勢を整える。 仲間のリベリスタ達の動きを見ながら、妹はメンバーの中で自分の経験が浅い事を自覚していた。 足を引っ張らない様に。集中し、敵をよく見て攻撃のチャンスを伺う。 「にーを傷つける『いもうと』は、ヤンデレだけで充分なのですよ!」 ヘクスがハイディフェンサーの輝くオーラに包まれ、文字通り鉄壁の守りを固める。 「さぁ、乗り越えてみてください。ねじ伏せて見せてください。この絶対鉄壁を! 容赦のない攻撃、期待していますよ。倒れない壁を目の前にした時の絶望はもっと期待しています」 仲間がマグメ子と闘士子のブロックについているのを確認した梨音が、自分はホリメ子の抑えに回ろうとダッシュするが、マグメ子の攻撃を警戒して射線に入らない様に慎重に近付く為に、なかなか近付く事が出来ずにいる。 ついさっきまでのどかだった公園が閃光と土煙に包まれ、リベリスタ達とE・フォース達は何度も切り結び、互いに血を流す戦場と化していた。 「いい加減ガス欠になっちゃうから、ちょっと貰うわね」 「ああ、嫌なのですよー」 ソラがホリメ子を捕えて吸血。今回の相手はグロテスクなクリーチャーではなく、可愛らしい少女の姿。嫌悪感を抱かずに吸血できるどころか何ともいえない罪悪感や背徳感に酔いしれるいけないソラ先生であった。危ない絵面ではあるがソラ先生はロリ限定じゃないのでロリコンではないそうです。お間違え無き様。 ソラに吸血され、フラフラになったホリメ子を今度はフィネの気糸が捕えて締め上げる。 一方、香夏子はハイスピードの高速移動でマグメ子を翻弄しながら攻撃し続けていた。致命傷は与えられないまでも浅い傷を多数与え、じわじわと体力を奪っていく。 「蝿の様にウロチョロと……本当に煩わしいわね。 邪魔よ!」 イライラも頂点に達したマグメ子が叫ぶと同時に大きく手を振ると、生み出された不可視の刃が衝撃波と共に香夏子とフィネに襲いかかり、猛烈な勢いで2人を木の葉の様に吹き飛ばす。 香夏子はそのまま激しく地面に叩きつけられて動けなくなる。フィネも深刻なダメージを受け、倒れそうになるがフェイトを燃やし、ギリギリの所で再び立ち上がって香夏子の様子を見るが、その胸が上下しているのを確認して安堵する。 「あと少し、もう少しだけ頑張ってよ」 カースブリットの呪いの魔弾でリィンが呪いをE・フォース達に与え、その力を奪い、合わせて福松のバウンティショットが残された体力を削り取る。一網打尽にされない様に警戒し、散開しての攻撃ポジションでの包囲戦を心掛けて逆に追い詰める。 「いい加減クソ硬ぇ奴だな。さっさと砕け散りやがれ!」 ヘクスと闘士子の激突はまだ続いている。ヘクスは涼しい顔をして平静を装ってはいるが、彼女の堅い防御と闘士子の突出した打撃力のバランスは危うい状態で釣り合っているに過ぎず、いつそのバランスが崩壊するか分からない緊張した状態が続いているのが本当の所である。いざとなればと背後の青年に目をやるが、今の所は安全な様だ。 予定通りにホリメ子を集中攻撃し、消耗させた所で妹がオーララッシュの連撃でとどめを刺す。 「せっかくこっちに来られたのに、残念なのですー」 倒れたホリメ子の姿は朝日に消える霧のように空に溶けて行く。 「ホリメ子……!?」 動揺したマグメ子を貫いたのは梨音のソニックエッジ。 「速さばかりは……負けられないのよ………くすくす」 「私たちはただ遊んでいただけなのに……どうして……」 その身体からナイフが引き抜かれると同時に彼女もまた霧散する。 「畜生っ! もう少し遊んでたって良いだろうが!」 最後に残った闘士子が悔しさを露わに叫ぶが、その声は福松の放った銃声に掻き消される。 「やかましいのは趣味じゃねぇ。いい加減に観念しな」 動きの止まった所をリィンの矢が貫き、闘士子もまた2人の後を追う様にその姿を風に散らせた。 ● 戦いが終われば全ては夢の中の出来事だったかの様に、E・フォース達の居た痕跡は何も残っていなかった。 残された青年は何が何だか分からないといった表情で茫然としている。 「はろー………真性の……お兄ちゃん……現実カムバック……」 梨音が青年の顔の前で手をひらひらさせる。 「兄ちゃんよ、夢は寝て見るモンだぜ?」 とハードボイルドに諭すのは福松。 「詳しい話できないけど……もう変なのに取り憑かれちゃだめだよ……」 梨音の言葉にも青年は目を見開いて、聞いているのかいないのか…… 「テレビ番組の撮影を兼ねたドッキリ……と言うのは無茶がありますかね」 そう言いながら妹は苦笑するが、この様子では夢か白昼夢と思ってもらえそうだ。妄想と現実の区別が分からなくなるのは危険だが、今回ばかりはそれでも良いだろう。ヘクスとフィネの先導で手を引いて無事部屋に送り届ける。 念の為に部屋を調べるが、覚醒したり他に怪しい様子は無い様だった。リベリスタの仕事はここまでだろう。 ● 後日、青年がリアル過ぎる夢の続きを求めて公園に出かけた時に、夢で会った少女に良く似た子を見かけたが、本当だったのかどうかは定かではない。迂闊に声をかけたりしちゃ不審者扱いされるしね。ご用心ご用心。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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