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【座布投】ひなあらレイン

●桃の節句
 三月三日。人形の片付けが少女達の将来の結婚年齢に直結する、とかそんなトンデモ理論が発生する愛すべき時節の候。行き交う少女達の姿もどこか華やかに見えなくもない。幻想? うるさいよ。
 そんな中、堂々と……ではないが、未確認飛行物体(菱形)がくるくると回りながら飛んで行く。時折何かが落ちてくる。
「ままー、ひなあられー……」
 ひゅるるるるるるる、ぱんっ。
「おー……」
 破裂した。あぶねえ。
 目撃した少女は、焦る母親に手を引かれながら空を仰ぐ。あれは、菱餅だろうか。

●遠距離戦闘(笑)
「訳が分らないから三行で説明してくれ」
「空飛ぶ菱餅のE・ゴーレムです。
 常時二十メートル飛行してます。
 雛あられ爆弾を投下してきます。
 たべられないこともないです」
「四行じゃねえかふざけんな」
 ブリーフィングルームで死んだ魚の目をして説明する『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)は、この上なくノリ気ではなかった。面倒な依頼なら元気そうに見えるのに、こういうノリだと本当に勢いが無い。
「えーっと……菱餅は基本的に上空二十メートルの位置から上昇下降を行いません。
 主に雛あられによる絨毯爆撃で、雛あられ自体の炸裂力はさほどでもないです。
 大体爆竹ぐらいですが……その、たまに『名古屋型』の雛あられを投下するそうで。
 その破壊力だけは相応に高いので注意が必要かもしれません。
 余談ですが、雛あられはとても美味しいそうです。食べられるならどうぞ」
「爆発するじゃねえか。痛いだろ」
「まあ、そこはリベリスタとしてのほら、何て言うか気合とか食い気とか?」
「いちいち適当だなそこんとこ」
「まあ、いいじゃないですか。
 上空飛び回るだけなので命中回避も高くないですし、接近さえすれば何とか。
 あ、でもあんまりにもあんまりだと逃走する可能性もあるらしいです。注意してください」
「……うわぁ」

 本当、うわぁ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月15日(木)23:29
 ホワイトデーとか全然江戸前じゃないんで。

●達成条件
 E・ゴーレムフェーズ2「確認済飛行菱餅」撃破。
 逃走すると失敗となる。

●「確認済飛行菱餅」―E・ゴーレム。飛んでる。
・ひなあらレイン(物遠範・火炎)
・ひなあらレイン(名古屋)(物遠複・ダメージ中・業炎)
・異常飛行(神遠複・ダメージ0・混乱・不運)
・EX 全力逃走(逃走判定発生。行動可能者の逃走阻止全失敗で逃走成功)

※ひなあらレインを食べる場合、クリーンヒットが確定し「火炎→業炎」、「業炎→獄炎」にランクアップしたBSを被ります。なお、R・ストマック所有者が食べる宣言をした場合、BSを被りません。

 甘酒はありません。
 ご参加お待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
プロアデプト
柚木 キリエ(BNE002649)
スターサジタリー
林寝・夏明(BNE002881)
インヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
マグメイガス
エウヘニア・ファンハールレム(BNE003603)

●楽しいかどうかはさておき
「菱餅か」
『野良魔女』エウヘニア・ファンハールレム(BNE003603)は上空を伺うように眺め、確認するように小さく呟いた。神秘についての知識収集に偏重した彼女が日本の風習について一定の知識を得ていたこともだが、その由来にすら知を届かせていたというのは特筆に値する。
「ピンクは桃の花、白は白い雪、緑は地に茂る草を表している……風情のあるいい菓子じゃないか」
「おいしそうですね、是非食べたいですね」
 そんなエウへニアに若干ズレた同調を向けたのは雪白 桐(BNE000185)。菱餅にひなあられ、その風情あふれる菓子は日本人にとって馴染みが深く、また食べ飽きぬ懐の深さを秘めている。既に食べる気満々なのは、しかし彼に限らない。
「キリエちゃん、そこの真ん中にいてね♪ あられを踏んじゃ嫌よ?」
「はいはい」
『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)はノリノリだった。どれくらいノリノリかっていうと、体重計をぶち壊さんばかりにはノリノリだ。
 体重? そんなものは彼女の欲求の前では些細な問題だ。そんな些事に囚われていてはこんな相手の前に立ち塞がることはしないだろう。今まで数々のエリューション食材に立ち向かった彼女が今更ちょっと動いてちょっと破裂する程度で怖気づく訳がない。
 そんなとらに付き合わされる『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は正味たまったものではない……筈なのだが、その傍らに立つ表情には嫌気は感じられない。付き合いが長いというのはいいことである。

