●3Dシューティングの『囲まれてる感』は異常 オッサンは戦闘機に乗っていた。 そういう職業の人と言う訳ではない。無論玩具やシュミレーターではない。先刻まで営業帰りに一休みしようとぶらついていた所である。 しかし。 しかしだ。 現代の激しくリアルなものとは違う、どこか古臭いCGによる世界の中にいつの間にかいたのである。 目の前の空間にウィンドウが現れる。 『Are you a player?』 「これは……うお!?」 どこか近未来的なデザインの戦闘機は突如アフターバーナーをふかし、急加速を始めた。 特殊な操作はしていない。 幼いころの経験から、やけにどっかで見たことある様なレバーを条件反射で握ってしまっただけだ。 いや、なんとなくわかる。 自分は今、飛んでいるのだ。 ●シューティングというゲーム 数多のゲームは、仲間や通りすがりの誰かに助けられながら成長を重ね、いつしか強大な敵へと戦いを挑めるようになる。そういうものだ。 しかしシューティングゲームは違う。 己の腕と愛機だけを狩り、幾千万の弾幕を掻い潜り、空中に浮かんだ補給物資をもぎ取り、巨大な敵艦へ弾をしこたま叩き込み、そして撃破し、最後の敵まで突き進む。 孤高にして最強の戦士。 それが、シューティングゲームであり……シューターというゲームプレイヤーである。 「うわ、モダンな筺体。迫力すごい……」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は独特なレバーを握っていた。 しばらく、リベリスタ達が集まった頃になってから手を離し、こちらへ向き直る。 そして開口一番こう言った。 「シューティングゲームは、好き?」 覚えている人はどれくらいいるだろうか? かつてリベリスタ達が8ビット空間のようなエリューションと戦った後、現場から回収したいくつかのヒント。これをもとに調査を行った結果、日本の数ヶ所で同じような事件が起こっていることが発覚した。 今回はその一つ、覚醒したゲームCDが通りかかった人間を仮装空間に取り込み、シューティングゲームを実体験させるという事件だった。 「元のゲームが何だったかは分からないけど、本人の記憶を探るためにいろんなものがごっちゃになった空間が作られるそうよ」 縦も横もごちゃごちゃね、とイヴ。 実際的には3Dシューティングの要領である。 どうやらゲーム開始時には自分の機体をある程度のジャンルから選べるらしく、空中に浮かんだ状態からスタートするらしい。 大量に出現する敵機体を撃破し、エリアの奥に待ち構えている巨大な戦艦を叩き落とすのがゲーム目的。 「この目的をクリアすれば、アーティファクト化は解けるわ」 だから、ね。 「あなたの腕前、見せて頂戴」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月11日(日)23:42 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●1ドット死線 遠くに見える陸地。 雲を近くして二機の戦闘機が飛んでいた。 スペースシャトルで飛行機を作ったような流線型機体と、ライム色のキャノピーが大半を占めた一人乗り自動車のような機体。どちらも空というより宇宙を飛んでいそうなフォルムをしていたが、不思議とその場で不備を起こすようなことはなかった。ゲームと言うのはいつもどこか不条理なものである。 そんな中、『エリミネート・デバイス』石川 ブリリアント(BNE000479)はコックピット内でポニーテールをぶんぶんと振った。 「シューティング! ロマンだな! と言うか、私がシューティングだ!」 「いや、意味がわからない」 『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)がしっかりとヘルメットをつけて喋る。 見た目にはほぼ同年代に見えるが、二人の間にはゼータとダブルオーくらいの差があった。それを一人で自覚して一人で呆然とするヴェイル。 「モアイを必死で避けてた時代から20年……え、本当に?」 「え、イースター島が何だって?」 とか言っている内に周囲から大量の敵が押し寄せてきた。 奇妙な四角形フォルムやら丸っこい飛行機やら触手の生えたエイリアンやら謎のこけしやら緑色の人型ロボットやら、縦も横も三次元もごちゃまぜな光景だが。 