●季節の味を大切に。 流れるジャズが心地よい。 意識しなければ聞こえてこない、どこか身体に染み込んで来る。そんな音だった。 当然である。ここはそれを聴かせる店ではなく、あくまで『てんぷら屋』なのだから。 「来ちゃいました。はいってます?」 笑顔の青年。二十台後半か、そろそろ三十歳といった所だろうか。 「来ちゃいましたか。入ってますよ」 人懐こい笑みを浮かべるのは細身の店主。まだ若い。 男に続いて、ぞろぞろと店に入ってくるのは男女が混じる六人組だ。 「じゃあ、これいっちゃおうかなっ!」 真っ先に入店した男は、よほどこの店が好きなのだろう。店に入ってからというもの、全く笑顔が崩れていない。 注文したのは福井の地酒だ。季節の限定モノで、これがなかなか手に入らないのだ。 「じゃあ、コースで」 「あ、俺も」 「私も」 「はい。コース六で」 決して可愛い値段ではない。それでもそこには、若者達に足を運ばせる魅力があった。 小気味良い職人の声。箸使い。あくまで顧客に差し障らぬよう、隅々まで気が配られている。 時折聞こえるじゅわりとした音が、期待を誘う。 「うんめぇ! やっぱ最高っすなあ!」 「ちょっとお父さん、お父さん」 三十路を前にして、お父さんと呼ばれる青年に子供は居ない。つまりおやじくs――貫禄があった。 和の趣を凝らした前菜と、爽やかなサラダも大変美味だ。 微かなゴマがふわりと香る。素材の持ち味を生かすために、あえて油を混ぜることで、軽やかに押さえてあるのだ。 いよいよ最初の一品。若者達は才巻き海老の頭揚げを口に運ぶ。塩で頂く。 口の中で上品に海老が香った。 時は流れ、やがて数品目のブロッコリーが小皿に乗せられる。 「香ばしさを出すために、少し強めに揚げてあります」 そのときだった。 突如ブロッコリーが革醒し、青年達を惨殺してしまった。 ●おなかがすきました。 「えっと……」 どことなく困ったような表情の『翠玉公主』エスターテ・ダ・レオンフォルテ(nBNE000218)が、言葉を切る。 なんだこの依頼。どうすればいいんだ。 「放っておくと、あのような事件がおこりますので、アークは先手を打って七人分の席を予約しました」 青年達、かわいそうに。楽しみだったろうに。いや、殺されるよりはマシか。 「なにこれブロッコリー倒せばいいの?」 「いえ、そのために、彼等の三十分前に店を予約しました」 どういうことだろう。 「つまり、革醒する前に食べてしまうことになるため、防ぐことが出来ます」 なるほど。いや、それならば、わざわざ自分達が派遣されるほどでもないのではなかろうか。 困惑したリベリスタが問う。 「念のため、です」 あ、そう。ていうか、この店高いんじゃないかしら。 「経費は、アーク本部が捻出するそうです」 それはいい話だ。 あれ。青年達は六人じゃなかったっけ。 なんで席が七つなのだろうとリベリスタが思う。 「私も同行します」 どうして。 質問を投げかけようとした時、少女のお腹が微かに鳴った。 桃色の髪の少女は、静謐を湛えるエメラルドの瞳を伏せ、ちょっぴり頬を染めた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:pipi | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月09日(金)23:11 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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