「そうだよ! おひなさんはね、いつまでも飾っておくと結婚が遠のいちゃうって言うんだよね!」
 結婚可能年齢に達して久しいものの、年齢相応に見られない系女子トップクラスの『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)に行き遅れなんてビジョンは今のところ一切見えないのだが、まあそれは別の話ではなかろうか。
「女の子の幸せの象徴で攻撃なんてだめ! 絶対だめ!!!」
 あ、このシナリオのメインテーマっぽい方針が。

「出来たてを食べないとあっちゃ、三高平っ子の名折れッス」
 何時からそんなちゃきちゃきのなんちゃらみたいな土地柄が生まれたんだ三高平。『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)の言行がぶっ飛んでるのは今更語るまでもないわけだが、しかし行動にはきちんと筋が通っている。既に周囲に翼の加護を巡らせ、低空飛行の体勢から今や遅しと待ち構える姿は一端のインヤンマスターなりの姿としてサマになっている。なって「は」いる。

「いくら美味しくてもエリューションは駄目だ。攻撃してくるお菓子なんて、お菓子じゃないからな」
 日本の菓子については一定以上の関心がある『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)にとってみれば、流石にエリューション化した菓子など言語道断だった。なにせ食べるだけで火にまつわる状態異常。これは辛口に違いない。寧ろエリューション化したものなど口にするなど……。
 だがクリス、ちょっとまって欲しい。今まで君が参加してないだけで、エリューションを食ってしまう依頼は腐るほどあったのだ。残念ながら。すっごく残念ながら。

「おなかすきました。ごはんが とんでます」
『ひょろり一人旅』林寝・夏明(BNE002881)にとってはそんなことは正直どうでもよかった。エリューションだろうがアーティファクトだろうが、元が食べ物なら食べられるに違いない。胃袋の頑丈さにかけては、その外見の圧倒的ひ弱さを補って余りあるものがある。遠くから変則飛行を繰り返す菱餅は、彼にとって既に純然たる得物でしか無い。
 畜生、アークのフライエンジェどもはこんなんばっかりか。

「お~も~ちっ♪ お~も~ちっ♪」
 ふらふらと現れた菱餅を待ちわびたように、とらが腕を振り声を上げる。その腕の振りは何処かのアレとかぶるからおやめなさい。
「菱餅ー!! 食べてやる! 覚悟! 羽柴いっきま~す!」
 壱也は最初から食べる気満々である。食べていいのか、と逡巡するくらいなら調べればいいのに。目の前に高校教師居たんだから。
「さてっ、戦いに挑む前に『いただきます』をちゃんとしておかないといけませんね!」
 夏明、「いただきます」と「覚悟」は違うぞ。

 このテの依頼では数少ない常識派、キリエの気糸が空に向けて放たれる。菱餅の中心を見事撃ちぬいたそれを合図にするかのように、ちょっとアレげで春色(脳内が)な戦端は開かれることとなった。まあ、そういうことで。

●超爆発ゲイムひなあらレイン
 番狂わせ、というものがある。
 或いは大金星と呼ばれるアレだ。
 基本的に、格下の存在が遥か格上を何かの偶然で倒してしまうことを指すが……まさかエリューションとリベリスタの間で起ころうとは。

 高度を上げ、自らの影の援護を受けようとしたクリスは、しかし菱餅の体当たりに弾き飛ばされ、軽い目眩と意識の混濁を起こしてしまう。変則的な飛行。見たものに目眩にも似た混乱を与えるそれで空中接触を起こしたのは、最早事故と呼ぶ他はない。だが、正直なところブロックするでもなく近接主体でもなしに不用意に飛び込んでいって自己強化で間を取りましょう、はツッコミ入っても仕方ないと思う。
 僅かにふらついた彼女へ向け、ダメ押しのひなあらレイン。脅威の二回行動は小爆発を連続させ、クリスはあっさりと戦線から放り出されてしまった。仕方ないね。