「そっちはレーザー使える?」 「いけるぞ、三秒待て!」 「長っ」 二人は雑魚ユニットの突撃や誘導弾を左右に散開して回避。そのまま幾度か機体を回転させ、二機をぴったりと横並びにすると。 「発射」 「ぶっぱなすのだ!」 ビームを放ちながら軸移動。周囲の雑魚を一掃にしにかかる。 「すごいビーム」 脚のジェットで単身飛行する『うさぎ型ちっちゃな狙撃主』舞 冥華(BNE000456)。 頭のウサギ耳やホットパンツすら許されない脚部仕様も相まって何か時代を感じさせるのだが、本人いわく……。 「ぱんちゅじゃないからはずかしくないもん」 だそうである。 「冥華にはてーこくさいきょの九九式狙撃銃がある」 運転とかわからないし、と言いながらその場で急速回転。 上下左右に弾をばらまいた後、足を大きく開いて後方から追尾してくる謎のマッチョを撃破した。 分からない人のために解説するが、九九式狙撃銃とは第二次世界大戦中に帝国陸軍の主力を張っていた銃であり、九九式小銃のスナイプバリエーションとして大変高い狙撃性能を誇った銃である。別名『兵隊さんの銃』。ちなみに今回照準合わせの必要が皆無なので九七式の狙撃眼鏡をくっつけている。 ……なので、冥華は帝国軍服の上だけをしっかり着て下は国旗柄のアレと言う、お爺さんが見たら泣くんじゃないかっていうような恰好をしていた。 そんな彼女にも容赦なく移動砲台が牙を剥く。 この高さで戦車の砲撃が届くのかと思っていたが、なんのことはない。普通に首をぐるりと回して弾幕をばらまいてきた。誰だあのシリーズ想像したヤツは。 「盾ー」 「はいはい、ばーりやー」 世にも適当な顔をした『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)が両腕を広げて相手の弾を受けた。 彼女の腕を台にして戦車を狙撃する冥華。 「冥華すぐおちちゃうから助かったー」 「全然平気だよー。なんたって物理防御が鬼だからねー。カレー食べたーい」 自宅の炬燵でぬくもってる時みたいなだらーんとした顔で、攻撃も回避もせずにぼーっとしている小梢。 そんな彼女めがけて大量の蟲が殺到した。 「……え」 ムカデとかカマキリとかハチとか、ああいうのを無理やり巨大化させたようなヤツである。そしていきなり弾幕だか肉壁だかわからない光景を生み出し始めた。 「うわあ!?」 「小梢さん貴女、さっきからバリアがめりめりと削られてるわよ」 雑魚をきりきり避けながら呼びかける『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)。 「え、うそっ!? 防御完璧の筈なのに!?」 「バリアは投げ捨てるもの」 そんなぁーと言いながらピチュる小梢。 糾華はバリアがアテにならないのはインベーダーの時代から決まっていたことよと呟いて、蝶の形をしたダガーを連続投射した。 一ドットの隙間を半身で潜り抜け、周囲にひたすら球をまき散らすドラゴンのようなものに接近。ビーム状の縄を繰り出して捕縛した。 「現役ゲーマーとして、気を引き締めて行かなければ……さあ遊、じゃなくて仕事するわよ!」 ドラゴンに死の刻印を刻み込み、一発で撃破。 周囲の雑魚が群がる前に離脱した。 などなど。仲間たちが荒唐無稽な弾幕プレイを楽しんでいる中で。 「行くぜデスペラード、狩りの時間だ!」 『人間魚雷』神守 零六(BNE002500)がひらすら弾幕を蒔き続ける衛星メカへとまんま突撃していった。 銃を撃ちながら突進という意味ではない。 より分かり易く言うならば『零六ミサイル』である。 「オラァ!」 巨大な盾を眼前に出しての突撃。衛星はビリヤード弾のように回転しながら飛んで行き、妙なファンタジー生物の群れを蹴散らした。 反撃として飛んできた弾を左右にちょこちょこ避けて進む。これが巨大なビームだったら避けきれずに当たるところだが、今の所なんとかなっていた。 何故かと言うと。 「ほっと、もういっちょ行くかね!」 『鋼鉄の渡り鳥』霧谷 燕(BNE003278)のカラフルな人型機体がビーム砲台を蹴飛ばした。いや、蹴飛ばしたと言うより蹴りが飛んだと言うべきなのだが。平たく言えば高出力斬風脚である。 「燕さんはね、翼つけて空飛んでみたかったんだよ。