 とは言え、その二回行動が地上に居た面々にとっても厳しい洗礼だったのは間違いない。
「空飛ぶ謎の物体Xの正体見たりー! 落ちろー!」
 壱也が叩きつけるようにメガクラッシュを放つ。いつの間に上空に来ていた。
「今年やった唯一のひな祭りらしいことがコレって意外と酷いですけれど!」
 夏明は一射放ったか否かのタイミングで既にひなあらレインを受け止める体勢(口広げ)。あの痩身からどうしてその速度が出るのだ。あと、あなたは男だから問題ない範囲だと思うのです。
「成程、翼を持つ者はこういう感覚で飛ぶのか、面白い」
 菱餅の真下に潜り込んだエウへニアは、既に風呂敷を広げ受け止める体勢万全である。しかし待って欲しい。ひなあらレインは着弾時に炸裂するのだ。癇癪玉の要領で。だもんで、まあ着弾後の姿は見るも無惨な粉っぽさな気がしないでもない……のだが、まあそこは彼女にとって些細な問題なのではないか。

「混乱したら食べれない、混乱したら食べれない……」
 異常飛行を自己暗示と根性で乗り切るとんでもない存在はこちらになります。
 桐の戦略を一言で説明してしまえば「根性」である。何処の元テニスプレーヤーだよお前。諦めんなよ。
 既に高度を上げていた彼は、ひなあらレインを口で受け止め、食らったダメージをそのまま自己再生で補填する荒業。なんつーか、本当に。

「……はっ! 回復!!」
 テントから落ちそうなあられをダイビングキャッチ(低空飛行)して頬袋に詰め込んだとらは、思い出したように聖神の息吹の準備姿勢に入った。
 というか、口にモノ詰め込みながら喋っちゃ駄目だって教わらなかったのか。

「……とら。時々でいいから、私の事も思い出してくれると嬉しいのだけど……」
 菱餅の耐久度に意識を割きつつも、逃走阻止を重視してピンポイントを打ち込みながらキリエは呟く。大丈夫、君の事は(庇ってくれる対象として)ちゃんととらは意識してるよ。

 エリューションとの戦いだということが実に忘れられそうになっている状況下ながら、しかし戦いは続く。激化する。主にひなあらレイン的な意味で。

「……つか、なんか派手なのは飛んでくるッスけど、『名古屋型』が来ないッスね」
 今回の依頼に於いて、計都の最大の目的は『名古屋型ひなあらレイン』の確保だった。もしかして、本人に見せつけるつもりだったのだろうか。
「名古屋型って、やっぱ逆三角形でトゲトゲなのかなっ?♪」
「いや、その名古屋は……」
 どうやら、思考レベルはとらも一緒だったらしい。畜生、アークの(以下略)。
 戸惑ってるキリエを誰か少しは慮る努力をしようや。
「名古屋型……ちょっと見てみたいかも、どんなのなんだろ!」
 多分、壱也の方は興味本位なんで問題ないと思うんですが。
 何だか心配になるのは俺だけじゃないだろう、絶対。

「この菱餅の中で、どうやってこんな美味しいひなあられが出来ているのか……その神秘に今、迫りますよ!」
 ぼりぼりぼりパァン。口から煙出ている様な気がするが、生憎と夏明の胃袋は鋼のそれだ。名古屋型を受け止めたところで多少痛いくらいで戦いに支障はない。本当に支障はないんだな。いいんだなそれで。背景にビッグバンとか戦隊物よろしく爆発を背負って味覚探求してるけど、いいんだよな。

「ちょっち、タイム! スマホで『雛あられ』を検索して……」
 計都、ここでなんとなく察する。
 もしかして、自分はとんでもない間違いをしていたのではないかと。
 もしかして、自分はあの包帯に担がされたのではないかと。

「『名古屋型』って言ったら、『メルクリィィィッッ!!型』じゃ無いッスか!? 裏切ったな……、あたしを裏切ったな……。ガッデムッ!!」
 お前はちょっとティバストロフさん(ミドルネーム)に謝ってこい。とらと一緒に。