それなりにタフみたいだし、ガンガンいくぜ!」 変形しながら高機動で襲い掛かる黒い人型ロボットを斬風脚で叩き落とし、燕はどんどん突っ切って行く。 そんな中、陸地を走る赤青の味方機を発見した。 「ん? 何ぞあれ」 「シューティングと言えば、これかなって!」 『From dreamland』臼間井 美月(BNE001362)がその機体でびっと親指を立てた。 一応銃は持っていたが、びっくりするくらい飛ばない。 ホバリングすらしない。 でも何故ソレがシューティングと呼ばれるかと言えば。 「うおおおおおお1ドットの弾になんて当たるかああああああ!」 ジャンプと障害物を全力で駆使してちみっちゃい弾を必死で避けていたからである。 で、たまに当てる。 「さあ、僕のシューティングテクの見せ所だ!」 こんぼーいと言う鳴き声なのか何なのか分からない声をあげつつ周囲を乱射する美月(陸上)。 すると眼前に意味の解らない巨大な龍みたいな物体が出現。いきなり弾幕をばらまき始める。 「あ、これ初弾の避け方向間違えたら死ぬ奴だ」 でも美月は悲しいかな飛べなかった。 無論ハチの巣になった。 「う、うわあああああああああ!」 「みっきいいいいいい!」 ●物語を無視する者ども シューティングというゲームの最も際どい所は、いかなるバットエンドであろうが不遇な対応だろうが別に気にせず全力で戦えてしまう所である。単騎で敵宇宙に放り込まれあらゆる苦難を掻い潜り見事的の本拠地を撃破してみせても、そのまま敵地と一緒に爆破されたりする。必死こいて訓練して命削って戦い抜いても夢オチだったりする。しかし彼らは不平を述べたりストを起こすようなことは無い。1ドットを掻い潜り、敵の群を掻い潜り、その場にあるものを徹底的に活用して利用して、最後には己の任務を無言で成し遂げて見せる。 明日など知らぬ。 それが、シューターと言う生き物の本質である。 「と言う訳で僕の本気を見せてやるっ!」 フェイトで復活した美月がうおりゃーと言いながら敵戦艦に向けて機関銃を乱射していた。 悲しいかな届かなかった。 「おかしいよね。銃の射程が画面端までとかおかしいよね」 などと言っていると戦艦の口が開いて大量のエイリアンが吐き出される。うじゃうじゃと散開するエイリアンにくいつかれる美月。 「コックピットに触手入ってき、ウギャー! むりー! これムリゲー!」 言いたい放題叫んだあと、はっとしてコックピット内のカメラに目線を向ける。 「楽しかったよ、ありがとう!」 奇妙な煙をあげて爆発する美月機。 ……と、その煙を突き抜けて一つの戦闘機が飛び出してきた。緑色のキャノピーがキラリと光る。 「盾にさせて貰った……ありがとう団長(おっぱい)、許せ!」 ブリリアントはコックピット内にあるスイッチを複雑に切り替える。高周波の音が室内に響く。ウィンドウに表示されたゲージがマックスを示していた。 一足遅れて彼女にきづいたエイリアンたちが群がり、次々機体に取り付いていく。 大きくゆれる機体。頭上のランプが赤く点滅し始める。 「私は連コインはしない主義だ。これで落ちたら終わりとしよう」 レバー上のカバーを親指で弾き上げる。 「一発必中! 一回入魂! ぶっぱなす!」 巨大なビームが発射される。射線上のエイリアンたちを巻き込んで大量の小爆発を起こし、最後には戦艦に直撃。エイリアン排出口に当たる部分を爆破させた。 それを最後にブリリアントの機体が爆発。周囲のエイリアンを巻き込んで塵と消えた。 「よく頑張ったわね。後片付けは私がやるわ」 糾華が腕を広げて空中を回転。戦艦から放たれた無数のビームを軸回避していく。 「見せて頂けるかしら、E・シューティングの難易度を!」 糾華の後ろにもう一人黒い糾華が出現。同じ動きでダガーを連射し始める。 それを見てか、残ったエイリアンが群がってくる。糾華は急速にターンをかけ仰向け態勢でバック。 密集してきたエイリアンたちに爆弾を投げつけて次々と爆破した。 「弾幕ゲーでもわらわらゲーでも、簡単に落とされる私じゃないのよ」 すっきりした空域。糾華は一気に加速をかけて戦艦へと突撃した。 「元ゲーセン通いの登校拒否児の実力見せてあげるわ」 「盾ならまかせてー」 てやーと言いながら糾華の前に出る小梢。 おもいっきりがしがし当たっていたしバリアもめりめり削れていたが、戦艦に接近するまでの時間は稼げそうだった。 