●全力が迷子
「君は! 全力で! 食べる!!」
 菱餅より更に上空へ飛翔した桐が、勢いそのままに菱餅へと飛びついていく。既に装備を格納し、あんぐりと開けた口が菱餅へと叩きつけられる。驚くべき奇策――メガクラッシュ(咀嚼)。
 なんというか、ここまで来るともうこれは戦闘なのかというきがしないでもないが、しかし立派な戦闘である。絶えず降り注ぐひなあらレインは着実にリベリスタたちにダメージを与え、とらの息吹なしでは運命の無駄遣い甚だしい勢いだ。とらとて魔力は無間ではなく、キリエのサポートがあってやっとの程度。

「もっとあられを! ……あ、とらの菱餅も残しておいてぇ~?」
「とら、過ぎた欲は身を滅ぼすよ」
「いいもん、太ってやるんだからァ!☆」
「太って飛べなくなっても、知らないから……とらが嫌いな魔女みたいに、胸がおっきくなっちゃうかもよ?」
「……あ゛っーーーー!」
 キリエさん、とらちゃんあんまりいじめないたげて。

「危ないでしょ! こんなの落ちてきたら!」
 名古屋型を素手でキャッチするという荒業。壱也の手から秒の暇も許されないスピードで投げ返されたそれが菱餅へと叩きつけられ、小爆発が発生する。こわっ。

「ぼくは……死んででも食べますよ、お金で命は得れずとも命で食べ物は得られるんです!」
 夏明さん、それってお金で食べ物を得れば、いや何でもありません。申し訳ありません。

「こ、この灼熱の喉ごしがたまんねぇや! てやんでぇ、この焼けた鉄の塊みてぇなのが、胃の腑にするりと落ちていく感触を楽しむのが通ってもんよ!」
 そんなとんでもねえ感触を楽しむ風流はちょっとお断りします。
「燃えるあられをつまみにグビリと……」
 そして、計都の喉に流し込まれる白酒。読みは残念ながら「しろざけ」じゃなくて「パイチュウ」だ。度数五十三。内部で燃え上がるひなあらレイン(名古屋)と相乗効果を以て大ダメージだ。頑張り過ぎだろう。

「浮遊しながらの行動は面白いが、どうにも落ち着かないね……まあ、一向に降りてくる様子がないのは残念だが」
 上空を仰ぎみて、エウへニアは再びマジックミサイルを撃ち放つ。フレアバーストで焦げるか焼けるか試してみたいところだが、桐が絶えず菱餅に張り付いてもぐもぐしているのでそれどころではない。というか、メガクラッシュを放っても彼の進行方向にふらふら飛ばされるだけで、一向に落ちてきやしない。

 ……どう考えたってそろそろ潮時。
逃走を試みようにもキリエの怒りと桐の張り付きが剥がせない。
 下からはエウへニアのマジックミサイルと夏明の1$シュート、ついでに計都の鴉が襲いかかり間断なくダメージが飛んでくる。
 とらの回復はとどまるところをしらず、一定量のダメージならするりと回復してしまう。
 どうしてこうなった。この精鋭陣がこの依頼にいる意味を誰かおしえてくれ。勝負にすらなりゃしねぇ。

「おのれ、乳女ぁぁぁああ! 許さないぃぃいい!!」
 キリエに言われたことをまだ根に持っていたようだ。しまいにゃ回復すらほっぽりだして攻撃に参加するとら、怖い。

●事後処理(ルビ:たべる)
「美味しい依頼で更にお土産付き、嬉しいのです」
 結構口に運んでおきながらも、菱餅を切り分けて相応量の取り分を手に入れる桐。恐ろしい子である。
「持ち帰って、風情を堪能したいところだな……時期もいい」
 エウへニア、探求者精神旺盛なままに、手に入れたひなあられを鞄に積め、準備万端の様相。
「帰ったら、夜倉狩りだッ!  ヒャッハー!!」
 一月前にまたおいで、計都。
「お持ち帰りしていいんですね? やったー!」
 魂の底から響く夏明の声がもう、本当に切ない。もっともってけと言いたくなる。
「えへへー、いっぱい持って帰ろうねー! ひなあられパーティーだよ!」
「わーい、パーティーだー☆」
 壱也、とらは平常運行。まあ、波長合いそうだもんなこの二人。
「ひなあられの破片はそのままにしましょう。幸せのおすそ分けということで」
 常識枠のキリエは最期までブレなかった。……ブレなかった。鳥達も喜んでいる、かもしれない。

「やはり、お菓子は普通がいい」
 お粗末。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 まあ、雛人形のしまい忘れもですが、あるのにしまったままなのも大概やべェと思います。