戦艦の頭部分が動き、巨大な砲台が姿を現す。 「まずい、来るわよ!」 「誰が避けないといいましたかー」 面舵いっぱいーと言ったか言わないか。小梢はゆーっくりと横移動をし始めた……が、ビームに思いっきり巻き込まれた。 「小梢さんっ!?」 「速度足りなすぎたー」 ピチューンという独特の音で消滅する小梢。 糾華はギリギリのタイミングでメルティーキスを発動。相手の砲台を激しく拉げさせた。 大爆発。糾華は急速に離脱した。 やや離れた所でスコープを覗く冥華。 「エネミースキャンできたよー」 スコープから目を離す冥華。 「あれ、人型に変形するぽい」 と言った途端、戦艦が美少女に変形した。意味わからないとは思うが、本当に変形した。誰だろうこんなゲームイメージした奴。 しかし冥華のスキャンが良かったのか、弱点になるポイントに緑色のターゲットサイトが表示され、いかにもここ狙って撃てと言わんばかりの形になった。 それを知ってか知らずか、必死なくらいの弾幕をばらまいてくる敵戦艦。 冥華はすちゃっと敬礼すると回避行動を開始。 「うさぎのきょーい的なちょー反射神経でがんばって避けうわー」 そして二秒で撃墜された。 煙を噴き上げながら墜落していく冥華。 「おいアイツの盾いなかったのか」 「ごめん燕さんには遠すぎて」 燕の人型機体と一緒に突っ込んで行く零六。 「それ、土砕掌っ!」 相手の腹部に掌底を叩き込む人型ロボット。戦艦(?)ががくりとよろめいて周囲の弾幕が収まった。 燕機の肩を蹴って跳び出す零六。 「てめぇが親玉か……上等っ、主人公であるこの俺が完膚なきまでにぶっ潰してやるよォ!」 相手の肩部分に突撃。巨大な砲台の中へ突入すると、盾を青白く発行させた。 「ヒャハハハハッ!」 零六が砲台ごと爆発。 戦艦の各部が次々と誘爆し始めた。 苦し紛れに手持ちの武装をフル解放してくる戦艦。 二次元シューティングなら、無敵モードでもなければ死ぬような弾幕が形成された。だが今は三次元。縦横に掻い潜れば1ドットくらいは隙間がある。 とは言え1ドット。 残った味方機は必死に回避行動と防御に専念する。 そんな中ヴェイルの機体が強く発光した。 宇宙服のようなものを着たヴェイルが、古い戦闘機のようなコックピットの中で両手をせわしなく動かす。 独特なハンドマニュピレーターに無数のケーブルが自動接続され、黒背景に緑色のマトリクス文字と言う非情に原始的なコードが走り始めた。 見慣れぬ文字列に目を細めるヴェイル。 小さく小さく呟く。 「やってやろうじゃない」 『whiteman-system boot...ok』 『I get fine dey』 『我、晴天の地を得たり』 『You are free...a free』 『世界を貴君の手に乗せよ』 1ドットの隙間を流線型機体が潜り抜ける。 高速で機体を回転させながら八十六本のビーム砲を連続回避。 ヴェイルは仲間がつけてくれた弱点の印を目視でターゲットロック。 相手の眼前まで接近してから、手持ちの兵器をありったけぶち込んだ。 そして――。 ●エンドロール 八人は目を覚ます。 真っ暗な世界だった。 地面らしき場所を、文字化けしたエンドロールが高速で流れていく 何とも言えない、世界が現実に戻って行く感覚。 小梢や美月はうきゅーと言いながら目を回していた。 彼女達を軽く介抱してから立ち上がる糾華。 エンドロールが流れきり、空に1ドットの白点が産まれた。 徐々に広がる。 「1ドットの世界に生きる……これぞシューターね」 いそいそとズボンを穿く冥華。武装をビットに収納するブリリアント。 零六と燕もまた、この世界から出る準備を手早く終えていく。 そんな中で、ヴェイルはふと腕のディスプレイを見た。 ゲーム内で見かけた黒背景に緑文字。そこには英語でこう書かれていた。 『ゲームクリアおめでとう! 君がこれを見ていると言うことは、裏側のコードをしっかり読んでくれたということだ! 次に示す座標を調べてみるといい、私からのささやかなプレゼントをあげよう!』 世界は晴れていく。 そうして、ゲームは終わった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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